【完結】遊戯王ARC-V~遊の力を矢に束ね~ 作:不知火新夜
この前の海野占い塾では、美琴の対戦相手となったミエルのプロポーズ等の騒動があったが(丁重に断っておいたが、「ミエルは諦めませんから!」と言っていた辺り、まだアプローチが来そうだな…)、美琴も素良も順調に連勝を伸ばしているし、2人の出場はかたいだろう。
そんなこんなで、今度の舞網チャンピオンシップに向けて色々と準備を進めたりしつつも普段と余り変わらない日常を過ごしている俺達遊勝塾、だが今日はそれとは別の意味で「待ちに待った日」。
そう、俺達遊勝塾の塾長で柚子の父である修造おじさん、この前の俺とのデュエルによってニコさんに実力を買われ、プロへの復帰の足掛かりを掴もうとしていたおじさんの、待ちに待った復帰戦の日がやって来た!
伝説のデュエルスターと言われた俺の父さんである榊遊勝と親交深く、若手有望株がゴロゴロといる新進気鋭のデュエルスクール・遊勝塾の塾長を務めているとあって会場は、かなりの観客で席が埋まっていた。
「ふぅ、何気にこんなに多くの観客に囲まれるのは滅多に無かったから、少し緊張するな」
「塾長、此処で固まっていたら後々持たないぜ。プロで勝ち上がって行けば行くほど、もっと多い観客が待っているんだから」
「遊矢の言う通りよ、お父さん!何時も通り、熱血だぁ!って感じで行こうよ!」
「そうだな遊矢、柚子!さぁ、行くか!」
何処か緊張していた塾長だったが、セコンドとして一緒に来た俺と柚子(他の面子には塾で待機して貰った)の励ましで決意を新たにし、今日のMCをやっているニコさんの入場アナウンスを待つ。
『会場に集まった皆様、これより本日のメインイベントとなる、エキシビションマッチを行います!このエキシビションマッチは、アクションデュエルの公式ルールに則って行われます!フィールド魔法『ビッグブリッジ』発動!』
ニコさんのアナウンスと共にアクションフィールドが形成される。
今日のフィールドは、その名の通り巨大な橋が1本あるだけというシンプルな物、純粋なデュエルの実力が試される、という事か。
『まずは青コーナー!その蠱惑的なオーラに反し、デュエルは正に『破壊』!ミステリアスな破壊者!
「うふふ、会場の皆、今日はこのデュエルを楽しんでいってね」
藤原雪乃、タッグフォースをプレイした事のある読者で、この名を知らない奴はいないだろう。
やや紫掛かったツインテール、出る所は出たナイスバディ、色々とエロチックな話し方等、ニコさんの紹介の通り蠱惑的な雰囲気を発する少女だが、一時期OCG環境で暴れ回った『デミスドーザー』を駆使するそのプレイングは正に破壊神だ。
『対する赤コーナー!あの新進気鋭のデュエルスクール・遊勝塾のトップが、プロの世界に帰って来た!熱血おやじボクサー!不屈のおやじデュエリスト!柊ぃぃぃぃ、修造ぉぉぉぉ!』
「プロの世界よ!俺は帰って来た!」
塾長、それ何処のロボットアニメの名言だよ?そしてニコさんは何故に『おやじ』を連呼するんだ?
と心の中で突っ込みつつ、塾長の入場を見送る。
さあ、全力で勝ちを掴んできてくれ、塾長!
『それでは始めましょう!
戦いの殿堂に集いしデュエリストが!
モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!
フィールド内を駆け巡る!
見よ、これぞデュエルの最強進化系!
アクショーン!』
「「デュエル!」」
先攻 Shuzo LP 4000 VS 後攻 Yukino LP 4000
「俺のターン!先攻はドロー無し。
まずは『
BKヘッドギア
効果モンスター
炎属性
戦士族
レベル 4
攻撃力 1000
「BK…
成る程、確かにボクサーね」
「召喚に成功したヘッドギアの効果発動!
