薄月の航跡   作:オーバードライヴ/ドクタークレフ

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第三話は少し落ち着いた話になったかな……

それでは、抜錨!


再会

 

 

 鈍痛も数が増えると激痛になる。

 

 

 そんなことが寝起きの頭をよぎると同時に、上妻は呻きを上げた。

 

「……どこだここ」

 

 声を出そうとして少々喉が痛いことに気が付いた。ベッドに横たえられているらしいが、上妻にはここがどこだかさっぱりわからない。ベッドの横には点滴器があるから医療機関であるのは間違いなさそうだ。高い位置にある窓にはどうやら鉄格子がはまっているらしく、普通の病院じゃなさそうなのが少々気がかりではある。廊下側には巨大な鏡とドアが見える。

 

 上体を起こそうとすると左の脇腹に違和を覚える。やはりどこか張る感覚だ。それでも耐えられない痛みではなく、ゆっくりと体を起こした。ベッドの上にはKOZUMA Masatoshiとなぜかローマ字表示のスリップが差されている。

 

「……とりあえず、だれか呼ぶか」

 

 誰にでもなく呟いて、ナースコールを押すと、ほどなくして薄緑の作業着を着た看護婦がやってきた。

 

「お目覚め? 気分は」

「少し脇腹が張るくらいですけど……あの……」

「ここはどこか、今は何日か、とかかしら?」

 

 どこか愛想の悪い看護婦が診察用具を手早く広げながら質問を先回りした。

 

「今日は五月一六日、キミがここに収容されてから三日が経ってるわ。失血でなかなか危険だったのよ? 生きてるだけでも感謝しなさいな」

 

 そう言いながら脈をとったり喉の奥を見たりと結構強引に見ていく。

 

「ここは呉地方総監部内特殊医療室、呉市内がいろいろ壊滅状態のなかで個室が与えられるんだから、結構なVIP待遇よ?」

 

 喉に突っ込まれていた木の棒が抜けるのを待って口を開く。

 

「……呉海軍病院じゃないんですか?」

「まぁね、ここはそこの分室扱い。あんなところにいたらアンタ逃げるかもしれないわけだし」

「逃げるって……俺はなにも……」

「軍施設への不法侵入及び、軍事機密情報への不当なアクセス及び改竄。身に覚えは?」

「……」

「答えられないならそういうことよ。私は知らないし知りたくもないけど、そういう内容に触れた人物を深海棲艦のおかげで重傷者でパンクした呉病院に入れるわけにはいかないってわけ。おわかり?」

 

 そう言うと診察用具を雑に片づける。本当にこんな簡単な診察で大丈夫なのかこちらが不安になる雑さだ。

 

「隔離病棟だけどまぁ現状だと一番快適な場所なはずよ? トイレはそっち。自殺されないようにひも系統は全部取っ払ってあるからズボンずり落ちやすいけどまぁ問題ないでしょう。それに」

 

 看護婦がそう言って上妻を覗きこんだ。

 

「艦娘の子を助けようと見栄を張ったんでしょ? その代償ぐらい背負って見せなきゃその子が泣くわよ?」

 

 それじゃ、しばらくしたら医者がくるから。といってその看護婦は出ていった。扉が閉まると錠の落ちる音が聞こえる。隔離病棟というのは本当らしい。

 

「……軍施設への不法侵入及び、軍事機密情報への不当なアクセス及び改竄、か」

 

 言われてみればそうだ。傍から見ればそう解釈されてしかるべき状況だ。

 

 

 

「――――それでも、間違ってない」

 

 

 

 上妻はそう呟き、両の掌をじっと見つめる。溜息をついてゆっくりと横になった。

 

 

 

 

 

 

 

    †

 

 

 

 

 

 

 

 それから二日間は特に何も起こらなかった。

 

 退官間近といった雰囲気の医者から退院まで一週間かからないだろうという診察を、若いものはいいねぇと愚痴入りで聞かされてからは急速に体力を回復していった。娯楽といえばが毎朝届けられる電子新聞のプリント版くらいしかなく(インターネットなどは使えないように封鎖されているらしい)、時間をかなり持て余す以外は確かに快適だった。

