恋雨~重装護衛艦『倭』~   作:CFA-44

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 今回は倭の初実戦(たった3隻の潜水艦だけど)であります。大火力で敵さんを叩くのって自分は好きです。
 そして倭、爆発しろwww俺も時雨を膝に乗せてキャッキャウフフしたいんじゃぁぁぁぁ!! (即死級の剛拳が飛んでくるが)風呂上りの時雨とも出くわしたいんじゃあ!!
 ゴホン…失礼。ちょっとだけ倭の過去のお話が最後の方に。そして時雨がどうしたいのかを書いておきました(伝ワルヨネ?)。


帰還と過去と時雨の意思

 

 演習後、すぐに事故報告書等の書類を提出する羽目になった倭は、疲れた身体を引き摺って書類を纏めつつそうすぐにバレないように内心、『面倒くさい……早く落ち着ける場所が欲しい……』等と思っていた。ただ、時雨にはバレバレな様で先程からジト目で見られていた。

「倭、書類サボっちゃダメだからね?」

「(バレてたか……)流石に提出期限が明日ともなればサボる意味が見当たらん。」

 倭が書くべき書類は数枚だけなのだが、如何せん技能発動で疲弊した身体に鞭打つようなものであった為、書くペースが最初より遥かに低下していた。

「始めて1時間程度でだらけてちゃダメだよ。」

「技能発動で疲弊した身体に鞭打つ軍上層部が悪い。」

「はいはい、言い訳はそこまでにして早く書類を済ませようね。折角僕も手伝ってるんだから。」

「では聞くが人の膝の上に乗る事の何処が手伝いなんだ?」

低下した大きな理由は時雨が俺の膝の上に乗っているといえば大体事情を分かってくれる奴が居ると信じたい。

「昨日散々僕を心配させたお詫びに何か1つ出来る範囲で言う事を聞くって言ってたじゃないか。あれは嘘だったのかい?」

「まあ良いが……あまり周りの目を気にしないのも良くないと思うが……あの集団から逃れるには1つの手段、か?」

「あはは……そうだね……折角2人きりになれたと思ったのに……」ゴニョゴニョ

「ん?何か言ったか?」

「へ?!な、何でも無いよ?!」アタフタ

「なら良い。ところでこの後折角だからこの辺を案内してくれないか?戦い以外に知っておきたい事が山ほどある。その一環としてで構わないが、どうだ?」

突然慌てた様子の時雨を特段気にする事無くサラリとトンデモ発言をやらかす倭に時雨は更に慌てさせられた。

「ぼ、僕で良いの?」

「今此処で嘘を言ってもどうにもならんだろうが。それに夕立と弥生は何処に行ったか分からん。」

(今ドアの外で行く宛無しの艦娘達を相手に善戦してるんだけど……まさか早速全員から倭にアタックしてくるなんて全く予想できなかった……)

 あの演習が終了した直後、ホテルに戻る倭へ金剛四姉妹から唐突に『早速ですが、私達の何れかと婚約していただきます。』といった感じの求愛を受けたものの『あ、そうなんだ。今から連れと書類仕事したいから帰ってね。』で受け流した倭に空母組から『艦載機を返せないなら今直ぐ私達の中から伴侶を選んでもらいます。』と言われて『伴侶とかまだ興味無い(本気)。今から艦載機補充の請求書をトラック泊地の笹川大佐宛で全員分申請しておくから(大嘘)部屋に戻りなよ。』とまたしても受け流し、重巡、軽巡からは『是非私達の夜戦(意味深)の訓練を!!』と誘われても尚、『夜戦は教本通りに示せないから諦めて。それに俺叩き上げだけど訓練らしい訓練てやった事無いし。そういう事で。』とサクサク受け流し、駆逐艦達から『遊んで!!』と騒がれていても『お菓子あげる。これ貰ったら子供は部屋に戻ってもう寝なさい。』と全て受け流していたが、ホテルにある部屋に戻るなり時雨と遭遇(久遠総長が4人で同室になる様に仕向けた)して書類仕事を手伝うと言い出したので、対応策として彼女達を心配させたお詫びに何か1つ出来る範囲で何でも言う事を聞くと言ってしまい、時雨の『僕を膝に座らせたまま書類仕事をやる事』を実行していた次第であった。

