【完結】遊戯王ARC-V~遊の力を矢に束ね~   作:不知火新夜

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74話_パクられたペンデュラム召喚

あの『ゼロ・リバース』を思い起こさせる夢を、遊矢に転生してから初めて見て、その事を柚子に打ち明け、ある決意を固め、今日もまたシティの重要施設を視察する為に送迎の車に乗せられていた俺、ふと何気なく外の景色を眺めていたら、どうやらまた得体の知れないD―ホイーラーがシティを闊歩していたそうで、セキュリティとのライディングデュエルが始まったみたいだ。

だが其処で、俺は思いもしない物を見たんだ。

 

先攻は、何と言えば良いかな、某さん付けで呼ぶ事を強要する健康優良不良男子が搭乗するバイクっぽい、特異な形状の赤いD―ホイールに搭乗したD―ホイーラー。

背丈はかなり高いが、その群青のライダースーツを纏った身体の線からして女性か?

で、その初手はカードフレーム及びイラストからして魔法『予想GUY』だろうな。

 

予想GUY

通常魔法

1:自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動出来る。デッキからレベル4以下の通常モンスター1体を特殊召喚する。

 

其処からデッキのカードを広げて中を確認していた事から、やはりそうだろう。

その中から1枚の、恐らくは通常モンスターが持つ黄色いフレームのカードを取り出した、が、

 

「ペンデュラムモンスター、だと?」

 

その『カードフレーム』の色合いに、俺は驚いた。

上半分こそ通常モンスターである事を示す黄色いフレームだが、中間地点辺りでグラデーションが掛かり、下半分に至るころには魔法カードである事を示す緑にかわっていたのだから。

バカな、少なくともペンデュラムモンスターは俺達の次元でしか開発が進んでいなかった筈、この次元でばら撒いた覚えはないのに、ペンデュラムモンスターを使用するデュエリストがいる筈が…!

 

「運転手さん、今行われているライディングデュエルの放送、受信出来ますか?」

「はい、遊星様。何か気になる事が出来た様ですね、了解しました」

 

俺の様子を察したのか、運転手さんが早速、今のライディングデュエルを中継しているであろう放送局にチャンネルを合わせた。

さて、どんなデュエルが…

 

『予想GUYの効果でデッキから『メタルフォーゼ・ゴルドライバー』を攻撃表示で特殊召喚!』

『うっしゃぁ!燃えて来たぁ!』

「む、モンスターから…?」

「どうかなさいましたか、遊星様?」

「いえ、何でもありません」

 

メタルフォーゼ・ゴルドライバー

通常・ペンデュラムモンスター

炎属性

サイキック族

レベル 4

攻撃力 1900

 

何やら今出て来たモンスターからはっきりとした声が聞こえたんだが、運転手さんに聞こえた様子は無い、となるとあのモンスター、カードの精霊か…?

そんな俺の懸念を他所に登場したのは、バギーの様なビークルに乗る戦士、ゴルドライバー。

 

『次に速攻魔法『緊急テレポート』発動!』

 

緊急テレポート(制限カード)

速攻魔法

1:手札・デッキからレベル3以下のサイキック族モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターは、このターンのエンドフェイズに除外される。

 

『緊急テレポートの効果で、デッキから『メタルフォーゼ・スティエレン』を守備表示で特殊召喚!』

 

メタルフォーゼ・スティエレン

通常・ペンデュラムモンスター

炎属性

サイキック族

レベル 2

守備力 2100

 

次に出て来たのは、バイクの様なビークルに乗る戦士、スティエレン。

 

『続いて私は、スケール1の『メタルフォーゼ・シルバード』と、スケール8の『メタルフォーゼ・ヴォルフレイム』をペンデュラムスケールにセッティング!』

 

ペンデュラムスケール(青):1(メタルフォーゼ・シルバード)

ペンデュラムスケール(赤):8(メタルフォーゼ・ヴォルフレイム)

 

此処でペンデュラムスケールをセッティングしたか、だが彼女の手札は残り1枚、その1枚はひょっとして最上級モンスターなのか?

 

『ここで、今セットしたシルバードの効果発動!スティエレンを破壊し、デッキから魔法『錬装融合(メタルフォーゼ・フュージョン)』をセットするわ!』

 

融合だと、それも名前的にカテゴリ専用融合カード!

何と言う事だ、ペンデュラムモンスター自体、俺達の次元でしか開発が進んでいなかったのに、ペンデュラムのその先の可能性の1つ、ペンデュラム融合まで!?

一体、どうなっている…!

 

『更に、同じくセットしたヴォルフレイムの効果発動!ゴルドライバーを破壊し、デッキから永続罠『メタルフォーゼ・コンビネーション』をセットするわ!

