恋雨~重装護衛艦『倭』~   作:CFA-44

22 / 54
 どうも倭の初期設定等の話を間違えてUSBから削除してしまったCFA‐44です………ウワァァァァァァァァ!!何で消しちまったんだよぉぉぉぉぉぉぉ!!

 取り乱してすいません(汗 何分高1の時から当作品の構想を稚拙な頭で練っていただけに愛着もありましてね………まぁ一字一句覚えてるんで急いで復活させますが。
 今回こそマトモな倭対深海棲艦との戦闘に入ります。そして急制動注意報発令。囮の役目を担わされた艦隊は………やっぱり不憫ですね。
 早く超兵器出せって言わないで!もう少し!もう少しお待ちくだせぇ!……ゑ?お前はシベリア送りだって?冗談じゃない!俺は寒いのが嫌いなんだぁ!は、離せぇぇぇぇ(ズルズル……



サマール沖に悪魔の咆哮は轟く

 

 

 

『くっ!コイツ等しつこいっ!!』

『瑞鶴!!』

『大丈夫よ翔鶴姉ぇ!っていい加減、墜ちなさいよ!!』

エンガノ岬に進出したトラック泊地機動艦隊は、圧倒的敵戦力の前に次第に追い詰められていた。護衛の戦艦娘達が壁役になり、重巡や軽巡、駆逐艦達による弾幕射撃を展開して空母部隊への被害を防ごうとしているが、被弾し戦線離脱を強いられる艦娘が続出し、対空弾幕が次第に薄れていき、その隙間を縫う様に侵入を果たした敵攻撃機が空母娘達の近くまで肉薄して来ていた。

 特に大柄な空母達は正規、軽空問わず攻撃の的にされ、既に加賀、蒼龍、飛龍、大鳳、雲龍、天城、祥鳳、飛鷹、千歳が大破状態に追い込まれ、翔鶴、葛城、隼鷹が中破、残った赤城、瑞鶴、瑞鳳、千代田も小破して無傷なのは軽空母龍驤のみとなっていた。

ボーキサイト不足によって航空機がまともに調達出来ず、200機にも満たない機数しか保有出来ないままでありながら何故無謀な出撃したのか?それは急進派の圧力が掛かった為であり、佐官の笹川では圧力を跳ね返し切れなかっただけの事だった。

『航空機は空母1隻あたり2~3割程度の搭載とし、随伴艦も持てる限りの戦力を投入する事。体当たり攻撃を敢行し1隻でも多くの敵艦を撃滅する覚悟で作戦に臨み、最後の1隻となるまで作戦を遂行し、皇国の為に奉公せよ。』

と正に全滅確定の攻撃指示を送ってきたのだ。勿論こんな馬鹿げた作戦指令に笹川や他の南方海域に駐留する提督諸氏は猛反対したが『佐官如きが指図するな。』と一蹴される結果に終わった。

勿論倭には知らされていないのだが、倭は常にトラック以外にも送られている本土からの通信を傍受し、悉く解読しているのでどんな内容の作戦指令かを把握していた。当然作戦発令に先立って通信量が日に日に増加している為、傍受・解読を徹底し続けてエンガノ岬沖での作戦内容を知った。

そして、瑞鶴達と上空の敵機達は、敵機動艦隊がどうなっているのか、帰るべき場所が残っているのかをまだ知らない。

 

 

 トラック機動艦隊を援護する為にエンガノ岬へと進出し始めた倭だが、その途上でサマール島沖に展開する深海棲艦の大規模機動艦隊を発見していた。既に太陽は中天に昇り、目視でも十分なはずだったが、幾ら倭が接近しても深海棲艦部隊に反応は無いがその理由は後で語るとしよう。

