恋雨~重装護衛艦『倭』~   作:CFA-44

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 どうも遅くなりました!今回雨月の出番は前半ぐらいしかありませんwww でもご心配なく!後できっちり働いてもらいます(暗黒微笑)え?タイトル詐欺?細かい事気にs(ry
 海軍も陸軍もバカは沢山いるんですね………… もっと現場も見てあげてくれぃ…………

 やっとトラック泊地のゆうしぐにも改二改装実装します。はい。でも倭君は実戦投入を躊躇ったようです。

後半またしてもハプニング発生&時雨の倭攻略戦の一部ががががががが
艦娘の艤装の表現なんてできっこねぇ!!と未だに思います。書いてる本人が言うんだから間違い無い!


準備と不穏な影

‐大本営軍令部‐

久遠総長を含む海軍の幕僚達が詰めた部屋ではある会議が行われていた。

「ガダルカナル撤退作戦だが、トラック艦隊の協力の下作戦を実行したいと思うが諸君等の意見を聞きたい。」

「自分は賛成であります。今の内に第1艦隊の再編を行う良い機会かと。」

「自分もそう思います。送られてきたこの資料を見る限り既存の艦娘達では彼の戦艦の力を借りない限り超兵器とやらに蹴散らされてしまう。」

先のレイテ島奪回作戦の敗因を突き付けられた軍令部は艦隊再編を急いでいた。しかし、それに対して異議を唱える者も少なくなかった。

「ですが、この程度の装備を持つ艦は彼の艦が単艦で仕留めたのでしょう?大和型戦艦を多少改良しただけでも勝てるなら数で押し攻めてやれば良いだけの事。既に勝利したも同然です。」

「たかが巡洋戦艦如きが3個艦隊をあっという間に壊滅させたなど、どうせその場しのぎの法螺吹きに決まっております。」

この場に倭が居ればこの楽観的発言をした将官2人は間違いなく消されるな、とただ1人場違いな考えをしていた久遠だが、

(これ以上はマトモな会議も出来やせん…………もうこれ以上誰も失うわけには……………ワシは何時まで経っても無力で無能なままだ………倭、君に全て押し付けるようだが何とか超兵器を倒しておくれ……そうすればきっと抵抗も出来ずに沈んで逝った彼女達への手向けになるだろう…………)

(総長……心中お察しします……ですが耐えてください………)

シブヤン海で失われた艦娘達とその場に居合わせた兵士達の事を愁い、自身の非力さを嘆くしかなかった。

 

 

‐大本営参謀本部‐

ここもまた会議の真っ最中であった。

「餓島からの撤退作戦だが……海軍の力を借りたいと思う。」

「何を馬鹿な!海軍の手を借りなくても我が陸軍の力だけで十分です!」

「ではその陸軍が取らざるを得ないのは玉砕とでも言う気かね?君は70年もの昔の出来事を繰り返す気か?」

ガダルカナル島撤退作戦。駆逐艦を用いての陸軍兵脱出作戦ではあったが、1度の成功以降は作戦を事前に察知されて餓島到達目前の鉄底海峡で駆逐隊が追い払われる、或いは全滅させられ、思う様に撤退が進んでいなかった。かと言って乗員を多く乗せられる戦艦は火力、防御共に十分だったが足が遅いという欠点を抱えていたし、重巡、軽巡でも同じ事が言える上に夜明け前に海域を離脱出来るかが問題でもあった為に論外。空母に至っては自艦防御能力が低いという事で除外されていた。

「既に海軍からは何時でも協力可能と話は挙がって来ていますし、この際力添えをしてもらう方が妥当かと……」

「何が力添えをしてもらう方が妥当、だ!我が陸軍兵士の大和魂があればどんな困難でも乗り切るに決まっとる!海軍の腰抜け共とは気合の入れ方が違う!」

「では聞こうか。その大和魂のみで何処まで戦線を押し返せる?精神論を口で語る前に貴官自ら前線に立って示してみると良い。皆きっと喜んで貴官の言う事を聞いてくれるだろうな。」