さあ行くわよ!自由の下に集いし錬装の戦士達よ!今こそ音すらも振り切り、極限の速さで道を駆け抜けなさい!目指すは勝利という名のチェッカー!ペンデュラム召喚!ゴルドライバー!スティエレン!』

『行くぜぇ!』

 

俺が驚きと疑問を覚える中、たった今、ペンデュラムスケールにセットされた2枚のペンデュラム効果によってクラッシュしていた筈の2体が、その光の導きによって即座に復帰、持ち主であるD―ホイーラーに追いついた。

 

『まだまだ行くわよ!魔法『錬装融合』発動!』

 

錬装融合

通常魔法

『錬装融合』の2の効果は1ターンに1度しか使用出来ない。

1:自分の手札・フィールドから『メタルフォーゼ』融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

2:このカードが墓地に存在する場合に発動出来る。墓地のこのカードをデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから1枚ドローする。

 

『私はフィールドのゴルドライバーとスティエレンを融合!錬装の戦士達が集いし時、新たなる戦士が誕生する!今こそ音すらも振り切り、障害物を吹き飛ばしなさい!ペンデュラム融合!『メタルフォーゼ・オリハルク』!』

『灯娥の如く燃え尽きろォ!』

『融合召喚…!』

「融合召喚!?遊星様、これはもしや…!」

「ええ、運転手さんが考えている事がありえる可能性も無くは無さそうです」

 

メタルフォーゼ・オリハルク

融合・効果モンスター

炎属性

サイキック族

レベル 8

攻撃力 2800

 

てか今出て来た奴、なんかイリアステルのリーダー格であるホセがD―ホイールと合体した姿に似ているんだが(汗

そんな感じで唖然としている俺と、何か良からぬ可能性が頭に浮かんだのか驚いた様子の運転手さんの目前で融合召喚されたのは、正に今言った通りホセがD―ホイールと合体した姿の様なモンスター、オリハルク。

というか、この次元には『無い筈』の融合召喚を行ったにも関わらず、相手であるデュエルチェイサーは特に驚いた様子は無いな、もしやアカデミアから離反した(と、ユベルから聞いていた)治安維持局のロジェ長官が、融合召喚の情報をセキュリティ内にばら撒いたとか?

 

『これで終わりでは無いわ!墓地へ送られた錬装融合の効果発動!

このカードをデッキに戻し、ドロー!

カードを1枚セットして、ターンエンドよ』

 

????

LP 4000

手札 1

ペンデュラムスケール(青):1(メタルフォーゼ・シルバード)

ペンデュラムスケール(赤):8(メタルフォーゼ・ヴォルフレイム)

モンスター メタルフォーゼ・オリハルク(攻撃表示)

魔法・罠カード セット×2(うち1枚は『メタルフォーゼ・コンビネーション』)

 

『私のターン、ドロー!

まずは手札の『ヒーロー・キッズ』を墓地へ送って魔法『ワン・フォー・ワン』発動!』

 

ワン・フォー・ワン(制限カード)

通常魔法

1:手札からモンスター1体を墓地へ送って発動出来る。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 

『ワン・フォー・ワンの効果で、デッキから『アタック・ゲイナー』を守備表示で特殊召喚!』

 

アタック・ゲイナー

効果モンスター/チューナー

地属性

戦士族

レベル 1

守備力 0

 

後攻となったデュエルチェイサーのターン、その初手で発動したワン・フォー・ワンによって出て来たのは、ジャックもかつて使用していたチューナー、アタック・ゲイナー。

 

『次に魔法『死者蘇生』発動!』

 

死者蘇生

通常魔法

1:自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

『死者蘇生の効果で、さっき墓地送りにした『ヒーロー・キッズ』を守備表示で蘇生!』

 

ヒーロー・キッズ

効果モンスター

地属性

戦士族

レベル 2

守備力 600

 

次に出て来たのは、パワードスーツに身を包んだ子供、ヒーロー・キッズ。

 

『蘇生したヒーロー・キッズの効果発動!

デッキから残り全てのヒーロー・キッズを守備表示で特殊召喚!

私は今特殊召喚したレベル2のヒーロー・キッズに、レベル1のアタック・ゲイナーをチューニング!御上の力を思い知れ!シンクロ召喚、レベル3!『ゴヨウ・ディフェンダー』!』

 

ゴヨウ・ディフェンダー

シンクロ・効果モンスター

地属性

戦士族

レベル 3

攻撃力 1000

 

その後、シンクロ召喚の演出と共に出て来たのは、顔には隈取が付けられ、右手に十手、左手に機動隊とかが使いそうな巨大な盾を装備したポリスモンスター、ゴヨウ・ディフェンダー。

しかし、効果こそ流石ゴヨウの称号は伊達じゃ無いと絶句した物だが、攻撃力1000のモンスターを攻撃表示だと?

 

『シンクロ召喚の素材としたアタック・ゲイナーの効果発動!

貴様のメタルフォーゼ・オリハルクの攻撃力を1000ポイントダウンする!』

 

メタルフォーゼ・オリハルク 攻撃力 2800→1800

 

『続いて『ジュッテ・ナイト』を召喚!』

 

ジュッテ・ナイト

効果モンスター/チューナー

地属性

戦士族

レベル 2

攻撃力 700

 

そんな俺の疑念は画面越しに届く訳も無くデュエル続行、登場したのは牛尾も使っていた、背中に提灯みたいな機械を背負い、右手に十手を装備したモンスター、ジュッテ・ナイト。

と、その時、

 

『その召喚成功時、永続罠『メタルフォーゼ・コンビネーション』発動!

