【完結】遊戯王ARC-V~遊の力を矢に束ね~   作:不知火新夜

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今回は今までと比べて長丁場になるので、前後編で分けています。


30話_死闘のダイビングデュエル、前編!

『舞網チャンピオンシップ、ジュニアユースクラス初日、いよいよ最後のデュエルとなりました!そしてこの試合、今日のクライマックスに相応しいカードと言って良いでしょう!

ジュニアユースクラス1回戦、第16試合を開始いたします!まずは1人目、前回大会で7位に輝き、今回第6シードに入った、デュエルダイバースクールのエース!その制圧力が今宵も発揮されるか!大海(ひろみ)王牙(おうが)選手!

続いて2人目!遊勝塾第3の刺客!そのデュエルは磁石が引きつけ合ったり、反発し合ったりするかの如く!石動美琴選手!』

 

今日最後のデュエルとなった第16試合、それに出場するは美琴と、黒のオールバック、青を基調とした服装の少年、大海王牙。

美琴にとっては今日のデュエル、遊勝塾に加入してからどれだけ実力を上げて来たかを図る上で最高の相手と言って良い。

なにしろ王牙のデッキは、OCGでも屈指のガチデッキと呼ばれていたテーマデッキで、その力は去年の舞網チャンピオンシップ、ジュニアユースクラスでも実証されたのだから…!

 

「宜しく頼むぜ、遊勝塾のお嬢ちゃん」

「ええ、相手にとって不足は無い、全力で行かせて貰うわ」

『フィールド内も盛り上がって来た様ですので早速始めましょう!ランダムセレクト!アクションフィールド、オン!『スフィアプール』!』

 

ニコさんがアクションフィールドとして発現したフィールド魔法カードを発動させると、アクションフィールドがドーム状に覆われ、内部が水状のソリッドビジョンで満たされた。

これがこのアクションフィールド『スフィアプール』最大の特徴、この水状のソリッドビジョンによって、フィールド内をまるで潜水しているかの如く泳ぎ回る事が出来る。

これは即ち、空中に浮いているアクションカードを、モンスターの補助なしで取りに行く事も出来る一方、一般的なアクションフィールドと比べてモンスター達の挙動が大きく変わるという事、これらの要素はかなり重要だ。

あ、因みに呼吸は普通に出来るし、会話も可能、服を着ていてもプレイヤー自身に影響は無いからな。

 

『戦いの殿堂に集いしデュエリストが!モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!フィールド内を駆け巡る!見よ、これぞデュエルの最強進化系!アクショーン!』

「「『デュエル』!」」

 

先攻 Orga LP 4000 VS 後攻 Mikoto LP 4000

 

「ありゃりゃ、俺が先攻か…

まあいいや、俺のターン!

まずは手札の『水精鱗(マーメイル)―リードアビス』を墓地へ送って魔法『ワン・フォー・ワン』発動!」

 

ワン・フォー・ワン(制限カード)

通常魔法

1:手札からモンスター1体を墓地へ送って発動出来る。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 

「ワン・フォー・ワンの効果で、デッキから『海皇子ネプトアビス』を守備表示で特殊召喚!」

 

海皇子ネプトアビス

効果モンスター

水属性

海竜族

レベル 1

守備力 0

 

ワン・フォー・ワンのコストとして墓地へ送られたカード、効果でリクルートされた男性っぽい外見の海竜族モンスター、そう、王牙のデッキは『海皇水精鱗』。

水属性モンスターの効果コストとして墓地へ送られる事をトリガーに発動するという、一風変わった発動条件を持つ海皇モンスター達と、水属性モンスターを墓地へ送る事を効果発動のコストにした水精鱗モンスター達を中心としたこのデッキ、これを構成する『海皇』と『水精鱗』という2つのテーマはバックストーリーの関係もあって互いのシナジーが強く、ほぼ同時に登場するや否や環境の前線に立ち続けており、作者もこのデッキが大の苦手だったとか。

 

「デッキから『海皇の竜騎隊』を墓地へ送って、今出したネプトアビスの効果発動!

デッキから2枚目の竜騎隊を手札に加えるぜ!

