【完結】遊戯王ARC-V~遊の力を矢に束ね~ 作:不知火新夜
2018年になってからもう何日も経過している中で新春特別編というのも変ですが投稿します!
尚、禁止制限は2018年1月現在の物です。
特別編1_いとも容易く行われるえげつない『下準備』
とある市街地の路地、其処で1つのデュエルが始まった。
「「デュエル!」」
先攻 Reizi LP 4000 VS 後攻 ???? LP 4000
「僕のターン!
早速使わせて貰うとしよう!まず僕のフィールドにトーチトークンを2体攻撃表示で特殊召喚する事で、手札の『トーチ・ゴーレム』を君のフィールドに攻撃表示で特殊召喚する!」
トーチトークン
闇属性
悪魔族
レベル 1
攻撃力 0
トーチ・ゴーレム(準制限カード)
効果モンスター
闇属性
悪魔族
レベル 8
攻撃力 3000
「攻撃力3000ものモンスターを此方に…?」
先攻となった零児は早速、丸鋸らしき頭部にスパイク状の両手、所々棘を生やした身体の巨人――トーチ・ゴーレムを『相手の』フィールドに、それを小さくした様な姿のモンスター2体――トーチトークンを自らのフィールドへと呼び出した。
高いステータスを有するトーチ・ゴーレムを態々相手のフィールドに送りつけるという一見不可解な行為に、対戦相手である熱帯魚の様な色合いの頭髪をした少年は首を傾げた。
が、少年は知らない、これこそが零児による壮大な『下準備』のキーカードだという事に…!
「今に分かる。現れろ、異次元をも繋ぐサーキット!アローヘッド確認!召喚条件はレベル1モンスター1体!僕はこのトーチトークン1体をリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!リンク召喚!現れろ『リンクリボー』!」
『クリクリー!』
リンクリボー
リンク・効果モンスター
闇属性
サイバース族
攻撃力 300
LINK―1(下)
そんな少年の疑念を払しょくすると言わんばかりに、零児は今出したトーチトークンを活用する。
零児の口上と共に出現した、正方形に8つの矢印が付いた様なゲート型の物体、その内1つの矢印にトーチトークンが飛び込むとその矢印は紅く発光、すると共に物体の内側が白く発光し、其処から零児達の世界においてデュエルモンスターズのマスコットとして広く知られるモンスター『クリボー』が宇宙服らしきものを纏った様な姿のモンスター――リンクリボーが出現した。
今の零児の口上と共に繰り広げられた光景、それは零児達の世界には無かった新たなる召喚方法――リンク召喚とこの世界で呼ばれる物の一連のギミックであり、そしてこのリンク召喚の存在こそが零児がこの場所にいる理由である。
「次にもう1体のトーチトークン1体をリンクマーカーにセット、2体目のリンクリボーをリンク召喚し、現れろ、異次元をも繋ぐサーキット!アローヘッド確認!召喚条件はトークンでは無い同種族のモンスター2体!僕はリンクリボー2体をリンクマーカーにセット!」
『『クリクリー!』』
「サーキットコンバイン!リンク召喚!現れろ『アカシック・マジシャン』!」
アカシック・マジシャン
リンク・効果モンスター
闇属性
魔法使い族
攻撃力 1700
LINK―2(上/下)
その光景がもう1度繰り広げられ、零児のフィールドにリンクリボーが2体並んだところでみたびゲートが出現、今度は2体のリンクリボーが向かい合う形で矢印に飛び込むと、ゲートの内側から今度は赤毛の錬金術師の様な女性――アカシック・マジシャンが出現した。
「これが僕の狙いだ!リンク召喚したアカシック・マジシャンの効果発動!
アカシック・マジシャンのリンク先にいるモンスターを全て手札に戻す!」
「リンク先のモンスターを!?そういえばトーチ・ゴーレムがいるモンスターゾーンは今リンク召喚されたリンクモンスターのリンク先!まさか…!」
「そう、先程君のフィールドに特殊召喚したトーチ・ゴーレムは返して貰おう!」
その効果に驚く少年を他所に、アカシック・マジシャンが手に持っていた杖らしき物を振るうと、少年のフィールドにいたトーチ・ゴーレムは即座にカードと化し、零児の手に戻って行った。
「続いて僕のフィールドにトーチトークンを2体攻撃表示で特殊召喚する事で、今手札に戻ったトーチ・ゴーレムを君のフィールドに攻撃表示で特殊召喚する!