 広島から安否確認で妹が飛んできたらしいというのをあの愛想の悪い看護婦から聞いた。上妻の扱いが一応被疑者なので面会はできないから追い返したらしい。かなりしおらしい妹さんで似てないのねとは看護婦の談――――余計なお世話だ。

 

 そんな中迎えた三日目の夕方、ドアをノックする音が聞こえてきた。顔を向けるとドアではなくマジックミラーが透けていて、その向こうにどこか気恥ずかしげな少女が立っている。緑色の角襟セーラーには見覚えがあった。壁の横にある受話器を上げているのでどうやらこちらと通話ができるらしい。上妻もベッドサイドにある電話の受話器を上げた。ここでの会話は記録され、必要とされた場合はしかるべき手続きを経て云々という自動音声が流れた後電話がつながる。

 

「久しぶりってわけでもないかな、睦月ちゃん大丈夫?」

『……それはこっちのセリフです。上妻さんこそ大丈夫ですか?』

「時間があり余って退屈だ」

 

 そう笑えば、つられたように睦月も笑った。そして、お互いに黙り込んでしまった。

 

「……なぁ」

『……あのっ』

 

 同時に声をかけて、同時に黙る。

 

『上妻さん先どうぞ、です』

「こういうときはレディーファーストじゃない?」

 

 そう言うと少しためらうような間が空いた。

 

『あの時……なにをしたのです?』

 

 あの時といわれて、上妻は少し言葉に詰まった。何を指しているのかはすぐに思いあたる。睦月に連れ込まれた建物でのクラッキングだ。

 

『上妻さんがいじってから、艤装が軽くなったみたいに感じたのです。ほんとに体が軽くなったみたいに感じて……』

「……うまくいってたんだな、よかった」

『え?』

 

 上妻が目線を少し下げて笑った。

 

「睦月ちゃんの使ってたプログラムにデバックを一通りかけて密結合でデバックが難しいところは初期化の後で再構成。ついでに武装の管理権限をリング3からリング-1へ移行してハイパーバイザーモードを適用。全システムの介入権限を掌握。それを使って余分な外部フィードバックを一時的に停止、スタンドアロン運用が可能なところはそれで動くようにして無駄な通信を減らして、その分を外部演算装置とのリンクに充てて、デバックで浮いた余剰リソースと一緒に照準とか駆動系の演算に回して……」

 

 そこまで話していると睦月の頭から煙が出ているのを見て苦笑いを浮かべた。

 

『えっと、つまりどういう……』

「要は睦月ちゃんの使ってたシステムの無駄を省いて、使いやすいように変えたってこと。軍用プログラムをどうこうするのは初めてだったから正直不安だったんだけどね」

 

 そう言うが睦月はどこか納得していないようだった。

 

「趣味でプログラミングとかをしてたけど、役に立ってよかったよ。睦月ちゃんのIDの権限が結構高かったのも助かった。最初から武装関係の制御権限あったし、管理者権限も楽に掌握できた」

『……あの、それに関して聞きたいことがあるんですけど……』

 

 なぜか妙にかしこまった様子で目線を下げる睦月に上妻は首を傾げる。顔が赤く染まっている睦月は緊張しているのか、妙な間が空いた。

 

『そのですね、女の子のスカートからパスケースを抜き取るのも、その……趣味の類だったりするのです……?』

「……ちょっと待って、何だって?」

『……上妻さんは女の子のスカートをまさぐる趣味とかあるんですか?』

「いやいやいやいや!?」

 

 その言いぐさに焦る上妻。

 

「そんな趣味ないから! あってたまるかそんな趣味!」

『本当ですか……?』

「そんな目で見るな俺を! クラッキングに必要だったから借りただけで……」

『でも男の人がスカートのどこにポケットがあるのか知ってるのって珍しくないですか?』

「妹がいるからたまたま知ってただけだって!」

 