そう言った陸軍将校に聞き返した男の名は蛇城那羽呂。階級は少将であり、海軍に在籍中の蛇城英作の父である。元は陸軍大将兼現場指揮官だったが息子が海軍内で起こした不祥事のお陰で陸軍内でも非難を浴びせられ、その責任を取る形で少将へ自ら降格願いを出した。

 自分の下で一緒に戦ってきた部下を内地で安全に過ごしている息子以上に可愛がり、信頼感を築いている。本音を言えば海軍に応援を要請して自ら戦場で指揮を執って戦いたかった。

だが那羽呂が息子の起こした事件で内地へ呼び戻された時、餓島の戦局は既に悪化し始めており、その時も海軍の助力を受けて派遣された駆逐艦隊旗艦秋月へ乗り込んだのだが、運悪く深海棲艦側に救出に来た事を悟られてしまい、見送り兼護衛に来ていた部下が目の前で深海棲艦の艦載機から機銃掃射を受けて次々に斃れ逝く姿を見ている。だからこそ餓島撤退作戦は自分が完遂せねばならないと決めていた。

「貴官がどれだけ国の事を思ってくれているかは私にも良く解る。だが、ここは海軍の助力無しに作戦も何も出来んのが現実だ。この撤退作戦は君に一任したいが、条件として海軍の手を借りて欲しい。折角向こうから高速編成の艦隊を出すと言っているのだ。そう悪い艦ではなかろう。」

「と、言いますと例の超兵器とやらを撃破した倭、ですか?」

その一言で会議室がざわつく。それもそのはず、倭が軍令部と参謀本部の両方へ送ってきた超兵器の資料(参考資料:ヴィルベルヴィント)は正直言って最高練度の艦娘達で編成した艦隊をぶつけても辛うじて対抗出来るかどうかの相手である事は明白だった。だがその超兵器を倭自らが葬り、ある程度の力を示した事で『変な事でトラック艦隊に手を出せば噛み付くぞ』という気迫を見せていた。

「海軍からはその倭と数隻の護衛艦を餓島へ派遣するそうだ。途中の燃料補給も含めて2週間程の作戦行程となっている。作戦は全将兵の帰還を以て成功とする!必ず戻って来い蛇城少将!」

「はっ!現場指揮官として全力を尽くします!」

トラックまでの移動手段は一番早い空路を予定していたが、道中何が起こるかわからないのでトラック泊地に向かう補給船団に便乗する事となった。

 

 

‐トラック泊地‐

「はぁ………頭が痛いわ………」

「この前の宴会で飲み過ぎた所為では?」

「アンタの所為よ!アンタの!弾薬が少ないから節約しろってこの前言ったばかりでしょうが!」

「そんな事言われた覚えないのだが。」

「どんだけ都合の良い耳してんのよ………で?その瓜二つ君は?」

「う、瓜二つ君?!ちゃんと違う所が在りますぞ?!ホラ!軍帽の被り方が違うではありませんか!!それと私は倭型重装護衛艦2番艦雨月(あまづき)です!」

「力説されてもねぇ……まぁ倭は右斜めって覚えとけば良いかしら。」

「瓜二つなのは多分建造工程で俺と同じ電波吸収装甲が主砲と艦橋に採用されたからだろう。杜若以降からイージスシステムを搭載されていたから若干艦橋の形が異なっているはずだ。雨月の事は良く解らんが俺は解放軍籍に入ると同時にイージスシステム搭載の改装を受けた事がある。」

