【完結】遊戯王ARC-V~遊の力を矢に束ね~   作:不知火新夜

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3章『いざ開幕!舞網チャンピオンシップ!』
27話_DirtyDeedsDoneDirtCheap


『いよいよ開幕しました舞網チャンピオンシップ、ジュニアユースクラス!今日までに各地で行われた公式戦にて勝率6割以上、或いは6連勝という厳しい参加条件をクリアした57人の精鋭と、前回大会にて好成績を叩き出した7人のシード選手の、合計64人によって、将来デュエル界を引っ張って行くであろうデュエリストの座を賭けて争うこの大会!果たして今回は、誰がその座を掴むのでありましょうか!?尚、司会進行はこの私、ニコ・スマイリーが担当します!』

 

ニコさんの司会進行によって始まりを告げた、舞網チャンピオンシップ。

舞網市で髄一、いや、世界でも有数の規模で行われるこの大会、その最高部門であるユースクラスで優勝したともなれば、それ即ちプロへの道を約束されたと言っても過言では無く、故に参加条件をクリアする為に、公式戦にて激闘を繰り広げた目の前のデュエリスト達の目からはギラギラという擬音が聞こえて来る。

ただ今回はそれだけでは無い、いずれ訪れるであろう融合次元の組織『デュエルアカデミア』との、世界の存亡を賭ける戦いで前線に立つ私兵組織『ランサーズ』、その選抜試験という側面もある。

最高指揮官である俺や、柚子達ARC-Vの面々も、参加者且つ試験官という、WDCでのゴーシュ達の様な立場で参加者達の選別を行う事になっている。

純粋に己の実力を試そうとしている参加者たちの想いを利用する形で、同じデュエリストとして少なからず心は痛むが、この光景を、デュエルの『真理』を変えさせない為に、今は心を鬼にする時だ!

 

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『舞網チャンピオンシップ、ジュニアユースクラス1回戦、記念すべき第1試合を開始いたします!

その第1試合に臨むデュエリスト達の入場です!まずは1人目!前回大会ではベスト8に入り、今回第7シードに入った、梁山泊のホープ!その実力を、今回も発揮出来るか!勝鬨(かちどき)勇雄(いさお)選手!

続いて2人目!この春、LDSから遊勝塾に移籍した異色の選手!そのデュエルは『えげつない』、これに尽きます!刀堂刃選手!』

 

開幕試合に出場する事となった刃、とその相手、中国拳法とかの大会で目にしそうな拳法着で身を包んだ、紫色のツンツンヘアーの少年、勝鬨勇雄。

実を言うと勇雄が所属する梁山泊というデュエルスクール、アクションデュエルの際の暴力行為は当たり前で、あの手この手で優位に立とうとするリアリストっぷりで有名だ。

その悪名さで良い顔をされない一方、数多くのプロデュエリストを輩出して来た指導力から嘗てはLDSに並ぶ人気があった、が、

 

「貴様、遊勝塾生か。此処で対戦カードが巡って来るとは、運命だったのかも知れないな…!」

「な、なんだお前?随分と剣呑な雰囲気出しているなぁ…」

「おのれ遊勝塾!貴様らの所為で、自分達梁山泊は謂れの無い風評被害を被ったぞ!許せん!」

 

去年の舞網チャンピオンシップ、ジュニアユースクラスで、俺と一行がワンツーフィニッシュした上に柚子が4位、当麻が5位と、トップ5のうち4つを遊勝塾が占めた(3位が権現坂である事を考えると、事実上の独占だな)一方、梁山泊所属での入賞は勇雄の8位のみ、という事で「梁山泊はリアルファイトにばかり精を出した所為で落ちぶれた」と言われる様になり、元々の悪名もあって人気は急落した。

故に因果応報とはいえ、梁山泊は今の勇雄の様に、俺達遊勝塾に恨みを抱いているみたいなんだが、そんな奴に、つい最近入ったばかりの刃が当たる事になるとはな…

 

『それでは始めましょう!ランダムセレクト!アクションフィールド、オン!『仙界竹林』!

