【完結】遊戯王ARC-V~遊の力を矢に束ね~ 作:不知火新夜
その後俺は三度、赤ん坊として目覚めた。
転生も3回目とあってどんな世界のどんな人物に転生したのか予想が付いていた、でも念の為ユベルに聞いてみたら案の定と言うべきか、アニメ『
予想はしていたが、此処でまた疑問点が浮かんだ。
アニメにおける遊馬は、異世界『アストラル世界』で生まれ育った生命体『アストラル』と、アストラル世界から追放した『カオス』によって形成されたもう1つの異世界『バリアン世界』の神『ドン・サウザント』との戦いによって2つに分割されたアストラルの『半身』と言える存在、どう折り合いを付けたのか聞いてみると、まあ十代だった『俺』と似た様なパターンで、アストラルが2つに分割された際、その1つに『俺』の魂が入り込んだ事で、遊馬としての『俺』が誕生した、との事だそうだ。
理由がどうあれまたデュエルモンスターズが発展した世界で生まれ、今度は遊星だった頃の様な大災害も(少なくとも人間世界では)発生していなかったから物凄く久々に、近所の友達との楽しいデュエルを満喫した。
ZEXALの世界では融合召喚とエクシーズ召喚が発展していた一方で、5D’sの世界にあったシンクロ召喚が無かったので、一部デッキは封印せざるを得なくはなったが、それでも前世から持ち込んだ『ユベル』と『
でもこの時は、其処からの一歩を中々踏み出せずにいたんだ。
デュエリストとしての純粋な欲求として、もっと強いデュエリストと戦いたいという想いもありはしたんだけど、この世界でそれを成し遂げようとなればプロデュエリストを目指していかないといけない。
プロデュエリストは文字通り、デュエルでメシを食って行く存在、また遊星だった『俺』の様に生きる為のデュエルに終始してしまうんじゃないか、またデュエルに対する楽しい想いを失ってしまうんじゃないか、またあの時の様に笑顔を失ってしまうんじゃないかってネガティブな考えに終始しちゃって、あの光景がトラウマになって蘇って来るのもあって、一歩を踏み出す事が出来なかった。
そんな俺の葛藤と言うか不安を、父さんはどう見抜いたかは分からないけど、そんな俺にこんな言葉を教えてくれたんだ。
『かっとビング』。
どんな事にも諦めずに全力で挑戦していく、そんな意味が込められたその言葉に俺は助けられ、以来デュエル・チャンピオンになってデュエルの純粋な楽しさ、神聖さを伝えていこうという想いでデュエルに臨むようになって行ったんだ。
それからは規模の大きい大会に出場する様になって其処でも結果を残して行き、その折に、後に色々と関わり合いになる存在、シャークこと『
そんな日常を過ごしていた或る日、俺が中学1年になった頃、ひょんな事から俺の目の前に幻影で出来ていたっぽい扉が出て来て、『扉を開く者には無限の力を与えるが、その代償に一番大切な物を失う』と呼びかけられたんだ。でもそれアニメでも放送されていたシーンだった事もあって、かっとビングだ!と気合を入れつつ、嘗て父さんからプレゼントされた首飾り『皇の鍵』を使って扉を開けると、そこからアストラルが出現すると共に正面衝突、その際にアストラルの記憶が数十枚の『
これが、遊馬だった『俺』と、今尚俺の相棒であるアストラルとの出会いだった。
飛散してしまったアストラルの記憶が入っているNo.エクシーズモンスターカードを集めるべく、俺は諸々の事情を皆に話し、俺、ユベル、小鳥、シャーク、璃緒、鉄男、委員長、徳之助、キャッシーの9人でナンバーズクラブを結成、収集にあたった。
そんな時に現れたのが『ナンバーズハンター』としてNo.の収集を行っているデュエリスト『
お互い事情は違えどNo.を集めている存在同士とあって、互いの持つNo.を賭けてデュエルをする事になったんだが、カイトの実力はこれまでに戦って来たデュエリストとは次元が違い、流石の俺も苦戦を強いられた。
カイトのデッキは『フォトン』と『ギャラクシー』という、其々がサポートし合うカテゴリ同士の混成デッキ、その戦術は一言で言うと『エクシーズキラー』。
当初俺はそれに対して『E・HERO』デッキを使ったんだが、カイトの切り札『
結局初戦はカイト側に緊急事態があったみたいで無効となったんだが、もしかしたら負けていたかも分からなかった。
アストラル曰く「今まで体感した事の無い絶体絶命の状況」にアストラルは意気消沈していたが、当の俺は久々のライバルの存在に会って、負けん気に火が付いた。
アイツもNo.の収集を行っている以上、また戦う時が来ると思い立った俺は引き続きNo.の収集に当たり、一方でアイツを倒す為に一部デッキの再構築を試みて、迎えたカイトとのリターンマッチ、其処で俺は不思議な体験をしたんだ。