次に、コストとして墓地へ送った竜騎隊の効果発動!

デッキから『水精鱗―メガロアビス』を手札に加えるぜ!」

 

出た、海皇水精鱗のエースと言われているモンスターが。

 

「今手札に加えたメガロアビスの効果を使わせて貰うぜ!

手札の竜騎隊と、2枚目のネプトアビスを捨てて効果発動!

コイツを攻撃表示で特殊召喚!行くぜ、メガロアビス!」

 

水精鱗―メガロアビス

効果モンスター

水属性

海竜族

レベル 7

攻撃力 2400

 

『おぉっと!早速現れました!王牙選手の切り札、メガロアビスが!』

 

サーチするや否や王牙の側に登場したのは、半魚人と言えなくも無い風貌、真鍮のカラーリングの鎧を身に纏い、左手に魚のヒレを模した鋸を装備した戦士、メガロアビス。

この、如何にも海皇と組み合わせて使って下さいと言わんばかりのコストで特殊召喚する効果と、

 

「コストとして墓地へ送った竜騎隊の効果発動!

それにチェーンして、同じくコストとして墓地へ送ったネプトアビスの効果発動!

更にチェーンして自分の効果で特殊召喚したメガロアビスの効果発動!

まずはメガロアビスの効果で、デッキから装備魔法『アビスケイル―クラーケン』を手札に加えるぜ!

次にネプトアビスの効果で、墓地の竜騎隊を攻撃表示で蘇生するぜ!

最後に竜騎隊の効果で、デッキから2枚目のメガロアビスを手札に加えるぜ!」

 

海皇の竜騎隊(準制限カード)

効果モンスター

水属性

海竜族

レベル 4

攻撃力 1800

 

この『アビス』魔法・罠カードをサーチする効果、そして『海皇水精鱗はワンキルデッキ』と言われている所以の1つとなっている、2回攻撃効果(自分フィールドにいる水属性モンスターをリリースする事をコストに発動する。つまりこれも海皇の効果を発動するトリガーになる)も併せ持っているという、1枚のモンスターカードが持っていい範疇を越えている(しかも1ターンに1回の制限が事実上『無い』)トンデモスペックである。

無論手札があればこそ、そのスペックも活かせる訳だが。

 

「更に手札の『海皇の狙撃兵』と『海皇の重装兵』を捨てて、今手札に加えたメガロアビスの効果発動!

コイツを攻撃表示で特殊召喚するぜ!

本来ならコストとして墓地へ送った重装兵と狙撃兵の、お嬢ちゃんのフィールドにあるカードを破壊する強制効果が発生するんだが、まだ先攻1ターン目だから無かった事になるぜ。

まあそれは置いて、自分の効果で特殊召喚したメガロアビスの効果発動!

デッキから装備魔法『アビスケイル―ミズチ』を手札に加えるぜ!

そして、アビスケイル―クラーケンを、最初に出したメガロアビスに、アビスケイル―ミズチを今出したメガロアビスに装備させてターンエンドだ!」

 

アビスケイル―クラーケン

装備魔法

『水精鱗』と名の付いたモンスターにのみ装備可能。

装備モンスターの攻撃力は400ポイントアップする。

このカードがフィールド上に存在する限り、相手フィールド上で発動した効果モンスターの効果を無効にする。その後、このカードを墓地へ送る。

 

水精鱗―メガロアビス(A) 攻撃力 2400→2800

 

アビスケイル―ミズチ

装備魔法

『水精鱗』と名の付いたモンスターにのみ装備可能。

装備モンスターの攻撃力は800ポイントアップする。

このカードがフィールド上に存在する限り、相手フィールド上で発動した魔法カードの効果を無効にする。その後、このカードを墓地へ送る。

 

水精鱗―メガロアビス(B) 攻撃力 2400→3200

 

Orga

LP 4000

手札 0

モンスター 海皇子ネプトアビス(守備表示)

      海皇の竜騎隊(攻撃表示)

      水精鱗―メガロアビス(A)(攻撃表示 アビスケイル―クラーケン装備)

      水精鱗―メガロアビス(B)(攻撃表示 アビスケイル―ミズチ装備)

魔法・罠カード アビスケイル―クラーケン(装備対象 水精鱗―メガロアビス(A))

        アビスケイル―ミズチ(装備対象 水精鱗―メガロアビス(B))

 

こ、これかなりマジな布陣じゃねぇか!