 信じろよ! と素で叫ぶが睦月は黙りこくったままだ。まずい、このまま強くいっても逆に怪しいか? でも誤解を解かなければならないし……

 

「もう勘弁してくれよ……」

 

 どうあがいても怪しく見える気がして上妻が頭を抱えると受話器の奥から吹き出すような笑い声が響いてきた。

 

「……?」

『もう、上妻さん必死すぎなのです……!』

 

 そう言うとツボにはまってしまったのかずっと笑い続ける睦月。しまいにはお腹を抱えるようにして大笑いしている。

 

「もしかして……」

『……てへっ』

 

 そう言ってちょろっと舌を出す睦月に毒気を抜かれてしまったのか、上妻は力なく笑った。

 

『実は三笠さんに男の人でスカートのこと知ってるのって珍しいなって言われてたのです』

「……なかなか面白い方だね」

 

 辟易した様子でそう言うと、また睦月のツボに入ったのか肩を揺らして笑う。

 

『確かに面白い人かにゃぁ。あー、こんなに笑ったのも久々なのです』

「……そうなのかい?」

 

 そう聞くと睦月は笑顔で首を縦に振った。

 

『最近はいろいろ忙しかったし、ここ数日はてんてこ舞いだったのです』

「そうなんだ?」

『でも、睦月は正義の味方だから頑張ったのです』

 

 そう言うと睦月は笑みを上妻に向けた。

 

『上妻さんも無事に間に合ってよかったのです。睦月が戻った時にはもう顔は土気色だし、唇真っ青だし、体温も下がってるし、本当に怖かったのです』

「……そんなに危ない感じだったのか?」

『ですです』

 

 それを聞いて左手を脇腹にあてた。最新医療をつぎ込んだ成果なのか、だいぶ痛みはとれていた。急に大きく動かさなければ傷を意識することは無いぐらいには回復している。そんなことになっていたとは今さら想像はつかない。

 

『あの……上妻さん』

「どうした?」

 

 そう聞き返すと、ガラスの向こうの睦月の顔はどこか深刻そうな色に変わっていた。

 

『後悔……してませんか?』

「こうかいって……悔いるって意味の方だよな?」

『いったい誰がここでクルーズの方の航海を言いますかっ!?』

 

 反射的に叫び返してしまったのか、顔を赤くして俯く睦月。どこか戸惑うような間を置いて口を開く。

 

『……上妻さん、睦月を助けてくれたのに、こんなところに監禁されてるなんて、おかしいのです。もしかしたら、この後もずっと軍の監視を受けなきゃいけなくなるかもって聞かされて……とんでもないもの背負わせちゃった気がして』

「なんで俺が後悔してる前提で話を進めるんだ?」

 

 だってっ、と噛みつかれて上妻は続ける言葉を失った。

 

『もしかしたら、睦月のせいでずっとこの後このことを引きずらなきゃいけないかもしれないんですよ。この後も、ずっと……』

 

 上妻は噂レベルでしか知らないが、海外への移動制限や、通信の傍受など様々な制約を受けると聞く。今後の生活には様々な制限が入るかもしれない。

 

 それでも。

 

「俺は後悔してないぞ、睦月ちゃん」

 

 そう言ってベッドから立ち上がり、廊下の窓へと寄っていく。電話機ごと持ち上げて近くに寄ると、なんとか近くまで寄れた。

 

「テレビアニメとか、見ることあった?」

『……?』

 

 いきなりの話題転換に頭が追い付かないのか睦月はどこかぽかんとした表情を浮かべたままこくりと頷いた。

 

「日曜日とかに流してたヒーローもののアニメがあるだろ。男の子っていうのはみんなどこかそんなヒーローに憧れるものでさ、ヒーローになれるかもしれないってチャンスがあったら実際に頑張っちゃうんだ。それが身の丈以上でも、なんでもね」

 

 難儀なものだけどな。と上妻はどこか自嘲的に笑った。

 

「それにさ。こんなかわいい子が、正義の味方って言って、大の大人が震えあがるような敵を相手にして飛び込んでいくのを見てさ……不謹慎だけど、かっこいいと思った。あんな子を死なせたくないと思ったし、今も思ってる。だから頑張った」