 他に、夕立も弥生も同じ事を考えていたが、時雨に先取りされたので別の事にしつつ時雨に嫉妬の眼差しを送った。そして夕立は『一緒にゴロゴロしたいっぽい!』、弥生は『音楽プレイヤーが欲しい。』で纏めていた。が、その願いは時雨と被らないだろうと予測していたのだが、惜しむらくは倭の予測を出来ていなかった事であった。この時、まさか倭が時雨と2人で出掛けるなど想定していなかった為、この話が聞こえた瞬間に部屋へ飛び込んで猛抗議を行ったのは致し方無い事だった。

 書類を出しに行く際も4人揃って行動していた為に目立ちまくり、倭は『まあ目立っても仕方ないな』と思っていた。書類を担当士官に渡した後、戻る道中に夜中でも営業していた喫茶店へ入り(勿論倭が全額負担)彼女達の食べたい物を注文して仲直りさせようとしていた。

 この時、時雨も『これで僕のルール違反が誤魔化せれば良いんだけどなぁ。』等と甘い考えをしていたが2人は御見通しだったようで、

「時雨、これでルール違反から逃げられると思ったら大間違いだからね?」

「そうです。弥生達を出し抜こうなんて抜け駆けはさせないです。」

「出し抜くなんてそんな事して無いんだけど……参ったなぁ………」

傍から見れば立派な修羅場であったが3人の会話を聞いていた倭は治めるどころか火に気化爆弾を投下した。

「時雨を責める必要は無くないか?」

「どうして?」

「いや、時雨は俺の頼みでこの辺の案内をしようとしていただけだぞ?」

「「それが問題なんです(っぽい)。」」

「俺の頼み事に時雨が了承した。それの何処がだ?」

いまいち納得と理解の追い付かない倭に弥生が分かる様に説明する。

「既に時雨さんは倭さんの膝の上に座るという1つだけの御願い事を達成しました。そして弥生達はまだ何も達成してません。それに幾ら倭さんのお願いとはいえここは弥生に譲るべきです。」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

それとなく自分有利になるような発言を夕立が見逃すはずが無い。3人の中で一番お預けを喰らっているのが夕立なのだから。

「弥生、それはちょっと聞き捨てならないよ。夕立だって倭さんと一緒にゴロゴロしたいのに。」

犬か君はと思ったが口に出すと雰囲気的に被害が拡大するので止めておこうとしたが、ふと思うところがあり、総長から手渡された粗品の財布と一緒に入っていたそれなりの(それでも10万前後)給金を確認する。

(妙に甘味ばかり食べてるが……『21:00以降は甘味を食べると太る。』なんて冗談めかして言えそうに無いな。と言うか明日の14:00に出港予定だし全員一緒で妥協してくれないかな?そもそもこの調子で食べ続けたら給金が明日までに底を尽きそうだな。どうするべきか………)

等と違う事を、明日の出港予定14:00までの予定をどう組もうか考えていた倭であった。

 最終的に夕立と弥生の御願い事を1つ増やす事で妥協して貰い、『音楽プレイヤーが欲しい。』が少々変更されて『3人分の音楽プレイヤーが欲しい。』へと変更された。

 

 

‐出港時刻14:00‐

 横須賀軍港には、軍令部重鎮達と多数の艦娘でごった返していた。それもこれも港に係留されている『倭』の見送りであった。

「では。これにて受領した書類と共にトラックへ向かいます。」

「うむ。では君任せた任務は忘れんでくれよ。」

「はっ!トラックに向かう輸送船団の護衛任務でありますね。」

トラック泊地へ戻るついでに補給物資を満載して帰る予定だったトラック泊地所属の輸送船団4隻を護衛して行ってくれと任務を受けていた。

「道中気を尽けたまえ。潜水艦が居るやも知れん。」

「その時は御退場願うまでですよ。それと総長、例の話ですが進捗度合いは如何でしょうか?」

「何、証拠も揃えてある。君がトラックに付く頃には朗報を届けられると思うぞ。」

「そうですか……それでは自分達はこれにて。」

「君達の無事と安航を祈る。」

時雨達は既に艦橋最上部で御願い事の成果でもある音楽プレイヤーを使って居る事だろう。まあ彼女達が納得してくれたのが幸いだった事にそっと胸を撫で下ろしたのはナイショだ。

