薄月の航跡   作:オーバードライヴ
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さてさて、いよいよ提督の登場です。

それでは、抜錨!


対峙




 睦月の目の前で三笠が組んだ手を解く。

「病院で休んでいるところ悪いな、どうしても早いうちに顔を合わせたくてね。睦月がわざわざ軍敷地まで連れ込んだ男がどれだけ美形か確かめておきたかったんだ」

 そう言われて、睦月の顔が一気に赤くなった。睦月と同じ緑色の角襟セーラーを着た少女がくすりと笑う。

「ち、違いますっ! 連れ込んだんじゃなくて上妻さんが後から勝手に付いてきたのですっ!」
「なんだ、ストーカーだったわけか」

 真顔でそう言った三笠に少女たち数人が噴き出した。

「睦月姉ぇ、一応命の恩人にその言いぐさはないんじゃない?」

 赤いフレームが目立つ眼鏡をかけた少女が欠伸をかみ殺しながらそう言った。

「そうそう、嘘はいけないわよ、睦月ちゃん? 戦闘が終わってからユニットハンガーに取って返して、呼吸あるのに人工呼吸しようとしたりするしねぇ」
「き、如月ちゃんっ!」

 睦月が腕まで真っ赤にしたまま、同じ制服の少女の名前を叫ぶが、当の呼ばれた本人はどこ吹く風だ。

「むっちゃんがそこまで積極的だったなんて知らなかったぴょん!」
「睦月姉さん大胆ですね……」
「卯月ちゃんもそんなこと言わないっ! 三日月ちゃんも信じちゃダメ!」
「でも人工呼吸しようとしたのは本当だよねー」
「なんで文月ちゃん知ってるの!?」
「あの時まだ如月ちゃんとリンクしてたから見えてたよぉ?」
「だからあれはただ上妻さんが死にそうになってたから焦ってただけで……べつにそんなやましい意味合いは……!」
「そろそろ口を噤んだほうがいいぞ睦月姉。ひたすら墓穴掘るだけだ」
「にゃ、にゃあああああああっ!」

 銀にも見える白い髪を揺らす少女にさらりと言われ睦月が撃沈。周囲に笑いが起こった。

「……そんな男の実物を眺めてみてどうですか?」
「そこまで整った顔立ちではないな。顔の良し悪しで睦月が連れてきたならその感性が少々興味深い」
「……だから提督、そんな理由じゃないってずっと説明したのに……」

 すでに疲れ切った表情を浮かべる睦月に三笠が鼻を鳴らした。

「冗談だ。睦月が連れ込んだ男というだけでも興味深いが、それ以上の理由がないわけないだろう」

 そう言って三笠は一枚の紙を机から取り上げ、ひらひらと振った。小さい文字がびっしりと並んだ紙を見て、上妻は僅かに眉をひそめた。所々に蛍光マーカーが引いてあるところを見ると、三笠の前に誰かがそれを確認し、三笠に提出したものなのだろう。

「このコード、見覚えがあるだろう?」
「睦月ちゃんの使っていたプログラムコードですね」
「正確には貴様が手を加えて改変したコードだ。これを見てOS担当がひっくり返っていたぞ。コードがトータルでかなり短くなったんだから本職としては悔しいだろうが、問題の本質はそこじゃない。これにかけた時間だ」

 そう言うとすっと目を細める三笠。

「攻勢防壁を含む軍の防壁を4.3秒で突破して管理者権限を掌握、そのあと一分かからず照準システムの改変、動力リソースとその制御プログラムの改変も完了させた。しかも大きなバグもなく改変した。控えめに言っても特A級の実力と言っていいだろう。――――貴様、何者だ?」
「……軍の権限があればわかるかと思いますが」

 硬い声で返すと、三笠は表情を変えずに口を開いた。

「それでも貴様の口から聞いたほうが早いし手っ取り早いからな」

 夕日に薄雲が差したのか部屋の明るさが一気に下がった。三笠の金色の目が強く光ってみえる。

「……経済産業省公認でホワイトハッカーをやっています。まぁ、薄給なので小遣い稼ぎ程度にしかなりませんが」
「小遣い稼ぎ程度でこの仕事ができるならば貴様は搾取されているのを自覚するべきだ」
「学生なのでその程度でも結構な稼ぎなんですよ」
「所属は?」
「国立情報先端技術大学院大学」
「JAISITの呉キャンパスか」

