【完結】遊戯王ARC-V~遊の力を矢に束ね~ 作:不知火新夜
『さあ、舞網チャンピオンシップ、ジュニアユースクラスの初日も盛り上がって来ました!この雰囲気の中で行われる次の試合ですが、1つ注意点があります。
ホラーが苦手な方は、このデュエルが終わるまで退席する事をお勧めします…
観客席に残られた皆様、このデュエルを最後まで見届ける覚悟がおありと見て宜しいですね。それではジュニアユースクラス1回戦、第12試合を開始いたします!まずは1人目!昨年大フィーバーを巻き起こした遊勝塾が新たに送り込んだ刺客!そのデュエルは、『ホラー』の極み…!
これもまた、エンタメデュエルの1つの形と言う事か!遊勝塾の『ブギーマン』!紫雲院素良選手!
続いて2人目!此処の所凋落著しい梁山泊、今回擁立した選手達が次々と脱落する中、最後の砦となるか!
ニコさんの、異例とも言える警告の後に開始宣言された第12試合、それに出場するのは素良と、第1試合に出た勇雄と同じく拳法着に身を包み、弁髪(満州族が清朝樹立と共に敵味方の区別の為に導入・強要した、後頭部が物凄く長い三つ編みになっている以外は剃り上げられた髪型)の様な髪型をした少年、梅杉剣。
然しながら、ニコさんの恐怖を煽るかの様な紹介と共に出て来た素良の姿は何処か異様だった。
ジュニアユースに属する年代には見えない位の可愛らしい顔立ちは白塗りのマスクで覆われ、服装は青いツナギ、デュエルディスクを装着した左手には包丁(おもちゃ)を握るその姿に、観客及び対戦相手の梅杉は言い知れぬ恐怖感から言葉を失いつつも、その視線を離せないでいる…!
無論これは素良なりの演出なのだが。
俺のアドバイスを基に、ホラー映画の殺人鬼っぽい振る舞いで観客を『恐怖感』によって引きつける『ホラーデュエル』を自らのデュエルスタイルとした素良、それを確立すべく、ホラー映画屈指の名作『ハロウィン』シリーズに登場する殺人鬼『ブギーマン』の様な服装に身を包む様にしたとか。
確かにその雰囲気は完璧だ、実際その姿に小さい子が泣きそうになっているんだが。
「な、なんなんだその異様な姿と雰囲気は…!
だが、そんな映画を真似た虚仮脅しが通ずると思うな!謂れの無い風潮で危機に立たされた梁山泊の恨み、貴様の同門に良い様に甚振られた勝鬨の恨み、此処で晴らさせて貰うぞ!」
「くくく、虚仮脅しかどうか直ぐに分かるよ、僕の『ホラーデュエル』で直ぐに、ね…!」
『何やら異様な雰囲気に支配されてきていますが、始めましょう!ランダムセレクト!アクションフィールド、オン!『グレイブヤード』!』
いや此処のソリッドビジョンシステムや、雰囲気がこうだからってアクションフィールドを、『空気読みました』と言いたげに仄暗い墓場の様な地形『グレイブヤード』にしなくても。
『戦いの殿堂に集いしデュエリストが!モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!フィールド内を駆け巡る!見よ、これぞデュエルの最強進化系!アクショーン!』
「「『デュエル』!」」
先攻 Ken LP 4000 VS 後攻 Sora LP 4000
「俺の先攻!
モンスターをセット、カードをセットしてターンエンド!」
Ken
LP 4000
手札 3
モンスター セット
魔法・罠カード セット
「あんな大口叩いた割に、随分と消極的だねぇ…
じゃあ僕のターン、ドロー…!
まずは手札から『エッジインプ・チェーン』を墓地へ送って『ワン・フォー・ワン』発動…!