 係留していたロープが解かれ、煙突から黒い排煙が噴出して8万トンの船体がゆっくりと動き出す。勿論俺がまだ隠し事をしている事に誰も気付いてはいない。当然この排煙も煙突も偽物であり、排煙はわざと排煙に似せた偽装煙であり、煙突自体は木製であり、上から金属に見える塗料を塗布した所謂ハリボテ。これは原子炉εの存在を隠す為で、通常機関を積んでいる事をある程度察してもらう為の処置でもある。

 家捜しされる事だけは防げたが、演習で隠しきれないまでに俺のスペックがバレてしまった。これでどんな過酷な作戦に引っ張られるのやら……

「総員、対空対水上対潜警戒を厳にせよ。これよりトラックへ戻る輸送船の護衛任務を行いつつ我々もトラック泊地へ“寄港”する。任務を成し遂げねば成功ではないからな。」

『了解!!』

 異変が起きたのはトラック泊地まであと2日と迫った頃だった。その時は夜間であり、半月が綺麗だった事を記録する。

「艦長、此方ソナー。敵潜らしきスクリュー音探知。」

「数は分かるか?位置が判明次第探照灯照射をかましてから主砲で撃退する。」

「了解。数は3。丁度ガトー級1隻が後方で浮上追跡中の模様。電探で捕捉可能と思われます。それから更に後方に潜航追尾中の敵バラオ級2隻。輸送船団に対して攻撃可能位置に付こうとしています。」

「(横須賀を出る時につけられたか)……直ちに輸送船団に敵潜発見の報を行え。その後、本艦の後部主砲2基で砲撃する。探照灯照射用意。」

『艦長、音紋解析完了。潜水中の敵潜水艦は1隻がレッドフィッシュ。もう1隻がブラックフィン。敵ガトー級はガードフィッシュ。以上です。』

(ブラックフィン……確か史実で時雨を撃沈した潜水艦だったな………だったら“躊躇う道理は要らんな”。)

何故かこの時倭は初めて遭遇する深海棲艦に対して何の恐怖も感じなかった。それは彼が無感情だから?それは違う。それでは彼が焦っているから?それも違う。答えは“無意識に怒りを感じて居た”のだ。その感情が恐怖などの感情を感じさせなかったと言える。

 何故怒りを感じたのか、それは本人が無意識に時雨の事を考え、時雨を守らなくてはならないと本能が信号を出していた為である。そしてーーー

 

 

『輸送船団、全速航行に切り替えた模様。敵潜3隻は尚も本隊を追跡中。』

「探照灯照射準備良し!」

 

 

彼はーーー

 

 

「第3、第4主砲通常榴弾装填!発砲許可何時でもどうぞ!」

「艦長、攻撃態勢完了しました。探照灯照射します!」

「目標、敵ガトー級!あっ!敵潜潜航して逃げようとしています!」

 

 

探照灯に照らされて逃げようとする敵に躊躇う事無くーーー

 

 

 

 

 

「撃て。」

 

 

 

 

 

主砲弾を叩き込んだ。

 

 潜航して逃げようとしたガードフィッシュは間も無く飛来した61cmという巨大な榴弾6発が着水し、爆雷の様に周辺の海中で炸裂。幾ら水圧に耐えられる潜水艦と言えど発生した衝撃と爆圧に耐えられるわけが無く、あっという間にガードフィッシュの船殻が押し潰され、大量の浸水によって深海へと永遠に消えて行った。

 残ったバラオ級のレッドフィッシュ、ブラックフィンの2隻は急いで離脱していく。が、倭という死神がそう易々と逃がす事などしなかった。

 第3主砲の後部艦橋側にあったハッチが既に8つ解放されていた。『対潜ミサイルVLS』の内部に納められ、改修を受けた新型ミサイルのブースターに点火され、8発の対潜ミサイルが発射された。2発はレッドフィッシュ、残りの6発を全てブラックフィンに叩き込むと言う何とも滅茶苦茶な攻撃。