「さて、と。敵艦隊殲滅を開始する。主砲は上位級の深海棲艦を最優先に攻撃せよ。特に戦艦レ級改フラグシップが最優先だ。副砲、両用砲は重巡を含む護衛の艦隊を攻撃。」

「空母は如何します?」

「俺にも作戦がある。心配は要らん。」

「了解!」

準備を終えて通常徹甲弾を装填してある主砲が砲身を振り上げて指定された目標を照準に納める。全ての砲が敵艦を捉えた時、ようやく倭の存在に気付いたレ級改フラグシップが攻撃しようとするが、倭がこの海域に到着した時点で戦いの行く末は決まっていた。元々少ない艦娘達の機動艦隊を全滅させる為に展開していた上に数で圧倒している事を理由に見張りを怠りレーダーのみでの警戒に切り替えていた為であった。その上艦隊全艦が攻撃隊発艦の後に海上にて停止していた事、攻撃機隊に随伴させて艦娘及び漂流者達に対する機銃掃射を加えるべく直掩機までもが敵艦隊上空に居なかった事が倭に絶好の攻撃機会を与え、自らが破滅の道を辿る羽目になると誰が想像しただろうか。

「白昼堂々俺の前で停船しているなんて随分舐めた真似するじゃないか深海棲艦は。それを油断と言うんだが、人の言葉は理解出来ないんだっけか?」

「まぁ無理でしょうねー。艦長が艦長ですしー(棒読み)」

「お前等後で覚えとけよ……全砲門開け!攻撃開始!」

号令と共に轟音が重厚なサウンドを奏で、炎と煙と水柱が地獄絵図を生み出すかのように周囲を彩る。最優先目標に設定されていたレ級改フラグシップは6発の徹甲弾を浴びて瞬時に沈黙する。続けざまに放たれた副砲弾と両用砲弾がネ級、チ級、ホ級、ハ級、ニ級達に向けてシャワーの如く降り注ぎ、連続して命中弾を与えていく。

特に護衛に就いていた戦艦ル級、タ級達は反撃の暇も無く全艦が倭の放った超重力砲弾3発の生み出した引力の渦に引き込まれ、周辺に居た護衛達も巻き込んで文字通り“消滅”させられる。そして空母群は何とか生き残っていた駆逐ハ級、ニ級合わせて十数隻を護衛に引き連れて離脱を図ろうとしたが、機関停止状態から機関全速にする為には非常に時間が掛かる事を倭が予測していた為、副砲での攻撃を加える。

 当然ながら倭の副砲は20.3cm砲だが3連装65口径である。そこいらの重巡よりも各上の火力を持った砲を副砲としているのだから撃たれた側の空母ヲ級と軽空母ヌ級は堪ったものではなかった。命中する度に艦内に突入した砲弾が炸裂して火災を引き起こし、搭載してきた爆弾や魚雷に誘爆するヲ級達に対して今度は、敵戦艦部隊を無力化した61cm60口径3連装砲という悪魔が牙を向く。その中で何とか全速になって離脱していく空母ヲ級改フラグシップを倭が逃すはずも無かった。

「……あいつ、仲間を楯にしているな。砲術長、あの旗艦を逃すな。確実に息の根を止めろ。」

「了解でさ!」

何と蒼い光を纏ったヲ級が仲間であるはずの軽空母ヌ級を楯にする体勢を取っていたのだ。それも常に倭の射線上に居ながらどの他艦も確実に楯に出来る位置取りであったがそれは倭に対して有効な策とはならなかった。

 ヲ級改が味方を楯にして安堵した直後、凄まじい振動が自分を揺さぶられて甲板を見れば、飛行甲板が飴細工のように捲れあがり横腹に直径3m近い大穴が開いていた。楯にしていた軽空母ヌ級も同じ様に巨大な貫通孔が穿たれており、数瞬のうちに爆炎の中に消え、ヲ級自身も自分の現状を認識するや否や大量の黒い液体を口から吐き出して艦橋内で倒れ込むと同時に船体が二つにへし折れて大爆発を起こし、周囲に破片と炎を撒き散らして残骸が漂流するだけとなった。ほんの一瞬の出来事だったが、深海棲艦達の戦意を突き崩すには丁度良かった。

