ラブライブ! ~寡黙な男子高校生とµ’sの日常~ 作:孤独なcat
ファーストライブ当日、オレたちは新たに心強い味方を得ることになった。
同じクラスのヒデコ、フミカ、ミカの通称ヒフミトリオである。彼女らは放送委員の経験もあって音響とかライトの証明に関してはそれなりの知識がある。オレらには全く無かったので非常に助かる。
新入生歓迎会が終わった後、オレとヒフミトリオはライト・音響の調整を行い、リハーサルを行う。それにしてもヒフミトリオは非常に有能である。いや、マジで。音響スタジオにある変な機械とかスイッチとか使いこなしてるから・・・。こりゃ、学校内でライブやる時はヒフミトリオに手伝い頼むしかないな・・・。
高坂たちが着替えに行ってる間、オレはチラシを配っていた。やはりつらいわ・・・。オレみたいな人相悪いやつからチラシ受け取りたくないよね・・・って自虐的になってたらヒフミトリオが近づいてきた。
ヒデコ「達川くーん」
達川「おお、機械の調整とか終わったのか?」
ミカ「うん。さっき終わったところだよー」
達川「そっか、それにしても今日はマジで助かった。ありがとう。」
フミカ「いいよいいよー、だってうちらだって廃校になるの嫌だし。」
ミカ「廃校を阻止しようと頑張ってんだしうちらも応援したいからさ。」
ヒデコ「それよりもー、穂乃果のとこに行ってあげたら?」
達川「何故に?」
ミカ「だって本番前だしたぶん緊張してるからさ、行ったほうがいいってー」
フミカ「チラシ配りならうちらでやっておくから♪」
達川「すまんな、恩に着る」
ヒフミトリオに感謝しつつ高坂たちがいる部屋に行こうとしたら西島に出会った。
西島「おおー達川、いよいよ本番だな。」
達川「ああ。来てくれてありがとう。とりあえず観客1人は確定したわ。」
西島「まあどうせ暇だったし。それに高坂たちがアイドルやるんだから気にならないわけないじゃん☆」
達川「そうか。それにしても観客どのくらい来るかな・・・。」
西島「・・・」
西島が急に黙りだした。
いつもニヤニヤしてるのに今は何故か分からんが真剣な表情であった。
西島「なあ・・・、達川」
達川「?」
西島「・・・このライブの結果がどうなろうと、真摯に受け止めろよ・・・。」
達川「・・・」
西島「じゃあ、オレは講堂のどっかに座ってるからー。」
そう言って西島は講堂のほうへ去って行った。
『結果がどうなろうと?』どういうことだ・・・。オレは高坂たちがいる部屋へ歩きながら考えた。ライブの結果が良いか悪いかって何で決まるかっていったらダンスの精度とか歌とか・・・表情とか・・・。いや、もっと誰にでもわかりやすい根本的な指標があるはず・・・。
オレは分かってしまった。西島の言葉が意味することが。
観客だ。観客が多ければ成功とも言えるが、観客がいなかったらいくらダンス・歌が上手だろうと一般的には失敗として決めつけられてしまう。もし観客が西島以外来なかったら・・・高坂たちがどれだけ悲しむだろうか・・・。どう言葉をかけるべきか・・・
そう考えてると高坂たちのいる部屋に着いてしまった。
達川「入っていいか?」
穂乃果「いいよー」
オレは部屋に入る。
3人とも着替え終わっていた。高坂は赤色、南は緑色、園田は青色の衣装。それぞれよく似合っている。
達川「3人ともなかなか似合ってるじゃん。」
穂乃果「わーい、ありがとう!」
ことり「ありいがと♪」
海未「あ、あ、あ、ありがとう・・・ごさいます」
園田どんだけ緊張してるんだよ・・・。いや、衣装が恥ずかしいだけのようである。
達川「いよいよ本番だな。」
穂乃果「うん!楽しみだよ!」
達川「じゃあ、オレはもう講堂に行くわ。」
3人「「「うん(はい)」」」
オレは講堂に入ったが・・・・・・・見たくはない現実を見てしまう。
西島以外客が誰もいないのである。
この日までに一生懸命に練習を重ね、チラシ配りで宣伝したにも関わらず、この惨状。
受け入れたくない。今まで努力したのにその努力が報われないという今の状況を。
『アイドルは努力が実らないことのほうが多い』
アイドル結成前に西島が言っていたこの言葉が思い出される。本当に今の状況を言うんだとオレは感じた。
しかし、ライブは絶対にやる。いや、やらせる。確かに観客は少ない。しかし、いないってことではない。なんせ西島がいるしオレがいる。この2人がµ’sの記念すべきファーストライブの観客だ。
そう思いながらオレは西島の隣に座る。
達川「西島の言ってたことがようやく分かったわ。」
西島「そうか・・・」
達川「でもライブはやるぞ。」
西島「当然だ。そのためにオレはここにいるんだぜ☆」
達川「フッ・・・しかし、オレは大丈夫なんだが・・・高坂たちが不安だ。」
西島「んー?何故?」
達川「この状況を見て・・・悲しむかもしれないだろ?」
西島「その時はさ、お前が頑張ってフォローすればいい話や。」
達川「そうだな・・・。」
いよいよブザーがなる。期待と不安が混ざった複雑な気持ちである。
果たして高坂たちはどんな反応するのか・・・反応次第では何か話しかけないとな・・・
幕が上がって高坂、南、園田が登場する。
そして・・・・・・彼女たちは現実というものを思い知ったようだ。
彼女たちの予想以上に観客がいなさすぎて呆然としているようだった・・・。もはや見ていられない状況だった。
そしてライブをやるべきか躊躇しているようにも見えた。
さっきまでチラシ配りをやってくれていたヒデコが申し訳なさそうにやって来た。
ヒデコ「ごめん・・・頑張ったんだけど・・・」
オレが彼女に返す言葉は決まっている。
達川「謝る必要なんて欠片もない。・・・むしろギリギリまでチラシ配りをしてくれたことに感謝している。是非、今から観客としてライブを見てくれないか?」
ヒデコ「うん・・・ありがとう。」
達川「フミカとミカにも言っておいてくれ・・・」
少しでも明るくなってもらうよう感謝の気持ちを言ったのだが、彼女の表情はまだ暗い。
勿論、オレのやることは変わらない・・・!
