真・恋姫✝無双 新たなる外史   作:雷の人

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黄巾の乱
第八話:覇王と軍神


《黄巾賊を討伐せよ》

 

小難しい文面で書かれた詔勅が各地の諸侯に届けられたのだが要約してしまえばそんな内容だ。

 

陳留の曹操、揚州の孫堅、西涼の馬騰、天水の董卓、冀州の袁紹、寿春の袁術、襄陽の劉表、益州の劉璋、徐州の陶謙、斉南の鮑信、定陶の張邈、幽州の公孫賛とありとあらゆる群雄へと詔勅が渡る。

 

:幽州北平城

届けられた詔勅の内容を、桃香たちに説明する白蓮。

 

「私は、お前らが独立する良い機会だと思っているんだけど・・・・」

 

やや、遠慮気味に言う白蓮、分かっている、一州牧として、自分よりも名声を得つつある一団を留め置けないという考えと、一個人として、友人である桃香、青焔を追い出す事を忌避する、その板挟みなのだろう。

だから当然、桃香や一刀たちは。

 

「そうだな、白蓮、世話になった」

「うん、ありがとうね白蓮ちゃん」

 

白蓮の下を離れる決断をする。

 

「でも兵隊さんがいないよねぇ」

「んー50名じゃあ心もとねぇなぁ」

「とは言え現状策があるわけでも・・・・」

 

頭を捻る桃香、青焔、紫牙。

 

「ならば北平で募兵していけば良かろう」

 

声を上げたのは、白蓮の配下、老将厳綱だ。

 

「厳綱、勝手なことを言うな、私だって出兵のために徴兵をだな」

「その分は我々正規兵が奮起いたしましょう、何より友人の門出に兵を持たせたという名声を得れば宜しい」

「むー、名声よりも実利、と言いたいところだけど・・・・・」

 

その視線が、星へと向けば。

 

「分かった、募兵してってくれ・・・・・まぁある程度残してくれると助かる」

 

そんな白蓮の、ちょっと悲痛さが混じる言葉。

 

結局、5000ほどの兵が集まった。

 

「ここまで集まれば壮観だな」

「凄い・・・・・ねぇ」

「うっわ・・・・・」

「ここまでの軍勢を見たのは、始めてです」

「今まで見たこと無いぐらい多いのだ」

「洛陽時代は良く見ていたはずなのですがね」

「はわわー」

「あわわー」

「・・・・・何かの冗談だろ?」

「ふむ、絶景かな」

「・・・・・・」

 

いつも通りなのは青焔、紫牙、星ぐらいだろうか、後は見たことの無い数の兵士に一様に驚きを隠せないでいる。

白蓮に頼まれて賊討伐に出た時でさえ最大1000ぐらいだったのだ。

 

:二日後:冀州南部

白蓮の「集め過ぎだー!!!」という叫び声を背にしながら幽州を出て二日、ここに来るまでに何度か黄巾賊とぶつかっている。

 

「青焔様」

「応」

 

背後から声をかけてくるのは廖化元倹、真名を六花。

 

幽州で募集した兵士の中で、際立っていたわけでも無かったのだが、彼女の率いてた隊は立ち回りが上手く、効率的な戦い方をしていた。

一兵士として扱うのは惜しい、とその日の内に彼女を訪ねた、色々と設問し話を聞くと、非凡さを感じ、異例とも言えるような副官抜擢をしたわけだ。

実際、非常に優秀な仕事をしてくれるし、自分も前線に集中出来るのだが何故か星や凪とのあいだに火花が散っている。

 

「劉備様がお呼びです」

「分かった」

 

今現在、劉備軍は三つの部隊に分類されている。

 

一つは王泰が率いる前衛部隊1000、法正、楽進、趙雲、廖化が所属している。

一つは劉備が率いる本隊2000、関羽、張飛、諸葛亮が所属している。

最後に一刀率いる後衛部隊2000、鳳統、周倉が所属している。

この三部隊を上手く各隊の軍師たちが連携させる事で、先ず先ずの戦果を上げる事に成功している。

 

「・・・・・っ!?」

 

ぞわっ、と寒気が走る、背後を振り返るが、微笑みを絶やさない副官がそこにいるだけだ。

 

「どうかいたしましたか?」

「あーいや、なんでもねぇ」

 

前へと向き直る青焔、その後では、六花が黒い笑みを浮かべていた。

 