「艦長、右舷より雷跡16!」

「左舷にも雷跡16!本艦の針路を塞ぐ様に来ます!」

「艦長!如何しますか!?」

「………副長、バウスラスターと新型操舵装置は稼動しているのか?」

「え、ええ。一応“万が一”を想定しておりましたので………ってまさか艦長、“アレ”をやるので?」

魚雷接近にも物怖じせずに副長に問いかけた倭は行動を起こした。この世界で深海棲艦相手にまだやっていない事を実践する為に。

「やるしか無かろう?」ニヤッ

「……艦内が汚物塗れになっても知りませんぞ?」

「吐かない様、徹底してくれればそれで良い。」フンスッ

「解りました……急制動警報を発令!総員弾薬等の非固定物の固定を急ぎ、何かに掴まっていろ!…………それと絶対に吐くなよ!!」クワッ

 

 

 魚雷を放射状に撃って敵艦を挟撃する事はかつての米海軍に居たアーレイ・バークが実績を残した事で証明している。深海棲艦達もそれに倣うように魚雷を次々に発射し、巨大戦艦の針路を塞ぎ、更にかわされた時の為にもう1斉射していた。合計16本もの魚雷だ。当たれば巨大戦艦の行き足は止まるか鈍くなる。そこにもう1度魚雷を撃ち込めば撃沈も容易ではない、と。深海棲艦達は考えていた。

当初空母ヲ級改フラグシップ1隻、ヲ級エリート9隻、ヲ級通常型12隻、軽空母ヌ級15隻、戦艦レ級改フラグシップ1隻、ル級エリート3隻、ル級通常型4隻、タ級エリート4隻、タ級通常型4隻、重巡ネ級6隻、雷巡チ級6隻、軽巡ホ級16隻、駆逐ハ級後期型20隻、駆逐ニ級後期型30隻で構成されていた大規模艦隊は倭の襲撃によってヲ級通常型1、重巡ネ級1、雷巡チ級2、軽巡ホ級4、駆逐ハ級6、駆逐ニ級11と25隻程度の小規模艦隊まで戦力を削り取られ、その仇討ちとばかりに魚雷攻撃を仕掛けた。が、巨大戦艦は魚雷の網に突入しかけていながら舵を切り出した。それも大型戦艦特有の大きな旋回半径を伴って回避機動を行い始めたのだ。あまりにも遅く、鈍い旋回行動に疑問を持たざるを得ない。

‐何故あの戦艦は余裕を持った行動をしているのか。‐

と。

 その答えはすぐに訪れた。緩やかな旋回を続けていた巨大戦艦の艦首が突然跳ね飛ばされたかのように左へ振られたのだ。極小の旋回半径を以て魚雷網から抜け出した戦艦の砲がこちらを向いていると察知した直後、頭上で巨弾が炸裂し、吸い上げられるような感覚と共に激しい痛みが襲い掛かる。

 良く見れば頭上には例の黒い渦があり、周囲に居た同胞達が成す術無く引き込まれて逝く。ネ級は全てを察し、暗号文を打とうとしたがそれも叶わない。自分の腕も、足も激しい出血と痛みで既に動かなくなっていた上に、船体は分断され、艦上構造物全てが黒い渦に飲み込まれて行こうとしているのだ。

 そんな状態で何が出来るのかと思い、何時か同胞が自分達の仇を討ってくれる事を望み、呟いた。

「悪魔メ……」

呟き終えると同時にネ級の艦橋は部品単位に引き千切られ、跡形も無く消滅した。

 

 

 発射された魚雷32本全てを回避するという偉業を成し遂げた倭。それは言うまでも無く優秀な整備員達によってきっちり整備されてきた新型操舵装置とバウスラスターが合わさって出来た事だ。普段使わなければ倭といえど軽巡程度の旋回能力しか保持していないが、超兵器との戦闘に際して被弾を極力抑えるために解放軍上層部が“ダメ押しでも良いから”との理由で付けさせられ、実践で駆逐艦と同等の旋回能力を得られた。が、その圧倒的旋回性によって異常な遠心力が働き、頻繁にS字旋回などを繰り返したので艦内で吐き気を催した者や実際に吐いた佐官(全艦橋要員)が多発し、酷い所ではピンホール宜しく壁中に叩きつけられて大怪我をした者(全艦橋要員)も続出した為に出来る限り控えるようにしていたのも事実。

