【完結】遊戯王ARC-V~遊の力を矢に束ね~   作:不知火新夜

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5話_磁石姫、加入!

「遊勝塾へようこそ!俺の名は榊遊矢。今日は塾長がいないから、代わりに俺達が代表して君を歓迎するよ」

「ありがとうございます、遊矢先輩!先輩の活躍、何時も見させて貰っています!昨日のストロング石島とのデュエル、凄く格好良かったです!」

 

昨日は遊勝塾の現状としてああは言ったが、ソリッドビジョンシステムが代替わりした事、その処理速度の向上によって準備に掛ける時間が格段に減った事も相まって、実は加入希望者のうち何人かを、新たに加えようと考えていた。

其処に、単にペンデュラム召喚見たさだけでは無く、デモンストレーションが終わっても残って加入を希望して来た彼女、石動美琴の存在は、嬉しい限りだ。

なんでも以前から俺の、いや俺達のエンタメデュエルに興味があったらしく、何度か加入希望は送っていて、その都度断られて来たが諦め切れず、今日というタイミングで再度加入を希望して来たとか。

ごめんな、状況が状況とは言え、今まで門前払いをしちゃって。

 

「ただ、此処に加入するにあたって、ちょっとお願いがある」

「は、はい。何でしょうか?」

「君のデュエルを見せて欲しいんだ。人が何に楽しさを覚えるかは千差万別、どの様に楽しませるかもしかり、どんなデッキ、どんなプレイングをするかで、目指すべきエンタメデュエルは変わって来るからね」

「はい、分かりました!」

 

ハイステータスモンスター同士の激突に心踊らせる人もいれば、逆境からの大逆転劇に目を輝かせる人もいる、アクションデュエルならではのアクロバティックな戦闘に感嘆の息を漏らす人もいれば、圧倒した末の蹂躙劇にゾクゾクする人だっている。

デュエリストもそうだ、戦略(デッキ)戦術(プレイング)はそれこそ星の数ほどあり、それによってどう観客や相手を楽しませるかも違う。

石動美琴というデュエリストにとってのエンタメデュエルはどんなものとなるか、それをこのデュエルで見定めてみたい。

 

「それで、相手はどうする?」

「そしたら、其処のバカっぽい先輩で」

「ば、バカ!?幾ら名前読み間違えたからって、バカ呼ばわりは無いだろ!」

「それは仕様が無いでしょ、当麻」

「せきどうはねェだろ、せきどうは。あれか、一年中暑苦しィのか?ンなの塾長だけで充分だっつーの!」

「流石に俺もフォロー出来ないな…」

「皆してひでぇ!くそっ覚えていろ!デュエルの実力と学力は関係ないって事教えてやる!」

 

大丈夫か、当麻が相手で?

 

------------

 

まあ、一悶着あった末に、デュエルは開始された。

 

「戦いの殿堂に集いしデュエリストが!」

「モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!」

「フィールド内を駆け巡る!」

「見よ、これぞデュエルの最強進化系!」

「「アクショーン、デュエル!」」

 

先攻 Toma LP 4000 VS 後攻 Mikoto LP 4000

 

「俺の先攻!カードを3枚セットしてターンエンド!」

 

Toma

LP 4000

手札 2

モンスター なし

魔法・罠カード セット×3

 

「あれだけ大仰に言っていた癖に慎重な動きね」

 

美琴が、当麻のプレイングに訝しむ様な表情を見せるも、当麻のデッキからして、先攻1ターン目、というか全体的に自分から余り動かない事が多いんだ。

 

「なら、こちらから動かせて貰うわ!私のターン、ドロー!

まずは魔法カード『予想GUY』発動!」

 

予想GUY

通常魔法

1:自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動出来る。デッキからレベル4以下の通常モンスター1体を特殊召喚する。

 

レベル4以下の通常モンスター限定、しかも『サイバー・ドラゴン』とかの特殊召喚と良く似た発動条件とはいえ、出したモンスターにデメリットがかされないリクルート魔法か。

中々良いカードを使う、けど、

 

「この効果で『磁石の戦士(マグネット・ウォリアー)β』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

磁石の戦士β

通常モンスター

地属性

岩石族

レベル 4

攻撃力 1700

 

「その特殊召喚成功時、手札の『PSY(サイ)フレームギア・α』の効果発動!