:本隊幕舎

中へと入れば既に本隊の四人と、後衛の一刀と雛里が出揃っている。

 

「スマン、遅れた」

「いえいえ、大丈夫ですよ♪・・・さて朱里ちゃんからの報告なんだけど」

「はい、斥候からの報告で東の方に官軍の存在を確認しました」

「官軍?」

「はい」

「旗は?」

「曹・・・・」

「!?」

 

顔色が一気に悪くなる青焔。

 

「青焔様、いくら真名に青が入っていても顔色まで真っ青にする事も無いでしょう」

「違ぇよ!」

「何か・・・・あるのでしょうか?」

 

六花の毒づいた言葉に、続くように雛里が問いかければ、その動きが止まる。

 

「・・・・・・正直、曹操に会いたくない」

「なんでです?」

「・・・・・・」

 

無言、そして静寂、しかしそれはすぐに破られる事となる。

 

「失礼いたします」

 

入ってきたのは凪だ。

 

「どうした?何かあったか?」

 

この空気を変える好機だ、後で頭撫でてやろう、そう、思ったのも束の間。

 

「官軍の曹操様が桃香様、他主要人物にお会いしたいと」

 

死刑宣告だった。

 

「あ、分かりました、じゃあお通ししてください♪」

「はっ」

 

桃香が許可を出せば駆け出す凪。

 

「おっとぉ・・・・そう言えば仕事残ってんだ、じゃ!」

 

シュタッと手を挙げて、ここから逃げ出そうと、駆け出そうとした途端、がしっと、力強く両腕を掴まれた。

 

「・・・・・・・・はい?」

 

振り向けば、黒い笑みを浮かべる六花と、さっきまでいなかったはずの星が、自分の両腕を掴んでいるではないか。

 

「おやおや青焔殿、明日の進軍準備ならば私が済ませましたぞ」

「さぁ、これでここから逃げ出す必要も御座いませんね?」

 

笑顔だ、ニッコリと、お世辞抜きで綺麗だと思う、だが、二人とも眼が笑っていない、眼が語っている「曹操とどういう関係だ」と。

 

「あら?珍しい事もあるものね、死人と再開出来るなんて」

 

突如聞こえた声に、顔を幕舎入口へと向ける。

 

小柄で金髪、特徴的なカールした髪、そして何より、矜持を全面に押し出したようなその眼。

 

「・・・・・・孟徳・・・・・・」

「あら、誰がそんな呼び方をして、と言ったかしら?せ・い・え・ん?」

「・・・・・・・華琳」

「宜しい♪」

 

昔からこの女は苦手だった、武では優っていた、戦技盤でも負けた覚えは無い、なのに、勝ち切った感覚も覚えた事が無かったのだ、何より・・・・・・

 

「青焔様、少々お話が」

「ありますので前衛幕舎へ、凪もお呼び致します故」

「待てお前ら!俺に何をする気だ!?」

「あらあら、大変そうね」

「テメェのせいだ!!」

 

それから、少ししてようやく騒ぎが収まると。

 

「で、何しにきやがった」

「ああ、忘れていたわ」

「忘れんなや」

「冗談よ、劉備軍と共同で軍を進めたいと思って提案をしに来たのよ」

「そっちの兵力は」

「8000弱よ」

「合わせて一万三千、か」

「ええ、一万を超えればそれなりの相手でも対応出来るでしょう」

「・・・・・・相談する、時間をくれ」

「ええ、構わないわ」

 

ちょいちょい、と桃香、一刀、朱里、雛里、紫牙、愛紗を呼び集めて議論に入る。

 

「単刀直入に意見を」

「私は賛成です、味方が多ければ色々できますし」

「俺も賛成、かな・・・・」

「私も賛成です」

「私も賛成します」

「・・・・一概に賛成、とは言い切れませんが・・・」

「私も同じく」

「賛成四、反対二・・・可決で良いか」

 

劉備軍で重要案件が登った場合は基本、この七人で議論される、青焔が議事進行で、他六人で意見がまとまれば良し、まとまらなければ青焔も乗り出す、という形をとっている。

 

「一応はその話に乗る・・・・が、何で俺ら何だ?」

 

純粋な疑問、手を組む、というだけならば揚州の孫堅や幽州の白蓮、斉南の鮑信などもいたはずだが。

 