 今まで試さなかったのはこの回避機動を行うに値する艦隊が居なかったと言ってしまえばそれまでだが、元を正せば超兵器ヴィルベルヴィントの魚雷対策に使う方針でもあった為、致し方無いといえる。

「魚雷、全弾回避成功……ちょっと洗面所逝って来ます……」ウプッ

『我々も逝きます。』ウプッ

「この程度で吐くとはな。また今度全速航行しながら10連S字旋回と超新地旋回左右各10連で鍛え直しだ。」

『アンタ鬼か!』

「艦息、だろうな。というかさっさと行け。」

艦橋要員が全員退出し1人きりになった倭だが、本人が吐き気を催さないのは艦そのものであり、安定性抜群である事が最大の理由だが。

 敵機動艦隊に突撃を仕掛けて僅か20分足らずで全滅させたにも関わらず、倭が考えていたのは、

(想像以上に弱い艦隊だったな……まぁ超重力弾の使用を差し引いても……手応えの一つも無いとはどういう事なんだ?)

 彼自身、対超兵器用として生まれ、過剰なまでの戦闘力を活かすべく通常よりも強力な敵艦船数十隻を単艦で相手取る艦隊決戦や航空決戦に参加が当たり前であった事情が倭の普通の感覚を狂わせ、

(やはり俺にとって本当の敵は艦娘や深海棲艦ではなく超兵器のみ、か。)

そう認識させるほどの戦争狂に成長させていた。

 艦橋要員が戻って来るまでにエンガノ岬方面へ針路を変えながら戦闘突入前にエンガノ岬沖の赤い点を確認しながら全力航行を続ける倭だが、その後方に西村艦隊が付いて来ているとは流石に予測していなかった。

 

 

 倭が暴虐の限りを尽くし、激しい砲音が止んだサマール島沖に7隻の艦影があった。倭に遅れる事数時間。何とか出せる限りの速度でサマール島沖に進出した西村艦隊は未だ漂う深海棲艦の残骸や漏れ出した重油が燃える様子を見て、目の前の惨状を目の当たりにして笹川までもが絶句した。

 判明していた敵機動艦隊の悉くが残骸になっていた挙句、“悪魔”と称されたかの戦艦レ級改フラグシップが見るも無残な鉄屑になって漂流していたのだから当然の反応と言えるが、その大艦隊をたった1隻で全滅させた事に絶句していた。

(たった一人で、ここまでやっちゃったんだね。多分あの黒い渦を発生させる砲弾を使ったのかな。)

(嘘でしょ?!あれだけの艦隊をたった1隻で?!彼が居た世界ってどうなってるのよ?!)

(呆れた戦闘力ね………心配して損したわ。でもアイツに会った敵は私達より不幸ね……はぁ、本当に不幸だわ……)

浮き砲台にも成らぬほど破壊し尽くされたレ級改フラグシップの残骸。61cm砲弾によって既に艦橋と言うべき構造物も、搭載していたであろう砲雷兵装も、存在したであろう飛行甲板も破壊し尽くし、抉り飛ばされ、浮いているのが不思議なくらいだった。

 しかしそのまま放置しておくのは軍艦の魂が赦さなかった。笹川の指示も無く山城が主砲をレ級の残骸に向けて介錯しようとする。

「山城?」

「あのまま浮いていたら回収されるかも知れませんし曳航していこうにも私達じゃどうにもならない事くらい分かるでしょ?だったらここで沈めてやるのがせめてもの手向けよ。」

「……そうね。貴重な調査対象だろうけど運べないなら沈めてあげて山城。」

「了解。主砲、良く狙って……ってー!」

静まり返っていた海原に僅かな閃光と爆発が生まれ、レ級は沈んで行った。

(心底61cm砲の威力に震え上がらせられるわね……もしあれを装備している敵艦に出会ったら私達は……如何すれば良いの?)