元はと言えばアストラルと遊馬としての『俺』は同一の存在、元の鞘に戻ったと言えばそれまでなんだが、俺はアストラルと一体化、『ZEXAL』と呼ばれる姿となり、想いの通りのカードを創造する『シャイニング・ドロー』という力を編み出し、カイトとのデュエルに勝利したんだ。
その後、俺達が住む街『ハートランドシティ』で行われる事となった世界規模の大会『
だけどそれは、そのDr.フェイカーの野望を裏で手引きしていたバリアン世界の存在達との戦いの幕開けだった。
バリアン世界の存在、特にその幹部であるバリアン七皇とのデュエルは熾烈を極めたけど、その戦いにカイトやアークライト一家が加わり、俺とアストラルもZEXALの新たなる力『ZEXALⅡ』『ZEXALⅢ』に目覚めて行った。
だけどその戦いの最中、とんでもない事実が俺達に明かされた。
なんと、ナンバーズクラブのメンバーだったシャークがバリアン七皇のリーダーであるナッシュ、璃緒もまたバリアン七皇の一角であるメラグだったんだ。
その事実を思い出したシャークと璃緒は俺達から離れ、バリアン七皇として俺達に立ちはだかったがデュエルの中で、ナンバーズクラブで共に戦った思い出を呼びかけた末に一度はシャークも璃緒も戻って来た。
その勢いのままドン・サウザントに挑み、死闘の末に勝利した俺達だったが、バリアン世界とアストラル世界の、存亡の運命が天秤に掛かっていた事が判明、シャークはバリアン世界を守る為に、また俺達の前に立ちはだかった。
シャークとの戦いは、俺が勝てばバリアン世界は滅亡、かと言ってシャークが勝てばアストラル世界は滅亡、という様にどちらが勝ってもどっちかの世界が滅亡するという状況の中、俺は『どっちの世界も救い出す方法が見つかるまでデュエルを続ける』という方法を思いつき、粘りのデュエルを行ったが、最終的には俺の勝利に終わり、バリアン世界は滅亡、シャーク達バリアン七皇も運命を共にしてしまった。
シャーク達を救えなかった事で流石の俺も意気消沈したけど、その折にシャーク達からとあるカードを「記憶の片隅にでも置いていてくれ。俺達が、バリアン世界があったという事を…」というメッセージと共に渡され、俺は改めて前を向いて行こうと決意を固めたんだ。
その後、新たなる敵にも仲間達と一緒に立ち向かい、戦いの後に俺は小鳥と結婚、プロデュエリストとして活躍した末に、遊馬だった『俺』もまた、天寿を全うした。
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「そして俺はこの世界で、遊矢として4度目の転生を果たし、今に至る、という訳です」
「まあ大分端折っちゃったけど、遊矢の今までの人生はこんな感じって所かな」
「遊士だった時に全うできなかった人生を、十代だった時に満喫し、遊星だった時にどん底に落とされ、遊馬だった時に本当の意味で立ち直った…
そして遊矢となった今、デュエルのあるべき姿を、本当の意味で確認できました。デュエルとは、デュエリスト同士は勿論、それを見ている観客が心から楽しみ、そして終わった後には勝敗関係なく互いの健闘をたたえ合い、そして関わった人達全てが分かり合う、そんな、そんな神聖な物であるべきなんだと。決して、戦争の道具とする物じゃないんだ、人を傷つける物じゃないんだ!俺がランサーズに加入したのは、そんな想いがあるからです」
そう締めくくられた俺の身の上話、ずっと黙って聞いていた6人は話が終わった後も暫く黙り込んでいた、が、
「成る程そォだったか、まァ二次創作とかでお馴染みの神様転生だとはちょっと予想外だったが、お前が余り口外しちゃ行けねェ様な経歴を辿っていたのは分かっていたし、其処まで驚かねェぜ」
「一行の言う通りだな、この街で殆ど出回っていなかった融合モンスターやシンクロモンスター、エクシーズモンスターをずっと前から持っていた時点で、そうなんじゃないかと俺は思っていたぜ」
「うむ、2人の言う通り。第1、遊矢の前世がどうであろうとも、此処そっくりの世界観がアニメとして放送していた世界から来たとしても、遊矢は遊矢だ、過去を知った所でこの男権現坂、お前との友情を捨てる事は無い!」
「そうだぜ遊矢兄ちゃん!遊矢兄ちゃんは遊矢兄ちゃんだ!」
「その4人分の人生が、今の遊矢となった、その事実だけで良いではないか。私はそのキャリアを経た今の遊矢に友情を抱いているのだから」
一行を皮切りに、5人の男性陣はあっさり受け入れてくれた。
そんな中、
「遊矢、ちょっと来て貰っても良いかな?」
「柚子?分かった、良いぜ」
何処か思い詰めた様な表情をしていた柚子が、俺を連れ出しつつ外へと出た。
やっぱり衝撃的過ぎたか?