モンスター効果を1回だけ無効に出来るクラーケンと、魔法カードの効果を1回だけ無効に出来るミズチ、それらを装備するメガロアビスが2体に、リリース要員として控えるネプトアビスと竜騎隊…

さて、この布陣に美琴はどう動くか…!

 

「随分と展開したわね…

私のターン、ドロー!

早速行くわよ!私の手札にある『磁石の戦士』α、β、そしてγをリリースして、合体召喚!『磁石の戦士マグネット・バルキリオン』!」

 

磁石の戦士マグネット・バルキリオン

効果モンスター

地属性

岩石族

レベル 8

攻撃力 3500

 

『おぉっと!美琴選手、初手で切り札であるマグネット・バルキリオンを出す為のパーツを揃えていたぁ!この特殊召喚は効果として扱われませんので、クラーケンの効果は適用されません!美琴選手、王牙選手の包囲網を見事にかいくぐりました!』

「へぇ、そいつがお嬢ちゃんの切り札か、中々強そうじゃねぇか」

「そう?でも、マグネット・バルキリオンの役目はそれだけじゃないわ。まあそれは後でやるとして、次に『レスキューラビット』を召喚!」

 

レスキューラビット

効果モンスター

地属性

獣族

レベル 4

攻撃力 300

 

「続いてレスキューラビットを除外して効果発動!本来なら此処でデッキからレベル4以下で同名の通常モンスターを2体リクルート出来るけど…」

「それはクラーケンの効果で無効になり、クラーケンは墓地へ送られるぜ」

 

クラーケンがある状態でレスキューラビットの効果を使った…?

いや、クラーケンを始めとしたアビスケイルシリーズの無効効果は強制効果、つまりそういう事か。

 

「よし、これで心置きなくマグネット・バルキリオンの真の力が使えるわ!

マグネット・バルキリオンをリリースして効果発動!私の墓地から磁石の戦士、α、β、γを1体ずつ攻撃表示で特殊召喚するわ!戻りなさい、磁石の戦士達!」

 

磁石の戦士α

通常モンスター

地属性

岩石族

レベル 4

攻撃力 1400

 

磁石の戦士β

通常モンスター

地属性

岩石族

レベル 4

攻撃力 1700

 

磁石の戦士γ

通常モンスター

地属性

岩石族

レベル 4

攻撃力 1500

 

「ん?たった今出した切り札をリリースした、だと?」

 

美琴が、マグネット・バルキリオンをリリースして素材3体を蘇生した事に疑問を覚える王牙と、観客の皆。

まあ普通に考えたら王牙のフィールドにいるモンスターの中で、素材である磁石の戦士達が突破できるのは守備表示のネプトアビスだけ、そのままなら次のターンで全滅されてしまう。

だが、それはあくまで此処の次元の『エクストラデッキを使わない』デュエリストだったらの話。

 

「Ladies and Gentleman!Boys and Girls!これより私、石動美琴と、輝きに満ちた私のモンスター達による、華麗なるショーをお見せ致しましょう!」

「な、何だ!?」

「それでは行きます!私は磁石の戦士αとγでオーバーレイ!2体のレベル4モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!金剛石に覆われし強大なる狼よ、全てを食らい尽くせ!『恐牙狼ダイヤウルフ』!」

「エクシーズ召喚!なるほど、その為に態々バラした訳か!」

 

恐牙狼ダイヤウルフ

エクシーズ・効果モンスター

地属性

獣族

ランク 4

攻撃力 2000

ORU 2

 

『現れました!美琴選手が最近会得した召喚方法、エクシーズ召喚によって呼び出される、エクシーズモンスター!その1番手であるダイヤウルフですが、水中のステージであるが故でしょうか、この前私が拝見した時より輝いて見えます!』

 

美琴の、ショーの開演を告げるかの様な口上と共に出現したのはダイヤウルフ。

その体躯はニコさんの言う通り、乱反射でいつもより光輝いていた。

 

「続いて、ダイヤウルフのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて、このカードと、ミズチを装備したメガロアビスを対象に効果発動!