「私は確かデュアルクレイターの間接護衛任務の直前に改装を受けていた筈です。その後兄上が撃沈したと聞きましたがね。」

「アイツ、魚雷艇と一緒に直掩の戦艦部隊まで連れてきたから両用砲で直掩と魚雷艇を牽制しながらハッチ内に榴弾の6連射をぶち込んで沈めた。」

「兄上ならやると思いましたよ………」

明らかに付いて行けないペースで喋り捲る2隻の超戦艦に呆れ返る笹川だが、内心で倭の苦悩が少しでも和らげばそれで良いとも思っていた。

 その後、倭達から『倭型重装護衛艦』に関しての簡単な説明があったものの、あまりの複雑さに混乱しかけた。

倭型は大まかに『実弾主力』、『実弾半分光学半分』、『光学主力』3種類に分かれており、実弾兵装を主力としながら対空攻撃を重視した倭を『XB‐0』型、副兵装に光学兵器を試験目的で搭載した対艦攻撃重視の雨月を『XB‐1』型、帝国側に接収された後にXB‐1を発展させて3番艦から採用された『XB‐1B』型。倭以外は雨月をベースに改装を受けている為に倭以降は『雨月型』と称されている。

勿論61cm砲を装備している事に変わりは無いが、倭と雨月以外に搭載された61cm砲は前部2基のみであり、それ以外は光学兵器と各種対空対潜兵装が装備されている。

「確か杜若と常盤がγレーザーⅢとδレーザーⅢを装備していたな。まあεレーザーじゃないだけ避けるのは楽だったけど。」

「丹生は何でしたか?」

「丹生はβレーザーⅢだったはずだ。海峡防衛も主眼に入れていたからな。」

ここまでの会話を要約していけば5隻とも個性的な状態だと推測できた。倭は対空攻撃重視、雨月は対艦攻撃重視、杜若・常盤は長距離対艦攻撃重視、丹生は局地・近接戦重視の4つに細かく分けられた。

「あんまりにも話が飛躍し過ぎてて付いていけないわ………」

「簡単に言うと対空型の兄上が敵機を叩き落として制空権を崩壊させた後に攻撃型の私や杜若達が敵艦隊を襲撃する、といった運用計画だったようです。尤も、私自身帝国軍に接収されてしまったので本来の運用計画を達成出来たのは兄上だけでしたがね……」

「これから一緒に戦っていけば良いじゃない。まぁその前に軍令部へ雨月君の事を報告しなくちゃならないんだけどね……その後に配置換えとかがあるだろうし。」

「配置換えは……困りますな……」

戦力配置を考えれば超兵器級戦艦と準超兵器級戦艦がトラックに集中配備でもされれば本土の鎮守府から何かしらの圧力が加えられるだろう。だが、そんな杞憂は倭が吹き飛ばした。

「配置換えは無い。昨日総長と連絡を取ってある作戦に参加する事を条件に雨月のトラック泊地配備を認めてもらった。」

「「はいぃぃぃぃぃぃぃぃ?!」」

雨月と笹川の驚愕の声が重なった。何しろ部下が上司の知らない所で上層部と勝手に話をつけてしまっているのだから当然と言える。

 唖然として口が塞がらなくなったままの笹川を置き去りにして更に話を進めていく倭。横暴なようだが陸軍関連で笹川が動かない事を資料等で知っているが故の行動であった。

「俺を含んだ高速艦隊を編成し、ここへ来る陸軍少将を乗せてガダルカナル島へ向かえ。と言われてな。編成としては戦艦4、駆逐艦7が妥当だろう。」

「はぁ……仕方ないわね……旗艦は倭がやって頂戴。」

「大丈夫だ。」

「で、最後に聞いておくけどその『超怪力線照射装置』ってどのぐらいの威力があるの?」

「この世界でなら無敵に等しいだろう。尤も、あの世界じゃ然程役に立たない。電磁防壁という緩和装置があるからな。」

またトンデモ技術が使われていると泣きそうになったが、好きでそうなったのではないと倭達から告げられる。

「兵器開発というのはイタチごっこですからね。欠点を改善してもそれを上回るものが出来ていたりします。」

「それに兵器開発を進めれば敵が改善策でこちらを追い抜きこちらも抜き返そうとして技術力を高めていく。俺達も提督達もそういった世界に生きているのさ。」

「そう、ね………」

そう言った後執務室を後にし、廊下の窓から外を眺めていると視界に入ったのはグラウンドを逃げ回る卯月と顔を真っ赤にして追い掛ける弥生の姿。それを遠巻きに眺めている睦月達の姿も見えた。