 発射後すぐに海中目掛けて突入した対潜ミサイルは自ら探知音波を放ちながら2隻に迫り、レッドフィッシュが最初に2発被弾。そのまま浮上する事も出来ず海中に消えていく。

探知される事に気付いたブラックフィンはすぐにモーターを停止してやり過ごそうとした。その目論み通りに対潜ミサイルは目標手前で迷走を始めた。

しかし、倭は的確にブラックフィンの位置を捉えていた。それは倭が元居た世界で幾多もの改修と整備兵の情熱の篭った整備を受けてきた音響探知機αとベテランのソナー手からはモーターを停止したブラックフィンといえど逃れる事は出来なかった。

そう、ブラックフィンは61cm砲弾が水中で炸裂した際の破片が幾つか船体に突き刺さっていた。そして倭の頭脳でもある電算機が予測したモーター停止後のブラックフィンの未来位置予測を基に、倭自ら6発の対潜ミサイルを誘導していた。

 倭がミサイル越しに感じたのは探知音波がブラックフィンに突き刺さった破片に跳ね返った僅かな、非常に僅かな反射音波を感じてそこへ魚雷の向きを揃え、遂に捕捉した。3発だけを真後ろから進ませ、2発を両側面側から。残りの1発は真上から突入。その4方向からの音波探知は確実に、精確にブラックフィンを捕捉。最早逃れる事も出来ずに3発が船体後部に直撃してエンジンやスクリューシャフトを吹き飛ばす。続いて真上からの1発が司令塔そのものを瞬時に粉砕。最後の2発が左右から船体に突き刺さって水密区画を突き破って炸裂した。そのうちの1発が搭載されていた魚雷に誘爆したのか艦首付近が大爆発を起こしてブラックフィンは暗い夜の海の底へ沈んでいった。

「敵潜の全滅を確認しました。周辺海域もクリア。」

「輸送船団と離れたか?」

「いえ、先程巡航速度に切り替えて我々を待っている様です。」

「やれやれ、そのまま全速航行で進んでいてくれてもすぐに追い付けたんだがな。」

倭の言うとおり、倭が敵潜を相手取っている間に少しでもトラックへ進んでいても倭の巡航速度であっという間に追い付ける距離にしかならなかっただろう。

しかし輸送船団が巡航速度で倭を待っていたのはトラックまでの護衛は倭1隻しかいない為、余計な手間とは知りつつも輸送船団は倭に起こりうるであろう最悪の事態を懸念して何時でも迅速に対応出来るようにしていたのだ。

 一応輸送船にも自衛用火器は幾らか搭載されてはいたがそれでも豆鉄砲に等しい為、精々牽制程度にしか使えない。その為、割と護衛に就いていた倭の火力をアテにしていたのであった。その後は何も無く倭と輸送船団の一行は無事にトラック泊地へ辿り着いた。

 

 

 その夜、輸送船団と共に戻ってきた倭が執務室に入るなり有紀子に書類を渡した。

「その封筒にいろんな書類が入っているので目を通しておいて欲しい。確か演習の結果表も入っているはずだ。」

「成程……1つは……あぁそういう事ね…君の正式着任辞令書、か。読んでもいいかしら?」

「ああ。」

「読むわね。『本日付を以って倭型重装護衛艦を大日本帝国海軍籍に組み込む。尚、貴官の配属先はトラック泊地第2艦隊とする。貴官の奮励努力に期待する。』だそうよ。おめでとう倭。そしてようこそトラック泊地へ。」

「此方こそよろしく頼む。右も左もまだ分からないがその時は手助けをお願いする。」

この日、トラック泊地に異世界からやってきた巨大戦艦が配属される事になった。

「そうそう。第2艦隊といってもまだ編成組んでないから暫らくは……潜水艦隊の護衛を明日からお願いするわ。」

「潜水艦隊……」

「あ………嫌だったかしら?」

急に顔色が悪くなった倭に気付いた有紀子。

「いや、そうじゃなくて……味方を護衛するなら良いんだが……過去に潜水艦からリンチを喰らってな。それがちょっと、な。」

「リンチ?どの程度で?」

ますます青くなった倭の言うリンチを仕掛けた潜水艦に興味が湧いた有紀子だが、とんでもない相手と戦っていたのだと感じる羽目になる。

「信じられんと思うが……超音速魚雷数発喰らって前部原子炉近辺まで艦首がもぎ取られたレベル、と言えば通じるか?」

「」

信じろと言われても不可能に等しかった。8万5千トンもの戦艦の艦首をたった数発でもぎ取る魚雷に対してではあったけど。

「と、兎に角第2艦隊は私が何とか編成を考えておくからそれまで潜水艦の子達とその補給艦の護衛をお願いね。あ、後貴方の部屋だけど空きが駆逐艦寮にしかなくて……狭いけど良いかしら?」

