【完結】遊戯王ARC-V~遊の力を矢に束ね~   作:不知火新夜

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23話_ジャンジャジャーン、今明かされる衝撃の真実ゥ!

「実を言うと、だ…

各次元への侵略を行っている融合次元の組織『デュエルアカデミア』、そのトップは私の父で、レオ・コーポレーションの先代の社長、赤馬(あかば)零王(れお)なんだ」

 

デュエルが終わり、事の真相を話始めた零児だったが、その内容は最初から俺の度肝を抜く物だった。

 

「エクシーズ次元から来たデュエリストの内の1人、黒咲(くろさき)(しゅん)という名前だが、そいつが君に、私を誘い出す餌になって貰う、と言っていただろう。実は彼らは私を、赤馬零王の息子であるという情報を何処からか入手していて、その私を捕える事で人質とする腹積もりだったらしい。尤も私にその価値は無いが」

 

確かにそれなら、あの時の隼が言っていた言葉の理由も説明は付くが、零児のお父さんって事は、元はこの次元の出身の筈、それがどう転んで融合次元にあるデュエルアカデミアのトップになって、各次元に攻め込もうなんて事に?

 

「3年以上前になるか、突如父がレオ・コーポレーション社長としての座等の何もかも投げ捨てて、失踪してしまったんだ。私は父を探している内に偶然、融合次元のデュエルアカデミアに転移し、其処で何者かに追いかけられている1人の少女と、失踪していた父を見つけたんだ」

 

3年前…

まさかとは思うが、父さんが失踪したのと何か関係があるのかな?

 

「その少女と父の会話から、その時には父は既にデュエルアカデミアのトップとなっていて、各次元への侵略を予定していた様だが、当時の、まだ中学生になったばかりで、この次元の外の事は一切知らなかった私に其処までの知識は無く、その少女と父との会話で出た言葉について父を問い詰めたんだ。「アクションフィールドでも無いのになんで質量が」とか、「エクシーズやシンクロを滅ぼすってどういう事だ」とか、色々とだ。だが父の答えは「今のお前が知る必要は無い」、「いずれ分かる時が来る」、まるで返答になっていない、取り合うつもりは無いという意志が丸見えだった。挙げ句、強制的に私はこの次元に戻され、デュエルアカデミアへと通じるルートも強引に封鎖された。それから父が率いるデュエルアカデミアがやってきた事は、先程君に話した通りだが、その折に黒咲の妹である黒咲瑠璃(るり)が、「この計画における重要なピースだ」として、デュエルアカデミアに囚われたそうだ。この写真の少女が黒咲瑠璃だ」

 

失踪してからデュエルアカデミアのトップとなり、今に至るまでの赤馬零王の足跡を零児から聞く中で、1枚の写真を見せられたが、其処に写っていた少女の姿に、俺はびっくりした。

 

「ゆ、柚子!?髪の毛の色とかは違うけど、顔はまるっきり柚子じゃないですか!?」

「やはり、柊柚子にそっくりだったか。実を言うと私がデュエルアカデミアに転移した時に出会った少女、名をセレナと言うんだが、その少女もまた、柊柚子や黒咲瑠璃とそっくりな顔をしていた」

 

う、嘘だろ…

それってつまり、各次元には柚子とそっくりな顔の奴が必ず1人存在するって事か!?

 

「それだけじゃない、その黒咲瑠璃を拉致したデュエリストの事だ。エクシーズ次元からこちらに来たもう1人のデュエリスト、君にそっくりな方で、名をユートと言うんだが、そのユートの話によると、君達にそっくりな顔をしていたらしい。それと、そのデュエリストや君とは髪型が違っていたが、やはり君達にそっくりな顔のデュエリストと遭遇したという情報も入っている。もしかしたらシンクロ次元における『君そっくりな存在』と思って良いかも知れない」

 

ま、マジかよ…

俺や柚子と同じ顔をした奴が、各次元に必ず1人ずつ存在するとか、それなんてドッペルゲンガー!?

けれどそれなら、あの時ユートだっけか、エクシーズ次元の『俺』が俺に問い詰めた訳が分かった、その黒咲瑠璃を拉致したデュエルアカデミアの、融合次元の『俺』と俺を勘違いしたって事か。

 

「話を戻そう。そんな父及びデュエルアカデミアの目的がどの様な物かは分からないし、分かろうとするつもりは、分かりたいと言う気持ちは微塵も無いが、そんなデュエリストとして、人としてあるまじき行いを私達は許せず、それを阻止するべく、ランサーズを構想、今結成に向けて動き出している。一応はこの次元を防衛する為と言ったが、いずれ父をトップとしたデュエルアカデミアを打ち滅ぼし、本当の意味での平穏を、各次元にもたらす為に…!」

 

そう、ランサーズ結成の真意を語る零児、その表情には隠すつもりが無い憤怒で染まっていて、其処からも零児がどれだけこの事に怒りを覚えているかが、決意が本物かが伝わって来た。

 

「この事を君に話すのを怠り、結果として君に疑念を持たせてしまった事、済まないと思っている。何回か君と話を交わす中で、君にこの事を話しても全く問題無いとは思っていたんだ。君は溢れんばかりの情熱を持っていながら、私が思っている以上に理性ある人間だと考えている、これを話した所で疑われる事も、情にほだされる事も無いだろうとは思っていた」

 

まあ伊達に何百年も人生を歩んでいないからなぁ。

でも俺に対しては「話しても問題は無い」と言っていたって事は、俺以外に話すのは問題ありという事、そもそもなんで内密にしようと考えていたんだ?