 編成が決まったのは那羽呂がトラックに到着する3日前の事だった。

 

 

「提督、失礼するよ。」

「提督さん、ご用事はなぁに?」

「来て早速なんだけどこの書類を読んで。何とか資源を切り詰めながら遠征やった甲斐あってようやくここまで辿り着いたわ。」

そう言って提督はそれぞれ1枚の書類を僕と夕立に渡した。その書類には、

『白露型駆逐艦2番艦及び4番艦の改二改装の実施を許可す。』

と書かれていた。横を見れば目を見開いて提督と書類を何往復もさせている夕立が居た。僕だって信じられない。でもこれは夢じゃなくて現実。

「これで強くなれるっぽい?」

「目的意識さえはっきりしていれば強くなったって実感出来るんじゃないかしら?その点、時雨は解ってると思うけど。」

薄笑いを浮かべて提督は僕の方を見てきた事でこの前の宴会で倭にやった事は提督にバレていたらしい。一瞬で赤くなった僕を他所に改二改装の話を進めていく。要約すると僕は対空兵装の強化を、夕立は火力の強化を重点的に行うらしい。そこに倭が開発するであろう補助兵装というものも取り付けられる予定と言われたが既に夕立はデスランスを装備済みである為、更なる強化を目指して開発が計画されていた。

 勿論このトラック泊地所属の僕と夕立だけに合わせた特注品だから他の鎮守府所属の僕や夕立が使う事は出来ないとの事。

「それと、今回行われるソロモン方面の作戦だけど貴女達が参加する事は無いわ。」

「ど、どうしてっぽい?!もしかして改装が間に合わないっぽい?!」

「いえ、そうじゃないわ。倭から頼まれたのよ。『十分な慣熟訓練が済むまで艦隊に入れるな。』ってね。代わりに他の駆逐隊を随伴させるから護衛の問題は無い筈よ。」

「「え…………」」

倭個人の意見としては『改装直後に実戦投入して喪失させる愚を冒すくらいなら十分な慣熟訓練を済ませてから実戦に臨む方が良い。』と考えており、2人をワザと外した訳ではなかった。それ故の発言でもあったがこれが逆効果となって2人を怒らせる結果となった。1つ目は自分達が頼りないのかという事で怒り、2つ目は自分達を信頼していないのかという事で怒り、最後は女だから、子供だからという理由で戦場から遠ざけようとしているのかという事で怒っていた。

だが、彼女達も力を付けようと改装直後から切磋琢磨していくのだが、新たな脅威を突き付けられる事になる。超兵器とは少し違うが既存艦娘達の攻撃もビクともしない鋼鉄達が其処彼処の海に蔓延っている事に。倒された超兵器ドレッドノートが超兵器群の中でも底辺に位置する存在であるという恐るべき事実に。

 

 

 トラック泊地に補給船団が到着する数時間前、倭は何時もの艦内巡検をせずに堤防の突端に腰掛けながら海鳥達と戯れていた。そこへ歩み寄る1つの影があった。

「何だ、山城。」

「良く振り向きもしないで私が山城だって気付けたわね……」

「ここは風下だぞ?風上に居るお前さんから微かに漂う甘い匂いに気付かん訳が無かろう。」

「アンタってもしかして変態?」

「確かに戦う事でしか自分を固持出来ない戦争狂という時点で“奴等”と同じ変態なんだろうな。」

「奴等?」

「……何でもない。気にするな。」

「そう……で?もうすぐ船団が来るって言うのにアンタは準備もしないでのんびり潮風に吹かれてるのかしら?」

「そう解釈してくれて構わんよ。………少し気になったのだが、艦娘達は艦に乗らなくても海を渡れると言うのは本当の事か?」

他愛の無い会話であったが、随分と前から不思議に思っていたのだろう質問を山城に問うた倭。山城達艦娘からすれば造作も無い事であり、最悪艦外に出て戦闘となれば簡易艤装を展開する事で応戦可能とされていたが、倭は幾ら陸上で試しても何も起こらなかった。