「狭いも広いも俺には関係ないさ。少し、その部屋に戻って仮眠を取らせてもらうが良いか?」

「駆逐艦寮の前に不知火が居ると思うから案内してもらってね。」

「分かった。」

疲れを感じさせないまま執務室を出て行った倭。そして手元に残された書類に目を通していくと、演習の結果表が確かにあった。が、それ見て固まる以外に何が出来るだろう?これ読んでいる読者様は如何に思うだろうか。

 

 

‐演習結果‐

笹川トラック艦隊

・第1艦隊:戦艦倭

損害:無し

 

福本横須賀艦隊

○大破(船体喪失)

・第1艦隊 戦艦『大和』『武蔵』『長門』『陸奥』 空母『赤城』『加賀』

・第2艦隊 戦艦『金剛』『比叡』『榛名』『霧島』 空母『蒼龍』『飛龍』

・第3艦隊 航戦『伊勢』『日向』 空母『翔鶴』『瑞鶴』 雷巡『北上』『大井』

・第4艦隊 空母『大鳳』『雲龍』 重巡『高雄』『愛宕』『摩耶』『鳥海』

・第5艦隊 空母『天城』『葛城』 軽巡『大淀』 駆逐『陽炎』『不知火』『黒潮』

・第6艦隊 軽空『龍鳳』 軽巡『神通』 駆逐『朝潮』『島風』『天津風』

○大破

・第6艦隊 駆逐『雪風』

損害:36隻中35隻が船体喪失により轟沈判定。雪風のみ大破判定。

 

以上の結果から、トラック艦隊の勝利とする。

 

 

と、書かれているのだから尚の事。圧倒的というレベル、なのかしら?寧ろ一方的な(演習での)虐殺に近いんじゃ……まぁ勝てたから良いけど・・・・・・・・・

 

 

 

 

‐駆逐艦寮前‐

「お待ちしていました。私は陽炎型2番艦不知火と申します。これから御指導、御鞭撻宜しくお願いします。」ペコリ

「(特にする事無い気もするけど)倭型重装護衛艦倭だ。宜しく。」

「では御部屋に案内しますので迷わないで下さい。もう荷物も憲兵隊の宿舎から移してありますので。あ、それと……」

「ん?」

「くれぐれも如何わしい気分になる事が無い様にお願いします。」

如何わしい気分て……誰がなるんだ?そもそもこの前のホテルでの一件からして俺の身の方が心配なんだが気のせいか?

「そもそもここは俺の艦内より広いから迷子になる事は無いだろ。それに如何わしい気分になる前に俺の身が心配だ。」

「気にしてはいけません。」フフフ……

「……俺の部屋はあの一番奥の部屋か。」

「そうです。一応内装等に違和感がございましたら寮長も兼ねているこの不知火にご相談を。では失礼します。」

「それは見てから判断しよう。………………誰か入ってて開けた瞬間に殴られる。何て事は・・・無いな。む?」ガチャ

「へ……や、倭?!」

感想を一言。俺の予想はどうして当たってしまうんだろうか。

「や、倭の……倭のえっちぃぃぃぃぃぃ!!」バキィッ!!

俺の生涯でこの瞬間から目を覚ますまでの間だけが記憶から抜け落ちている。ただ、ドアを開けて目の前に風呂上りの時雨が居て、その僅か5秒で非常に強烈なグーパンチが飛んできた事だけは鮮明に覚えている。

 

 

「………………」

「………………」ジトー

現在、俺は時雨に白い目で見られている。敢えて言うと俺に非は無い筈なんだが、その筈なんだが……

「倭のエッチ……」

「何故だ……君が此処の部屋に居る事は本来あり得ないんだぞ。」

「……役得とか思わないんだね。」ボソッ

「聞こえてるぞ。まず言うが他人の裸体を見てどうしろと。俺に襲う気は無いからな?」

「分かってるよ……ホテルでやったのもワザとだし……夕立も乗り気だったし……」

(今ワザとって言った……やはり夕立は乗り気だったか……)

時雨からの爆弾発言に、あの時の弥生は巻き込まれたのかと理解する。そもそもの話、勝手に部屋に上がって風呂を使う奴が悪いと俺は思う。

「今から少し仮眠を取るが自室に戻ったらどうだ?君も同室の者が居るだろう?」

「もう良いよ倭のヘタレ……」

何やら盛大に溜息をついて部屋を出て行った。ドアが閉まる直前、『バカ…』と言って時雨は白露型の部屋に戻って行った。

(何故俺がバカと言われねばならないんだ?)