達川「高坂、南、園田・・・何やってんだ?ライブやるぞ。」
穂乃果「達川君・・・!」
達川「まあ・・・あんたらが思ってた数の観客は来なかった。でも・・・今ここにオレと西島、そしてヒデコとフミカとミカの5人の観客がいる。µ’sのライブを心待ちにしてくれていた人が5人もいるんだ!その人たちのためにライブをする義務がある!今までやってきたことを無駄にしないためにもここでライブをやるんだ!」
ことうみ「「達川君(さん)・・・」」
達川「厳しいアイドルオタクで知られている西島は装飾のデザインを本気で褒めたし、歌詞だって作曲の際に大いに役に立った。そしてヒデコ、フミカ、ミカはライブの環境を整えてくれた・・・これはな・・・オレたちにすーっごく期待してくれているからだ!その期待に応えるためにもライブをしなければいけないんだ!」
西島「だから厳しくないって・・・」
3人「「「・・・!」」」
オレが必死に彼女たちを説得してるときに講堂の外から誰かが走る音が聞こえてきた・・・そして中に入ってきた。
1年の小泉さんだった。
花陽「あ、あれ・・・ライブは・・・?」
西島「おっ!?小泉さんだー☆」
花陽「に、西島さん!?」
達川「小泉さん、来てくれてありがとう。今から始まるとこやから席に座ってくれないか?」
花陽「は・・・・はい!」
達川「よし・・・これで観客は6人だ!」
オレは高坂たちをジッと見つめる。ライブをやるべきだって思いながら・・・
そして高坂は・・・・腹を割ったようだ。
穂乃果「・・・やろう!・・・全力で歌おう!」
海未「穂乃果・・・」
穂乃果「だって・・・そのために今日まで頑張ってきたんだから!」
ことうみ「「・・・!」」
オレは思わず笑みを浮かべる。
もはやこれが高坂たちの今の意思だ。彼女たちは準備を始める。オレは整ったのを確認してから音響スタジオにいるミカにスタートの合図を送った。
すると、照明が落ちて音楽が鳴り始めた。
曲は・・・・『START:DASH!!』µ’sの始まりの曲だ。
曲が始めるとともにダンスが始まる。
素人目線ではあるがなかなか良い出来だと思う。約1か月でよくここまで仕上がったものだと思う。
隣に座っている西島は・・・かなり真剣な目つきで見ている。アイドルオタクって光る棒みたいなものを持って振り回しているイメージだったんだけどな・・・。
途中、何人か講堂の中に入って来るのに気付いた。ライブに集中していたので誰が入ってきていたのか分からないが、観客が増えたことには変わりない。
ライブが終わった。
観客は大きな拍手をしてくれた。西島はかなり感動したのかけっこう大きな拍手だ。小泉さんもとても感動したのか目がとても輝いている。いつの間にか星空さんも来ていたみたいで、彼女も大きな拍手をしてくれた。後方には・・・西木野さんもいる。
すると、後方からカツン、カツン・・・と足音を立ててこちらに近づいてくる人がいた。
生徒会長である。全く、次は何のようだか・・・。
絵里「どうするつもり?」
ははーん・・・。それか。まあ、オレが応えるまでもない。高坂が全部応えてくれるだろう。たぶん今の高坂ならあの生徒会長に屈することもないし、オレよりも説得力があるはずだ。
穂乃果「続けます!」
絵里「何故?これ以上続けても意味があるようには思えないけど」
穂乃果「やりたいからです!」
絵里「・・・」
穂乃果「私、もっと歌いたいもっと踊りたいって思いました。きっとことりちゃんも海未ちゃんも・・・。こんな気持ち初めてなんです。やって良かったって本気で思えたんです!
このまま誰も見向きもしてくれないかもしれない。応援なんて全然もらえないかもしれない。でも、一生懸命頑張って、私たちがとにかく頑張って届けたい。今、私たちがここにいるこの思いを!」
なかなか良いことを言った。上から目線ではあるがオレはそう思った。
そして次の一言でオレは一層気持ちが引き締まることになった。
穂乃果「いつか、いつか私達は必ずここを満員にしてみせます!!」
すると、生徒会長は何も言わずに去って行った。
たぶん、これが実現されるのはまだあとだろう。しかし、実現できる気がする。そのためにも今後もっとµ’sのサポートをしていかなければならない。
穂乃果「達川君、ありがとう!」
達川「別にオレは・・・何もしてないし・・・」
西島「またまたー、かっこよかったぞー☆」
達川「うるせえ///」
オレは西島の頭をチョップする
海未「でも、あの時達川さんの言葉のおかげでライブができました。本当に感謝してます。」
ことり「うん、ありがとね♪達川君!」
達川「///」
オレはフードを深く被る。視界が見えなくなるくらいに。
達川「さてと、後片付け済ませて帰るぞ。今日は練習なしだ。」
3人「「「うん(はい)!」」」
今回は完敗であった。
でも再びスタートすることとなった。
これから今後のことを考えねばならない。
そう思いながらオレは片づけをするのであった。
いかがでしたか?
次回は1年生加入編になりますが、もしかしたらどこかでオリジナルの話を入れるかもしれません。