ラブライブ! ~寡黙な男子高校生とµ’sの日常~ 作:孤独なcat
いよいよ最終予選です。
今回からはちゃんとタイトルつけます。
『今日の東京は数年振りに雪が積もり、また風も強いので外出する人はくれぐれも足元に気を付けて―――』
朝飯を食べてたらニュースのアナウンスが聞こえた。
どうやら今日は雪や風が強いらしい。外ではすでに雪が微量ながら積もり、もしかしたら交通状況にも影響が出るかもしれない。
この日、東京では雪が降るくせに地元の北陸は珍しく快晴のようだ。
もはや東京と北陸が入れ替わってるとしか言いようがない。
昌信「よりによって何で今日なんだよ…」
今日は大切なイベントが2つある。
まず第1に土曜日の今日、音ノ木坂学院は、来年の生徒のために説明会を行うそうだ。
それにはもちろん、生徒会役員である穂乃果、海未、ことりの3名は仕事がある。オレも説明会開始前の準備だけ手伝いすることになっている。
そして第2はラブライブ最終予選。
その相手には、あのA-RISEもいる。言ってしまえば、この最終予選が1番の鬼門になるだろう。それ故に気を引き締めなければならない。
そんなわけで学校にはオレ、穂乃果、海未、ことりで学校説明会の仕事をこなし、終わり次第すぐに最終予選会場へ向かう。
それ以外のメンバーは最終予選会場に直行し、引率は西島がやる。
しかし何故こんな大事な日に雪が降るんだよ…。
こんな時期に関東で雪が降ることはほとんどない。だが、不思議なことに今日は10㎝以上は積もるようだ。
兄貴曰く、少し積もった程度でインフラは麻痺するし大学は休講になるらしい。とにかく都内のあらゆるものが耐雪構造になっていないから滑りやすくてヤバいとのこと。
昌也「行くのか?」
昌信「ああ。学校でやらなければならんことがあるからな。」
今日は土曜日なので兄貴は家にいる。
昌也「…いってら」
昌信「うい。行くわ。」
支度を済ませて玄関のドアを開ければ視界には積もり気味の雪、まだそんなに強いわけではないが風もある。何より雪のせいもあってか空模様も含め全体的に白い。
昌信「これ以上降らないでくれよ…。」
そう呟いて学校へ向かった。
昌信が出ていったあと外をぼんやり見つめていた昌也。
何かを思いついたのか突然ケータイを取り出しメールを打った。
~*~
音ノ木坂学院に到着すると数センチくらい積もっていた。
まあこのくらいの積雪なら問題ないかもな。
先生からの指示で真っ先に雪掻きをした。
他所から多くの人が来るということで道を作らなければならない。
せっせと雪を道端に寄せていると先生がやってきた。どうやら緊急の連絡らしい。
山田先生「大雪のせいでまだ学校に到着できていない人達がいるらしい。だから説明会が1時間遅れての開始になる。」
昌信「マジっすか。ていうかこれのどこが大雪ですか?これで交通インフラ支障でるんすか?」
オレからしたら数センチの積雪なんて大雪ではない。ただの小雪だ。
山田先生「雪国出身からしたらこの程度って思うかもしれんがな…。しょうがないものはしょうがない。」
昌信「…」
オレは頭を抱える。
ある程度雪掻きして生徒会室に戻ると、穂乃果、海未、ことりの3人が生徒会室から外を眺めていた。
穂乃果「あ、昌信君!おつかれー。」
海未「お疲れ様です。」
ことり「おつかれー。」
昌信「うっす。」
雪掻きしてきたオレを労わってくれた。嬉しい。
すると穂乃果が徐に窓を開けた。
昌信「おい、やめんかい。」
穂乃果「うわー! 寒いー! 雪は嬉しいけど寒いのは嫌だよー!」
海未「雪が降ったら寒いのは当たり前です。それより、そろそろ講堂へ向かいましょう。」
穂乃果「うん!」
ことり「そうだね」
ラブライブの最終予選も当然の如く大事である。
しかし苦労の末に廃校を免れて得た入学希望者の印象をより良くするためにも、学校説明会の力も入れなければならない。正式な生徒会ではないけれども雪掻きとか簡単なことで彼女らの助けになることができればと思っている。
穂乃果「挨拶ビシッと決めて、ライブに弾みをつけるよ!」
昌信「おう。頑張って来い。」
別れる前に海未がそのあとの簡単な確認をしてきた。
海未「それで昌信は今から予選会場に向かうんですよね?」
昌信「ああ。ちゃちゃっと準備済ませてから向かう。」
海未「分かりました。お気をつけて。」
昌信「おう。海未もことりもしっかりな。」
海未「ええ。」
ことり「ありがと~」
穂乃果たちが講堂へ向かった。