 

 そう言われてどこか複雑そうな顔をする睦月。上妻は窓ガラスにそっと手を伸ばした。彼女に触れることは叶わないが、それでも少しでも近づいてみたかった。

 

「俺は俺なりの正義の味方になろうとしただけだよ。それだけだ。その結果に満足してるし、後悔なんてしてないんだ」

『本当に?』

「本当に」

 

 睦月がガラス越しに手を重ねてくる。透明度の高いガラスは想像よりも厚みがあり、互いの熱が伝わることはなかった。

 

「そう言えば、睦月ちゃんの方は大丈夫だったの?」

『にゃ?』

「あのあと、何もなかった?」

 

 そう聞けば睦月は少し渋い表情を浮かべる。

 

『民間人を許可なくハンガーに入れるとは何事だーって少し絞られたのです。でもきっと上妻さんに比べれば軽いものなのです』

「怪我とかは?」

『上妻さんの血で制服が一着駄目になった以外はなんともないのね』

「う、すまん」

『いいのです。……初めて、睦月が誰かを守れたって実感できたの』

 

 そう言う笑顔はどこか儚げだ。

 

『睦月が戦うようになってから、結構時間が経ってるんだけど、深海棲艦と戦う中で、誰かを守れたって思えるときって実はないのね。睦月の所属は新兵器の試験とかを行う部署だから直接戦うことは少ないし、戦うとしてもずっと向こうの海の上で、陸なんて見えないところで戦うことがほとんど。結果としてみんなを守ってても、どこか実感がわかないのです。でも、今回は上妻さんを守れたから、守れてよかったって思うのです』

 

 そう言う睦月の笑顔を見て、上妻はどんな顔をしたらいいかわからなかった。

 

 この少女にどれだけの重責を預けているのだろう。この少女の細い両肩にどれだけの責務を押しつけているのだろう。

 

『……だから、上妻さんが生きててくれて、本当に嬉しいのです。それが、ほんとに……』

 

 感極まったのか、言葉尻が震える。泣き声を聞かれたくないのか、ガラスの向こうで通話口を押える彼女を見て、僅かに目を伏せる。看護婦が言った一言が頭をよぎる。

 

 

――――艦娘の子を助けようと見栄を張ったんでしょ? その代償ぐらい背負って見せなきゃその子が泣くわよ?

 

 

 どれだけ守られてきたのだろう。呉が戦火を免れていたその背景で、どれだけの犠牲があったのだろう。それを守り、今、目の前の男を守れてよかったと泣く少女に、どんな言葉をかければよいのだろう。

 

 かけるべき言葉が見つからない中で、幾許かの時間が流れた。

 

『……みっともないところ見せちゃいました』

 

 どこかバツの悪そうな顔をする睦月に首を振って応える。

 

「そんなことないよ」

『ほかの人に言っちゃ嫌ですからね?』

 

 はにかんだ彼女に笑い返すと、彼女がいきなり横を向いた。何だろうと思うと海軍の制服……開襟の制服だから水兵ではないのだろう……を着た男がやってきた。睦月とその男が敬礼を交わし、何かを言っている。受話器からは何かを話している声は聞こえるが、内容は聞こえなかった。

 

 しばらくして男が睦月から受話器を受けとった。

 

『上妻正敏だな?』

「そうですが……」

『敷島准将が君と会いたいそうだ。早く用意をしたまえ』

 

 どこか高圧的にそう言われ眉をひそめそうになったが、どこか不安げな睦月の表情を見て踏みとどまった。

 

「用意といっても……服もないんですが……」

『……わかった。なにか着る物を用意させよう』

 

 すぐに用意された服はいかにも軍用とわかるものだった。肩には階級章でも通すのかそれ用の布が打たれ、スラックスも生地が厚めの丈夫なものだった。着替え終わったタイミングを見計らってか(実際マジックミラー越しに監視していたのだろう)、病室のドアがタイミングよく開かれた。外に出ると小銃を持った兵士もいて、少々げんなりだ。