 それを聞いた三笠が含み笑いを浮かべる。

「貴様、持病は?」
「……ありません」
「視力は?」
「右1.2、左1.0です」
「家族は?」
「広島に妹と祖母がいますが、他には。……いったい何が聞きたいんです?」

 そう聞かれて三笠が笑みを深めた。

「単刀直入に言おうか。上妻正敏、私の部下になれ」
「……はい?」

 あっけにとられていると三笠が表情を変えないまま続ける。

「甲種指定害獣――――通称『深海棲艦』が現れて一五年が経ってもなお、人間は制海権を回復することができずにいる。その状況を打開するには様々な条件が必要だ。情報・兵站・人員・時期・地理的条件・エトセトラ・エトセトラ。さまざまな条件を揃えることが必要になる」

 そう言って三笠が両手を改めて顔の前で組んだ。ゆっくりと部屋の明るさが回復していく。日没が近いのか射しこむ光がどんどん赤みを増していく。

「天候などは操作不可能な要素だが、操作可能な要素も多々ある。そしてそれらの根源にあるのは優秀な人材であり、高性能な武装であり、それを組み合わせて効率的に動かしていくシステムだ」

 そう言いきって三笠が立ち上がり、デスクの後ろの壁に設えられたキャビネットに手を掛けた。

「それらのどれが欠けたとしても軍隊はまともに機能しなくなる。そして、現状の日本国海軍はまともに機能しているとは言い難い。優秀な人材を縛り付ける階級主義、利権に塗れた軍産複合体、戦場の足を引っ張る文書主義……挙げればきりがないが、どれも保身と自衛のためのシステムだ」

 キャビネットから取り出したのは黒漆に金メッキが映える鞘に収まった短剣だった。それを手に三笠が続ける。

「そうして馴れ合いのようなシステムに頼った結果が今の日本だ。最低限のシーレーン防衛をした後には、ただ保身のため、国際社会での体面を保つための活動でしかない。その日和見の結果として、今でも沖縄と択捉を除く外洋島嶼部は未だ奪還できず、国際貿易は大航海時代の方がましといった状況だ。それを打開するために、現状に警鐘を鳴らすことができるような部隊。即ちこれまでの軍組織とは異なるシステムが必要だ」

 ゆっくりと柄を引き抜くと赤い夕陽を照り返す銀の刃が現れる。

「独立攻勢、最優先ライン、保身と自衛のためではない、階級なしの実力主義。その精鋭部隊には貴様のような一芸に秀でた特殊な事情を持つ人材が必要だ」

 銀の刃に反射した夕陽が上妻たちを照らした。

「海軍のかの字も知らない俺をスカウトする気ですか?」
「そうだ」

 上妻の問に三笠は即答。驚いた顔をしたのがばれたのか睦月の方をちらりと見て三笠が続ける。

「組織というのは高度に特殊化すればするほど緩慢な死を迎える定めにある。統一の規格のみで構成されたシステムは、小さな想定外ひとつで機能しなくなり、外的要因の変化に対応できないまま死に絶える。それを防ぐためには常にさまざまな因子を取り入れ、可塑性を保つ必要がある。貴様はまだ学生で、軍にこれまでかかわりがなかった人間だ。ただ十数分話しただけの少女のために命がけで飛び込んでくるようなお人好しで、高度なクラッキング能力を持つ。そんな奇特な人材はこれまでの部隊には存在しなかった。このロートルだらけの部隊にこそ必要な人材だ」
「ロートル……?」

 上妻が部屋を見回す。部屋の中には彼と三笠を除けば、睦月たち、ローティーンにしか見えない子どもの姿しかないのだからある意味当然のことかもしれない。

「兵器というのは常に最新のシステムに対応するべく頻繁にアップデートされていく。そうして新たな価値観や規格に取り残されるまで酷使を続けられる」
「……?」

 どこか薄ら寒いものを感じたのか上妻の表情が硬くなる。睦月はそれをどこか不安な目で盗み見た。

「貴様はハッカーだそうだから、わかりやすい例えを出してやろう。貴様が電子空間に繋がり、睦月に介入するのに使ったそのデバイスは何だ?」

 質問の意味を図りかねていると、答えを待たずに三笠が口を開く。

「スーパーリンカー……今、軍民共に広く使われているブレイン-コンピュータ・インターフェースだ。それにより様々な情報を直接、高度にやり取りすることが可能になった。ならばそれを使うために必要な条件はなんだ?」