デッキからBKモンスター、『BKグラスジョー』を墓地へ送る!」
塾長が出したヘッドギアの姿に、成程と言いたげな言葉を吐いた雪乃を意に介す事無く、ヘッドギアの効果処理を行っていく塾長。
「更に、デッキの一番上のカードを墓地へ送って魔法『バーニングナックル・スピリッツ』を発動!」
バーニングナックル・スピリッツ
通常魔法
デッキの一番上のカードを墓地へ送って発動出来る。自分の墓地の『BK』と名の付いたモンスター1体を選択して表側守備表示で特殊召喚する。『バーニングナックル・スピリッツ』は1ターンに1枚しか発動出来ない。
「バーニングナックル・スピリッツの効果で、今墓地へ送った『BKグラスジョー』を守備表示で蘇生!」
BKグラスジョー
効果モンスター
炎属性
戦士族
レベル 4
守備力 0
更に塾長の側に、かなり筋肉質な緑肌の戦士、グラスジョーが登場した。
ちなみにグラスジョーの意味は『ガラスの顎』、つまり顎が弱点のボクサーを意味している。
そのデメリット効果もある意味で名を体現していると言って良いかもな。
『おおっと修造選手!レベル4モンスターを2体並べました!これは来ますか!?』
「よし!俺はヘッドギアとグラスジョーでオーバーレイ!」
「オーバーレイ、という事はエクシーズ召喚ね。
まさかLDS所属のデュエリスト以外にも使い手がいたなんて…」
「2体のレベル4・BKモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!魂に秘めた炎を拳に宿せ!『BK拘束蛮兵リードブロー』!」
BK拘束蛮兵リードブロー
エクシーズ・効果モンスター
炎属性
戦士族
ランク 4
攻撃力 2200
ORU 2
『現れました!修造選手が持つBKモンスター、そのエースの一角であるエクシーズモンスター、リードブローが!身体をがんじがらめにしているオーバーレイ・ユニットから異様な雰囲気を感じます!』
一度塾長のデュエルを見たニコさんのアピールと共に、リードブローはその姿を現した。
相手の雪乃が使うデッキ、それが予想通りならこのデュエル、上手く行きそうだが…
「俺はこれでターンエンド!」
Shuzo
LP 4000
手札 3
モンスター BK拘束蛮兵リードブロー(攻撃表示)
魔法・罠カード なし
「あら、エクシーズモンスターを出しただけで終わりかしら?何が目的か知らないけど、遠慮なく行かせて貰うわ。
私のターン、ドロー。
まずは儀式魔法『高等儀式術』を発動」
高等儀式術
儀式魔法
手札の儀式モンスター1体を選び、そのカードとレベルの合計が同じになる様にデッキから通常モンスターを墓地へ送る。その後、選んだ儀式モンスター1体を特殊召喚する。
「高等儀式術の効果で、手札の『終焉の王デミス』を選び、デッキからレベル4の『
終焉の王デミス
儀式・効果モンスター
闇属性
悪魔族
レベル 8
攻撃力 2400
『雪乃選手も負けていない!悪魔の王を降臨させる儀式、それによって、全てを終焉に導く王が、デミスが現れました!』
やっぱり『デミスドーザー』か、雪乃のデッキは?
雪乃の側に登場したのは、モノクロの鎧に身を包み、巨大な斧を持った悪魔、デミス。
「更にデミス、貴方に私のライフを2000捧げるわ」
Yukino LP 4000→2000
「ん、んあ…
これで、デミスの効果を発動するわ。
その効果で、このカード以外の全てのカードを破壊する。
やりなさいデミス、『終焉の嘆き』!」
『雪乃選手、早速デミスの効果を発動しました!このターンで勝負を決めるという事でしょうか!?』
雪乃からライフを吸い取り(その際にTFではもうお決まりと言って良い、悶える様な挙動を見せていた)、その終焉の力を解放したデミス、その力が爆発となってフィールド中に広まり、後には何も、
「ふふふ、これで貴方の場は…
なっ!?何故そのモンスターが生き残っているの!?デミスの効果は発動された筈!」
残ってい『た』。
「デミスの効果は確かに発動された!だがこの時リードブローの効果で、リードブローが破壊される代わりにコイツに纏わりつく
BK拘束蛮兵リードブロー ORU 2→1
「回数制限があるとは言え破壊耐性を持っていたなんてね…
だけどリードブローの攻撃力は2200、デミスの攻撃力があれば」
「更に此処で、拘束具を取り除いたリードブローの効果発動!
それにチェーンして、効果で墓地へ送られたグラスジョーの効果発動!」
リードブローが残った事に驚きの声を上げた雪乃だったが、その理由を聞いて再びプレイを進めようとするも、まだ塾長の効果処理は終わっていないぜ?
「まずはグラスジョーの効果で、墓地の『BKスイッチヒッター』を回収する!」
「い、何時それが…
まさか、バーニングナックル・スピリッツのコストで?」
「そういう事だ!次にリードブローの効果で、攻撃力を800アップさせる!」
BK拘束蛮兵リードブロー 攻撃力 2200→3000
『何と言う事でしょう!雪乃選手、デミスの効果が空振りに終わったばかりか、逆に修造選手の手助けをしてしまいました!LPを2000も支払ってこれは余りにも痛い!』
「こ、攻撃力3000…!
なら、モンスターをセット、カードをセットしてターンエンドよ」
Yukino
LP 2000
手札 2
モンスター 終焉の王デミス(攻撃表示)
セット
魔法・罠カード セット
攻撃力3000となったリードブロー、その効果を知った雪乃は、モンスターとカードをセットしただけでターンを終わらせた。
流石にこれ以上動いても駄目だと思ったんだろう。
「俺のターン!ドロー!
まずはさっき手札に加えた『BKスイッチヒッター』を召喚!」
BKスイッチヒッター
効果モンスター
炎属性
戦士族
レベル 4
攻撃力 1500
スイッチヒッターを出したって事は、此処で勝負を決めるか?