現れろ、異次元をも繋ぐサーキット!アローヘッド確認!召喚条件はモンスター2体!僕はたった今特殊召喚したトーチトークン2体をリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!リンク召喚!現れろ『セキュリティ・ドラゴン』!」
セキュリティ・ドラゴン
リンク・効果モンスター
光属性
サイバース族
攻撃力 1100
LINK―2(上/下)
そのトーチ・ゴーレムを再び少年のフィールドに送り付け、自らのフィールドに2体のトーチトークンを呼び出す、先程と同じ様な光景が繰り広げられるが、此処から少し違った。
今度は2体が向かい合う形で矢印に飛び込み、リンク召喚の演出と共に、頭部にU字型の機構を持ったドラゴンらしき外見のモンスター――セキュリティ・ドラゴンが現れた。
「セキュリティ・ドラゴンの効果発動!対象はトーチ・ゴーレムだ!
このセキュリティ・ドラゴンは相互リンクしている場合、相手フィールドのモンスター1体を対象に取って、それを手札に戻す起動効果を持っている!この効果でもう1度返して貰おうか!」
そのセキュリティ・ドラゴンが、頭部にあるU字型の機構をトーチ・ゴーレムに向けると、其処から光が照射、トーチ・ゴーレムは再びカード化、零児の手に戻った。
「更に僕のフィールドにトーチトークンを2体攻撃表示で特殊召喚する事で、今手札に戻ったトーチ・ゴーレムを君のフィールドに攻撃表示で特殊召喚する!
現れろ、異次元をも繋ぐサーキット!アローヘッド確認!召喚条件はモンスター2体以上!僕はたった今特殊召喚したトーチトークン2体とセキュリティ・ドラゴンをリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!リンク召喚!現れろ、
『ファイアウォール・ドラゴン』!」
「なっファイアウォールだと!?何故お前がファイアウォールを持っている!?」
ファイアウォール・ドラゴン(制限カード)
リンク・効果モンスター
光属性
サイバース族
攻撃力 2500
LINK―4(上/左/右/下)
手札に戻って来たトーチ・ゴーレムをまたも送り付け、自らのフィールドにトーチトークンを生み出す、もう何度も繰り広げられた展開、その後にまた零児はリンク召喚を行ったが、それによって登場した、身体の所々に青いリング型の機構を持ったドラゴンらしき外見のモンスター――ファイアウォール・ドラゴンの姿に、少年は信じられないと言いたげな反応を見せた。
何故か、それは本来ならその少年だけが持っている筈の、彼のエースモンスターだからだ。
「何故、か。その問いに対して、残念ながら君が満足いくであろう答えを、僕は持っていないのが現状だ。まさか『神』等という非現実的な存在を出されて鵜呑みにする君ではあるまいだろうから。故にその問いへの回答は保留とさせて貰う」
そんな少年の問い掛けに、零児は何処か答えにくそうな素振りを見せた。
言うまでも無い、零児はデュエルモンスターズ業界において多大な影響力を有した大企業『レオ・コーポレーション』の社長である以外にも、300年余りもの人生を歩んだ末に超常的な力を手にした正に『神』に等しい存在であるユシウスとは盟友、今しがた出して来たリンクモンスターの数々は、その影響力を存分に奮って手にした物だ。
だが目前の少年は零児の事を知っている様子はない、そんな彼に自分の役職やユシウスの存在を明かした所で信じるだろうか、いや信じない、零児はそう考え、答えを伏せたのだ。
「さてデュエルを続けよう。ファイアウォール・ドラゴンの効果発動!対象はトーチ・ゴーレムだ!
どうやらこのモンスターの存在は知っている様だから説明しない、その効果でもう1度返して貰おう!
まだまだ行くぞ!僕のフィールドにトーチトークンを2体攻撃表示で特殊召喚する事で、今手札に戻ったトーチ・ゴーレムを君のフィールドに攻撃表示で特殊召喚する!」
トーチ・ゴーレム。
嘗てアニメGXにおいてユベルが使用していたカードで、其処ではユベル自身をアドバンス召喚(アニメ中では生贄召喚)する為のリリース要員を確保するために使用された。
OCGになって、特殊召喚したターンは通常召喚が出来なくなるデメリットが付いた事で上記の使い方が出来なくなった事が災いして暫くはコンボデッキで時折顔を出す程度に留まっていたが、リンクモンスターの存在がその価値を一変させた。
今零児が見せた一連の展開の様に、送りつけてはバウンスし、また送りつけてはバウンスする、その繰り返しの中で大量生産したトーチトークンをリンク召喚の素材に用いる事で、たった1枚で大量のリンクモンスターを、それも召喚出来る事がこの場においてステータスにもなるLINK―4モンスターすらも展開する事が出来る様になってしまったのだ。
この余りのアドバンテージ量産能力を危険視され、最近準制限カードに指定されたのは当然と言えよう。
「此処で、その内の1体をリリースし、墓地のリンクリボーの効果発動!