 短刀を鞘に半分戻して三笠は笑う。この問もまた上妻に答えを求めていない。

「答えはシンプル――――規格だ。情報のやり取りだけじゃない。情報の生成から・暗号化・圧縮・送受信・解凍・解読、そしてその情報の活用とその結果を受けて新たに生成される情報……すべてが0と1で構成される電子空間において、物事が意味消失を迎えないためには、ルールに適合し、規格に合致せねばならない。その鉄則に則って今のシステムは動いている。貴様が行ったプログラミングもまた、現在有効な規格に適合し、現状機能しているシステムに乗せたからこそ、睦月は前回の戦闘で成果をあげ、生き残った」

 短刀がパチンと小気味良い音を立てて鞘にはまり込んだ。

「だが、貴様が乗せたプログラム……それが今後も最善であるとは限らない。いつしかそれが下策となる日は必ず訪れるだろう。技術革新、戦略の変化、地域差などの要因によって、最善は毎秒ごとに変化し続ける。現状の最善はそれらが変化すれば当然時代遅れになる」

 短剣を右手の上で弄んでいた三笠がすっと目を細めた。

「当然、規格にはそれらに対応するためのバッファが確保されている。しかし現状の規格では対応できない状況が発生したなら、それは使えなくなる。待っているのは次の規格へのバージョンアップだ。道理だろう? そうして次の規格に対応できないものが現れたらどうなると思う?」

 三笠は再び短刀を引き抜いて鞘を机に置いた。そして刃を包み込むように左手を添える。そっとその手を開けば左の薬指からわずかに血がにじんでいた。

「そんなもの危なっかしくて非効率だからパージされる。民間ならシステムサポートの打ち切りとでもいえばわかりやすいか?」

 そうして浮かんだ笑みは――――どこか自嘲の色が混じっていた。

「ここに居る貴様を除く全員が、すでにその域に入っている」
「……どういうことです?」
「言い換えるならば貴様を除く全員が人間として扱われていないということだ」

 にわかには信じがたいことを言われ、上妻が息を飲む。

「睦月」
「にゃっ!?」

 いきなり話題を振られると思っていなかったせいで、飛び上がるほど驚いた睦月が慌てて姿勢を正す。

「貴様の所属は?」
「日本海軍連合艦隊隷下第七十五試験艦隊、です」

 それを聞くと三笠がすぐ切り替えした。

「第七十五試験艦隊という名前の部隊はどこに存在する?」

 そういわれ、睦月は無表情に頷く。

「第七十五試験艦隊という名前は通称で、そんな名前の部隊は正式には存在しないのです」
「そのとおり。海軍のどこを探しても第七十五試験艦隊という名前を見つけることはできない。理由はいたってシンプルだ。――――彼女たちは軍という組織において人ではなく物として登録されているためだ」

 そういって三笠は薄く微笑んだ。ぞっとするような冷たい笑みだった。

「日本海軍 連合艦隊直属 開発隊群 艦艇開発隊隷下、搭載艤装研究部 特殊艤装研究課、第七十五分室の備品。それが彼女たちの実態だ。軍組織の中で艦隊配備型特殊兵装――――通称『艦娘』は兵器であり、各部隊に配備される備品として管理、運用されている。軍産複合体で研究・開発された戦闘兵器は備品として管理されるからだ」

 上妻の手が強く握りこまれるのが見えないのか三笠はどこか上機嫌にも取れる声色でつづけた。

「この子たちに与えられるのは姓名、性別、血液型などが打ち抜かれたドッグタグではなく、シリアルナンバーと使用部品の形式が記載された管理コードだ。人の形をしていても、求められるのは機械としての性能と効率、そして成果のみ。そうして第一線でこの国の最低限の平和を守ってきたのがこの子たちだ」

 そう言って両腕を広げた。

「旧式化した結果、最前線で戦うには少々非効率が発生した。そうして送りだされたのは新しい規格へのバージョンアップのための試験を行う、特殊艤装研究課第七十五分室、即ち今貴様がいるこの場所だ。テスターとして様々な兵器を運用する。万が一事故が起きても惜しくはない素材としてうってつけだったわけだ」

