【完結】遊戯王ARC-V~遊の力を矢に束ね~   作:不知火新夜

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注:今話はとあるキャラに対するアンチ的な見解があります。


129話_ロストワンの号哭

Side ????

 

「申し上げます!ランサーズからの使者を名乗る面々が、プロフェッサーに面会を求めています!『面会に応じない場合、此処一帯を灰燼に帰す』という脅しまで…!」

「とうとう、来たか…!

相手は?監視カメラは動かせそうか?」

「はっ!システムは先程復旧し、映像を閲覧可能です!」

「そうか、ならば映像を直ぐに見せてくれ…」

「ははっ!」

 

デュエルアカデミアのとある一室、其処でアカデミアのトップである零王は、デュエル戦士から侵入者が来た事の報告を受け、監視カメラの映像を映すよう指示を下したが、その口調からは力強さなど全く感じられない。

無理もない、つい最近まで順調だった他次元への侵略の一手は此処に来て急激に勢いを削がれ、その中で仲間割れが多発、故に本部の防衛を優先する事を決めたら決めたで其処でも仲間割れが起こり、それによって人質及び零王の計画で必要となる、他次元の住人達を解放され、そして計画において重要な存在である『ピース』、リンと瑠璃に脱走された、全てランサーズの手によって…

まだランサーズメンバー相手にすら圧倒できる程の実力を有したホルアクティ・フォースという戦力を持ってはいるが、それでも大勢はひっくり返されたと言っても、再逆転は無理だと言っても過言じゃない。

そんな状況下でのランサーズからの面会要求、考えられるとしたら降伏勧告か、講和要求か…

零王はそう考えながら、映し出された監視カメラの映像を確認していた。

 

「左にいるのは零児か。その隣にいるのは遊勝、更にその隣には、む!?

 

 

 

れ、レイ、だと!?何故レイが此処に!?」

 

その映像を確認して、驚愕の表情を露わにする零王。

其処にはユシウスと遊勝の親子と、自らの息子である零児、そしてまだこの世界にはいない筈だと、蘇っていない筈だと零王が思っていた、自らの娘であるレイがいた。

 

「…分かった、面会に応じるとしよう」

 

------------

 

「久しぶりだな、零王。およそ3年ぶりか」

「父さん…」

「赤馬零王、貴方に言いたい事は沢山あるが、一先ずは、久しぶりだ、と言って置く」

「初めましてと言うべきかな、赤馬零王よ。今日は我々との面会の承諾、感謝する」

「その顔に、その声…

もしや貴様、榊遊矢か?」

「ああ。貴様が殺したいと願っていた存在『ズァーク』の片割れ『榊遊矢』だった者だ。尤も今はユシウスという名だが」

 

零王から面会に応じる連絡を受け、とある場所へと案内されたユシウス達4人、其処は王宮における謁見の間の如く、後方には玉座と言って良い程の存在感を放つ椅子が据え付けられており、其処に零王は座っていた。

 

「さて、我らが何故貴様との面会を要求したか、大方想像は付いているだろう?」

「ああ、貴様達が大体の事実を知っている事も、『リバイバル・ゼロ』が何故か成された事も。だが肝心の『アークエリア・プロジェクト』を成さない以上は、私に引くという選択肢は無い。それが貴様達という『悪魔』を生み出し、結果として世界を引き裂いてしまった、私の責任だ」

 

その零王に対して早速話を切り出すユシウス、それに対して零王はユシウス達がどれだけの事を把握しているかや、レイが蘇った事等に対して信じられないと言った様子なりに受け止めつつも、それでも己の起こした事を踏まえ、その清算の為には手を引けないと、ユシウスが要求するであろう事を突っぱねる。

状況的にはもうアカデミアにてそれを成すのが不可能だという事は零王も承知の上、それでも引けないという想いが、その言葉からにじみ出ていた。

が、

 

