――イーディ・ネルソン
(ちなみにこの部分はマネージャーであるホーマー・ピエローニ氏より許可を得て掲載しております。)
訓練がない、ということで陽気に誘われて散歩をしていたときのことだった。趣向を変えて人通りの少ない道を歩いていると、何処かしらから何かが聞こえてきた。ただ、声は歌というには禍々しく、音楽というには不協和すぎた。要するにすごく音痴だった。
「…こっちか」
なんとなく誰か想像出来たが、何も知らないといった顔で声のする方へ歩いていく。音痴っていうと彼女しかいないよなーと思っていると、案の定イーディがいた。そしてその傍らには恍惚とした表情の某病弱ドMが転がっていた。よし、帰るか。
「ふふん、今日も絶好調ですわ!」
「いやある意味絶好調そうだけどさ」
確認した後見つからないようにその場を離れようとしたけど、彼女の独り言に反射的にツッコんだのは悪くないと思うんだ。
「誰ですの!?って貴方は確か…サクラさんでしたわね?聞いてしまいましたわね?」
「あー、うん。聞いちゃいましたね」
「隠しておきたかったのですがバレたからにはしょうがありませんわ!で、どうでした?上手でしょう?ホーマーもいい歌声だと言ってくれましたの」
そりゃドMにとっちゃいい歌声かもしれないけどさ。
「コセイテキナコエデスネー」
「目が泳ぎまくってますわよ!」
嘘は言ってないけど本音を隠せなかったらしい。
「え、とするとまさか…」
自分の態度である程度察してくれたのか、冷や汗をかいているイーディを見て、思い切って真実を伝える。
「はい、思い切り音痴です」
「…マジですの!?」
「マジですの」
聞いた瞬間、イーディさんが膝から崩れ落ちた。
「隠れて練習してたのが仇になりましたわね…。妹に試しに聴いてもらったときははすごいって顔してくれてましたけど、妄信的な部分があるからあの子は例外として。あと、ホーマーがいい笑顔でいい歌声だといってたのってそっちの意味でしたのね。納得しましたわ」
音痴っていうのをすぐ認めるところを見るとやっぱり根は素直なんだなぁ。あと妹が盲信的っていうのは分かってたんだ。と納得していたら、イーディがこっちを向いて何かひらめいた顔をしていた。あ、これやb
「…頼みがあります」
「いやです」
「まだ言ってすらいないのに!?」
だって何言われるか予想付いたし。
「私も知らなかった事実を知られたからには逃しませんわ!そもそもここで逃げても同じ部隊にいる限り逃げ切れませんわよ!」
「音痴の人の矯正なんてしたことないですよ!?もっと他に適任がいるでしょうに!」
「アイドルたるもの、容易に努力は見せないのですわよ!?」
「口調若干崩れてない!?」
ギャーギャー騒ぎながら逃げ回ったけど、結局は捕まり、音痴の矯正を手伝うことになった。やっぱり突撃兵の身体能力には勝てなかったよ…。その日は準備があるので解散することにした。病弱ドMな彼は放置されてたのを後から思い出して、結局俺が運ぶことになった。
嫌々ではあるけど、やるからにはそれなりにしっかりと、ということで次の日、ロージーさんにアドバイスをもらうことに。ちなみにその相手がイーディであることは言ってないんだけど、音痴という単語を出した時点で何かしら察していた。見られてますよイーディさん。
「というわけで何かアドバイスをば…」
「なんで私がそんなことしないといけないんだい?」
「少なくともこの隊の中で一番歌に詳しいと思ったんです。今度いいワイン差し上げますんで」
「はぁ、わかったよ。そしたらね…」
なんだかんだで面倒見のいい姉御からアドバイスをもらい、他の隊員にバレないようにしつつ、そこで練習することになった。病弱ドMな彼は毎度毎度ついてきてはいい笑顔で瀕死になっている。毎度毎度運ぶの俺なんですけどねぇ…。
「そういえば俺が来る前までは瀕死後のホーマーさんはどうしてたんですか?」
「もう少し歌声の感動に浸っていたいからそのままで、とのことだったので放置してましたの。…一度忘れ物して夜に戻ってきたとき、まだいたのには驚きましたわ。それからは運んでますの」
「えぇ…」
(令和に入ってから)初投稿です。
まずは更新が非常に遅れて申し訳ございませんでした。
リアルの多忙とこの先の展開(3をどう扱うかとか)をうんうん悩んでいたらいつの間にか1年ぶりの更新に…。
とりあえずお茶濁しに断章ということでの投稿です。
ちなみに4はまだ手を付けてられていません。なのでもしかしたらまた先の展開に悩むことになるかもしれません。その時は…遅くならないよう、また断章に頼りますので(震え声)