【完結】遊戯王ARC-V~遊の力を矢に束ね~ 作:不知火新夜
Side ユート
さて、改めて鬼柳の陣営を見ると、その異様さに笑うしかない。
彼と共にサーキットを駆け抜ける4体ものモンスター、そのうち3体が攻撃力3000を誇り、更にその1体であるオーガ・ドラグーンはスペルスピードが1下がった上に条件が付いた代わりにデメリットが無くなった『魔宮の賄賂』内蔵、残りの1体であるインヴェルズ・ローチも中々厄介な能力を持っている、尤も俺のデッキに引っ掛かるモンスターはいないが。
セットカードもデーモンを散々使い回した事で罠カードが4枚もセットされている、それらは無論、このターンから使用可能だ。
対して俺のモンスターは、先程墓地から蘇生したダーク・ガントレット3体とシャドーベイル2体、いずれも元々罠カードだったのが自らの効果で墓地から特殊召喚された奴で、フィールドを離れたら最後、自らの効果で除外されてしまう。
だがそれは『フィールドを離れたら』の話、一たびエクシーズ召喚によってオーバーレイ・ユニットと化せば、大元を破壊されようと、効果やコストで墓地へ送られようと『フィールドを離れた』扱いにならない、このルールを活かせば…!
「俺のターン!ドロー!」
「スタンバイフェイズに、たった今手にしたアクションマジック『
次元駆動
アクションマジック
1:このカードを発動したターン、お互いのプレイヤーは墓地へカードを置く事が出来ず、墓地へ行くカードは代わりにゲームから除外される。
何、このタイミングでそのアクションマジックだと!?
不味いな、これではエクシーズ素材云々に関係なく除外されてしまう、厄介な状況になった…!
だが此処は行くしかない、保険は掛けるとしよう!
「俺はシャドーベイル2体でオーバーレイ!2体のレベル4モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!衝動に駆られ、心を失いながらも、輝石戦士の誇りは永遠に不滅!エクシーズ召喚、ランク4!『暗遷士カンゴルゴーム』!」
暗遷士カンゴルゴーム
エクシーズ・効果モンスター
闇属性
岩石族
ランク 4
守備力 1950
ORU 2
俺の側に登場した、俺の部下である真澄が使っているジェムナイトモンスターの、様々なパーツが継ぎ接ぎになった様な姿のモンスター、カンゴルゴーム。
コイツはフィールドのカード1枚を対象に取る効果が発動された時、オーバーレイ・ユニット1つでその対象を俺が決められる(無論、発動した効果の指定した範囲内でだが)。
もしあのセットカードに除去効果を持つ物があったとしても、コイツの効果で狙いを逸らしてしまえば、
「ソイツの特殊召喚成功時、罠『インフェルニティ・ブレイク』発動!対象は墓地のデーモンと、ソイツだ!」
「させるか!それにチェーンしてカンゴルゴームのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!その罠の対象は俺が決める!」
「させねぇのは俺の方だ!更にチェーンしてカウンター罠『インフェルニティ・バリア』発動!」
インフェルニティ・ブレイク
通常罠
自分の手札が0枚の場合に発動出来る。自分の墓地の『インフェルニティ』と名の付いたカード1枚を選択してゲームから除外し、相手フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。
インフェルニティ・バリア
カウンター罠
自分フィールド上に『インフェルニティ』と名の付いたモンスターが表側攻撃表示で存在し、自分の手札が0枚の場合に発動する事が出来る。相手が発動した効果モンスターの効果・魔法・罠カードの発動を無効にし破壊する。
な、モンスター効果にも対応したカウンター罠だったのか!?
これでは防ぐ事が出来ない…!
「インフェルニティ・バリアの効果でソイツの効果を無効にして破壊だ!」
「くっカンゴルゴーム…!」
このターンにこれ以上動くと却って危険だ、とは言えこのカードを使った所で今のカウンター罠がもう1枚セットされているのは分かっている、勝負は見えたも同然だが、それでも俺は足掻く!
「カードを1枚セットしてターンエンド!」
Ute
LP 3000
手札 0
モンスター 幻影騎士団ダーク・ガントレット×3(守備表示)
魔法・罠カード セット
「俺のターン!ドロー!
来たぜ…!
俺が引いたのは、2枚目の『インフェルニティ・デーモン』!