 

「行くぞ」

 

 顎で指されるようにして連れていかれる。上妻の後ろを睦月がピッタリとついてきた。

 

「もしかして、睦月ちゃんも来るの?」

「敷島提督は、睦月の上官だから、一緒に呼び出されてるの。どうなるのかにゃぁ……」

 

 そういう睦月はどこか不安げだ。そんな睦月の様子も上妻のどこか硬い雰囲気も気にしないように男が先導する。一度建物の外に出て夕陽の中を連れていかれたのはレンガ造りの古い建物だった。入り口の脇には木製の看板が掛けられ『海軍呉守備隊第一分庁舎』とある。

 どこか軋んだ音がする板張りの廊下を進む。東向きの廊下は時代遅れな電球式の明かりが灯り、どこか時代に取り残されたような感覚がある。

 

「ここは……」

「呉鎮守府で最初にできた建物なんだって。もう設備が古いから鎮守府守備隊とか連合艦隊構成戦隊とかの基本機能は隣の本庁舎とか第二庁舎とかにあるのです」

 

 睦月の小声の解説に上妻はどこか納得したように頷いた。木枠の窓には空襲時のガラス飛散対策らしいテープが張られており、先の戦闘で壊れたらしい窓には応急処置的に、ベニヤ板が打ちつけられていて少々痛々しい。

 

「この建物に、睦月ちゃんの上官が……?」

「うん、ちょっと厳しい人だけどね。提督、怒ってないといいなぁ……」

 

 睦月の目が泳ぐ。かなり不安らしい。

 上妻はかなり長い廊下を進みながら考える。俺に会いたいといっていたらしい提督とはどんな人だろう。上妻の頭の中では提督といえば、東郷平八郎ぐらいしか浮かばない。どんな人が待っているか皆目見当もつかない。

 廊下の角を曲がった突き当り、窓もなくなり薄暗い廊下の突き当りのドアの前で道案内をしていた男が足を止めた。睦月に顎をしゃくるようにして入るように指示を出す。ドア枠の上には『第七十五分室』と記された安いセルロイドの札がかかっていた。

 

 睦月は恐る恐るドアをノックする。するとすぐに「――――入れ」と返事が返ってきた。

 

(――――――女性の声?)

 

 上妻が意外に思う間にも、睦月がゆっくりとドアを開けた、西日が射しこむ部屋は風に揺れるレースカーテン越しでも眩しいほどに明るく、木や漆喰を使った部屋を照らしていた。

 上妻の目に真っ先に飛び込んできたのは二列に並んだ人の影だった。背格好は皆睦月と同じくらいに見える、どこかあどけなさを残す九対の双眸が上妻の方を見た。中に青紫色や、きれいなピンク色、薄い緑色など珍しい髪の色の子が混じっている。

 睦月がリードするように入っていく。それについていくようにして部屋に入っていくと、線香のような香の匂いがふわりと鼻をついた。そのままゆっくりと前に進む。部屋の壁には呉近郊の海図が大きく掛けてあり、天井近くの一番目立つところには部隊徽章らしいエンブレムが光っていた。北斗七星を抱く三日月紋を守る二つの錨、そのエンブレムの前に―――――その提督は座っていた。

 

「――――――。」

 

 落ち着いた色合いの髪は肩にゆったりとかかる長さであり、軍服を着ていなければどこかの令嬢といわれても違和のない風体の女性が、机に肘をついて指を組んでいた。開襟の制服の袖には幅広の金モールが映える。顔の前で組んでいた手を下ろした。金色の双眸鋭く、上妻を見て――――

 

 

 

「海軍准将、特殊艤装研究課付属第七十五分室室長、敷島三笠だ。貴様が上妻正敏か。待っていたぞ」

 

 

 凛としたアルトでそう言うとどこか不敵に微笑んだ。

 

 

 




いかがでしょうか?

感想・意見・要望はお気軽にどうぞ。
次回は提督とのお話メイン?

それでは、次回お会いしましょう。

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