全く以って理由が分からなかったが、取り敢えず持ち込まれていた布団を敷いてやる事を済ませてから床に就いた。明日から潜水艦隊の護衛任務に就かなくてはならないし特技の発動の影響は1週間で抜けきるわけじゃないからな。

 

 翌朝、目が覚めると駆逐艦寮は静かだった。それもその筈、現在時刻は04:30だからだ。こんな時間から起きる物好きはそうそう居ないだろう。だが、目覚めてしまった以上、倭は部屋を出てすぐの場所にある手洗い場に向かう。朝から顔を洗って歯を磨いてまた部屋に戻って着替える。そして部屋を出ようと再び扉を開けると、

「あ」

「ん?」

朝潮型3番艦駆逐艦娘『満潮』が立っていた。

「こんな朝早くからどうした?起床時間まで後1時間半はあるぞ。」

「それはこっちの台詞よ。…アンタこそどうしたのよ。」

妙に刺々しいがこれがこの少女の素だとは思えなかった。何故かって?勘、としか言えない。が、似たようなモノは時雨を含めて数人程居る事が感じられたのも事実だ。

「艦内の点検でもしようと思っただけだ。今日の任務に支障が出たら困るからな。付いて来るかい?」

「フン……少しだけ付き合ってあげるわ。」

「そうかい。」

駆逐艦寮を出て軍港へと向かう。そこには何時も通りの姿で存在する浮かべる鋼鉄の要塞が他より抜きん出て登り始める朝日に身を包もうとしていた。

 艦内に入って重要区画だけでも点検を済ませて次の点検箇所に向かうが、その重要点検箇所だけでも軽く50箇所もあり、もっと細かくすればざっと200はくだらない点検箇所があるが今回は後ろに満潮が居るので余り時間を掛けられない。その為、大体目を通しておきたい箇所だけを回っていたが、それだけでも30箇所になった。

 大まかな点検を終えてから艦長室に入ろうとすると、後ろから急に服を引っ張られた。満潮が軽く引っ張った事は分かったが、何だか暗い表情だった。

「アンタは、私が付いて来ても何も聞かないのね……」

「…………別に困る事も無い。ただそれだけだ。」

「……そう。」

心なしか表情に明るみが戻ったのは気のせいでは無い様だ。そのまま艦長室に入ると、左右の壁と入り口付近の壁に大きな軍艦旗が飾られているのにはさしもの満潮も驚きを隠せなかった。

「な、何で軍艦旗が飾ってあるのよ…それも4枚も。」

「…………俺の犯した罪を永遠に忘れない様に、だ。」

「アンタの罪?」

この時、満潮は倭の罪が敵に対しての同情か何かだと思っていたがそれは大きな間違いである事をすぐに気付かされる。

「手短に言えば俺が“この手で俺の弟達の未来を断ち切った罪”だ。それだけは忘れてはならない。」

突然の事で何も言えない。いや、何と言えば良いのか言葉が浮かばなかった。

「…………は?」

辛うじて出た言葉はその一言だけだった。信じられるわけが無い。このガタイの良い優男が4隻もの同型艦を沈めた事を。だが、4枚の軍艦旗はその証拠であり、疑い様の無い事実が目の前にある事を突き付けられた。その4枚の軍艦旗は何れもあちらこちらが点々と赤黒く染まっていたのだから……

 満潮を連れて艦長室を出た後、鎮守府の食堂まで向かうが、道中放心したか心此処に在らずといった感じになった満潮だった。

 

 

その日、非番を言い渡されていた時雨はトラック泊地にある小さな町に居た。そこには小さいながらも小学校が設立されていた為、疎らでありながらも子供達が運動場で戯れていた。