時間的にはまだ余裕があったので少しだけ勉強することにした。
1時間経ってから窓を見たらとんでもないことになっていた。
昌信「バ、バカな…もうこんなに積もっているだと…」
なんと雪がかなり積もっていた。しかも雪は大降り。東京らしくねえ。
そんな中電話がかかってきた。西島である。
昌信「もしもし?」
陽翔「オレだ。西島だ。外の状況とんでもねえことになってるけど大丈夫か?」
昌信「大丈夫じゃねえな。説明会も1時間遅れての開始だし。それよりメンバーは全員揃ってるのか?」
陽翔「ああ。それは大丈夫だ。でも今電車とかバスとかがまともに動いてねえ。…来れるか?」
昌信「意地でも行く。……でも万が一の時は少しばかり協力してほしい。」
陽翔「任せろ☆ とにかく無事を祈ってる。」
昌信「あざ。そんじゃ。」
こちらの状況を確認してきた西島との通話が終わり電話を切る。
昌信「難儀だな…」
これからをどうするか考えなければならない。
しかし時間が無いためすぐに実行に移したい。それ故に頼りになる人たちに助けを請う。
昌信「おはよう。朝早く申し訳ないが手伝ってほしいことがある。」
ヒデコ「どうしたの?」
昌信「雪掻きを手伝ってほしい。」
ヒデコ「いいよー」
昌信「助かる。そんじゃなるべく早く学校に来てくれれば―――」
ヒデコ「あ、もう私たち学校にいるよ?」
昌信「マジか」
準備が良すぎねえか?ヒフミトリオよ…。
~*~
陽翔side
陽翔「ちょりーす」
希「あ、陽翔君おはようさん」
絵里「おはよう陽翔」
現地の集合場所に来てみれば、そこには既に6人全員が揃っていた。
陽翔「うわ~オレが最後か」
凛「そうだにゃ! こんな寒い中女の子を待たせるなんてひどいよー!」
陽翔「しっかしひっでえ雪…。あいつら大丈夫か?」
絵里「心配ね…昌信に電話かけてみる?」
陽翔「そうだな。」
絵里の提案で昌信に電話をして事情を聞いた。
どうやら、雪が予想以上に降っているせいでまだ学校に到着できていない人達がいるらしい。
そのせいで説明会が1時間遅れての開始になるそうだ。
陽翔「しゃーないこととはいえ、幸先は不安だな」
絵里「だけど私達は今できる事をするしかないね。」
陽翔「……そうだな」
この雪だ。交通状況に支障が出てしまうのも仕方ないし、起こってしまったことを今どう思おうが何も変わらない。
なら穂乃果達と離れている自分達にできるのは、いつも通りにしている事ぐらいである。
にこ「うわ~!!」
控え室に向かおうとしたところで、突如にこが叫び声を上げた。
何があったのかは分らんがしゃーなしで近づく。
絵里「にこ?」
陽翔「いきなり大声出してどーしたんだよ。もう最終予選見るために待機してる人もいるんだぞ。静かにして―――、」
声が、止まった。
花陽「凄い……ここが、最終予選のステージ……!」
今日、μ'sが踊るであろうステージが目の前にある。
しかしそれは過去にやってきたステージとは明らかに異なっていた。
自分達で用意してきたステージとは比べ物にならないほどのスケール、UTXでA-RISEと共にやった屋上でのステージとも違う。何ならベルスパでやってきたステージとも違う。
どこまでも予算が使われ、もはやスクールアイドルがやるには勿体ないとさえ思ってしまうほどの豪華なステージがあった。
絵里「ごめんなさい……今、会場の前に着いたとこなんだけど……」
気づいたら隣で絵里が穂乃果に電話を入れて色々説明している。
凛「大きいにゃ……」
にこ「あ、当たり前でしょ。ラブライブの最終予選なんだから……何ビビッてんのよ」
そう言うにこも足が震えている。人のこと言えねえな。
ステージを見て実感したのだろう。最終予選がどんなものであるかを。
真姫「凄い人の数になりそうね」
希「これは9人揃ってじゃないと……」
9人じゃないとこのステージは活かされないと感じた。
絵里「とにかく、終わり次第こっちに急いで」
絵里が電話を切る。穂乃果も了承したようだ。
陽翔「うーむ…どこまでも想定外だな。ラブライブってのは……」
オレでさえもこんなステージは登ったことがない。
だからこそ胸騒ぎがするぜ。
絵里「控え室に行きましょう。この後のことも、ちゃんと話し合わないといけないしね」
絵里の言葉にメンバーも着いて行く。
こういう時にまとめ役がいるのは助かる、と陽翔は思った。
陽翔「…」
最終予選へ勝ち進んできたμ'sでさえ、圧巻されるほどの舞台。
それゆえにここにいるメンバーは畏縮しているかのようにも見える。
