第十二話:孫呉の登用試験
:秣陵
孫堅の死より半月が経っていた、新当主である雪蓮を中心に、新人事として軍部筆頭に雷刃、軍師筆頭に尚、文官筆頭に冥琳が台頭していた。
また美羽も、当初は父のようだった孫堅の死に落ち込むも、祈、貞、七乃の励ましにより、今は以前のように快活に、また精力的に政務をこなし始めている。
「登用試験・・・・ですか」
軍議の間に集うのは孫家の主要人物、雪蓮に蓮華、雷刃、尚、冥琳、氷岐、誾。
「ふむ、まぁ早い方が良いだろうな」
孫家特有の褐色の肌に黒髪の男性、孫静幼台、真名を諒、先君孫堅の弟。
「そうじゃのう、若い連中を育てるにも時間が要るじゃろうし」
褐色の肌に薄紫の長髪、妙な口調なのは黄蓋公覆、真名を祭、留守居の武官のまとめ役をしていた人だ。
「んじゃ文武両方での募集だな」
「そうですね、人手が多いに越したことはありませんし」
雪蓮の「好きなように決めてちょうだい」なんて言葉に蓮華が説教をしながら、大まかな骨組みが決まっていく。
武官試験は簡単な筆記問題と武官たちとの手合せ、主な採用基準は武官たちの判断による。
文官試験は筆記問題と面接、筆記の点数と面接での受け答えにより成否を決め、また適正を見て軍師候補も選んでいくつもりである。
「ふむ、問題作成が少々骨じゃが・・・・まぁ不眠不休でやれば何とかなろうて」
「すみません氷岐様、お手を煩わせます」
「ふぉっふぉっ、構わんよ」
「氷岐殿、穏と文官数名をつけます、政務は私と残った者で何とかしますので」
「おぉ、助かるのぉ」
陸遜伯言、真名を穏。名門陸家の長女で黄巾の乱の少し前に仕官してきた、実力は申し分無く、今は冥琳の下で文官寄りの仕事を学んでいるが、軍才もなかなかなので軍学も合間で教えていると言う。
「武官試験の手合せ担当だが・・・・」
「俺、誾さん、思春、祭さん、灰の5人で十分でしょう」
「えー私はダメなの?」
「当たり前だろうが、テメェの立場を理解しろい」
「ぶーぶー」
おおよそ予想通りな雪蓮の反応をよそに、会議は進む。
:一週間後:秣陵城練兵場
今試験の参加者は皆一度この場に集められていた、望楼の上から、それを眺める雷刃と尚の二人。
「多いな」
「多いですね」
二人が一様な台詞を吐く、二人の予想参加者数は合わせ百程、だが今は、それを超えた二百程が集まっている。
「一苦労ですねぇ、互いに」
「だな、まぁこの中から孫呉の次代を担う人材を選ぶんだ、気合入れるぜ」
「はい」
:午後:武官登用試験・試験官控室
「で?どうじゃ」
「何がです?」
「見込みのある者はいたか」
思春と灰は会場の方に行っており、控室には雷刃、祭、誾の三人だけである。
「そうだなぁ・・・・九番の蒋欽公奕、二十二番の周泰幼平、五十八番徐晃公明」
「ワシとしては三十番の太史慈史義など面白そうじゃのう」
「六十一番張嶷伯岐、六十二番凌統公積」
「見込み有りが六人、まぁまぁの収穫にはなりそうだな」
:同刻:文官登用試験・試験官控室
こちらには尚、冥琳の二人が控えていた。
「尚から見てどうだ?」
筆記試験の結果を見ながら、冥琳が問いかける。
「二番の関沢徳潤、七番の劉曄子揚ですかね」
「ふむ、三十番の鄧芝伯苗、四十六番の麋竺子仲などどうだろう?」
「私は軍師候補で選んでいますからね」
「ふむ、その差異か、私は文官候補で選んだ」
ふむ、と顔を見合わせる二人。
「ともかく、両方合わせで四名ならば良し、でしょう」
「そうだな」
:夕方:練兵場
「それではこれより合格者を発表する!!」
君主である雪蓮が、壇上にたち合格者たちの名と番号を呼ばわる。
合格者は、見込みがある、と言っていた十人に決まり、十人を残した参加者たちが退場する。
「お初にお目にかかります、改めて自己紹介をさせていただきたいと思います」
尚、雷刃、冥琳が壇上に登る。
「私は孫策軍、筆頭軍師を務めさせていただいております諸葛謹子瑜と申します」
「私が文官筆頭の周瑜公瑾だ」
二人の自己紹介に、文官試験を受けた四人が驚きの表情を見せる、冥琳はともかく尚は、普通の文官にしか見えなかったからだ、面接なんて担当するぐらいだからそれなりにえらいんだろう、ぐらいの認識しか無かった。
「俺が孫策軍武官筆頭、魯粛子敬だ」
こちらもまた、5人が驚く中、徐晃だけが矢張り、と言ったような表情で微笑んでいる。
「まぁともかく、皆さんは今日から孫家の一員です・・・・孫家の名に恥じぬように、なんて言うつもりはありません・・・・己に恥じぬよう、懸命に日々を励むように」
「あーもう!固っ苦しい挨拶は無し!!!」
「んごふっ!?」
突如、挨拶中の尚の頭を掴んで地面に組み伏せる雪蓮。
「お祝いよ!!宴会よぉ!!!」
最早、この三週間は仕事仕事で酒も飲まずだったのだ、箍が外れたのだろう、祭を巻き込んで宴会の準備に駆け出す、新人たちが、唖然とする中で。
「ちょっと尚!?尚ー!!」
「尚様!!」
「尚!!」
倒されて気絶する尚を心配して、蓮華、香、思春の三人が、大騒ぎしたとか。
:夜:秣陵城太守府・中庭
雪蓮、蓮華、諒、祭、誾、氷岐、雷刃、冥琳、尚、香、思春、灰、穏らと新人十人が参加した宴会は、想定以上の盛り上がりを見せていた。
雷刃の特製火鍋は予想以上の大好評であり、酒飲み組である雪蓮、祭、誾、冥琳らが加速していく。
雪蓮、諒、祭、誾、氷岐と太史慈、凌統、関沢が飲み比べに興じる中、尚、香、穏、劉曄が軍略談義を始め、雷刃を囲んで蓮華、思春、張嶷、鄧芝、麋竺らが今回の火鍋に関しての批評をしながら、新しい調理法への思索を披露し、冥琳、灰、蒋欽、周泰、徐晃が騒ぎを避けながら、粛々と食べて飲むのだ。
それからしばらくした頃、雪蓮の発案で、この場にいる全員が、真名を預け合う事になり、新人たちの自己紹介が始まる。
「蒋欽公奕!真名を白夜と申します!」
「周泰幼平、真名を明命と申します!」
「徐晃公明、真名を暁」
「太史慈史義!真名を乱と言います!」
「張嶷伯岐です、真名を青河です!」
「凌統公積、真名は林士ってんだ」
「関沢徳潤、真名は美耶です」
「劉曄子揚、真名を鈴李で御座います」
「鄧芝伯苗です、えと、真名は帆で・・・えと、宜しくデス!」
「麋竺伯仲と申します、真名は澄」
ここに、新生孫呉の、未来を担う人材たちが出揃うのだ。
新キャラ十人追加・・・・キャラのインフレで幽霊が出ないか心配になりそうですが・・・・鋭意努力していこうと思います。