【完結】遊戯王ARC-V~遊の力を矢に束ね~   作:不知火新夜

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1章『新たなる可能性!ペンデュラム召喚!』
1話_俺、参上!


「行くぞ遊矢!俺はレベル8の『超重武者ビッグベン―K』に、レベル2の『超重武者ホラガ―E』をチューニング!」

 

権現坂の宣言と共に、ほら貝らしき物を持った機械武者が2つの緑の環となり、平安時代末期にその名を轟かせた僧兵、武蔵坊弁慶をモチーフにしたような機械武者に纏われ、やがて纏われた方の機械武者の身体が8つの光の球と化す。

この状況で、権現坂のデッキテーマ、となると出て来るのはアイツか!

 

「荒ぶる神よ、千の刃の咆哮と共に煌びやかな戦場に現れよ!シンクロ召喚、いざ出陣!レベル10!『超重荒神スサノ―O』!」

 

超重荒神スサノ―O

シンクロ・効果モンスター

地属性

機械族

レベル 10

守備力 3800

 

光の球が輝き、それが晴れた後には、暗色を基調とし、左手に巨大な長刀を持った機械武者の姿があった。

ここでエースの一角、スサノ―Oを出してくるとはやるじゃねぇか。

3800という驚異的な守備力、その守備力を攻撃力扱いとして、表側守備表示の状態で攻撃出来るという、どっかの邪神涙目な効果もさることながら、

 

「スサノ―Oの効果発動!

遊矢、お前の墓地にあるアクションマジック『回避』を俺の場にセットさせて貰う!」

 

自分の墓地に魔法・罠カードが無い場合という厳しい条件ながら、相手の墓地にある魔法・罠カードを1枚自分の物にする事が出来る効果も、1ターンに1度セット出来るという無茶苦茶な効果も持っている。

しかもこの効果は相手ターンでも使えるフリーチェーン、挙げ句セットしたカードはフィールドを離れると除外されるので、アクションデュエルにおいては、後になってセットしていた魔法・罠カードを発動した所為で効果が使えなくなる事も無いと、厄介極まりない。

だけどそんな効果の応酬もデュエルの醍醐味って奴だ!

 

「俺はこれでターンエンド!さあ遊矢、この権現坂と1対1の本気の勝負だ!」

 

言われなくても分かっているぜ、権現坂!

さて、観客もいるし、権現坂も普段はしないシンクロ召喚を見せたんだ、俺も派手にやるぜ!

 

「Ladies and Gentleman!Boys and Girls!これより私、榊遊矢によるヒーローショーをご覧に入れましょう!」

『良いぞぉ遊矢兄ちゃぁん!やれやれぇ!』

『権現坂のスサノ―Oと遊矢兄ちゃんのヒーローとの激突!痺れるなぁ!』

『頑張って遊矢兄ちゃん!』

「私のターン!ドロー!」

 

俺の宣言に応える様に、マイク越しに聞こえる観客席からの歓声に乗り、ドローしたカードは、魔法カード『融合』。

よし、絶好のタイミングで来てくれたぜ!

 

「私は魔法カード『融合』を発動!」

 

融合

通常魔法

1:自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

俺が融合を発動すると共に、背後に神秘的な色で光輝く渦が現れる。

そういえば融合の演出も、俺が十代だった頃、遊星だった頃から随分と変わったなぁ。

それに遊馬だった頃からも、だよな、ユベル?アストラル?

 

『そうだね遊矢。随分と長く融合の演出は見て来たけど、ヤケにコロコロ変わっているよね、コレって』

『確かにその通りだな。カイトが使っていた融合の時とも大きく違う』

 

俺が背後に語り掛けると、其処で控えていた、俺にしか見えない2人(?)の相棒が応えた。

デビルマンレディーかと突っ込みたくなる、いや、それ以上に悪魔化した様な姿のモンスターにして俺の相棒兼恋人『ユベル』の精霊と、アストラル世界と呼ばれる世界出身の、俺の半身とも言える存在、アストラル。

2人の答えに頷きつつ、俺は目前のスサノ―Oを倒す為のモンスターを呼び出す。

 

「手札の『E・HEROエアーマン』と『E・HEROシャドー・ミスト』を融合!

風を司るヒーローよ!その暴風で、全てを薙ぎ払え!融合召喚!『E・HERO GreatTORNADO』!」

 

E・HERO GreatTORNADO

融合・効果モンスター

風属性

戦士族

レベル 8

攻撃力 2800

 

俺の背後に出現した光輝く渦、其処に俺の手札にあったエアーマンとシャドー・ミストのカードが吸い込まれていくと、次の瞬間にはその渦が風を纏わせ、それが周囲へと吹き荒れると共に、緑と黄色の縞模様で、マントを着用したヒーロー、GreatTORNADOの姿が其処から出現した。

よし、行くぜ権現坂!

