ようこそ『ぐちり屋』へ   作:麻婆春雨

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どうも、麻婆春雨です。

特に胸熱な展開とか感動する場面とかはありません。
肩の力と言わず全身の力を抜いてお楽しみください。


とある日のぐちり屋 〜R.Hさんの場合〜

 

 

「こんばんは。やってる?」

 

「いらっしゃい。もちろんやってるよ」

 

白い息を吐きながら暖簾を腕で押しのけ一人の少女が入ってきた。

 

全体的に赤と白。

真っ赤の巫女服と脇の部分がない袖。首元に黄色いリボンとトレードマークなのか頭のやや後ろの方に大きな赤いリボンを身につけている。

ちなみに巫女服と言っても袴とかを身につけているわけではない。普通にスカートに見える。

そしてなぜ脇が開いているのだろうか。真冬だというのにこの格好とは…心頭滅却してもする気にならない。絶対寒いだろう。

 

結論、私からすると巫女には見えない。

 

「何でよ。どう見ても素敵な巫女でしょ」

 

こいつ、エスパーか…!

本当にこの人の勘は鋭いね。

 

「何で思考を読めるのかについては聞かないけど…自分で素敵ってつける?」

 

「別にいいでしょ?」

 

「うん、いいよ。それより座りなよ」

 

いつまでも立ち尽くしながら話す巫女に座るように促す。

まあ、私がいちいちつっこんだのが悪いのだけどね。悪いのかな?

まあ、いっか。

 

「そんで、何にします?」

 

「じゃあ、熱燗とおでん。大根とこんにゃく」

 

「ん。ちょっと待っててねー」

 

そう言って湯を張った熱燗めいかーにとっくりをつける。

前まではこれを鍋でやっていたのだけど、この間とあるスキマの妖怪さんにこの熱燗めいかーなるものをいただいたのだ。

本当に文明の利器っていうのは便利だよ。

 

「じゃ、先に大根とこんにゃく渡しとくね。」

 

そう言ってお皿に大根とこんにゃくを載せ、おたまでつゆを多めにかける。

 

「はい、どうぞ。からしはお好みで」

 

「ん」

 

目の前の巫女さんはぶっきらぼうに言うと(目はキラキラしてるので楽しみにしてくれてたのはわかった)はふはふ言いながら食べていく。

 

と、そこで熱燗ができた。徳利を抜き出し布巾で水滴を取ったあとお猪口と一緒に提供する。

 

「ほい。熱燗お待ちー。熱いから気をつけてね」

 

「ありがと」

 

お猪口にとっくりの中身を注いだ巫女さんはチビチビと口を付けている。

…美味しそうに飲みなさる。

 

ちょっと欲しくなってきた。

けどがまんがまん。

 

 

 

 

 

 

 

「んで、今日はどうしたんだい?」

 

頃合いを見て話しかける。

 

うちは『ぐちり屋』だ。

ここに来る客はみんな決まって何かしらの愚痴を持っているのである。

 

「そうそう聞いてよ!

今日ね!スキマのやつがね!来月から仕送りを減らすとか言い出したのよ!

今でもかつかつの生活してるのにこれ以上減らされたら干からびちゃうわよ!」

 

「…ふーん。なるほどねぇ」

 

食い気味にまくし立てる巫女さんにほんの少しのけぞりながら相槌。

生命に関わることだからか鬼気迫るものを感じる。

 

「それでね!なんでそんなことすんのって聞いたらね!

私が最近仕事をサボりすぎてるから、とか言い出したのよ!

もう私カチンと来ちゃってね!

そのまま陰陽玉ぶつけて飛び出してやったのよ!」

 

「それはまた、暴れたねぇ…」

 

そのスキマさん…熱燗めいかーくれた人とあだ名が似てるなぁ。

…ま、気のせいかな?

うん、気のせいだ。

 

「ねぇ、ひどいと思わない!?」

 

お酒が回ってきたのか、大きな身振り手振りで愚痴る巫女さん。

私が大根の追加の仕込みをしていると意見を求めてきた。

 

さて、ここでただ同調するのは簡単だし、無難なのだが…それは私の性に合わないのでね。

誰かに嘘をつくなんてめんどくさい真似は嫌いなのです。

良くも悪くもマイペース。

それが私だと思うのです。

 

「ま、そのスキマさんも巫女さんのことが心配なんだよ。多分ね。」

 

「むー。あいつの肩持つわけ?」

 

巫女さんはさっきより不愉快そうになる。まあ、当たり前か。

 

「いんや、そういうわけじゃないよ。ただ向こうさんも巫女さんもお互い思うところがあるということですよ」

 

「そんなことないわ!

あいつは私を弄って面白がってるだけよ!」

 

2本目のとっくりを持った左手を机に振り下ろして言う巫女さん。

とっくり壊さないでね?

