【完結】遊戯王ARC-V~遊の力を矢に束ね~ 作:不知火新夜
今年も宜しくお願いします!
ランサーズ結成の記者会見が終わり、遊勝塾の、仮の塾舎として借りていた施設へと戻った俺達、それから程無くして、俺は塾生の皆と、母さんを事務所に集めた。
「まあ、テレビでの記者会見とか、事前の説明で皆知っていると思うけど、ランサーズが正式に結成されて、俺と零児をトップに、柚子や一行、当麻やエレン、刃や美琴、雪乃や権現坂が
「ああ。俺もその件で、新たに発足する予定の、防衛部隊の隊長をやってくれないかって、社長さん、いや、最高顧問殿から話が来たんだ。それにしても遊矢が最高指揮官で、柚子達が精鋭部隊か!遊矢は昔からだが、柚子も皆もデュエリストとして立派になったもんだ!塾長としてこれ程嬉しい事は無いぞ!」
『…』
俺が切り出した話の内容に、塾長が付け加えつつ柚子達の成長を何時も通りの調子で称えるも、事務所に漂っていた重たい空気を払うには至らなかった。
此処に『いる筈の』素良の姿が無い事、その原因を皆、一部なんとなくではあれど感づいているが、それを聞くのが怖いからか、或いは…
「あの、遊矢兄ちゃん…
素良お兄ちゃんは…」
このまま黙り込んだままなのも駄目だと思ったのか、アユが素良の安否を聞いて来た。
何時か切り出されるとは思っていたけど、どう返せばいいか…
「素良は俺達を庇って、この世界に侵入したアカデミアのデュエリストにデュエルを挑んでいったよ。その後は…」
「うん、分かった…
ごめんね、遊矢兄ちゃん。話しづらい事、聞いちゃって…」
途中まで返したら、沈痛な面持ちをしたアユに「大体わかった」的に遮られた。
やっぱり、皆この事の真相は感づいているよな…
そんな中でこんな話をするのは、余計に重苦しくさせるかも知れない、けど!
「素良だけじゃない…
ランサーズ戦闘員の候補として名前が上がっていた、LDSブロードウェイ校のデニスってデュエリストも、アカデミアのデュエリストによって…
2人共、元はアカデミア出身のデュエリストだったんだけどさ、アカデミアの方針に異を唱え、裏切ったんだ。2人共気付いたんだよ、デュエルは人を傷つけたり、建物をぶっ壊したりする兵器じゃないって。
デュエルは、デュエルモンスターズは、自分や対戦相手が勝利を目指して全力でぶつかり合い、その中で自分や相手、周りの人達を白熱させる、笑顔にさせる、心の底から楽しい思いにさせる、そんな神聖な物なんだって!
デュエリストは、己が全力を尽くして勝ちを掴みに行き、その中で皆を笑顔にさせる存在なんだって!
俺は、アカデミアの様な、デュエルを兵器としてしか思っていない連中の為に、デュエルを己が腐った野望の為に利用する連中の為に、これ以上素良やデニスの様な存在を失いたくない!誰かの悲しみの涙を見たくない!デュエルを通じて、皆に笑顔でいて欲しいんだ!
だから俺はランサーズの最高指揮官として、別の次元へと渡る!アカデミアを、倒す!アカデミアに囚われた皆を、救い出す!皆の笑顔を、守る!」
それが、それが俺の、ランサーズに入った理由。
ランサーズの最高指揮官のオファーを受けた理由だ。
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Side ????