それにチェーンして速攻魔法『終焉の地』発動!」

「なっ手札からモンスターカードの効果ですって!?」

 

終焉の地

速攻魔法

相手がモンスターの特殊召喚に成功した時に発動する事が出来る。自分のデッキからフィールド魔法カード1枚を選択して発動する。

 

知らないとは言え、当麻相手には迂闊だったな。

 

「チェーン処理に入る!まずは終焉の地の効果で、デッキからフィールド魔法『PSYフレーム・サーキット』を発動する!因みに、アクションデュエル中は、フィールド上では永続魔法扱いになる!」

 

PSYフレーム・サーキット

フィールド魔法(永続魔法扱い)

1:自分フィールドに『PSYフレーム』モンスターが特殊召喚された場合に発動出来る。自分フィールドの『PSYフレーム』モンスターのみをシンクロ素材としてシンクロ召喚する。

2:自分の『PSYフレーム』モンスターが相手モンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時に、手札の『PSYフレーム』モンスター1枚を捨てて発動出来る。その戦闘を行う自分のモンスターの攻撃力はターン終了時まで、この効果を発動するため捨てたモンスターの攻撃力分アップする。

 

美琴が磁石を模した岩石戦士を特殊召喚すると同時に、当麻の背後に電流の渦が発生する。

更に、

 

「次にPSYフレームギア・αの効果でこのカードと、デッキの『PSYフレーム・ドライバー』を攻撃表示で特殊召喚し、デッキからα以外のPSYフレームカード、『PSYフレームギア・δ』を手札に加える!」

「じ、上級モンスターをリクルートですって!?」

 

PSYフレームギア・α

効果モンスター/チューナー

光属性

サイキック族

レベル 1

攻撃力 500

 

PSYフレーム・ドライバー

通常モンスター

光属性

サイキック族

レベル 6

攻撃力 2500

 

当麻の場に電流を纏った戦士、PSYフレーム・ドライバーと、頭部を中心に装着する増幅器、PSYフレームギア・αが現れた。

そう、当麻のデッキは『PSYフレーム』、相手のプレイングに応じて手札のPSYフレームギアの効果を発動、自らは展開しつつ相手の行動を妨害するのをメインとしたカウンタービートデッキだ。

そして、PSYフレームの真価は、これだけに留まらない。

 

「更にPSYフレームモンスターの特殊召喚に成功した事で、PSYフレーム・サーキットの効果発動!レベル6のPSYフレーム・ドライバーに、レベル1のPSYフレームギア・αをチューニング!お前のモンスターの力が、フィールドを思い通りに出来るってんなら、まずはそのふざけた幻想をぶち殺す!シンクロ召喚、レベル7!『PSYフレームロード・Z』!」

「し、シンクロ召喚まで!?しかも私のターンなのに!?」

 

PSYフレームロード・Z

シンクロ・効果モンスター

光属性

サイキック族

レベル 7

攻撃力 2500

 

当麻の場に登場したPSYフレーム・ドライバーとPSYフレームギア・αが背後の、電流の渦に直ぐ様飛び込み、其処からシンクロ召喚の演出と共に、電流を纏った機械人間の様な戦士が飛び出して来た。

そう、専用サポートカードであるPSYフレーム・サーキットを用いての、相手ターンでのシンクロ召喚だ。

本来シンクロ召喚は、自分のメインフェイズにしか出来ない。

一応相手ターンにシンクロ召喚を行えるカードとして『緊急同調』があるがそれはバトルフェイズ限定だった、が、このPSYフレーム・サーキットはPSYフレームモンスターが特殊召喚された場合にシンクロ召喚が出来る。

こういった奇襲戦法が、PSYフレームデッキの醍醐味なんだ。

一方の美琴のデッキは、磁石の戦士か?

となれば切り札は、

 

「くっだけどその攻撃力じゃ、私の切り札の足元にも及ばないわ!フィールドの磁石の戦士βと、手札の『磁石の戦士α』、『磁石の戦士γ』をリリースして、合体召喚!『磁石の戦士マグネット・バルキリオン』!」

 

磁石の戦士マグネット・バルキリオン

効果モンスター

地属性

岩石族

レベル 8

攻撃力 3500

 

やっぱり持っていたか、元祖デュエリストキングこと武藤遊戯が持っていたエースモンスターの一角、マグネット・バルキリオンを。

フィールドにいたβと、美琴の手札から飛び出して来たαとγ、3体の磁石の戦士がそれぞれ分解、合体し、美琴のフィールドに舞い降りた、マグネット・バルキリオン。

その攻撃力もさることながら、

 

『マグネット・バルキリオン、か。彼女がエクシーズ召喚を会得すれば、あのカードは、あれを主軸としている彼女は、間違いなく化けるぞ』

 