コイツは手札0枚の状態でドローした時、お前に見せる事で特殊召喚出来る!」
「な、何だと!?」
『鬼柳選手、凄まじい引きです!先程はユート選手のスタンバイフェイズ中に狙いのアクションマジックを引き当て、このドローフェイズではデーモンをドローした!』
インフェルニティ・デーモン
効果モンスター
闇属性
悪魔族
レベル 4
攻撃力 1800
MCの言う通りだと言うしかない、鬼柳の今引きの強さ、もう笑うしかないな。
だが、それでも俺は最後までやりぬく!
「特殊召喚したデーモンの効果発動!」
「ならそれにチェーンして罠『ワンダー・エクシーズ』発動!」
「おっと!それにチェーンしてインフェルニティ・バリア発動!」
ワンダー・エクシーズ
通常罠
1:自分フィールドのモンスターを素材としてエクシーズモンスター1体をエクシーズ召喚する。
無駄な足掻きと突っ込まれそうだがそれでもとの決意で発動したワンダー・エクシーズ、だがそれもやはり、あのカウンター罠に阻まれる形となった。
万事休す、か…!
「インフェルニティ・バリアの効果でワンダー・エクシーズは無効だ!
その後、デーモンの効果で3枚目のバリアを手札に加えるぜ!
メインフェイズに、今手札に加えたバリアをセットしてバトルフェイズ!
デーモンで1体目のダーク・ガントレットを攻撃!ヘルプレッシャー!」
インフェルニティ・デーモン 攻撃力 1800 VS 幻影騎士団ダーク・ガントレット 守備力 300
「インヴェルズ・ローチで2体目のダーク・ガントレットを攻撃!」
インヴェルズ・ローチ 攻撃力 1900 VS 幻影騎士団ダーク・ガントレット 守備力 300
「インフェルニティ・デス・ドラゴンで3体目のダーク・ガントレットを攻撃!デス・ファイア・ブラスト!」
インフェルニティ・デス・ドラゴン 攻撃力 3000 VS 幻影騎士団ダーク・ガントレット 守備力 300
「オーガ・ドラグーンでダイレクトアタック!
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
Ute LP 3000→0 LOSE
WINNER Kiryu
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Side 遊矢
「それでは、フレンドシップカップの成功を祈って、
『乾杯!』」
ジャックが勝負に徹する余り融合召喚を披露しちゃったり、クロウがアクセルシンクロを成功させるというサプライズを見せてくれたり、鬼柳が早速エクシーズ召喚を実践したりといった前夜祭のスペシャルデュエルから少し経ち、俺達ランサーズメンバーと行政評議会の面々、そしてジャック達はとある会場を貸しきり、フレンドシップカップの成功を祈願する壮行会を開き、各自で様々な話が繰り広げられていた。
それにしてもジャックのマリシャス・デビルはまあ5D’s時代からのエースカードの1つではあったし、鬼柳のインヴェルズ・ローチも最近渡した奴なんだが、クロウがクリアマインドの境地に達し、アクセルシンクロを披露するまでになっていたとは驚いた。
このシンクロ次元に転生してから、その境地に至る程の事があったのだろうか(prrrr)、む、電話だ、発信先は月影か。
「少し失礼します。(ガチャ)もしもし、俺だ。どうした、月影」
『隊長殿、先程アカデミアに潜入していた兄上達が、驚くべき情報を手にしたでござる。先日のライディングデュエルにてデュエルを行ったD―ホイーラーが所有していた『メタルフォーゼ』なるペンデュラムテーマの出所にも関わる話でござる』
「何!?詳しく教えてくれ」
月影を通して日影達がもたらしてくれた情報、それは俺を驚愕させるには充分だったが、その前に日影達が何故融合次元にある筈のアカデミアに潜入しているのかを話そう。
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あのペンデュラムモンスターを主軸にしたと思われるカテゴリのデッキを使っていたD―ホイーラーのデュエルを目の当たりにした日、丁度その日の視察先がシティの治安維持局だった事もあり、この件を問題提起しようと考えた。
「初めまして、ロジェ長官。不動遊星です」
「お初にお目にかかります、遊星様。私は治安維持局の長官を務めております、ジャン・ミシェル・ロジェと申します」
如何にもシティの治安を守る組織のトップであると言わんばかりの理性的な対応、だがその裏で色々と真っ黒な考えを巡らせているんだろうなと勘繰りながらも、案内に従って治安維持局の局舎へと入って行った。
そこで先のD―ホイーラーの件で暫くやり取りを続けていた所、2人きりになるタイミングが出来た、この状況で俺は、