それにチェーンして墓地へ送られたエッジインプ・チェーンの効果発動…!」
「なっ!?墓地で発動するモンスター効果だと!?」
ワン・フォー・ワン(制限カード)
通常魔法
1:手札からモンスター1体を墓地へ送って発動出来る。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。
「チェーン処理に入って、エッジインプ・チェーンの効果でデッキから『デストーイ・ファクトリー』を手札に加えるよ…!
そしてワン・フォー・ワンの効果で『ファーニマル・ラビット』を守備表示で特殊召喚…!」
ファーニマル・ラビット
効果モンスター
地属性
天使族
レベル 1
守備力 1200
これも見慣れたな、素良の開幕ワン・フォー・ワンによるラビットのリクルート。
その後の展開が容易に想像できた俺達の一方、『ホラーデュエル』とは程遠い、ラビットのファンシーな姿に他の観客はポカンとしていた。
そうやってポカンとしていられるのも今の内、だぜ?
「次に『ファーニマル・ドッグ』を召喚…!」
ファーニマル・ドッグ
効果モンスター
地属性
天使族
レベル 4
攻撃力 1700
「ファーニマル・ドッグの効果で、デッキから『ファーニマル・ベア』を手札に加えるよ…!」
ん?今日は珍しいな、ベアを手札に加えたぞ?
「今手札に加えたファーニマル・ベアを墓地へ送って効果発動…!
デッキから永続魔法『トイポット』を僕の魔法・罠ゾーンにセットして、そのまま発動…!」
トイポット
永続魔法
1:1ターンに1度、手札を1枚捨てて発動出来る。自分はデッキから1枚ドローし、お互いに確認する。確認したカードが『ファーニマル』モンスターだった場合、手札からモンスター1体を特殊召喚出来る。違った場合、そのドローしたカードを捨てる。
2:このカードが墓地へ送られた場合に発動出来る。デッキから『エッジインプ・シザー』1体または『ファーニマル』モンスター1体を手札に加える。
素良がセットされていたトイポットを表側表示に変えると、その背後に巨大なガチャガチャマシーンが姿を現し、
「続いて手札の『エッジインプ・ソウ』を墓地へ送ってトイポットの効果発動…!
まずはドロー…!
今ドローしたカードは『ファーニマル・オウル』、よってオウル自身を守備表示で特殊召喚するよ…!」
ファーニマル・オウル
効果モンスター
地属性
天使族
レベル 2
守備力 1000
排出されたカプセルから、フクロウの様なファーニマルモンスター、オウルがフィールドへと飛び出して来た。
「『手札から』特殊召喚されたオウルの効果発動…!
デッキから『融合』を手札に加えるよ…!」
「融合!?まさか貴様も融合使いなのか!?」
「そうだよ…!
尤も、君達なんかの融合と一緒にしないで欲しいけどね…!」
「何だと!?馬鹿にしやがって!」
貴様『も』って、確か梁山泊も最近、融合召喚を取り入れたって、この前零児がそういっていたな。
それにしても素良の奴、これだけ動いているけど、手札がまだ4枚(うち1枚がエッジインプ・チェーンの効果で加えた『デストーイ・ファクトリー』、もう1枚がオウルの効果で加えた『融合』)残っている、『不動性ソリティア』で知られる遊星としての人生を歩んで来た俺でもびっくりだ。
多分、此処で決着が着くかな。
「さあ此処からが本番だよ…!
今手札に加えた『融合』発動…!」
融合
通常魔法
1:自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。
「フィールドのドッグと、手札の『エッジインプ・シザー』を融合…!」
「何!?素材をフィールドに揃えないと融合召喚出来ないのではないのか!?」
「はぁ?確かにそんなカードも結構あるけど、基本的に融合素材にするモンスターは、融合召喚を行うカードで指定された領域にあるカードだよ、融合召喚使っている癖にそれも分からないのかなぁ…?
まあ良いや、悪魔の爪、猟犬の刃、今1つとなりて新たな力と姿となる…!
