―――イレーヌ・コラー(旧姓 エレット)
施設を見て回った後、バーロット大尉から連絡があったので、ウェルキンさんとアリシアは司令部へ。イサラと俺は車庫でエーデルワイスの整備を行っていた。
イサラが主に整備をしつつ、俺が見学もかねて助手としていろいろ手伝っていると、ウェルキンさんたちが戻ってきた。第7小隊誕生後の初出陣、ヴァーゼル橋の奪還の第一歩である河川敷の敵拠点制圧を任された。
まあ、ウェルキンさんの指揮の元、俺は装填手としてエーデルワイスに乗り込んでいたが、主に特に危なげもなく勝利できたのでカット。
で、制圧した後のことだった。
「質問の続きなんだけど…」
従軍記者であるエレットさんがウェルキンさんを戦車の上で質問攻めにしていた。
最初は名乗らなかったから、民間人と思ったアリシアに止めに入られたが、従軍記者であることを名乗ったあと、何事もなかったかのように再び質問攻めをしていた。それを見ながら呆れるアリシア。
その質問攻めになっているウェルキンさんとエレットさんのやり取りを俺とイサラは戦車の中で聞いていた。
「あんだけ質問攻めにあったらタジタジになりそう」
「兄さんも疲れているから休ませたいのですが…」
ふむ、そうだな…。ちょっと取材は後回しにしてもらおうかな?
「おーいウェルキンさん。ちょっと見てほしい部分があるんだけど」
ハッチから顔を出して、ウェルキンさんを呼ぶ。
「あら、何か用事みたいね。それでは、また後ほど質問させていただくわ」
そういってジャンプして戦車を降りるエレットさん。着地するとすぐ駆け出していった。ほかの人に取材しにいったんだろうな。
「もしかして助け船を出してくれたのかな?」
戦車の中に入りながらウェルキンさんが声をかけてきた。なぜバレたし。
「本当に戦車に対することだったらイサラからくると思うし、タジタジになってたところでいいタイミングで声をかけてくれたからさ」
「いやー、指揮とかで疲れているでしょうし、直後くらいは休んで方がいいかと思って。まあ、先延ばしにしただけなので結局後からもう一度取材来ると思いますけど」
「ははは、それでもありがとう」
朗らかに笑うウェルキンさんの隣で、これまた朗らかに笑うイサラ。やっぱこの兄妹は並んで笑うのが絵になるなぁ。
その後、ある程度休んだ後に外に出たウェルキンさんだったけど、速攻でエレットさんに捕まっていた。南無三。
エレットさんに捕まっているウェルキンさんから視線を逸らすと、赤毛のねーちゃんと厳ついおっさんが2人…というよりもウェルキンさんをにらんでいた。あー、奪還前だからまだだったねそういや…。
翌日、上の人たちが奪還作戦の次の手を考える中、エレットさんが第7小隊の人たちに話を聞きまわっていた。
整備が一息ついたので休憩がてらエーデルワイス号を眺めていると、こっちにも取材に来た。んで、やっぱり聞かれたのがウェルキンさんのことだった。
「たまたま立ち寄った村がブルールで、その際にウェルキン隊長と知り合った、と。それからの付き合いなんだ」
「ええ、そうなんですよ」
さすがに川から流れてきた、といっても信じてもらえないだろうから、立ち寄ったことにした。
「で、あなたから見てどんな人なの?」
「見た目通り、穏やかで優しい人ですね。見ず知らずの自分を拾ってもらいましたし」
「ふむふむ。で、その時にイサラさんとも知り合った、と」
「ええ」
少し考えた後にエレットさんはからかうような笑顔になりながら質問を続ける。
「・・・で、どうなの?イサラさんとは?」
「・・・なんでイサラの名前が出てくるんですか?」
「ボーイ・ミーツ・ガールだし、そういう感じかなと思って。イサラさんも可愛いし」
「いやいやそんなんじゃないですよイサラにもよくしてもらってますしだけど」
「はいはい、照れない照れない」
分かってますよオーラを出しながらあしらうエレットさん。なんでこの世界の女性は隙あらばからかってくるんですかね…。
ある程度からかったあと、「ふー、満足」と言いながら他の人に取材に行ったエレットさんでした。途中から取材というよりかはからかい目的っぽい気がしたけどね!
ヴァーゼル市街地戦(カット)とエレット取材開始まで。エレットさんの断章については本編に含みます。
戦闘描写や主人公の戦争への葛藤とか苦悩をどうするか悩みましたが、話が重くなるというのと、イサラ生存ルートまでが主題なのでカットしました。もしかしたらさらっと追加で断章とかで話を書くかも?