「ユーリ、随分と憔悴しきった顔だが、スタンダードで一体何があった?」
『何もアレも無いよ、スタンダードにあんな無茶苦茶なデュエリストがいるなんて聞いてないよ!オベリスク・フォースの連中も役立たずだし、裏切り者は出るし、とんだくたびれ儲けだよ!スタンダードは敵じゃ無かったって言わなかったかい、プロフェッサー!?』
「何だと?」
とある一室にて、紫を基調とした軍服に身を包んだ、『プロフェッサー』と呼ばれた男と、『融合次元の遊矢』と思しき『ユーリ』と呼ばれた少年が、通信機による連絡を取っていたが、そんな中で、ユーリが慌てふためいた様子で言った言葉に、男は怪訝の表情を浮かべる。
ユーリの言う通り、男はかねてより「スタンダード次元は敵では無い」と公言していた通り、遊矢達がいる世界を脅威と見ていなかった、故に、ユーリの報告に思いも寄らなかったという表情を浮かべた。
「そのデュエリストの名は?」
『確か『ユーヤ』だったかな、感づいたと思うけど『スタンダード次元の僕』だよ。何でか知らないけど、三幻魔のカードを持っているみたいなんだ!』
「三幻魔だと!?馬鹿な、それは我がアカデミアで封印されている禁断のカードの筈!?」
ユーリの更なる報告に、今度は驚愕の表情となった男。
正確に言うと、遊矢の持っている三幻魔のカードは、十代として『遊戯王GX』の世界にいた時にユベルを通じて入手した物なのだが、そうとは知らない男は大急ぎで誰かに指示を飛ばしていた。
「ともかく、その様なデュエリストがいると分かればスタンダードへの認識も、計画も修正をせねばならん。報告、感謝する。ゆっくり休んでくれ。
君がデニスを殺害したという報告に関しても後で聞かなくてはならないからな」
『ちょ、ちょっと待って!デニスを殺したのは僕じゃない!』
「君の言い分もその時に聞く」
『いや聞いてよプロフェッサー!突然銃声がしたかと思ったら何時の間にかデニスが倒れて(プツン)』
ユーリの弁明を遮るかの様に、男は通信を切った。
男とて、アカデミアにおいて重大な存在であるユーリが、同じくアカデミアにおいて精鋭として騒がれているデニスを殺害した理由が思い当たらないが故、彼が犯人だと決めつけている訳では無いが、現にその様な報告が多数寄せられている以上は、慎重に考慮せざるを得ない。
それよりも今は、
「ユーヤ…
まさか、榊遊矢か?まあいい、彼女に任せるとしよう。(ピッ)私だ」
『プロフェッサー?一体どの様な用件でありますか?』
「キサラ、急に呼び出して済まない。君にはスタンダードに出向き、とあるデュエリストの始末をして貰いたい」
『スタンダード、でありますか?其処に私が出向く程のデュエリストがいるとは思えないでありますが』
「それが報告によって、君の力が必要な程の存在がいた事が判明したのだよ。私も認識を改めなければ」
『成る程、了解であります。それで、そのデュエリストの名は?』
遊矢という存在への対処だ、と言わんばかりに男は別の存在との通信を行う。
その通信に応じたのは、ピンク掛かったセミロングヘアーに、青い眼が特徴の容貌、青のロングドレスを身に纏った、『キサラ』と呼ばれた少女だった。
「そのデュエリストの名は榊遊矢。『スタンダードのユーリ』と言えば分かりやすいかな?」
『榊遊矢、でありますね。了解したであります』
了解の意志を表明したのを最後に、キサラは通信を切った。
通信を終えた男は、今後の計画に向け、思案を巡らしていた。
「榊遊矢、彼を見たのは、4年も前の舞網チャンピオンシップ、そのジュニアクラスだったか。かなり玄人好みのデッキとプレイングをしていた様だったが、何故スタンダードのデュエリストである彼が三幻魔を…?」
思案を巡らせる男、彼こそがこのデュエルアカデミアのトップにして、周囲からは『プロフェッサー』と呼ばれる、零児の父、赤馬零王…!
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「榊、遊矢…
いけ好かない男であります。スタンダードの癖につけ上がって…」
一方、零王から指令を受けた彼女、キサラ・カルメルは、遊矢に対する恨み言を呟きつつ、とある場所へと足を進めていた。
「確か、スタンダードでスパイ活動していたデュエリストがいたでありますな。尤も、裏切りを働いた事で、今は牢の中にいるらしいでありますが」
向かった先の、アカデミアにおいて裏切り等の罪を犯した者が収容されている牢獄、其処に足を踏み入れ、
「ん…?
裏切り者の僕に、一体何の用だい?」
数ある牢の1つ、素良が入れられている牢の前で足を止めた…!