融合召喚、現れ出ちゃえ、全てを引き裂く密林の魔獣…!『デストーイ・シザー・タイガー』!」
デストーイ・シザー・タイガー
融合・効果モンスター
闇属性
悪魔族
レベル 6
攻撃力 1900→2800
『な、何だこれ…!』
『あの可愛かったワンコが、ヤヴァイ姿に…!』
『い、嫌ァァァ…!』
「い、一体何なのだコイツは…!」
※暫くお待ちください
まあ、その何だ、俺達遊勝塾関係者にはお馴染みの光景が広がった後に、デストーイ・シザー・タイガーが登場したんだが、初めて見た観客の大半はその『見せられないよ!』という看板が出て来そうな光景に恐怖を覚えて騒乱が起こった、が、
「融合召喚したシザー・タイガーの効果発動…!
このカードの融合素材にしたモンスターの数まで、フィールドのカードを破壊するよ…!
勿論対象は君のカード2枚…!
チェーンするなら今の内だよ…!」
「な、何!?くっチェーンは無い…!」
「そう、なら(ザシュゥ!)死ねェェェ!」
『ギャァァァァァァァ(ズバァ!)ァ…!』
『き、きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
『く、首が…!』
『お、おげぇぇぇぇぇぇぇぇ!』
「な、な(ゴトリ)わ、わぁぁぁぁぁ!」
※暫くお待ちください
恐怖の時間はまだ終わりじゃ無かった。
一体何が起こったのかと言うと、シザー・タイガーが梅杉の魔法・罠ゾーンにセットされたカードを、素良自身がエッジインプ・シザーらしき得物を持ってセットモンスターに突撃し、まずは裏側表示のカードの上から突き刺し、その激痛からセットモンスターが実体化し、戦士族っぽい出で立ちのモンスターが現れたタイミングで、その首に突き刺し、更にハサミを開いて両断、序にその生首を梅杉の方へとぶん投げた、という一連の流れが数秒で繰り広げられた。
心臓にダイレクトアタックを決めると言わんばかりに繰り広げられたスプラッタな光景に、或る者は言葉を失い、或る者は叫び声を上げ、或る者は人前にも関わらず嘔吐し、或る者は気絶し、対峙している梅杉は腰を抜かし、そして司会進行のニコさんは空気を読んだと言うより気持ち悪くなったのか実況を止めた。
まあ、その、気持ちは分かる、今では慣れた俺達ですら最初の頃は似た様な状況になったし。
「まだまだ終わらないよ…!
魔法『
魔玩具融合
通常魔法
『魔玩具融合』は1ターンに1枚しか発動出来ない。
1:自分のフィールド・墓地から『デストーイ』融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを除外し、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。
「墓地のベアとエッジインプ・チェーンを除外して融合…!
悪魔の鎖、野獣の牙、今1つとなりて新たな力と姿となる…!
融合召喚、現れ出ちゃえ、全てを封じる鎖のケダモノ…!『デストーイ・チェーン・シープ』!」
デストーイ・チェーン・シープ
融合・効果モンスター
闇属性
悪魔族
レベル 5
攻撃力 2000→2900
デストーイ・シザー・タイガー 攻撃力 2800→3100
デストーイ・チェーン・シープ 攻撃力 2900→3200
此処で使って来るか、素良の切り札である魔玩具融合を。
デストーイ版『ミラクル・フュージョン』と言って良い魔玩具融合によって出て来たのは、エッジインプ・チェーンが絡みつく等して改造され、羊の様な色々ヤヴァイ悪魔となったモンスター、デストーイ・チェーン・シープ。
然しながらさっきの首の切断という凄惨な光景がまだまだ目に焼き付いているのか、その融合召喚に驚く観客は極僅かだった。
「そして、永続魔法『デストーイ・ファクトリー』発動…!」
デストーイ・ファクトリー
永続魔法
『デストーイ・ファクトリー』の1,2の効果は其々1ターンに1度しか使用出来ない。
1:自分の墓地から『融合』魔法カードまたは『フュージョン』魔法カード1枚を除外してこの効果を発動出来る。自分の手札・フィールドから『デストーイ』融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。
2:このカードが墓地へ送られた場合、除外されている自分の『魔玩具融合』1枚を対象として発動出来る。そのカードを手札に加える。
しめくくりと言わんばかりに、ずっと握っていたデストーイ・ファクトリーを発動させると、その背後に、イラストに描かれていたデストーイの工場、その生産ラインが再現される形でコンベア等の設備が出現した。
「墓地の魔玩具融合を除外して、デストーイ・ファクトリーの効果発動…!