 

「融合召喚に成功したGreatTORNADOの効果発動!それにチェーンして、融合素材として墓地へ送ったシャドー・ミストの効果も『な、なにこれ!?きゃぁ!?』ゆ、柚子!?」

 

俺がGreatTORNADOとシャドー・ミストの効果処理を行おうとした(そしてそれに権現坂が、スサノ―Oの効果をチェーンしようと身構えていた)所に、管制室にいるであろう柚子の悲鳴が聞こえて思わず振り向く。

その次の瞬間、フィールド内に爆発音が鳴り響き、表示されていたソリッドビジョン(主にアクションフィールド)にノイズが走る等、不安定な状態になる。

こりゃヤバいな。

 

『何やってんだ柚子!?』

『ご、ごめんなさいお父さん!』

『コイツが壊れちまったらソリッドビジョンが消えちまうぞぉ!』

 

猛暑の原因とか良く言われる某テニスプレイヤーの様な暑苦しい声が響いたかと思ったら、ソリッドビジョンが消滅、実体を持っていた事もあってその門の上に立っていた俺は一瞬にして宙に放り込まれた形となり、重力に従う形で落下してしまう。

常人なら下手をすれば怪我では済まない高さ、だけど俺はこの程度、どうと言う事は無い。

この事態を予想していて着地態勢がとれていたのもあるが、サテライトにいた頃にもこれ位の高さから飛び降りるなんて良くあったからな。

故に俺は何事も無く着地、身体全体を使って衝撃を逃がしたので怪我など無かった。

その際、服が舞い上がり、俺の右腕が、龍の頭を模している赤いシグナーの痣が刻まれた、右腕が露わになった。

 

俺の名は(さかき)遊矢(ゆうや)、皆は知っていると思うけど、遊戯王ARC-Vの主人公だ。

いや、遊矢に転生した元遊戯王OCGプレイヤーと言った方が良いな。

あ、それだけじゃあ不十分か。

もう今の時点で権現坂がシンクロ召喚を使っていたり、俺が融合召喚を使っていたり、ユベルやアストラルがついていたり、右腕にシグナーの痣が刻まれていたりと、原作ARC-Vを知っている人から「まるで意味が分からんぞ!」と突っ込まれる要素満載だからな。

実を言うと、俺が転生したのは榊遊矢だけじゃ無いんだ。

遊戯王GXの遊城十代、遊戯王5D’sの不動遊星、遊戯王ZEXALシリーズの九十九遊馬と、遊戯王DMの武藤遊戯以外の、遊戯王シリーズの歴代主人公に転生し、その度に手に入れたカードと異能を全て、今も尚有している。

例えば、覇王の力を宿し、ダメージを実体化させる事ができる(その際に眼が金色になる)。

例えば、赤き龍の力を宿し『セイヴァー・ドラゴン』を作り出したり、スタンディングの状態でアクセルシンクロが出来たりできる。

例えば、胸元には遊馬時代の父さんから貰った『皇の鍵』があり、アクションフィールドではアストラルとオーバーレイしてZEXALにエクシーズチェンジする事が出来る。

他にも十代時代の驚異的ドロー運が遊星時代以降も受け継がれている等、まさに『俺の考えた最強の遊戯王主人公』な状態に俺はなっていると言っても良い。

この世界ではまだ殆ど広まっておらず、最もデュエル関連の技術が発展していると言って良い此処『舞網市』でも指導しているのは最大手のデュエルスクール『LDS(レオ・デュエル・スクール)』だけに留まっている融合・シンクロ・エクシーズ召喚を、権現坂達が使っているのも、俺が持っているカードプールと知識を基に教えていった賜物、という訳。

といっても一部、それら原作とはずれた部分もあるんだけど、それはまたの機会にな。

そんな俺は、塾の一室にて運命の選択を迫られていた。

 

「おやおや?何やらお困りの様子」

 

俺達の塾、遊勝塾のソリッドビジョンが破損してしまい、俺と、俺の幼馴染で同じく塾生の(ひいらぎ)柚子(ゆず)、柚子の父さんで遊勝塾の塾長を務めている(ひいらぎ)修造(しゅうぞう)おじさん、そして今しがたデュエルした俺の幼馴染の権現坂(ごんげんざか)(のぼる)(実を言うと『権現坂道場』というデュエル塾の跡取りなので本当は部外者なんだけどな)の4人で今後の対応を話し合っていると、其処に黄色と黒のストライプ模様のスーツに、黄色がかったレンズの眼鏡(いや、グラサンか?)を掛けた如何にも胡散臭い男が入って来た。

 

「ええと、どちら様で?」

 

塾長は何処か戸惑い気味ながらも一先ずは、突如入って来たその男に名前を訪ねる。

普段の暑苦しさもなりを潜めてのしっかりした対応、流石は大人のコミュニケーションだな。

 

「申し遅れました。私、アクションデュエル現役チャンピオン、ストロング石島のマネージャー兼プロモーターをしております、ニコ・スマイリーと申します」

 

ニコニコからニコ、スマイルからスマイリー、うん、明らかに仕事上の名前だな、もしこれが本名だったらどんなキラキラネームだよ。

と、そんな事はどうでも良い、

 

「ストロング石島、ですか!?」

 

ストロング石島。

俺の父さんでプロデュエリスト、榊遊勝が失踪する前に、チャンピオンの座を賭けて戦う筈だったプロデュエリスト。

紫を基調としたトゲトゲヘアーにフェイスペイント、世紀末のヒャッハーな連中が着用しそうな服装をしたデュエリストで、確かデッキはバーバリアンだったか?