「一応簡易艤装という形でなら展開できるわよ。ちょっとだけなら見せたげる。」

そう言って海面へ飛び降りる山城の姿を見て、

(そういや砲術長が何処からか持ち込んだ薄い本に載ってた女性とそっくりだな………)

等ととんでもない事を考えていた。ともあれ、着水した山城は意識を集中して艤装を簡易展開状態で呼び出す。山城を覆った白く光る粒子は次第に形を変えていき、光が消えた後には4基の巨大な砲塔を背部に背負い、それに匹敵する大きさの飛行甲板を手に持ち、頭に鉢巻をした山城の姿があった。

「ほう……それが簡易艤装か……」

「アンタもやってみたら?」

「陸じゃ出来なったからやってみる価値はありそうだな。コツとかあるか?」

「大体自分の艤装を思い浮かべれば良いだけよ。後は勝手に出来上がるわ。」

「何て大雑把な……」

「どうしてそうなっているのか私達にも解らないのよ。解るのは精々艤装を思い浮かべるって事だけよ。」

「……やるだけやるか。」

倭も山城の様に海面に飛び降りて着水しようと思ったのだが、

「ん?」ガクン

『ミャーッ!(ダメーッ)』バサバサッ

何を勘違いしたのか海鳥達が倭の服を必死に掴みながら着水を阻止していた。その為、山城の間近で宙吊りに近い状態にされていた。

「………ッ!…………ッ!」プルプル

「あのさ…俺別に入水自殺しようとしてないからな?」

『ミャー?(そうなの?)』バサバサ

あまりにもシュールな光景に失笑を漏らすまいと必死に堪える山城。だが、彼女にとってある意味で不幸なのか幸福なのか微妙な事が訪れる事になる。

(もう、げ、限界………腹筋捻じ切るつもり?)プルプル

「だから降ろしてくれないか?」

『ミャー!(ラジャー!)』パッ

「お?」

「え?」

海鳥と意思疎通を可能としていた倭のお願いで解放されたまでは良かった。だが忘れてはいけない。倭は海鳥達が取り付いて浮いていたという事を。そしてその落下先は山城の目の前であるという事を。

 

どっぼぉぉぉぉん………

 

盛大に吹き上がる水柱。そして倭が顔だけを出した所でそれは発生した。山城自身海水を盛大に浴びる事は無かったが、すぐに倭が浮上してくるとは想像していなかった。

「あいつら……今度会ったらちゃんと注意しないとな……早速だが山城……如何した?」

だからこそであろうか、下から見上げてくる状態の倭を見てすぐに気が付いた。すぐさまスカートを押さえ込みつつ倭目掛けて蹴りを繰り出す。

「おわっ?!ちょっ?!いきなり何だ?!新手の訓練方法か何かか?!」

「五月蝿い!五月蝿い!何勝手に人のスカートの中覗こうとしてんのよ!!このド変態戦艦!!」ゲシゲシ

「俺が何したって言うんだ!!」

「五月蝿いわよこのバカ!鈍感!ド変態!」

「変態(戦争狂的意味で)というのは認めるが流石にド変態は酷いだろうが。」

「海に落ちる瞬間に私の胸を触った時点でド変態そのものよ!!」

「俺の所為じゃなくて海鳥達の所為だ!!」

「海鳥達の所為にするなんてアンタ何様のつもりよ!」

「俺様だ!って言ったら喜ぶのか?」

「んな訳あるかぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

傍から見ても何処の夫婦漫才かと思ってしまう程の展開を見せた倭と山城。何とか海面に立つことが出来た倭は山城に言われた様に意識を集中してみる。

 

 

(艤装、つまり艦橋やマストは俺の上半身に、砲兵装や迎撃兵装は両腕に、機関部及び船体喫水線下は下半身にそれぞれ該当していると考えて良いのか。……取り敢えず、艤装、展開。)

 