「俺達『悪魔』を生み出した?世界を引き裂いた?その責任?何を馬鹿な事を言っている?」

「何?」

「Guns don’t kill people,people kill people。銃が人を殺すのではない、人が人を殺すのだ。何処かの団体が声高に叫ぶのをよく聞く、有名な詭弁だ。だが一方で、ある意味物事の本質を突いた言葉でもある。これをベースに言わせて貰おう。

 

貴様が高めた技術が世界を滅ぼしたんじゃない、ズァークという『悪魔』が世界を滅ぼしたんだ。貴様がリアルソリッドビジョンに手を出さずとも、遅かれ早かれズァークが世界を滅ぼそうとしたであろう」

「何だと!?」

 

ユシウスはそんな零王の想いを一蹴した。

 

「違う!私がリアルソリッドビジョンをデュエルに取り入れた事が、ズァークを『悪魔』に変えてしまったのだ!過激化するデュエルを望む観客、それに応えるデュエリスト、その思惑のままに動かされるモンスターの怒りで、モンスターの声を聞き届けるズァークと言うデュエリストを『悪魔』に…!」

「その時点で貴様は大いに勘違いしている」

「なっ!?」

「ズァークというデュエリストは「モンスターの声が聞こえる」と公言していた。その真偽はともかく、それならばモンスター達の怒りを前々から聞いていた筈だ。それを聞いて、何か行動を起こす事も出来た筈だ。

 

だがズァークはそれをしようともせず、嬉々として観客たちの声に応え続けた。そしてデュエリストの頂点に立った途端に、それまで聞き流していたモンスター達の怒りを解放した。

 

分かるであろう?ズァークは貴様がデュエルに取り入れたリアルソリッドビジョンによって『悪魔』に変えられたのではない、元から『悪魔』だったのだ。貴様がデュエルシステムに手を加えずとも、ズァークは世界にとって何かしらの災厄と化したであろうな」

「な、何、だと…?」

 

そして反論した零王の言葉を、勘違いだと指摘した。

其処から続けて何故そう言い切れるかを論じるユシウス、聞き終えた零王は何処か呆然とした様子だった。

 

「だがその『悪魔』も既にこの世から消え去った」

「…え?」

「俺が殺し、その『力』だけを俺が受け継いだ。この4対の羽がその証拠だ。ズァークが死んだ事により役目を終えた、貴様が開発した4枚のカード、それで引き裂かれたレイもこうして蘇った。『アークエリア・プロジェクト』もいずれ自然と成されるだろう、『リバイバル・ゼロ』が自然と成された様に。

 

貴様はもう偽りの『罪』に囚われる事も、それを清算する為に本当の『罪』を重ねる事も無いのだ。分かったのなら、もう終わりにするのだ」

 

そして改めて突きつけられる、通告。

 

「馬鹿な、ならば私が今まで世界の為にとやって来た事は、何だったのだ…!?

家族を捨て、舞網を捨て、他次元の人々や文化をも切り捨ててまで成そうとしてきた事は、何もかも無駄だったのか…!?

嘘だ…!

 

 

 

嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

突きつけられた零王は、座っていた椅子から力なく立ち上がり、ふらふらと歩みながら呟き、そして糸が切れた人形の様に崩れ落ちながら号哭を上げた。

己の無力感か、或いは罪悪感か、己の感情に逆らう事無く号哭を上げる零王に、何処か複雑な様子で歩み寄る遊勝、零児、そしてレイ。

一方でユシウスは、もう用は無いと言わんばかりにその場を立ち去り、

 

「フォースハウンド、総員集え」

「「はっ!」」

「此処よ」

「おう」

 

フォースハウンドの面々を呼び出し、即座に集まった4人に対し、懐から取り出した4枚の封筒を其々に手渡し、

 

「月影はフリアグネ、日影はカムシン、遊香はヘカテー、セルゲイはベルペオル。各員、対象の人物にその手紙を渡せ。我はキサラにこれを手渡して来る。その後は…分かっているな?」

『了解!』

 

そう指示を飛ばした。


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