現環境下では、むしろその効果の方が強烈だ。

その効果は、自分自身をリリースする事で、墓地にある3体の磁石の戦士を蘇生させるという物。

磁石の戦士は3体ともレベル4・地属性・岩石族、つまり即座にエクシーズ召喚につなげる事が出来る。

しかも同属性・同種族・同レベルが3体、挙げ句に複数のレベル4モンスターを用いるランク4モンスターは強烈な効果を持ったモンスター揃い、となれば、

 

・そのターン中にプトレノヴァインフィニティ、おまけに蘇生カードがあればもう1回出来る。

・他にレベル4モンスターがいればホプライ量産可

 

他にも様々なあくどい事が出来る。

見た所美琴のエクストラデッキにはカードが無かったから、まだその真価は発揮出来無さそうだが、アストラルが言った通り、彼女は間違いなく化ける。

惜しむべきは、

 

「その特殊召喚成功時、PSYフレームロード・Zの効果発動!相手フィールドの、特殊召喚された表側攻撃表示モンスター、ここはお前のマグネット・バルキリオンと、このモンスターを、次の俺のスタンバイフェイズまで除外する!」

「な、また私のターンで動くの!?」

 

彼女が今の実力を見せようと選んだデュエルの相手が、徹底してカウンターを仕掛ける当麻だった事か。

美琴が手札4枚消費してフィールドに出したマグネット・バルキリオン、しかし即座にその身をPSYフレームロード・Zが捕まえ、そのまま持ち前の瞬発力を活かして2体揃って消えて行ってしまった。

 

「ならもう1回、予想GUYを発動!」

「それにチェーンして、さっき手札に加えた『PSYフレームギア・δ』の効果発動!

手札のこのカードと、墓地のPSYフレーム・ドライバーを攻撃表示で特殊召喚し、その発動を無効にして破壊する!」

「つ、次から次へと私の行動が…!」

「まだまだ終わらない!PSYフレームモンスターの特殊召喚に成功した事で、PSYフレーム・サーキットの効果発動!レベル6のPSYフレーム・ドライバーに、レベル2のPSYフレームギア・δをチューニング!お前のカードの力が、状況を思い通りに出来るってんなら、まずはそのふざけた幻想をぶち殺す!シンクロ召喚、レベル8!『PSYフレームロード・Ω』!」

 

PSYフレームロード・Ω

シンクロ・効果モンスター

光属性

サイキック族

レベル 8

攻撃力 2800

 

『当麻の奴、えげつないね…

余程バカ扱いされたのが腹に据えかねていたのかな…?』

「それは…

無い、とは言えないかもな。とは言えどんな相手にも常に最善のプレイングをする、そんなうちの方針に則っているだけだろう、と信じたいな」

 

美琴の魔法カードの発動にチェーンしての、PSYフレーム・ドライバーと、両腕に装着する増幅器、PSYフレームギア・δの特殊召喚と効果無効破壊、そして其処からのシンクロ召喚と、本気のプレイングで美琴の動きを阻害しまくる当麻の姿に、俺やユベル達を含め、観客席にいた皆がドン引きしていた。

 

「た、ターンエンドよ!」

 

Mikoto

LP 4000

手札 1

モンスター なし

魔法・罠カード なし

 

------------

 

「PSYフレームロード・Ωでダイレクトアタック!

イマジン・クラッシャー!」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

Mikoto LP 1200→-1600 LOSE

 

WINNER Toma

 

「分かったか?学力だけでデュエルの実力は測れないって事が(スパァン!)あいたぁ!?」

「当麻!幾ら何でもやりすぎよ、やりすぎ!」

 

結局、事態が好転する事は無く、美琴は当麻の前にボロ負けを喫してしまった。

まあ、あれだけ自らの行動を妨害されまくった挙げ句に相手の良い様に動かれて負けたんだ、相当なショックに違いない、と思いきや、

 

「覚えてなさい…!」

 

デュエルに負け、倒れ伏していた彼女の口から聞こえて来たのは、反骨心むき出し、と言わんばかりの気迫に満ちた声だった。

更に、

 

「覚えてなさい、冴木当麻!何時かアンタをデュエルでボッコボコにしてやるんだから!」

 

即座に立ち上がり、当麻に敵意を前面に宣言した。

宣言された当麻も当麻で、

 

「良いぜ、ビリビリ1年生!何時だってデュエルの相手してやるよ!」

 

と返していた。

俺達がフォローしなくても大丈夫そうだな、この様子なら。

 

こうして遊勝塾に、9人目の塾生、石動美琴が加わった。


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