そして穂乃果達が遅れるかもしれない状況下でこの追い打ち。大丈夫とは言えない状況だ。
陽翔「厄介なことになったな…」
スマホを取り出しグループ電話を開始する。
陽翔「オレだ。予定通り例の計画は実行する。
だがその前に頼みたいことがある。」
~*~
昌信side
穂乃果たちが来客の案内をしている中、オレはヒフミトリオと話していた。
昌也「マジ助かるわ。もう学校にいたなんて」
フミコ「当たり前でしょ!たぶん雪掻きしなきゃいけなくなると思って早めに登校してたのよ。」
ミカ「とりあえず正門前を雪掻きするよ?」
昌信「ああ。そうしてくれ。」
ヒデコ「…でももう少し人が欲しいね。」
ヒデコの言う通りこの天候だと雪掻きしてもすぐに積もる。ヒフミトリオが雪掻きのボランティアを集めて10人くらい招集してくれたが、やはり人員が足りない。
昌信「…」
どうするか考えていたら穂乃果たちがやってきた。おそらく雪掻きを手伝いに来たのだろう。
穂乃果「おーい!」
ヒデコ「穂乃果?」
穂乃果「手伝うよ!」
ことり「どこからやればいい?」
ヒデコ「なーに言ってんの!」
穂乃果「……え?」
手伝ってくれると言うがそうさせるわけにはいかない。
フミコ「そうよ。あなた達今日何の日だと思ってるの?」
ミカ「最終予選よ、最終予選! 忘れたの!?」
海未「いや、それは……」
フミコにミカも参戦し、海未でさえ正論を言われてたじろぐ。
ヒデコ「だったら尚更、こんなところで体力使っちゃダメでしょ。さっ、行った行った!」
穂乃果「でも私達、生徒会だし―――、」
昌信「ダメだ」
穂乃果「昌信君…」
昌信「そんな恰好で雪掻きできるわけねえ。風邪引くぞ。」
ヒデコ達が学校指定用のウインドブレーカーを着ているの対し、穂乃果達はいつもと変わらない制服を着ているだけ。正直今こうして喋っているあいだも雪の勢いは収まることなく、その寒さの暴力を存分に奮っている。
ヒデコ「穂乃果達は学校のためにラブライブに出て、生徒会もやって、音ノ木坂のために働いてきたんでしょ?」
雪かきの作業へ戻りながら話すその背中は語る。
フミコ「だから今日は私達が助ける番っ」
ミカ「私達も協力したいから!」
ヒデコ「私達だけじゃない」
視線は真っ直ぐ、まだいる仲間へと向けられる。
ヒデコ「みんなもだよ」
ヒフミトリオが集めてくれた精鋭たちが雪掻きをしていた。おそらく10人はいる。
その全員が、遅れて来るであろう人達のために雪かきをしている。
誰1人サボることもなく、むしろ友人と楽しそうに話しながらでも作業を続けていた。
ミカ「ここは私達に任せて」
フミコ「穂乃果達は説明会の挨拶と予選のことだけ考えてて、ねっ」
穂乃果「みんな……」
昌信「そーいうことだ。とりあえず中に入ってくれ。」
穂乃果「……、」
自分だけの問題でない以上、誰も頼りにしないのはただの強がりにすぎない。頼れるなら頼る。
それで一番良い結末を迎えられるなら、その方がいい。
自分達には自分達が今できる事をする。
それが最適解である。
穂乃果「……お願いね、ヒデコ、フミコ、ミカ!」
学校を救うべく、それを結果として残した少女に言われて、それを支えてきた3人の少女達もまた、最初から返す言葉は決まっていた。
ヒフミトリオ「「「任せなさい」」」
穂乃果たちが中に入った後、改めて本題に戻る。
昌信「改めて礼を言う。ありがとう。」
ヒデコ「いいんだよ。昌信君も学校を救ってきたメンバーの一員だよ?」
要所要所で手伝ってくれたヒフミトリオこそその一員だと思うけどな。
オレは少し照れたのか視線を逸らす。
昌信「…とりあえずもっと人手が欲しい。
そうだ。良いこと思いついた。」
ヒフミトリオ「「「?」」」
昌信「申し訳ないが、少しこの場を離れる。それまで雪掻きに専念してくれ。用が済んだらここに戻って作戦を伝える。…いいか?」
フミコ「いいよ!」
ミカ「昌信君が考えることだからきっとみんなのためになるよ!」
ヒデコ「そうだね!でも早く戻ってきてね。」
昌信「ああ!」
オレは急いで中に入って電話をする。
昌信「浅井か?」
和久「どうしたんだい?」
昌信「雪掻きを手伝ってくれ。」
和久「マジ?」
昌信「マジだ。だがここに来る前に1つ頼まれてくれ。」
和久「何だい?」
昌信「予選会場までの最短ルートを調べてくれ。」
和久「了解。」
穂乃果たちを予選会場まで届けるための作戦が今実行される。
昌信の作戦は吉と出るのか?