 最前線じゃないからと言って楽でもないんだ。とどこか楽しそうに三笠が笑う。

「この子たちは後数年もしないうちに軍用兵器としては完全に取り残される。旧式兵器の末路は二つに一つだ。発展途上国への売却か、スクラップか。遠くない未来にこの子たちに降りかかる現実がそれだ。もっともそれまで生き残っていればの話だがね」
「……黙って聞いてれば、人を物みたいに言いやがって」

 上妻の低い声が床を這うように響いた。

「そうやって、子どもを食い物にして国のためとか未来のためとかほざいてるのかよ」

 声が震えているがその感情が何なのか睦月には理解できなかった。

「紙飛行機で遊んで、笑って、妹思いで……そんな子どもを戦場に追い立てるのがあんたらの正義か!」
「そうだ」

 三笠が即答し、上妻が怯む。

「正義なんてものは言ったもの勝ちだがね。これらの残骸の上に我々は平和を築く。そうすることで、この国の最低限を守ってきた。この国の純粋で残酷な貴様のような偽善者さえも守ってきた」
「本当にそれが正義だと思ってるのか?」
「ハッ!」

 それを聞いた三笠が怒気を交えて鼻で笑った。くるくると彼女の右手の上で回っていたむき身短刀がピタリと動きを止めた。彼女の声が太く響く。

「では聞こうじゃないか、仮初の平和に踊らされた偽善者よ――――貴様の思い描く理想の正義とはどんなものなのか」

 そう言った直後、短刀が鋭い音を立てて机に突き刺さった。

「そんなものがどこにある」

 地を這うような重さを持って三笠の声が響いた。鋭い感情が彼女の双眸をよぎる。

「ありもしないさ、どこにも!」

 怒った彼女の声が飛ぶ。

「夢幻は寝てから言え。そんな口だけの甘い理想がかなうならとっくに世界平和だ!」

 三笠は一気呵成にそこまで言うと、息を整えて再度口を開いた。

「最大多数の最大幸福、民主主義の原則に乗っ取った行動だ。それを愚直に守ってきた我々を正義と呼ばず何と呼ぶ? 何の疑問を感じることなくただそれを享受してきた貴様に非難される筋合いはない」

 机に刺した短剣の柄に手を置いて、三笠は冷めた目で上妻を見た。

「これらがなければ日本はとっくに干上がっていたはずだ。石油・石炭・天然ガス、鉄鉱石にボーキサイト、イットリウム・ネオジウムをはじめとするレアアース類……この国に必要不可欠な鉱物資源にとことん恵まれないにも関わらず、我が国が未だ技術大国として生き残り、高度なインフラと高い市民自治を維持できているのはなぜだ? それを我が物顔で享受しているのは誰だ? それを貴様はどう評価する?」

 トントンと短剣の柄を叩く音が言葉の間を埋めていく。

「ここの備品の活躍が人様の目に触れないということは世の中がある程度の水準を取り戻したということだろう。自らの周りが快適になれば、それがどんなプロセスを踏んで得られたものかは関係ないわけだ。そんな現状をただ消費する市民の一人である貴様はどんな高説を垂れてくれるんだ?」

 そう問われても上妻に答えるべき言葉は無かった。ただ意地でも目線を逸らして溜まるかと歯を食いしばる。

「……そこで言い返せないなら、そこが貴様の正義の限界だ」

 三笠がどこか穏やかにそう言うと。机に刺さったままの短剣を引き抜き、鞘に戻した。

「正義は議論の種になるが、力は非常にはっきりしている。そのため人は正義に力を与えることができなかった。このようにして人は、正しいものを強くできなかったので、強いものを正しいとしたのである」

 そう言いながら短剣を上妻の方に差し出した。

「この世界においての正義とは力だ。力のあるものが正義を定義し、それを成す。自らの正義が正しいと思うならそれに見合った力を手に入れるほかに方法はない」

 上妻の手にそれを押し付ける様にして持たせ、言葉を継ぐ。

「無知で善良な市民のために、これを消費していくこの状況を貴様が憂うならば、貴様は今後の身の振り方を決しなければならない。自らの安い正義とちゃちな使命感に従い、ハッカーとしてどこかにリークするか? 目と耳を塞ぎ、口を噤んだ人間として社会に戻るか? それとも」