山城の思いはそう遠くない未来、起こるであろう戦いに少しばかり影響を与える事になるが、この時の山城自身も分かるわけが無かった。

 

 

 右から爆撃機が来たと思えば左から雷撃機が襲ってくる。しかも大破した味方には機銃掃射を仕掛けて甚振っているのみで更なる死傷者数を上乗せしてきていた。そんな雷爆撃の雨の中で小破状態を保ったまま生き残り続けているのは赤城、瑞鶴。龍驤も無傷であった為、更に攻撃が集中し始める。龍驤は小柄な船体を活かして延々と雷爆撃を回避し続け、赤城、瑞鶴も伊勢、日向の回避戦術を採用していた為に殆ど被弾していなかった。が、それでも押し寄せ、集中してくる攻撃に次第に追い詰められて行った。

 既に航空機は無く、味方の被害も甚大。戦局は絶望的でここに敵機動艦隊が来た場合、間違いなく止めを刺されていたであろう。が、雲霞の如く群がる敵機に水平線の彼方からやってきた百以上の矢が白煙を吐きながら音速を超えた速度で突入し、狙った敵機を確実に射抜く。

「嘘でしょ……あれ全部当てるのってまさか………」

その姿は正に神の矢“サジタリウス”そのものであり現行の艦娘が装備できる代物では無ければ深海棲艦が配備したという情報も無い。その矢を放ち、保有する艦はこの世にただ1隻、『倭型重装護衛艦』のみ。

「艦長!方位157に新たな艦影!」

「っ!敵味方の判別は出来る!?」

「……あのマストは……我がトラック艦隊第2戦隊旗艦倭のものです!」

援軍が来た。その一言で艦内が戦闘中にも関わらず喜びの声に包まれる。が、瑞鶴が発した一言で艦内は更なる喧騒で騒がしくなった。

「単艦で?」

「そ、そのようですが……」

「急いで確認を取って!発光信号で良いわ!」

瑞鶴より確認の為に、

『発:第2艦隊所属瑞鶴 宛:第4艦隊第2戦隊所属倭 西村艦隊ハ何処ニ在ルヤ?貴艦ノミ生存カ?』

と、発光信号が送られ、倭からは、

『発:第4艦隊第2戦隊所属倭 宛:第2艦隊所属瑞鶴 西村艦隊全艦健在ナリ。無事スリガオ海峡ヲ突破シタ。』

との返信が帰ってくる。この間、瑞鶴は猛烈な雷爆撃に襲われていたが回避行動を取りつつ倭の傍まで移動しようとしていた。別に敵機を倭に向かわせようなどと馬鹿げた考えは無かったが、戦艦の持つ強力な対空砲火を知っている瑞鶴は倭の対空砲火による援護を少しだけ期待していた為、2艦は急速に接近しつつあった。

 瑞鶴の変進を見るや赤城や龍驤もそれに続いて変進し、大破を免れた一部の護衛艦も半数は瑞鶴達に続き、残った半数は対潜警戒をしながら機銃掃射を仕掛けてくる敵機に牽制射撃を行う。

 瑞鶴の意図を察した倭は全砲門を開いて対空戦闘を開始し、初撃の3式弾6発を精確に敵機の編隊へ叩き込んで9機乃至12機を撃墜。続く副砲、両用砲の三式弾の弾幕が更に広い範囲に展開され、赤城の上で攻撃態勢に入っていたドーントレス数機が弾幕に絡め取られて爆散する。遠方に居る敵機に対しても主砲による予測射撃で応戦し、機銃掃射を仕掛けるために接近してきた敵機には片舷5基の35mmCIWSと17基の40mm4連装高角機銃群が弾幕ならぬ弾線を張り巡らせて接近を拒む。

 警戒心を高めた敵艦載機は倭という未知の戦艦を攻撃対象に捉え、急降下を始めたが投下した爆弾が悉く外れる事に動揺していた。今度は雷撃隊が低空から魚雷を抱えて肉迫しようとするが、両用砲群からの強力な連射と三式弾の弾幕射撃は分厚く綿密なものであり、その後ろで待ち構える機銃群の猛攻を抜けようとした機は全て蜂の巣にされ、更に低空を飛んで行こうとした機は海中に没していった。

122ノットという今だかつて経験した事の無い速力を持つ戦艦に逆に翻弄され、見る見るうちに数を減らす僚機を目の当たりにしても尚攻撃態勢を崩さなかった先頭の機は回避行動を取らない戦艦にほぼ直角に降下を仕掛けた。