零児の想いを疑われかねないから?いやそれは無いだろう、あの憤怒の表情を見たら…

 

「だがランサーズの構成員は私や君、LDS上層部だけでは無い。デュエルアカデミアの戦力は、エクシーズ次元が成すすべも無く蹂躙され、今や壊滅的な状況になっている事を鑑みても相当な物に違いない、ならばそれに対抗しうるだけの戦力が、圧倒的な実力と確固たる覚悟を併せ持ったデュエリスト達が必要だ。その中で、今の事を話したとしよう。果たして君みたいに疑いを持たず、情にほだされずに加入してくれる、圧倒的な実力を持ったデュエリストはどれ位いるだろうか?もしかしたら片手で足りるかも分からない。大抵は、私と父が繋がっているのではないか、ランサーズはデュエルアカデミアの補完勢力では無いかと疑うか、私を父の横暴に立ち向かう悲劇のヒーローと見て、情にほだされて加入するかのどちらかだ。前者の『疑う』存在はまだ良い、ランサーズへの加入は志願制だ、戦力を確保しにくくなるのは痛いが、後で説明する様な統率が取れなくなる事態よりはずっとマシだ。だが後者の『情にほだされる』存在はどうだ?そんな存在の大半は覚悟が伴わないまま加入しているに違いない、ランサーズに在籍する中で、覚悟を持った状態で戦場に立てればそれに越した事は無いが戦いは待ってくれない、覚悟が伴わないまま戦場に立たされ、そして戦いの現実を知り、それに腰を抜かして逃げ出す存在も出て来るだろう。その事実は不安としてウィルスの様に広がり、やがて不安は恐怖に昇華して行くだろう。そうなってしまったら統率は取れなくなり、防衛どころか自滅に陥ってしまう。人や世界の運命を賭けた戦いに、生半可な覚悟で臨む兵士は、このランサーズにはいらない」

 

その理由を「バッサリ」という擬音が聞こえて来そうな口調で語る零児、言っている事はランサーズの理念に共感し、戦いに臨む事を希望しているデュエリスト達に対してあんまりじゃないかと突っ込まれそうだが、零児が語った事は俺自身も思っていた事だ、実際俺もさっきのデュエルで零児に覚悟の程を試していたからな。

何故俺がそう思ったのか、それは遊星だった頃、というか遊星として転生して直ぐに起こった『ゼロ・リバース』がある。

アニメの5D’sの年代から17年も前に発生した、永久エネルギー機関『モーメント』の暴走によって起こった大規模災害『ゼロ・リバース』、当時遊星として生まれたばかりの俺は、アニメの知識でその事を知ってはいたのだが、それを認識する暇も無く、両親によって脱出ポッドに入れられサテライト側に避難、結果としてその様子を文字通り「指をくわえて見ている」しか無く、これから先の「茨の道を歩む運命」を覚悟する事も出来なかった。

衝撃波によって崩壊するネオ童実野シティ、それに巻き込まれて死んでいく人達、分断されるシティとサテライトの大地…

生き残りながらも、その日の命を長らえる為に賭けデュエルに明け暮れ、或いは喧嘩や私刑、強盗と言った犯罪が横行し、荒んでいく人達…

それらを直視し、あるいはこの身で体感して行く内に、何時しか俺の心まで荒み切り、十代だった頃には絶やした事が無いと言って良い笑顔も忘れ、そんな俺の様子に耐えられなくなったユベルは自らを責め、俺への接し方が何処かよそよそしいそれに変わって行った。

もしジャック達との出会いが無かったら今の俺は無かったと言って良い位、その時の俺は本当に酷い有様だった、ひょっとしたらアニメの遊星も、同じだったかも知れないな。

そしてその時の記憶はトラウマとなり、遊馬、遊矢と転生を続けた今も尚、脳裏にこびり付いている。

けれども、そのトラウマがあるからこそデュエルの楽しさ・神聖さを改めて認識出来たと言って良いかも知れないな。

まあそれは置いてだ、デュエルアカデミアとの戦いは正に世界の命運を賭けた『戦争』、いち早くそれを経験したエクシーズ次元は荒れ果てたと零児は言っていたし、俺達が今いる次元も遠くない内にそれを体験する事になる。

その前線に立つランサーズのデュエリストには何より、『戦争』に臨む覚悟が求められる。

それが出来ないならば、『戦争』の前線で腰を抜かす様ならば、遊星だった頃の俺の様に壊れていってしまう様ならば、そいつは足手まといにしかならない。

それを危惧し、零児は純粋にランサーズの理念に共感し、『戦争』の前線に立つ覚悟を決めたデュエリストを集める為に、この話を秘密にしようとしている訳か、なるほどな。

 

「零児、その件で色々と思う所はあるでしょうが、何はともあれ話してくれてありがとうございます。共にランサーズのメンバーとして、この次元を守り抜いて行きましょう!」

「遊矢、受けてくれるか、最高指揮官就任の話を!そうか、ありがとう!君が就いてくれるならば、ランサーズの力も一気に増大するという物だ!」

 

零児から話を聞いた俺はランサーズの最高指揮官就任の話を受け、零児と誓いの握手を交わした。

 

 

 

デュエルアカデミアとの戦い、か…

そろそろ、俺の今までの人生を明かす時だな。


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