【完結】遊戯王ARC-V~遊の力を矢に束ね~ 作:不知火新夜
いやぁ、勝利したとは言え、残りLPが100にまでなる、ギリギリのデュエルだった。
此処まで追い込まれる白熱したデュエルは、そうだ、海音達と同じく異世界(海音達は『並行世界』だが)から来た大輔とのデュエル以来だな。
あの時はアクションデュエルでやったけど、アクションカードを使った直後で無防備な俺に対して大輔がダイレクトアタックを躊躇したから勝ちを拾った(後で聞いてみたら「何かあるんじゃねぇかと思った」そうだ)と言える。
今回も、グラビティ・ドラゴンの効果で徹底的にライフポイントを削った事で、あの場面でのリヴィエールの(あったかも知れない)バウンスによる誘発効果を阻止した(尤もメテオバースト・ドラゴンがいたから発動出来ないけど)事で勝利した。
まだまだ色んな世界があるな、俺と初見で渡り合う様な存在が、俺を満足させてくれる『ライバル』と言える存在がこんなにもいるなんて、本当にびっくりだよ。
だからこそ、デュエルモンスターズを始めて3世紀経った今でも俺はデュエルが大好きだ、デュエルを心の底から愛している。
一時その想いを忘れかけた事もあったけど、いや、だからこそ、この想いは未だ色あせない。
と、そうだ、まだ海音達に送るメッセージを言っていなかったな。
それに、デュエルが終わったと言うのにその挨拶も済んでいない。
「ミスター火野。ガッチャ!実に最高のデュエルでした!」
「こっちもだ。ありがとうございました、良いバトルでした」
「はい!」
とりあえず十代の時の決め台詞と共に挨拶と握手を交わして、本題に入る。
「さて、デュエル中は制限時間の事もあって貴方達へメッセージを送る事叶いませんでしたが、少しお時間宜しいでしょうか?」
「メッセージ?」
俺の問い掛けにポカンと言いたげな様子を見せる海音。
あれ、俺のターンの開始時にメッセージを送る、と言ったよな、結局今になるまで言えなかったけど。
ともかく大丈夫そう、か?
「はい。先程のデュエルでも披露いたしましたが、俺が今回用いたデッキは、融合、儀式、シンクロ、エクシーズ、そしてペンデュラム、そう、デュエルモンスターズに存在する、ありとあらゆる召喚方法を取り入れた構築となっております。これが何故かお分かり頂けますでしょうか?」
「何故かって…
ただ単に全ての召喚法が可能なデッキだからじゃないの?」
まあ、それもあるけどな。
「40点、と言って置きましょう。確かにオッドアイズというカテゴリは、あらゆる種類のモンスターが揃っておりますし、ハマれば1ターンに全ての召喚方法を披露する事も可能です、それを活かし、『創星神Sophia』を速攻で呼び出す、なんて事も夢ではないでしょう。
ですが、可能だからと言ってバカ正直に導入する必要はあるでしょうか?
答えは否、必ずしもそうしなければならないという事はありません。
例えば先程シンクロ召喚したメテオバースト・ドラゴン、その効果はペンデュラムスケールにセットされたモンスターを呼び出すという物。ですがその代償として自らの攻撃権を消費してしまいます、故にそれを活かしてレベル7モンスターを呼び出し、エクシーズ召喚の素材に使ってしまおうというのは至極当然の考えと言えるでしょうが、ならばペンデュラムチューナーを呼び出してシンクロ召喚の素材にしたり、融合素材にしたりしても良い筈です、むしろペンデュラム召喚の長所を生かす上ではそちらの方が効果的ですし、其処からまた新たなるエンタメデュエルの形が広がる、俺はそう思っています。
では何故、俺はこのデッキに、あらゆる種類のオッドアイズ達をバカ正直に導入しているか。
それは、俺が今後臨んでいくであろう戦いに向けてのある想いが込められているからです。それを今、貴方達Pararel Worldからのゲストに向けて、メッセージとして送ります」
そう、これこそが俺がこの『魔術師オッドアイズ』をこの様な構築にした理由だ。
「つまり何が言いたいんだ?」
「俺にとって相棒と呼べる存在は嘗て、4つの次元の事、アカデミアの侵略の事を聞いて、こう話しておりました。『随分と排他的な事だ。アドバンス召喚や儀式召喚、融合召喚やシンクロ召喚、エクシーズ召喚やペンデュラム召喚、どれが優れていてどれが劣っているかなど、そもそもの論点が違う。其々の召喚法には其々の利点がある、それらを組み合わせてこそデュエルモンスターズだと言うのに…』と。俺もそう思います。其々の召喚法には其々利点がありますが、一方で其々の召喚法は、別の召喚法に繋げる手段にもなります。かの有名な『カップ麺早食いノーデン』という呪文も、其処からランク4エクシーズモンスターを呼び出す素材を手軽に揃えられるからこそ猛威を振るったのですし、俺自身も先程言った通りメテオバースト・ドラゴンからランク7エクシーズモンスターを呼び出すギミックを導入しております。逆もまたしかりで、融合モンスターの中にはシンクロモンスターやエクシーズモンスターを指定した物が幾つか存在します。流石にエクシーズ召喚からシンクロ召喚に繋げるのは、エクシーズモンスター自身がレベルを持たない以上、直接は無理ですが」