それにチェーンして、手札を1枚捨てて速攻魔法『超融合』発動!』

『何?』

 

メタルフォーゼ・コンビネーション

永続罠

1:1ターンに1度、融合モンスターが特殊召喚された場合、その融合モンスターよりレベルが低い、自分の墓地の『メタルフォーゼ』モンスター1体を対象としてこの効果を発動出来る。そのモンスターを特殊召喚する。

2:このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動出来る。デッキから『メタルフォーゼ』モンスター1体を手札に加える。

 

超融合(制限カード)

速攻魔法

このカードの発動に対して魔法・罠・モンスターの効果は発動出来ない。

1:手札を1枚捨てて発動出来る。自分・相手フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

D―ホイーラーが動いた。

 

『私はオリハルクと、アンタの場にいる2体の攻撃力3000以下のモンスター、ジュッテ・ナイトとゴヨウ・ディフェンダーを融合!』

『何だと!?』

 

うわ何だその緩すぎる融合素材は!?

 

『錬装の戦士が数多の魂をも取り込み、新たなる戦士へと転生する!今こそ音すらも振り切り、一直線に駆け抜けなさい!融合召喚!『メタルフォーゼ・カーディナル』!』

『素手で勝負しやがれェ!』

 

メタルフォーゼ・カーディナル

融合モンスター

炎属性

サイキック族

レベル 9

攻撃力 3000

 

いや、でかいロボみたいな奴に乗ったお前が言うな。

効果が無いからって素手とは到底言えんぞ。

 

『墓地へ送られたオリハルクの効果発動!

それにチェーンしてメタルフォーゼ・コンビネーションの効果発動!

まずはメタルフォーゼ・コンビネーションの効果で、オリハルクを攻撃表示で蘇生!

次にオリハルクの効果で、メタルフォーゼ・コンビネーションを破壊するわ!』

『ビビってんのか、アァ!?』

 

ん?自分の永続罠を破壊しただと、しかもたった今発動した様な強力な蘇生効果を持った奴を?

 

『此処で破壊したメタルフォーゼ・コンビネーションの効果発動!

デッキから2枚目のゴルドライバーを手札に加えるわ』

 

成る程、墓地送りによって発動するサーチ効果を使う為に敢えて破壊した訳か、無駄が無いな。

ただそれでも、相手のヒーロー・キッズ1体を破壊した方が、次のターンに相手の場を真っ新にしつつダイレクトアタック出来、更にエクストラデッキにあるゴルドライバーをペンデュラム召喚する事でLPを0に出来る筈だが…

 

『くっ私はカードを2枚セットしてターンエンド…』

 

DuelChaser227

LP 4000

手札 0

モンスター ヒーロー・キッズ(守備表示)×2

魔法・罠カード セット×2

 

『私のターン、ドロー!

じゃあ今引いた魔法『ハーピィの羽根帚』発動!』

『な!?』

 

ハーピィの羽根帚(制限カード)

通常魔法

1:相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する。

 

此処で今引き羽根帚か、凄い引きの良さだな。

 

『ハーピィの羽根帚の効果で、そのセットカードを全て破壊して貰うわ!

そしてバトルフェイズ!オリハルクでヒーロー・キッズを攻撃!』

 

何、ハーピィの羽根帚を使っただけでメインフェイズを終わらせた?

 

『この攻撃で終わりよ!オリハルクは守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分の、

 

倍の数値分相手に戦闘ダメージを与えるわ!』

『な、なん、だと…!』

 

そう言う事か、それでさっきから一見して不可解なプレイングを…

 

『さあ行きなさい、オリハルク!』

『行くぜェ、真っ赤に燃えろォ!』

『ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』

 

メタルフォーゼ・オリハルク 攻撃力 2800 VS ヒーロー・キッズ 守備力 600

 

DuelChaser227 LP 4000→-400 LOSE

 

「メタルフォーゼ、か…

何故ペンデュラムモンスターを我々以外に持っている存在がいるのか、それに加えて専用融合カードまで組み込まれている物を…

これは少し、警戒を強めなければならないな」

 

今のデュエルを見た俺は、其処で繰り広げられた信じがたい事態に警戒心を高めた。

 

------------

 

「『トラゴエディア』、やれ」

「ん?(ガシィ!)な、がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!な、何を…!」

「ジャン・ミシェル・ロジェ、貴様の下らない野望、我々の大志を果たす為の踏み台となって貰おう」

「あ、が、ぐぁぁ、おのれ、貴様ぁぁぁ…!

 

 

 

先程は立場を弁えぬ暴言失礼いたしました、これより私ジャン・ミシェル・ロジェ、非才ながら貴方様の大志の為にこの身を捧げる所存にございます」

「ああ、宜しく頼むぞ、ロジェ。我々の大志の為に、存分にその力を振るうが良い」

 

その日、シティの治安、引いてはシティの社会構造を揺るがしかねない事件が、密かに発生した…




(追記)
今話で第5章は終了、次回より第6章となります。
そして第6章より、2016年4月改訂の禁止制限が適用されます。

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