 

「まあ、それもあるのかもしれませんね。でも巫女さんがスキマさんの心の中で大きな部分を占めてるからこそだと思うのです」

 

興味もない相手なら弄って遊ぼうとすら思わないはずだしね。

 

「うぅ、でも私だって今でもそれなりにお仕事はしてるつもりなのよ。

境内の掃除とか妖怪退治とか。

それでも参拝客は来ないし、お賽銭も増えないし…

それなのにスキマのやつ…」

 

「…人生山あり谷あり、ってヤツです。誰でもいつもうまくいくわけじゃない。

スキマさんも多分そんなことは知ってるだろうね。もちろん巫女さんがちゃんと働いているということも。

それでもあまりの心配さ故にそういう厳しいこと言っちゃったのだと思うのよー」

 

「…それは…」

 

ちょっと湿っぽくなっちゃった…

れっつしんみりぶれいくだー。

 

「それに巫女さんも少しサボり気味だったって自分で思ってたんじゃないの?」

 

「うっ!」

 

「だからムキになって怒っちゃったんじゃないの?」

 

「そ、そんなことないわよ!!!」

 

少しニヤニヤしながら言うと図星っとばかりに巫女さんは大声をあげる。

おうおういい反応じゃのぉ。

 

「まぁ、まだ努力の余地ありって感じだねぇ。

お前なんかに言われたくない!

って思われちゃうかもだけど」

 

そう言ってニヘラと笑う。

どうも説教っぽくなってしまうのは私の悪い癖かもしれない。

 

「…全くよ。私はここに説教されに来たんじゃないわ」

 

そう言っておちょこの酒を飲み干す巫女さん。

たはは、痛いとこつかれたね。

気の利いた言葉の一つでもかけれたらよかったんだけど…自分不器用なんで。

 

「ははは。それもそうだね。

じゃあ説教ぽくなっちゃったお詫びに卵でもお持ち帰り用に差し上げましょう!」

 

「え!?いいの!?

無料で!?」

 

「もちろんだよ。

これはお詫びなんだから」

 

目が椎茸みたいな模様になった巫女さん。無料という単語に弱そうだ。

 

「…あ、酒が切れてるね。お客さん、お代わりしますかい?」

 

「…いや、いい。ちょっと用事を思い出したわ。

それにいつまでもこんな説教くさい奴といられないわ」

 

うーん、辛辣だね。

でも、そう言い放つ巫女さんはどこか覚悟を決めたような顔をしていた。

 

ふふふ、若いとはいいもんだねぇ。

 

「ふふ、言えてますねぇ。

そんじゃ、はい。

お土産の卵ね」

 

これまたスキマの妖怪さんに貰ったたっぱーと言う容器に二つ、たまごを入れて紙袋で包む。

その後、熱いから気をつけて、と注意しつつ巫女さんに手渡した。

 

「お腹一杯なら誰かと分け合うのも乙なものだよ」

 

「…ありがと」

 

「ん、どういたしまして。

あ、お勘定は?」

 

「ツケで」

 

「えー、また?」

 

「じゃ、バイバイ」

 

そそくさと巫女さんは飛んでいった。ちゃっかりお土産を携えて。

 

「あーあ、また代金もらえなかった」

 

まさかツケを払わなくてもいいものと認識したりしてないよね!?

もしそうなら怖いわぁ。

最近の子怖いわぁ。

………

まあ、今日はいい愚痴が聞けたし良しとしますか。

仲直りも出来てるといいんだけど…

まあ、出来てなかったらまた愚痴りにおいで。

 

そんなくさいことを思いながら私は屋台をしまい寝床へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ ( ^ω^ )

 

後日、店の品物の補充のために人里のお店で買い物をしていると、違うお店でお手伝いらしきことをしている巫女さんを発見した。

 

作業が終わるとその店の店主さんが巫女さんに頭を下げてお礼をしていた。巫女さんは照れくさそうに頭を掻いてた。

 

和んだ。

 

 

スキマさんとどんな話をしたのか少し気になったのは別のお話。

 

 





稚拙な文章ですが読んでくださりありがとうございます。あと、お疲れ様でした(-_-)\

記念すべき一回目は我らが主人公、博麗霊夢さんに登場してもらいました。

私の個人的なイメージですが、霊夢さんは紫さんに金銭を援助してもらっているという風にさせてもらいました。
流石に人が寄り付かない神社の賽銭だけでは生きていけないと思ったのでこういう形になりました。
こら!ヒモって言った奴出てきなさい!

これまた私の個人的なイメージですが、霊夢さんって実は幼い感じだと思います。
普段は役職柄さばさばとしたりしっかりした雰囲気を醸しているけど、近しい人にはワガママで子供っぽい面を見せる。根は素直なので間違いを認めたらすぐに謝って改善できる。
みたいな感じだと私的には美味しいですね(^^)

次回はいつになるかわかりませんがどうか気長にお待ちください。

感想、アドバイス、誤字脱字などありましたらお気軽にお願いします(^^)

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