このカードを攻撃表示で蘇生する!
それと、アカシック・マジシャンのもう1つの効果発動!宣言するカードは『死者蘇生』!
このカードは、自らと相互リンクしているモンスターのリンクマーカーの合計分、自分のデッキの上からカードをめくり、宣言したカードを手札に、それ以外のカードを墓地へ送る起動効果を持っている!
現在アカシック・マジシャンと相互リンクしているのはファイアウォール・ドラゴン、そのリンクマーカーは4つ!よってデッキの上から4枚をめくり…」
○めくられたカード
DDラミア
DDネクロ・スライム
DD魔導賢者トーマス
死者蘇生
「まさか当たるとは思わなかったな…
まあ良い、死者蘇生を手札に加え、それ以外の3枚を墓地へ送る!」
そして、その大量展開の過程で登場するリンクモンスター達も、ただトーチ・ゴーレムをバウンスするだけでは無い有用なモンスターもいる。
制限カードに指定される程のカードパワーを有したファイアウォール・ドラゴンや、自己蘇生能力等を持ったリンクリボー、そして今の様な状況では大幅な墓地肥やしを行えるアカシック・マジシャン。
トーチ・ゴーレムが大暴れする背景には、こういったモンスター達の存在も陰にあるのだ。
「現れろ、異次元をも繋ぐサーキット!アローヘッド確認!召喚条件はカード名が異なるモンスター2体以上!僕は今蘇生したリンクリボー、トーチトークン、アカシック・マジシャン、
そしてファイアウォール・ドラゴンをリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!リンク召喚!現れろ『鎖龍蛇―スカルデット』!」
「何?ファイアウォールもリンク素材に…?」
鎖龍蛇―スカルデット
リンク・効果モンスター
地属性
ドラゴン族
攻撃力 2800
LINK―4(上/左下/下/右下)
そんな展開を締めくくると言わんばかりに零児は、リンク召喚の演出と共に、身体の所々に鎖を巻きつけた鈍色のドラゴン――スカルデットを呼び出した。
その際、ファイアウォール・ドラゴンもリンク素材とした事に少年は疑問符を浮かべる。
無理もない、スカルデットの召喚条件は今零児が言った様にカード名が異なるモンスター2体以上、後はリンクマーカーが4つになる状態になればいいのだが、LINK―2のアカシック・マジシャンがいる時点でファイアウォール・ドラゴンを使う事無くリンク召喚出来たからだ。
「4体のリンク素材を用いてリンク召喚したスカルデットの効果発動!
4枚ドロー!その後、3枚をデッキの下に戻す。
そして魔法『貪欲な壺』発動!対象は2体のリンクリボーとアカシック・マジシャン、セキュリティ・ドラゴンとファイアウォール・ドラゴンだ!」
貪欲な壺(準制限カード)
通常魔法
1:自分の墓地のモンスター5体を対象として発動出来る。そのモンスター5体をデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから2枚ドローする。
「僕はこの5体をエクストラデッキに戻す!
その後メインデッキをシャッフルし、2枚ドロー!
おっと、序でに今引いた魔法『所有者の刻印』も発動して置こう」
が、これこそが零児なりの『理想の動き』なのだ。
4体ものリンク素材を用いたスカルデットの効果で手札を6枚に増やし、更に墓地へ送られた5体のリンクモンスターをエクストラデッキに戻して、手札補充カードの定番である(最近はそうでも無く、故に準制限に緩和されたが)貪欲な壺で7枚に増やす。
所有者の刻印
通常魔法
フィールド上の全てのモンスターのコントロールは、元々の持ち主に戻る。
「所有者の刻印の効果によって、トーチ・ゴーレムは返して貰おう。
これで下準備は完了だ。それではお見せしよう、数多の次元を繋ぐ英雄達の底力を!」
「下準備だと!?」
そうして整った手札と、自らのフィールドに君臨したトーチ・ゴーレムの存在。
これによって零児の、DDデッキの本気が発揮される…!