 私の部隊に来て内側から変えるか? とどこか挑発的な口調で問いかける。

「貴様には私から二つの選択肢を提供できる。一つ目はその短剣、使い方は任せるが、少なくとも気にいらない奴の臓物を抉るぐらいはできるだろう。二つ目は――――」

 そう言ってデスクに置かれたのは一枚の書類だった。上妻に向けておかれたその書類の一番上にタイトルが見えた。――――海軍士官候補生学校入学宣誓書。



「もし、その力を手にしたいと願うなら、この書類にサインをしろ。私が貴様にその力を与えてやる」










    †







 司令官室を去った上妻を軽く見送って三笠が苦笑いを浮かべた。

「……すまなかったな、睦月。熱くなりすぎた」
「いえ……そうなるって少し思っていたのです」
「……まったく、人のことを笑えんな」

 そう言いながらも三笠はどこか疲れたように椅子の背に体重を預けた。椅子が抗議するようにギシリと鳴る。

「案外彼は司令官と似ているところあるんじゃないかしら?」

 どこか乾いた笑みを送る如月がそう言えば、三笠はどこか遠くに目の焦点を合わせた。

「平和、か」
「……提督?」
「……あれで手駒が確保できるなら安いものだろう。なぁ睦月」
「ふぇっ!?」

 また顔をどこか赤くする睦月を見て諧謔心を一通り満足させる

「それにしても司令官、期待する人にきつくあたる癖、何とかしたほうがいいんじゃないのー?」
「不満か、望月?」
「んや? 不満なんて無いよー。けどさぁ、それであの人がムキになったらどうする気だったの?」
「その時はそれまでの男だということだ。感情的になることは悪くはないが、感情に従うあまり、機会を失すような馬鹿の居場所はここにはない」

 そう言ってどこか不機嫌そうに三笠が鼻を鳴らす。如月がデスクに置かれた紙を見て微笑んだ。

「なら彼は合格ね?」
「知らん。使えない奴ならすぐにパージするだけだ」

 そう言いつつも三笠の口の端には笑みが張り付いていた。

「貴様らはどう思った?」
「結構熱い人だったわねぇ。嫌いじゃないわよ?」

 如月が笑えば視線を送られた望月が肩をすくめる。

「まぁいい人なんじゃないの? 良くも悪くも」
「芯の強いひとかな……って思いました。」

 薄い青色の髪を揺らしてそう言う少女の後ろから抱きつくような姿勢で桃色の髪の少女が続ける。

「まさかしれいかんと言い合うとは思ってなかったぴょん!」
「司令官と真正面からぶつかって意見曲げなかったもんね」
「しれーかんと言い合うなんて勇気あるよねぇ」
「卯月に皐月に文月、私をなんだと思っている?」

 問い返せばとっさに肩をすくめる三人組に溜息をつく。それに苦笑いしながら黒髪を跳ねさせて少女が笑う。

「司令官も芯の強いところもあるので、これから賑やかになるかもですね」
「嬉しそうだな、三日月」
「仲間が増えるのはいいことです。それだけ戦いにも幅が広がりますし」
「だな。それは喜ばしいことだ」

 緑色という珍しい色の髪の隣では、白に近い銀髪の少女が腕を組んでいた。

「だが……わざわざ軍属を選ぶというのは、少々愚かな選択かもしれんがな」
「菊月ちゃんは、あんまり嬉しくないのぉ?」

 文月が聞き返せば、菊月はどこか複雑そうな顔をした。

「軍属になるということは、何かを失うことになるかもしれないということだろう。それを背負わせていいのかと思うとな」

 その言葉に目線を下げるのは睦月だ。

「良かったのか、にゃぁ……」
「今更なんだ? 罪悪感にでも駆られたか」

 三笠はそう言って鼻を鳴らした。

「ここに来ると決めたのはあの男の判断だ。貴様らがそれを憂う必要はない。他人の決断に勝手に判断を下し、それを止められた、変えられたと思うのは、傲慢というものだぞ」

 三笠はそう言って睦月の頭に左手乗せた。驚いたのか睦月が「にゃふっ」と変な声を漏らす。

「あの男の判断がどう出るか、それが何を意味するかは後にならなければわからない。それでも今は新たな仲間が来たことを祝っても問題はなかろう」

 そう言う三笠の目線の先には上妻正敏と右上がりの癖の強いサインと拇印が押された紙があった。





「――――ようこそクソッタレな戦場へ、上妻正敏特務技官候補生」








さて……いかがだったでしょうか?

感想・意見・要望はお気軽にどうぞ。
それでは、次回お会いしましょう。






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