「召喚に成功したスイッチヒッターの効果発動!
墓地のグラスジョーを攻撃表示で蘇生する!
更に手札の『BKシャドー』の効果発動!
リードブローの拘束具を1つ取り除き、攻撃表示で特殊召喚する!」
BKシャドー
効果モンスター
炎属性
戦士族
レベル 4
攻撃力 1800
シャドーの登場によって、リードブローの拘束具を全て外したのもそうだが、レベル4モンスターを3体並べたって事は、もしかしてアイツを出すのか?
「もう1つの拘束具を取り除いたリードブローの効果発動!
これでリードブローの封印された真の力が解放される!」
BK拘束蛮兵リードブロー 攻撃力 3000→3800
「こ、攻撃力3800…!」
『修造選手、攻め手を緩めません!リードブローの拘束具を全て解いたばかりか、レベル4のBKモンスターを3体も並べて来ました!これはまた、エクシーズモンスターが登場するのでしょうか!?』
「俺は、スイッチヒッターとグラスジョー、そしてシャドーでオーバーレイ!3体のレベル4モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!魂の宿った蒼炎の拳が、「諦めんなよ!」と鼓舞する!『
No.105BK流星のセスタス
エクシーズ・効果モンスター
炎属性
戦士族
ランク 4
攻撃力 2500
ORU 3
『やはり出て来ました!2体目のBKエクシーズモンスターです!しかしNo.とは私も聞きなれないカテゴリです。無限大の記号を模したと思われる青い機械物体から変形すると言うのも珍しい演出です!』
「確かにそうね。エクシーズモンスターを使うプロデュエリストとは何回か当たった事があるけど、No.なんてカテゴリのモンスターは初めてね」
リードブローの隣に並び立ったのは、『105』と刻印が刻まれた青き戦士、流星のセスタス。
だが、自分自身の効果がハッキリ言って汎用性の低いセスタスを態々出した、という事は、
「此処で会場にいる皆に、我々遊勝塾のエクシーズ召喚が一味違う事をお見せしよう!今出した流星のセスタスを対象に魔法『
「ら、ランクアップマジック!?一体何なの、それ!?」
RUM―バリアンズ・フォース
通常魔法
自分フィールド上のエクシーズモンスター1体を選択して発動出来る。選択したモンスターと同じ種族でランクが1つ高い『
「バリアンズ・フォースの効果で、流星のセスタスのオーバーレイ・ネットワークを再構築!カオスエクシーズ・チェンジ!現れろ、BKの絶対王者!『CNo.105BK彗星のカエストス』!」
CNo.105BK彗星のカエストス
エクシーズ・効果モンスター
炎属性
戦士族
ランク 5
攻撃力 2800
CORU 4
『おっと!此処でRUMという魔法カードによって、今出した流星のセスタスが新たなる姿へと変わりました!周りを漂っていたオーバーレイ・ユニットも十字架が埋め込まれた形となり、先程よりも強大な力を感じます!これがカオスエクシーズ・チェンジの力なのでしょうか!』
「か、カオスエクシーズ・チェンジ…」
塾長が発動したバリアンズ・フォース、それによってカオスエクシーズ・チェンジした流星のセスタス、いや、彗星のカエストスの姿に、対戦相手である雪乃や観客たちは勿論の事、一度見ている筈のニコさんも騒然となっている。
まあ、この前のデュエルでは披露できなかったが、素材となったモンスターがこの前と違う事により、それも使える。
それは、
「彗星のカエストスのカオスオーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて効果発動!
このカードは流星のセスタスをカオスオーバーレイ・ユニットに持っている場合、ある効果が使える!
それは、相手のモンスターを破壊し、その攻撃力分のバーンダメージを相手に与える!
この効果でデミスを破壊し、君にその攻撃力分、2400ダメージを与える!
行け、彗星のカエストス!スターライト・エクスプロージョン!」
「そ、そんな!きゃぁぁぁぁぁぁぁ…!」
CNo.105BK彗星のカエストス CORU 4→3
Yukino LP 2000→-400 LOSE
WINNER Shuzo
俺が持っているホープレイVと同じ除去・バーン効果。
その効果によって、彗星のカエストスの、背中の突起物から放出された光が拳に宿り、デミスを殴り飛ばした末に、雪乃を巻き込んで吹っ飛ばした。
『(カーンカーンカーンカーンカーン!)決まりました!柊修造選手のプロ復帰戦!その記念すべき勝利は、彗星のカエストスによる豪快な一撃で決めました!』
「ふふふ、流石はあの新進気鋭と噂されている遊勝塾の塾長さんね」
プロ復帰戦を、鮮やかな一撃でモノにした塾長、そんな塾長へと向けられた拍手喝采は、暫く鳴り響いた。
ところで、吹っ飛ばされた雪乃が直ぐに復帰して、自分に勝利した塾長を称えつつも何やら意味深な言葉を言っている様なんだが…