「『トラゴエディア』、やれ」
「ん?(ガシィ!)な、がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!な、何を…!」
『覇王の力』を顕現させてトラゴエディアの
思いの外上手く行ったと内心ほくそ笑みながらも、読み取った記憶を見てみると出て来るわ出て来るわ、融合次元、それもあろう事かあのデュエルアカデミアから離反してからのロジェの振る舞いが手に取る様に分かった。
自分こそがトップに立ちたいという幼稚としか言い様のない野望でアカデミアを離反、それを満たせる場所としてシンクロ次元のシティに潜入、元はレオ・コーポレーションが作り上げた物であるリアルソリッドビジョンシステムを始めとした技術と、馬鹿げた野望を本気で抱けるだけはある手腕で今の地位へと上りつめたロジェ。
だがそれだけでは野望を満たすには飽き足らず、表向きは行政評議会の下でその手腕を発揮して信頼を得る一方、いざと言う時の手段『キングス・ギャンビット』によってセキュリティ隊員を自らの『駒』と出来る様、ちょっとしたサイボーグ処置を施し、更にはシティにおいて嘗て『デュエリスト・クラッシャー』の異名で恐れられていた凶悪犯罪者、セルゲイ・ヴォルコフを全身サイボーグに改造、自らの懐刀とした、いざ決起する時の切り札とする為に。
何とも、何とも下らない奴だ。
だがその下らない奴がシンクロ次元に潜入してから3年と言うそう長くない時間で築き上げた功績がある事で、そしてそれを俺がトップの洗脳と言う形で掌握した事で、俺達ランサーズは此処シンクロ次元と緊密な同盟関係になったも同然(行政評議会は俺のイエスマンと化しているし)。
その時の俺は、某名前を書かれたら死ぬノートを手にした天才児が、自らを追う天才探偵を殺す事に成功し彼の目の前で勝利宣言した時に見せた様な凶悪な笑みを浮かべていたに違いない。
「ジャン・ミシェル・ロジェ、貴様の下らない野望、我々の大志を果たす為の踏み台となって貰おう」
「あ、が、ぐぁぁ、おのれ、貴様ぁぁぁ…!
先程は立場を弁えぬ暴言失礼いたしました、これより私ジャン・ミシェル・ロジェ、非才ながら貴方様の大志の為にこの身を捧げる所存にございます」
「ああ、宜しく頼むぞ、ロジェ。我々の大志の為に、存分にその力を振るうが良い。我らランサーズの大志、かの『真の愛国者』の如き大志の為にな!」
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こうしてシンクロ次元のトップを掌握、更に(悪い意味での)反乱の芽を摘み取る事に成功した俺はシティでの情報収集を終結させ、次の懸案、他次元へと流出したペンデュラムモンスターの事への対策に乗り出し、其処で浮かんだ可能性が融合次元、それもアカデミアが送り込んだスパイによる物では無いかという物、それの調査の為にランサーズは新たなる部隊を結成した。
それが、日影、月影、遊香といった『元』V-CRANメンバーで構成された潜入・工作部隊『フォースハウンド』。
忍者の末裔である風魔兄弟と、サイコデュエリストとしての能力を有する遊香、この3人で構成されているフォースハウンドは結成後直ぐに融合次元へと転送、アカデミアにて潜入捜査を行っており、それから報告の為に戻って来た月影から今、話を聞いている所だ。
『アカデミアに潜入した兄上からの報告によると、研究所と思われる施設にてペンデュラムモンスターの特徴や、ペンデュラム召喚のルールを書き記したと思われるメモとデータメディア、そしてペンデュラム関連の研究が始まった経緯を記した日記を見つけたとの事でござる。どうやら我らがシンクロ次元に入って幾ばくも経たぬ内に、アカデミアからスパイが我らの次元に潜入、その者がペンデュラムモンスターの詳細な情報を入手した様でござる』
「そうか…
ペンデュラム召喚の概念はともかく、ペンデュラムモンスターカード等の重要情報はレオ・コーポレーションのセキュリティシステムの下にあった筈だ。それを盗み出すとは余程腕の立つ輩、ソイツを送り込む程、アカデミアの俺達に対する警戒度は大幅に増したと考えて良いな」
『左様でござるな、その警戒度を如実に示している証拠も兄上が発見したでござる。
試作と思われる、ペンデュラムモンスターを主軸としたテーマデッキが『6つ』完成している事が発見され、その内の『4つ』が我らの手元にあるでござる』
「何!?もうそんなに完成していたのか!?」
俺達がシンクロ次元に潜入してから其処まで長い時間は経っていなかった筈、その時間で俺達の次元からペンデュラムモンスターの情報を奪取して研究、試作テーマデッキを6つも完成させた、だと…!