『倭!敵機直上!』

瑞鶴の悲鳴が聞こえる中、倭は左に舵を切った。そのまま急旋回を仕掛けて左90度方向に艦首を向け、

『五月蝿い、バカ、黙れ、七面鳥は後ろに引っ込んでろ!急速前進!衝撃態勢を取れ!』

「七面鳥ですって………後で覚えときなさいよ……」

掛け声と共に倭は急激な加速で8万トンの巨体を強引に前へ押し出して着弾地点からあっという間に離れる。

 砲弾も爆弾も魚雷すらも当てるのが困難な戦艦相手に少なくなった航空機では勝ち目など無きに等しい。

 

 

「敵機190撃墜確認。残敵機50!」

「敵機動艦隊が出し惜しみをしてくれて助かりましたな艦長?」

「ああ。艦隊全艦に告ぐ。今踏ん張り所だ。集中しろよ。だが、集中力を切らせば死ぬと思え。たかが50機など恐れる必要は無い。」

と言ってもその50機中40機が俺の周りに居るが投弾を終えて弾薬も燃料も空欠の爆撃機など怖くは無い。かと言って超重力砲弾で薙ぎ払える状況では無く、主砲以外の対空砲で応戦せざるを得ない。が、残った敵機を一斉に潰して制空権を無力化するには超重力砲弾が必要だと確信してはいたが倭は12門の巨砲から敢えて三式弾を放って敵機の数を更に減らす。

 倭の61cm砲は大和の46cm砲とは大きさだけでなくブラスト圧や爆風が桁違いである為、多少離れていても僚艦に被害を与えてしまう。その爆風被害の報告を衣笠から受けていた笹川は下手に艦隊に組み込めば戦闘開始早々に被害を受ける艦が出るのではないかと懸念し、通常とは異なる編成方式を迫られた。

 一時的にではあるが、時雨が直談判しに来た事もあって西村艦隊へ臨時編入する事で大本営急進派幹部達の追及をかわしていた。

『倭、私はまだ艦載機を残してるの。何とか発艦させるからその間だけでも良いから護衛を頼むわ!』

「了解した。だが、攻撃機よりも制空機を出してくれ。」

『え?まだ敵機動艦隊が……』

「実に申し訳無いが、敵機動艦隊は殲滅させてもらった。」

『はい?』

「詳しい事は後で話す。兎に角制空戦闘機を発艦させてくれ。」

『分かったわよ………戦闘機隊、全機発艦!』

時折瑞鶴の甲板に出てきた零式戦に攻撃しようとする敵機も居たが、あくまで素振りだけだった。

戦う力も帰る場所も無くした敵機など、発艦した零式戦の相手にもならずバタバタと落とされて行く。

 最後の1機が零式戦3機からの機銃攻撃を受けて空中で爆散した直後、倭の電探に接近してくる西村艦隊を捉えた。可笑しい。彼女達は今頃艦砲射撃でレイテ湾を火の海に変えているんじゃ無かったのか?

『いや~満潮がどうしても倭に付いて行きたいって言い出したもんだから。つい来ちゃった♪』

「つい、じゃないだろう。そもそもの話提督本人が戦場に来て戦死されたら不味いではないか。」

『テヘペロ♪許して頂戴♪』

「……………」(無言で61cm砲稼動)

『ま、おふざけはここまでにしておきましょう。レイテ湾攻撃は後続の第3艦隊に任せてきたから心配要らないわ。本当に聞きたい事はサマール島沖に展開していた深海大規模機動艦隊をたった1人で殲滅したのは本当かしら?』

「………20分だ。」

『20分?』

「20分で殲滅した。あれほど手応えが無いのには驚いた。色々試したい事があったのに手応えも歯応えも無いもんだから手早く殲滅する事にしたまでだ。」

誰も声が出せなかった。既存戦力では苦戦必須の戦力をただ1つの掠り傷も無く殲滅した。誰がこれを信じるのだろうか。少なくとも急進派連中は否定どころか倭を異端審問に掛ける輩が出るかもしれない。