『遊矢…』
自らの言葉に俺が共感していた事を改めて知ったアストラルが何処か感慨深げに俺の名を呼ぶ。
と、話がちょっと逸れたか。
「この様に、融合、儀式、シンクロ、エクシーズ、そしてペンデュラム、様々な種類のモンスターが互いに支え合う事で、デュエルはより白熱した、面白い物となり得るのです。4つの次元もまたしかり、これまで各次元ならではの召喚法しか使って来なかった各次元の人々が、他次元と交流して行き、其々の文化を取り入れ、分け与える事で互いに切磋琢磨し、更なる発展を遂げて行くのだと、それこそが4つの次元のあるべき姿だと、俺は思いますし、それを体現したのが今回使用した『魔術師オッドアイズ』デッキなのです。ですが愚かなるアカデミアは、デュエリストの風上にも置けぬアカデミアのデュエル戦士はそれが分からず、他次元に対する侵略を行い、エクシーズ次元を荒らし回った。何とも痛ましく、嘆かわしく、腹立たしい事です」
そして、俺は、伝える。
「ミスター火野。今回の俺とのデュエルでシンクロ召喚を披露されておりましたが、一方で我が一番弟子エレンとのデュエルで用いられた『ぬばたま』デッキは、エクシーズ召喚を軸とした物。様々な召喚法を駆使する貴方は言わずとも分かっておいででしょう。
であればこのメッセージを、ミスター三和やミス月影、そして貴方達の帰りをお待ちしておられる方々にお伝え願いたい。
貴方達が滅するべきはアカデミアの腐った思想であり、討つべきはアカデミアのデュエル戦士です。融合モンスターや関連カード、それらを生み出した融合次元その物に罪は無く、むしろ手を取り合うべき存在なのです。
それをはき違えないで頂きたい、と」
「とりあえずこれだけは言わせて貰おうか…
長いわ!」
「え?」
「さっきから黙って聞いていたが長すぎて結局何が言いたいのか解らないのだけど。つまり要するに1つの召喚法に孤立していたらデュエルの新たな可能性を引き出せないって事か?」
あら、前置きが長すぎて上手く伝わらなかったか、これは俺の落ち度だな。
少し、俺自身の理想に酔っていた所があるかも知れない、これじゃあ後々、他次元の人々を説得するのも苦労する事になるな、今後気を付けないと。
「申し訳ありません、前置きが長すぎましたね。一言で纏めましょう。
俺からのメッセージ、それは、4つの次元は『友情 YU-JYO』の名の下に『結束 UNITY』すべきであり、それの障害となる危険思想を持ったアカデミア『のみ』を討つべきである、という事です」
「つまり、敵のだからと言って、その全てが悪いって訳じゃ無いって事を言いたいのか?」
「はい。それを決して忘れないで頂きたい」
「だったらそう言えばいいじゃないか?わざわざ分かりにくい例えしなくて」
まあそうなんだけど、
「俺も1人の中学2年生、という事です」
「なるほど。ただの中二病か」
おい誰だ『黙れ300歳オーバーのジジィ』とか言ったの!
肉体的には中学2年生だから中二で間違い無いだろ!
「そうだ。お前にもう1つだけ言っておく事がある」
「何でしょうか?」
「このデッキだが実はこのデッキの実力の殆どを見せられなかったんだよな。ちなみにこのデッキはどちらかと言えばお前のデッキに近い形のデッキなんだよなこれが。だから、もし次戦う時があったら、その時はこのデッキの本当の力を見せてやる」
「おいそれって…」
シンクロ召喚だけじゃ無い、融合召喚やエクシーズ召喚、ひょっとしたらペンデュラム召喚も駆使するって事だよな!
次があれば、それらも見てみたい物だぜ!
「さてと…
デュエルも終わった事だし、皆の所に戻るか」
デュエルも終わったので、俺達が皆の所へ戻ると、
「バトル!モンスター5体でダイレクトアタック!」
「ぎゃあああああああああああああああ!!!!!」
レナによる
------------
海音とのデュエル、その後で海音達に(物凄く長ったらしい)メッセージを送ってから数時間後、海音達をこの世界へと転送させた装置のエネルギー充填が完了し、3人は元の世界に帰る事となった。
尚、その間にもレナによる
時折「不幸だ…」と言っているので死んではいないだろうし、放って置いて大丈夫だなw
「じゃあな、海音達。達者でな」
「ああ、色々世話になったな」
「うむ!この男権現坂、お主らの武運長久を祈っておるぞ!」
「皆、向こうの世界でも元気でね!レナ、その、当麻には私からもキツーく言って置くから!」
「はい!思う存分殺っておいてください」
「おい櫂!今度会った時にはリベンジさせて貰うかンなァ!」
「いいぜ!尤も今度も勝つのは俺だがな」
「海音兄ちゃん、で良いんだよな?さっきは悪かった。今度またデュエルしようぜ!次はまた別のデッキで、な!」
「何故疑問形なのかあえて聞かないでおこう。ならその時はこっちも別のデッキで挑む事にしよう」
互いに別れの挨拶を交わしたのを最後に、3人はこの世界を飛び立った。
皆、またな!
今回でAMsさんの小説『遊戯王ARC-V 次元漂流者』とのコラボは終了となります、其処でAMsさんに、この場をお借りして。
コラボして頂き本当にありがとうございました!