戦いの殿堂に集いしデュエリストが!モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!フィールド内を駆け巡る!見よ、これぞデュエルの最強進化系!アクショーン!』

「「『デュエル』!」」

 

先攻 Yaiba LP 4000 VS 後攻 Isao LP 4000

 

「俺のターン!

まずは手札の『X-セイバー エアベルン』を墓地へ送って魔法『ワン・フォー・ワン』発動!」

 

ワン・フォー・ワン(制限カード)

通常魔法

1:手札からモンスター1体を墓地へ送って発動出来る。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 

「ワン・フォー・ワンの効果で、デッキからレベル1の『XX-セイバー レイジグラ』を守備表示で特殊召喚!」

 

XX-セイバー レイジグラ

効果モンスター

地属性

獣戦士族

レベル 1

守備力 1000

 

「特殊召喚したレイジグラの効果発動!

今墓地へ送ったエアベルンを手札に戻し、そのまま召喚するぜ!」

 

X-セイバー エアベルン

効果モンスター/チューナー

地属性

獣族

レベル 3

攻撃力 1600

 

「次に、俺の場に『X-セイバー』モンスターが2体いるから、手札の『XX-セイバー フォルトロール』2体を攻撃表示で特殊召喚するぜ!」

 

XX-セイバー フォルトロール

効果モンスター

地属性

戦士族

レベル 6

攻撃力 2400

 

本当に運が無いな、あっちの方が(笑)。

2足歩行で、両手に其々短刀を持ったカメレオンの様な姿の戦士レイジグラと、某アメリカンコミックに登場するヒーローみたいな武装を装着したライオンの様な姿の戦士エアベルン、そして巨大な剣を上段に構える筋骨隆々な戦士フォルトロールが2体、という刃の必勝パターンが、竹林が生えた数々の浮島というアクションフィールドに展開され、俺はそう思った。

まあ身から出た錆と言う事で、梁山泊は一旦落ちる所まで落ちて、その錆を落として出直して欲しい物だ、うん。

 

「行くぜ!俺はレベル6のフォルトロールに、レベル3のエアベルンをチューニング!白銀の鎧輝かせ、刃向う者の希望を砕け!シンクロ召喚、レベル9!『XX-セイバー ガトムズ』!」

 

XX-セイバー ガトムズ

シンクロ・効果モンスター

地属性

獣戦士族

レベル 9

攻撃力 3100

 

『な、なんと先攻1ターンで4体のモンスターを展開したばかりかシンクロ召喚、刃選手の切り札であるガトムズが現れました!そして観客の皆さん、此処から先の光景に引かないようお願いします…』

 

シンクロ召喚の演出と共に出現した、白銀の鎧に身を包んだ嘗てのX-セイバーの初代副官にして2代目リーダー、ガトムズの姿に、或る者は驚きに呆然とし、或る者は歓喜の声を上げ、そしてある者は、この陣容を見た事があるニコさんの不穏な言葉に戸惑い、

 

「さぁてさて観客席にお集りの皆さん、これからこのガトムズと、彼が率いる傭兵部隊『X-セイバー』達によるビックリ人間芸をお見せ致しましょう!

まずはレイジグラをリリースしてガトムズの効果発動!

対戦相手の手札を1枚、ランダムに捨てさせます!そぉい!」

『ウォォォォォォ!(ビュゥン!)』

『シャァッ!(げしっ!)』

「ぐぁっ!?」

『ぶ、ぶん投げたァァァァァ!?』

「次にフォルトロールの効果発動!俺の墓地にあるレベル4以下の『X-セイバー』、今墓地に送ったばかりのレイジグラを守備表示で蘇生します!せぇの!」

『ウォォォォォォォ!(グィッ!)』

『シャッ!(キリッ!)』

「蘇生したレイジグラの効果発動!先程シンクロ素材として墓地へ送ったフォルトロールを手札に加えます!」

『シャッ(すっ)』

「サンキュー、レイジグラ。更に今手札に加えたフォルトロールをそのまま特殊召喚します!」

 

そして凍り付いた、ガトムズがレイジグラを勇雄に向けて軽くぶん投げ、投げられたレイジグラが勇雄の手札を1枚蹴り飛ばし、フォルトロールが刃のデュエルディスクの墓地に当たる部分に片手を突っ込んで(だから四次元ポケットかっつーの)、レイジグラを軽々と持ちあげ、そして持ちあげられたレイジグラがドヤ顔を決めながら、持っていたフォルトロールのカードを刃に渡すと言う光景に。