山城と同じ様に白色の光粒子が倭を包んだ。しかし、光が消えた後の倭の艤装は明らかに常識を逸している物としか思えなかった。

 大和型の艤装と長門型の艤装を混ぜたような船体。巨大な主砲の配置方式は長門型と同じだが明らかに倭よりもデカイ。副砲は妙高型の様に両肩に取り付けられ、船体の左右に均等に振り分けられた15.5cm砲や40mm4連装機銃と35mmCIWS。一部は後部にある煙突と後部艦橋やミサイルVLSを囲むように配置されている。

 腰には何に使うのかと疑いたくなるような大きさの主錨が両側に取り付けられており、それに見合う巨大な鎖が艤装後部へと繋がっていた。耳元には15m測距儀が配置され、首に巻かれたチョーカーの周りには八角形の小さな板(SPY‐1D)が4枚取り付けられていた。

 右腕には白兵戦用装備と思しき手甲が取り付けられ、左腕には35mmCIWSの砲身を2基と右腕と同じ様な対空ミサイルランチャー2基を束ねた複合対空兵装が取り付けられており、両腕の装備は何時でも着脱が可能となっていた。

 足周りも特徴的といえば特徴的だ。爪先の部分にバウスラスターを配置し、踵の部分ギリギリまで左右3つずつの大型推進ポンプが装備されていた。踵には大型の主舵が左右合わせて4枚も見える。その足裏には何箇所もの小さな穴が開いていたが流石に倭自身も気付かなかった。

「デカイな。これが俺の簡易艤装か。」

横に居る山城よりも巨大な艤装と相俟って海に浮かぶその姿は正に要塞。その6割近くを占めるのはやはり巨大な61cm砲と多数の砲兵装だろう。見た目以上に重そうではあるものの、その艤装を難無く使いこなす様子を山城はただただ目で追い掛けていた。

 

 

「フフフ………山城ったら……あんなに倭さんと親しくしているなんて………羨ましいわぁ………ねぇ榛名さん?」

「へ?いえ、その、榛名は何をしてるのか気になっただけですし………」

(それが恋の始まりって何故気付かないのカシラ……それにしても私の恋路には敵が多過ぎるネ~………)

扶桑は山城と餓島作戦についての役割を打ち合わせようと山城を探していたが、倭と山城が艤装を展開している姿を榛名が倭達を覗き見していたのを見て扶桑も真似る形となり、そこへ金剛もやってきて同じ形になったわけである。

 倭は駆逐艦から非常に高い人気を持っている原因は倭が未だに駆逐艦寮に居る事だけではない。偶に気紛れで艦娘達の髪を梳かすサービスを実施しているからだ。客は主に駆逐艦だが、中には大和や長門、赤城、加賀、翔鶴と言った人物も混じっている事もある。

 事の発端は時雨が髪を梳いて欲しいとお願いした為。その為倭は暇潰しにはなるだろうと考え、何も考えずに自作の櫛で髪を梳かすサービスを時雨相手に始めたのだ。それが時雨なりの倭攻略である事に気が付かず、櫛梳きを聞きつけた白露や村雨、夕立経由で全艦娘に広まってしまい、押し掛ける艦娘達への対策として現在の様に偶に開く程度で妥協してもらう事になった。

 ただ、このサービスが気紛れ過ぎてしまい、最悪時雨経由の要請でしか倭が動かない事も難点であった。(本人曰く『どうしてこうなった……』)

「確か今日は倭が櫛梳きしてくれる日デシタネ………」

『………………』ダッ!

「Oh……置いて行かれてしまいマシタネ………でも負けないデース!!」ズダダダダッ!

この後、機関改装を受けた扶桑がぶっちぎりで倭の部屋の前に付いたが、後から来た2人共々、寮長不知火に注意を受けて正座させられる羽目になった。

 




 倭の艤装のデカさは半端じゃないです。勿論凄く、大きいです……… 現状の艦娘用簡易艤装の中で最大級を誇ってます。
 櫛梳きサービスは何となくで始めたに過ぎません(確信)が、これも時雨の倭攻略戦の一環に過ぎませんし宴会でやらかした事も、ね………

 誤字等ございましたら御指摘ください。ではまたノシ

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