「遊矢、あのね…
さっき一行や当麻が言った通り、私も遊矢が普通の人とは違うんじゃないかって予感はしていたし、それでも権現坂やエレンが言う通り、遊矢は遊矢だって思っている。けど、遊矢の前世で遊矢の周りにいた人達、その人達が知っている、私の知らない遊矢がいる。その遊矢は、ゼロ・リバースの時の事で、其処からの地獄の様な生活で、ずっと、ずっと苦しんでいた。他にもシャークっていう人達との戦いで救えなかった事への苦悩もあった。
そんな遊矢を、私では助ける事が出来ないのかなって、ちょっとね…
遊勝おじさんが行方不明になって、遊勝塾が危機に陥った時にも遊矢は率先して立て直そうと奔走して、私達に融合やシンクロ、エクシーズと言った未知の力に付いて親身に指導してくれて、私達のデュエルはどうあるべきかを其々に説いてくれて、ずっと頑張ってくれた。そんな遊矢を、今度は私が守りたい!って思っていた。でも遊矢はずっと私の知らない所で苦しんでいて、その度にそれに真正面から向き合って克服して来て、今の遊矢がある。けど私はそんな遊矢を、沢渡を襲撃したユートが遊矢そっくりだったからと言っても、一度は疑っちゃった…
そんな私なんかが側にいちゃ、駄目だよね「そんな訳無いだろ!」っ!?」
何を馬鹿な事を言っているんだ柚子は、一度は疑った?そんなの仕方がないだろ!
一緒にいてはいけないだって?それを誰が何の権限で決めるんだ!?
「柚子…
これから先デュエルアカデミアとの戦いが待っている中だ、これから忙しくなるし、言うのが後になっては不味いと思う。後回しにしてもしアカデミアの連中にやられたとしたら俺は絶対後悔すると思う、だから今言わせて貰う。
好きだ、柚子!ずっと俺の側にいてくれ!」
「え…?」
俺が柚子に抱いている想い、それが何なのか此処最近、分かりかねていた。
今まで『幼馴染の女の子で、同じ遊勝塾に属する弟子』としか想っていなかった柚子、だけど此処最近は「本当にそう思っているのか?」と考え込む時があった。
沢渡が俺への闇討ちを計画していると聞いて柚子がそれを阻止しようと挑んでいった時、一度は折れて塾に帰ろうとしたけど、内心柚子を心配する気持ちで一杯だった。
帰って来た柚子の様子がおかしい事を察知、何かあったのかと気になって仕方が無かった。
ミエルから告白された時も、別にフリーなんだし「まずは友達から」って感じで良いんじゃねぇ?的発想は全く無くきっぱり断った。
何故か、それは今ようやく分かった。
「単刀直入に言わせて貰う、俺は柚子の事が好きだ!アニメキャラとしてじゃ無い、1人の女の子『柊柚子』として好きだ!俺が好きだと言っているんだから、側にいて良いじゃないか!」
「遊矢、良い、の…?
側に居て、良い、の…?」
「ああ!むしろずっと側にいてくれ!」
「ゆ、遊矢…
ありがとう…!
私も、私も遊矢の事が好き!1人の男の子として好き!」
ランサーズ精鋭組織『
これから先、どんな険しい戦いになるかは分からないけど、俺は守って見せる!
この世界を、世界の皆を、皆の笑顔を、そして柚子を!
これで過去語りは終了となりますが、2.5章はまだまだ続きます(訳:舞網チャンピオンシップ編はもうちょっと待ってください)!