フィールドのチェーン・シープ、オウル、ラビットを融合…!
鎖のケダモノ、煉獄の眼、諸刃の牙、今1つとなりて新たな力と姿となる…!
融合召喚、現れ出ちゃえ、全てに牙剥く魔境の猛獣…!『デストーイ・サーベル・タイガー』!」
デストーイ・サーベル・タイガー
融合・効果モンスター
闇属性
悪魔族
レベル 8
攻撃力 2400→3400
デストーイ・シザー・タイガー 攻撃力 3100→2900
そしてその設備に、チェーン・シープとオウル、ラビットが入り込み、色々な工程の後に出現したのは、シザー・タイガーと同じく虎の様な外見の、身体中から刃物が飛び出したヤヴァイ悪魔、デストーイ・サーベル・タイガー。
「融合召喚したサーベル・タイガーの効果発動…!
それにチェーンして融合素材にしたラビットの効果発動…!
まずはラビットの効果で、墓地のドッグを手札に戻すよ…!
そしてサーベル・タイガーの効果でチェーン・シープを蘇生するよ…!」
デストーイ・シザー・タイガー 攻撃力 2900→3200
デストーイ・サーベル・タイガー 攻撃力 3400→3700
デストーイ・チェーン・シープ 攻撃力 2000→3300
改めてフィールドを見渡すと無茶苦茶だなこれ、後攻1ターン目なのに素良の場にはデストーイ融合モンスターが3体、しかもサーベル・タイガーは3体以上の融合素材を使ったから破壊耐性完備、チェーン・シープは効果で自己再生可能、更に発動されている2枚の永続魔法は放って置いてもアドを稼がれ、破壊してもアドを稼がれる、正にOCGなら絶望モノの布陣…
え、ライトニングとビヨンドを並べたお前が言うなって?ほっとけ!
「さあバトルフェイズに入るよ…!
やれ、僕のデストーイ達、アニメ本編で師匠の心身をフルボッコにしたアイツに地獄を見せちゃえ!」
「な、何を言って『ガァァァァァァァァァァァァァ!』う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
Ken LP 4000→800→-2500→-6200 LOSE
WINNER Sora
『決まったぁ!第12試合の勝者は、恐怖の魔獣たちによる『ホラーデュエル』で圧倒した、素良選手!そしてこの瞬間、今回エントリーした梁山泊所属のデュエリストは早くも全滅!古豪がいち早く姿を消し、新鋭がその勢いを強めた今こそ、新時代の到来と言って良いでしょう!』
「如何でしたか観客の皆さん、僕のモンスター達による『ホラーデュエル』の恐怖の程は…!
さぞ、背筋が凍る感覚を何度となく味わい、そして恐怖の時間が終わった今、あの恐怖感から解放された今、「ああ、怖かった…!」と安堵の笑みを浮かべているのでしょう…!
それでは次回の『ホラーデュエル』を、お楽しみに…!」
ニコさんの勝利宣言と共に素良は、ストーリーテラーの様に語りつつフィールドを去って行った。
というか刃も素良も何メタ発言しているんだ、アニメ本編での梁山泊のやり方はどんだけ酷いんだ…?