その余りにも早すぎるフットワーク、余程アカデミアは俺達を警戒しているという事だが…
『発見されなかった2つでござるが、1つはどうやらアカデミアのデュエリストに、既に渡ってしまっている様でござる。今から回収が出来るかどうか…』
「仕方ないさ。それより、もう1つの行方は?」
『もう1つのテーマデッキ、その1つこそが、かの『メタルフォーゼ』でござる』
「っ!あのデッキが、か…」
あの超融合で吸い込める範囲が広すぎる融合モンスターと、ペンデュラムの特性を十二分に理解しているデッキの回し方、あのデッキを持ったアカデミアのデュエリストがこの次元に…!
「そうか。それで、回収した4つは?」
『はっ。1つ目は『イグナイト』、炎属性・戦士族モンスターで構成されたテーマデッキでござる。遊香殿は『何時までもソリティア出来そうね』と申していたでござるな』
イグナイト?何か聞いた事ある様な…
『2つ目は『マジェスペクター』、風属性・魔法使い族モンスターで構成されたテーマデッキでござる。兄上は『共感できるテーマでござる』と申していたでござるな』
マジェスペクター、これも何だか聞き覚えが…
『3つ目は『ダイナミスト』、水属性・機械族モンスターで構成されたテーマデッキでござる。堅実なビートダウンデッキ、といった趣でござるな。
そして4つ目は『アモルファージ』、地属性・ドラゴン族モンスターで構成されたテーマデッキでござる。何とも嫌らしいロック効果持ちでござる』
この2つは聞いた事無いな…
『良ければこれらのデッキを送るでござる』
「なら1つだけこっちに転送してくれ。後は君達が持っていると良い」
『た、隊長殿!?まこと宜しいのでござるか!?』
「ああ。アカデミアにペンデュラムモンスターの情報が知られてしまった以上、向こうも遅かれ早かれ導入して来るに違いない、現に試作デッキの1つがアカデミアのデュエリストに渡ってしまっている。月影達にもペンデュラムモンスターを用いたデュエルに慣れて貰わないとな」
『御心遣い、かたじけない。それでは、アモルファージデッキをそちらに』
「ありがとうな。引き続き任務を続行せよ!」
『ははっ!ではこれにて』
月影との連絡は終わり、数瞬後に1つのデッキが転送されて来た。
これが、アカデミアが試作していた、ペンデュラムモンスターを主軸としたテーマデッキの1つ、アモルファージか…
うわ、こりゃあかなり癖のあるデッキだな、レベルが2(2体)・4(4体)・6(1体)・8(1体)とばらけている癖してペンデュラムスケールが3と5しか無い、実質カテゴリ内でペンデュラム召喚出来るのは半分の4体、となればスケール1や7以上のペンデュラムモンスターが欲しくなるが、良くも悪くも強烈なメタ能力を持つペンデュラム効果がそれを妨害する。
パワーは其処まで高くは無く、かと言って除去手段は無い、パンプアップカードもあるにはあるが、といった状態。
だがさっき言っていた強烈なメタ能力は、ハマれば相手に何もさせない状態にまで持ち込む事も出来る、更に共通効果であるエクストラデッキ封じ…
運が悪ければ『何も出来ずに』負ける可能性もある、だが運が良ければ『何もさせずに』勝つ事も出来る、中々面白いテクニカルデッキだな。
よし、これは…
「もしもし、私です。『奴』の、調整の程はどうですか?」
『遊星様、『奴』の調子は良い感じです!これなら直ぐにでも遊星様のお役に立てるかと…』
「そうですか、では直ぐにそちらへと向かいます」
アイツにプレゼントしよう。
このランサーズへの加入、及びこれから臨む任務に対する餞別だ。