 そしてそんな光景を一望できる展望台で風に吹かれ、軍港に居る『倭』を眺めていた。到る所に海鳥が集まって白くなった倭は離れていても目立って見えた。そんな風景を眺めていた時雨の所へ1人の少年がやってきた。彼は時雨が此処へ着任した当初からこの山の麓にある小学校に通っている生徒の1人でもあった。

 そんな彼は、時雨に一目惚れしていたが、言うに言い出せなかった。一般市民である少年と軍属で艦娘の時雨との間にはある壁が立ちはだかっていた。軍属ゆえに何時死んでもおかしく無い艦娘と守られて生き延びる一般人。その差が如何ともし難く、少年には歯痒かった。

 だが、隙を見て少年は時雨に何時会えるかを聞き出してこの展望台に来て欲しいと頼んでいた。今日こそ想いを告げる時だと意識すれば尚彼の頬に熱を持たせた。

「今日此処に呼んでくれてありがとう。此処なら誰の声も気にしないで済むね。」

「……………」

「ふふっどうしたんだい?君から僕を誘ったんじゃないか。此処に来てくれって。何か言いたい事があるんだろう?」

普段と変わらぬ様子で笑みを浮かべている時雨だが、少年の目には少し妖艶に見えた。だが此処で引くわけには行かないと自らを奮い立たせて一気に想いを告げる。

「お、俺さ、お前の事が…好きなんだ!初めて見た時からずっとだ!」

「…………」

「…………」

暫しの間、沈黙が続き、心地良く風が吹き抜けていく。

「返事は出来るなら早めが良いんだ。その方が俺も割り切れるだろうし………」

赤くなったままの少年に対して時雨は何一つ表情を変えなかった。だが、彼女が少年に言える答えはただ1つしかなかった。

「そう、か。君は僕が……でもその気持ちには答えられないんだ。ごめんね。僕には、大事な人が居るんだ。」

「………それって艦隊の皆の事か?」

「それもあるよ。でも、僕の命の恩人の傍にどうしても居たいんだ。他の誰に何と言われても。どんな手を使ってでもあの人の傍に居たい。言われたんだ“■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■”って。だから君の想いには答えられない。………そろそろ戻るね。僕も買い物だけしたら他にやりたい事があるから………それじゃあね。」

時雨は少年の気持ちに答えてあげられない事は確かに残念だと感じていた。が、それでも可哀想などと思わなかった。それがただの自己満足の慰めでしかないと知っているから。だからそれ以上何も言わずに展望台を後にした。

 

 

(やっぱ、ダメだったかぁ………)

少年は時雨の視線の先にある存在を知っていた。つい2週間ほど前にトラック泊地にやってきた超最新鋭戦艦。その存在に視線が向けられていた事、その戦艦が艦娘ではなく、艦息であるという事も井戸端会議から聞こえてくる事である程度知っていた。

 展望台に備え付けられた屋根付きベンチに1人座り込んだ少年の頬から地面に零れた一筋の水は、風に吹かれて少し離れた所に落ちた。まるで想いを告げて断られた今の自分の様に思えて仕方なかった。

 時雨の言ったとおり、この暑い時期に訪れる人が少ない展望台に1人の少年の嗚咽が響き、残暑と共に風に溶けていった。

 




 潜水艦が何故嫌いなのか…お分かりになったでしょうか
 時雨が倭に何と言われたのかは各自で御想像くださいませwwwそして倭は爆発し
倭「消えろ馬鹿作者」←61cm60口径3連装砲×4

 イテテ・・・・・・そして勝手ながらマグネタイト様のお書きになっている小説のホタカと我が家の倭の性能を比較して思いました。

 「あれ?倭とホタカがガチバトルやらかしたとして小説上のスペックでも倭に勝ち目無くね?」

と。
幾ら倭でもトライデントとハープーンの飽和攻撃からは逃げられねェ…… それに加えてホタカの主砲が鬼すぐるww 磁気火薬複合方式の主砲相手にただの炸薬方式の61cm砲じゃ弾速から考えてまず対抗できんww 出来ても下手な鉄砲数撃ちゃ当たる程度しか能が無い……… 超重力砲弾?そんなの有効なのは最初だけだヨ!最終的に攻略法を見つけられて負けちまう!
 等と変な妄想が炸裂しましてw すんませんマグネタイト様(汗 

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