父さんならまず勝てると言っても過言じゃ無い程度の相手だったけど、何故かその試合に出場する事無く、失踪してしまった。

それ故に、俺は臆病者の息子と言われたけど、それにブチ切れして、俺の持つ3つのデッキ(本当は10あるんだけど、大半が融合・シンクロ・エクシーズを主軸としていて、それらがメインじゃないのがその3つだけだった)でそいつらをフルボッコにし、その勢いで、舞網市で毎年行われる大会『舞網チャンピオンシップ』を、ジュニアの部で3連覇(父さんが失踪する前から優勝していた)、中学に進学した去年、初めて参加したジュニアユースの部で早速優勝したのは記憶に新しい(それによって嘲笑の声も無くなり、逆にその時使っていたデッキに因んで『完全決闘者(パーフェクト・デュエリスト)』という異名で恐れられる様になった)。

まあそれは良いとして、どうしてそのストロング石島のマネージャーが俺達の所に来たか、此処が重要だ。

話を聞いてみないとな。

 

「今回此処を訪ねたのは他でもありません。LDSのイメージキャラクターを務めるストロング石島の、そのファン感謝デーに是非、遊矢君をお招きしたいのです」

 

それが何を意味するか、遊星時代の経験から結構頭が回る様になった俺には、その答えを導き出すのは簡単だった。

つまり、失踪した父さん、榊遊勝の代わりに俺とデュエルしろ、完全決闘者という大層な異名で最近ブイブイ言わしている俺の実力を見せてみろ、というストロング石島からの挑戦状だという事。

 

「其処で遊矢君には、ストロング石島と戦って貰いたいのです!あの三年前の願い、いや、完全決闘者と現役チャンピオンの対決という夢のカードが現実の物に…!」

 

俺は、やっぱしかという思いと共に、その問いに、向こう側も満足するであろう答えを既に持っていた。

そしてその答えを今すぐに言おうとした、が、

 

「駄目だ、遊矢をそんな場所に出す訳には行かない」

「なっ!?」

「え、何故です!?」

 

俺の答えは塾長の言葉に遮られ、その言葉に俺とニコ・スマイリーは驚いた。

どうして断るんだ、塾長?

俺にとって、これ程待っていたチャンスは無いと言って良い程の事なのに!?

 

「あの榊遊勝の息子が、いや、ジュニアユースはおろかユースクラスでも敵う相手はいないと言われる完全決闘者が登場するとなれば、お客様も大喜び!」

「遊矢を見世物には出来ん!」

 

成る程、そういう事か…

塾長は、プロデュエリストにして現役チャンピオンであるストロング石島と俺が戦って、無様な敗北をし、それで見世物になる可能性を考えて、断ってくれたのか。

確かに今の俺は完全決闘者という異名で恐れられているとは言ってもまだジュニアユースクラス、そんな俺がプロ相手に勝てるか?第三者はまず無理だ、ときっぱり言うだろう。

そして塾長もまたその考えが頭にあり、そして俺の事を考えて断ったのか。

だけどさ塾長、それは違うぜ。

 

「塾長」

「どうした遊矢?」

「塾長が何と言おうと、俺は出るぜ。ストロング石島からの挑戦状、受けて立つぜ!」

「なっ遊矢!?」

 

俺は、そんな図抜けた実力者と、強いデュエリストと戦いたいんだよ。

この世界に転生してからというものの、融合とかシンクロとかエクシーズとかが使われない(これは仕方ないが)以前に、様々な世界のデュエルを見て来た俺から見ればお粗末極まりないデュエルばかりで、ちっとも満足してなかったんだ。

といっても、柚子達遊勝塾の面々や、権現坂とのデュエルは、俺の指導の甲斐あって十分に満足出来るんだが、それははっきり言って師匠()弟子(柚子達)的な意味合い、今の俺が求めているのは、俺と初見で渡り合うライバル的な意味合いで満足するデュエルだ。

その点、プロデュエリストなら融合とかを使うかどうかはともかく、その抜群の構築とプレイングで俺を満足させてくれるはずだ。

だからこそ、このストロング石島とのデュエルは願っても無い話なんだ。

 

「おお、ご承諾頂けますか!でしたらお礼として、レオコーポレーション社製の最新型ソリッドビジョンシステムを、無料でご提供いたしましょう!」

 

これは満足出来そうだ…!

心の底からやりたいと思っていたデュエルをするだけで、壊れちまった遊勝塾のソリッドビジョンシステムの代わりが、いや、それのアップグレード版が無料で提供される。

これぞまさに一石二鳥、いや、棚ぼただぜ。

俺は間違い無く、心からの笑みを浮かべていた。


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