「そうね、理由は3つかしら」

「一つは?」

「先ずは貴方、天の御使いを見極める事」

「俺ぇ!?」

「ええ」

「それは置いといて二つ目は?」

「え、置いとくの?」

「最近名の上がってきた劉備軍の力を見たいから」

「置いとかれた」

「じゃあ、最後はなんです?」

「貴方がいるからよ、青焔」

『・・・・・・は?』

 

その場にいた全員が、一斉に頭の上に「?」を浮かべる。

 

「あの言葉、忘れたわけでは無いでしょう?私は貴方の事は本気なの」

「俺ぁてっきり冗談だと思ってたがね」

「私ね、一度手に入れると決めたら何がなんでも手に入れるの」

「知ってらぁ」

「そういう事よ」

 

そう言えば、ヒラヒラと手を振りながら幕舎を出る華琳。

 

「さて青焔様」

「あの言葉とは?」

「なん・・・・・なのですか?」

 

六花に星、いつの間にか凪まで加わって、三人が据わった眼でこちらを観ている。

 

「・・・・・・実はな」

 

話は洛陽官吏として働いてた頃に遡る、当時の太傅陳蕃に補佐として召抱えられた自分は、陳蕃の使いとして中常侍曹騰の屋敷へと使いを頼まれていた。

屋敷の中へと案内される途中で、華琳と始めて出会った、綺麗な娘だな、と感じたのを記憶している。

 

「何というか、話に出てくる人物が既に雲の上の人ばかりですね」

 

と、愛紗が漏らす。

次に会ったのは宮中晩餐会を抜け出し、宮殿の廊下で涼んでいた時だった。

 

:回想:洛陽宮殿外周廊

 

「堅苦しいばかり堅苦しいものだ」

 

陳蕃様も、乗り気では無かったようで既に諸用がある、といって屋敷へと戻っている、自分ももう少ししたら戻るか、そんな事をかんがえていた。

 

「また会ったわね」

 

不意に、かけられた声、妙に澄んだ声だという記憶がある、振り返れば、曹騰の屋敷へと赴いた時に見た少女だ。

 

「確か曹騰殿の屋敷で・・・・」

「曹操孟徳、曹騰の孫よ」

 

この頃、不良官吏などと呼ばれていた青焔は、相手が中常侍曹騰の孫だと知っても動じる事など無く。

 

「そうか、俺は王泰文令ってんだ」

 

と、自己紹介を返している。

 

「少し、話でもしないかしら?」

「まぁ・・・・構わんがな」

 

それから、取り留めのない話を続ける、軍学、政治、世論、農耕、商業、築城、とにもかくにも様々な事を話し続けていた。

 

「貴方は面白いわね」

「あ?」

 

ふと、顔を見れば、少しばかり寒気が走る。

 

「貴方が欲しい」

「冗談は・・・・」

「いいえ、冗談などでは無いわ、あの太傅陳蕃が傍らに置いた程の人物、どれほどかと思ったけれど想像以上だったわ」

 

陳蕃は、あまり人と交わる事を好まない、太傅という地位についてからも、補佐役一人置くこともなく、一人でもくもくと仕事をしていた、それが何のつもりか突如補佐につけられたのが青焔だったのだ。

 

「買いかぶりだな」

「それは私が決める事よ、まぁ今は良いわ・・・でも何れ必ず、貴方を私のモノにしてみせる」

 

そう言いながら浮かべた笑みは、非常に妖艶に見えたものだ。

 

:今

 

「っつーわけよ」

 

青焔の回想話を聞き、矢張り凄い人物なんだな、と再認識する桃香、一刀、愛紗、鈴々、朱里、雛里、紫牙、しかしそれとは別に、六花、星、凪は。

 

「危険ですね」

「うむ・・・・まさかこんな伏兵が居たとは」

「ですが負けるわけには」

 

三人が視線を合わせ、コクリと頷く、それを見ていた青焔は、アイツら仲いいね、ぐらいにしか考えていなかったらしく、後日、三人がかりで詰め寄る姿が見られたとか。




青焔×星&凪&六花&『華琳』、フラグ魔、主人公補正恐るべし・・・・ちなみに青焔のフラグは七本まで増える予定です、もうしっちゃかめっちゃかですね、一刀は桃香&愛紗ルートです。
他二人の主人公、蒼季と尚にどれぐらいフラグを立てるかが楽しみな今です。

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