「奴等の背後から不意打ちで襲撃したから当然の結果だ。尤も、電探に頼りっきりだったと言う事もあるがね。それと誰も気付かないのが不思議だ。」

『何が?』

「電探が俺に対して微弱な反応しか見せないだろう?」

確かにその通り、倭は敵味方の電探に対して極端に小さく反応するか、下手をすれば全く反応すしなくなる事も衣笠から聞いていた。

だが、倭の形状から何処にそんな隠密技術があるのかと言いたくなるが、今も電探には非常に微弱な反応しか発されていない。それもそのはず、倭を構成している装甲には、敵電探から発された電波を悉く吸収してしまう性質を持った特殊な金属素材が用いられており、その効果によって敵の電子的に監視網を抜ける事が出来るようになっていた。

当然ながら夜間戦も念頭に置かれていた為、昼間はレーダーに反応しないだけの戦艦に成り下がる、逆探知・磁気探知・熱探知を使われれば即座にバレる、ステルスなだけで目視可能、被弾し過ぎれば装甲が傷付き吸収能力が低減する、という幾つかの欠点もあった。

「奴等が俺に気付かなかったのは電探に頼って目視索敵を怠ったのが最大の敗因だ。だからこそ奇襲出来たし殲滅するには十分な動揺を与えられた。それとーーー」

ここまでは問題ではなかったのだが、倭が最後にとんでもない発言を残してしまった。

「ーーー“あの程度の戦力”に苦戦しているようではとてもじゃ無いがこれから先、“奴等との戦い”で生き残れないぞ。」

 

“これから先”“奴等との戦い”

 

それは、傍から聞けばただの罵声にしか聞こえない上、艦娘達からすれば自分達の力を見くびっているのかと言いたくなる発言だが、戦いに明け暮れる艦歴しか持たない倭から見れば既存の艦娘も深海棲艦も雑魚同然にしか見えなかったが為。事実、赤城達が良く言う『一航戦の誇り』という度に“一航戦程度の実力ではあの世界を生き残れる可能性はほぼゼロ”と内心で思っているのだから。

しかしその発言の裏には倭が笹川に渡したディスクの中に記録されているであろう超兵器達の存在が世に知れ渡り、艦娘達には想像も付かないほど過酷な戦場への扉が開かれようとしている事が隠されていた。

 

 

 




 はい、倭の思考回路はやっぱり変態(褒め言葉)ですね!倭の装甲ですが設定文にあるとおりのステルス性を持たせていますが、弱点は他にも(矛盾したい放題)あります。

 当初は装甲の構成素材に電波吸収機能なんて無かったんや……マグネタイト氏の感想欄にありました『アクティブステルス』から迷っていたステルス能力案『電波吸収能力持ち素材を建造材とする』側に採用が決定しました。本当にありがとうございます。
 電波吸収力は98%ですが、やっぱり磁気探知や画像誘導装置、熱探知機からは逃れられないんで特殊弾頭ミサイルVLSに磁気探知機でも乗っけてぶっぱしてみようと思いm(徹甲炸裂焼夷弾(装弾筒付翼安定徹甲弾(硬芯徹甲弾×各12発直撃

 超兵器の話が最後の方に出てたって?気にしちゃいかんよ。気にしたら負けさね。あ、誰も超高そk(←流れ波動砲直撃 

 急進派?そりゃ穏健派の久遠総長とは仲悪いっスよ?また次回作にでも出そうか……まぁ早い話出世欲旺盛かつ他人を見下す事が大好き連中ですから(ネタバレ)はい。大穴博打大好き派と思ってくれれば想像も容易いでしょう。

 倭の戦闘力からすればあの程度の敵戦力は屁でもありません。無論奇襲さえ出来れば、の話ですがね。流石に正面から行けば多少の損害は出るでしょうwwwえ?鋼鉄製のブルーゲイルちゃんは駆逐艦のクセに61cm砲12門の一斉射浴びても平然としてますから。基礎設計の時点で変態技術が使われたのでしょう。近いうちに新しい鋼鉄製軍艦を放り込もうかな……勿論自作へっぽこ艦ですが(爆笑)

 それではまた次回作でお会いしましょう!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。