お分かり頂けるだろうか、この陣容の意味が、これが何故、刃の必勝パターンなのかが。

この陣容、良く見ると、

 

ガトムズ、レイジグラ、フォルトロール(効果未使用)、フォルトロール(効果使用済)

 

そう、さっきと一緒、というか効果を既に使ったフォルトロールも加わっているのだ。

これが刃の必勝パターン、『X-セイバー全ハンデスループ』。

レイジグラとフォルトロールのコンボによって無限ループを完成させ、ガトムズが持つハンデス効果によって相手の手札を全て墓地送りにするというこのパターン、この全ハンデスがどれだけ無茶苦茶かは、全盛期の『ゼンマイハンデス』を例に挙げるまでも無く分かるだろう。

 

「まだまだこれからですよ!効果を使ったフォルトロールをリリースしてガトムズの効果発動!やれ、ガトムズ!」

『(ガシィ!ブンブンブンブン!)ウォォォ(ビュゥン!)ォォォ!』

『フォォォォォォ!#$%&+¥=○@*!ウォォォォォォ!』

『あ、アイエエエエ!?ハンマー投げ!?ハンマーナンデ!?』

『オォォォォ(ドゴォォォォン!)』

「ぐぁっ!?」

 

そして、異世界から来たデュエリストである大輔とのデュエルで俺がホープにやらせたハンマー投げ(ハンマー役:俺)に何かしらのインスピレーションを得たのか、ガトムズにハンマー投げ(ハンマー役:フォルトロール)をやらせ、投げられたフォルトロールが、勇雄の手札めがけてぶん殴るという光景、最早ギャグ漫画のそれになった。

 

※此処から先、先程と同じ光景が繰り広げられます。暫くお待ち下さい。

 

こうして、勇雄の手札が無くなるまであの光景は繰り返され、

 

「カードを1枚セットしてターンエンド!」

 

Yaiba

LP 4000

手札 0

モンスター XX-セイバー ガトムズ(攻撃表示)

      XX-セイバー レイジグラ(守備表示)

      XX-セイバー フォルトロール(攻撃表示)

      XX-セイバー フォルトロール(攻撃表示)

魔法・罠カード セット

 

「くっやってくれる!自分のターン!ドロー!」

「あ、それ『強烈なはたき落とし』で」

『ウォォォォォォォォォ!(ごすぅ!)』

「ぎゃぁぁぁ!?」

 

強烈なはたき落とし

カウンター罠

相手がデッキからカードを手札に加えた時に発動出来る。相手は手札に加えたそのカード1枚を墓地へ捨てる。

 

ドローしたカードすら、突進して来たガトムズの、はたき落としというより勇雄の腕を折る勢いの『殴り飛ばし』によって捨てられた。

 

「た、ターン、エンド…」

『刃選手、無限ループコンボによって手札を全て捨てさせるだけでは飽き足らず、ドローカードすらも狩りました!これこそ刃選手の真骨頂!先程の『えげつない』発言の真相です!本当にえげつない!』

 

Isao

LP 4000

手札 0

モンスター なし

魔法・罠カード なし

 

「俺のターン!ドロー!

このままバトルフェイズに入って全軍出撃!アニメ本編でボコしてくれたお返しじゃぁぁぁぁぁぁぁ!」

「な、なんの話だ(ビシバコドガバキズゴドンガラガッシャァン!)ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

Isao LP 4000→1600→-1500→-3900 LOSE

 

WINNER Yaiba

 

刃の圧倒的勝利に終わったこのデュエル、然しながらその、ニコさんが本当にえげつないと言ったその光景に、観客の誰もが凍り付き、

 

『き、決まったぁ!第1試合の勝者は、傭兵部隊の絆によって圧倒した、刃選手!それにしてもこのデュエルは本当の意味で『圧倒』と言える物でした!』

 

ニコさんの勝利宣言も、少し遅れた。

というかアニメ本編でボコされたって、やっぱりリアルファイトしていたんかい。


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