対象のカードを破壊します!行きなさい、ダイヤウルフ!レックレス・ファング!」

「な、何!?うわっ!」

 

尤も、その輝きも数瞬の物だった訳だがしかし、王牙の魔法・罠ゾーンにあったミズチが、装備対象であるメガロアビスごと墓地送りとなった事で、美琴は心置きなく魔法カードを使える様になった。

 

「更に、フィールドの磁石の戦士βを墓地へ送って、装備魔法『戦線復活の代償』発動!対象は墓地のマグネット・バルキリオン!」

 

戦線復活の代償

装備魔法

自分フィールド上の通常モンスター1体を墓地へ送り、自分または相手の墓地のモンスター1体を選択して発動出来る。選択したモンスターを自分フィールド上に特殊召喚し、このカードを装備する。このカードがフィールド上から離れた時、装備モンスターを破壊する。

 

「戦線復活の代償の効果で、再び現れなさい、マグネット・バルキリオン!

まだまだ終わりではありません!マグネット・バルキリオンを再度リリースして効果発動!α、β、γ、3体の磁石の戦士は再び舞い降ります!

磁石の戦士αとγでオーバーレイ!2体のレベル4・地属性モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!光輝く玉座に座する妖精王よ、その威光の下に外敵を制圧せよ!『妖精王アルヴェルド』!」

 

妖精王アルヴェルド

エクシーズ・効果モンスター

地属性

植物族

ランク 4

攻撃力 2300

ORU 2

 

マグネット・バルキリオンを墓地から出し入れして再び磁石の戦士達を蘇生し、呼び出したエクシーズモンスターは、口上の通り光輝く玉座に座した、一見すると種族である植物族の特徴が全く見られない銀髪の、高貴な服装に身を包んだ男性、妖精王アルヴェルド。

 

「そして、アルヴェルドのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!地属性以外のモンスターの攻守を500ポイント下げます!王の威光!」

「な、何だって!?俺のフィールドのモンスターは水属性しかいないから全員適用されるのか!」

 

海皇の竜騎隊 攻撃力 1800→1300

水精鱗―メガロアビス 攻撃力 2400→1900

 

OCGだと縛りがキツイ割に微妙な効果しかない事から殆ど見かけなかったコイツだが、この状況では中々有用だ。

これでアルヴェルド自身はどのモンスターも戦闘破壊出来、βも竜騎隊を戦闘破壊出来る。

それに、ガチに流れ過ぎてもエンタメデュエルのし甲斐が無いだろ?テーマを追求し切ったデッキでそれを行ってこそ、そのテーマの奥深いバックボーンを伝えられ、それが皆を引きつけ、笑顔に出来るって物さ。

 

「バトルフェイズに入ります!アルヴェルドでメガロアビスを攻撃!王の魔導!」

「させるか!アクションマジック『回避』発動!」

 

回避

アクションマジック

1:フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターの攻撃を無効にする。

 

「回避の効果でアルヴェルドの攻撃を無効にする!」

 

王牙、というよりデュエルダイバースクールは此処スフィアプールでのデュエルを得意としている、流石にこのフィールドでの立ち回りは手慣れた物って訳か、美琴のエクシーズ召喚に驚き、切り札であるメガロアビスの片方を失っても落ち着いてアクションカードを取る程は。

 

「くっ!なら磁石の戦士βで竜騎隊を攻撃!マグネットタックル!」

「うおっと!」

 

磁石の戦士β 攻撃力 1700 VS 海皇の竜騎隊 攻撃力 1300

 

Orga LP 4000→3600

 

「ターンエンドです!」

『美琴選手、連続してのエクシーズ召喚により、王牙選手の包囲網を突破して見せました!流石は精鋭揃いの遊勝塾に名を連ねるデュエリストです!』

 

Mikoto

LP 4000

手札 1

モンスター 妖精王アルヴェルド(攻撃表示)

      磁石の戦士β(攻撃表示)

魔法・罠カード なし

 

さあ、この状況で王牙はどう動く?


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