【完結】遊戯王ARC-V~遊の力を矢に束ね~   作:不知火新夜

156 / 168
127話_決闘皇、覚醒

Side ????

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

「っ!?ま、眩しい!?」

「い、一体何なの、この無茶苦茶なまでに吹き上がっている力は!?」

「遊矢の身に、一体何が起こっているんだ…!?」

「リン!リンは大丈夫なのか!?」

「瑠璃ィィィィィィィィィィィ!」

 

各次元の『柚子』達を統合する、実質的な『リバイバル・ゼロ』が始まろうとしていた最中、己に宿りし『力』を解放した遊矢、次の瞬間、遊矢達のいた部屋中が真っ白に染まる程の眩き光に満たされた。

それと共に遊矢から吹き上がる『力』の奔流、自らの『力』によってそれを感じ取った遊香は、その余りに膨大な『力』の強さに驚愕し、一方で遊勝やユーゴ、隼は自らの身内の安否を案じる。

一方、

 

「此処まで凄まじい力の奔流…

遊矢、また1つ強くなったのね。これなら、柚子達も絶対に助かる…!」

「そうですよね、アキさん!遊矢なら絶対に出来る、必ず柚子達を助けられる!」

「ええ、アキ、小鳥!私達は信じているわ、遊矢、貴方の無事を、柚子達を助け出す事を!」

「おぉ…!

榊遊矢の美しさは、初めて会った時点でこれ以上の物は無いと言って良い程だと思っていたが、まさか更なる美しさを得たとは、実に素晴らしい…!」

 

前世で遊矢と一生を共にして来た明日香、アキ、小鳥はその力に希望を強く抱き、セルゲイは更なる力を得た遊矢を崇めていた。

そして、

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

遊矢が上げていた雄叫びが一際大きくなったと思ったら上げ終わったかの様に聞こえなくなり、同時に部屋中を満たしていた光が晴れ上がる。

それによって全貌を見渡せるようになった部屋には、

 

「柚子!しっかりするんだ!」

「セレナ!無事か!?」

「リン!大丈夫か、リン!?」

「瑠璃!良かった、無事だ…!」

 

実質的なリバイバル・ゼロによってその身が消滅する危機に直面していた各次元の『柚子』達が、机に突っ伏した状態で気を失ってこそいたが健在だった。

だが何も無かったという訳では無く、其々の腕に身に着けていたブレスレットが消えていた。

然しそれに気づく存在は殆どおらず、

 

「柚子達と同じ顔した女の子が、もう1人いる…?」

「もしかしてあの子が、遊矢が言っていた、レイ…?」

「という事は、柚子達が健在なまま、リバイバル・ゼロは成された、という事ですか…?」

 

寧ろ部屋の中に『新たに現れた』1人の『柚子』達とそっくりな少女の存在と、

 

「ゆ、遊矢!?その姿は一体…!?」

「ま、まるで天使みてェだ…!」

「髪も何ていうか、昆布?」

「当麻兄ちゃん、この期に及んで何ボケてんだよ…」

 

トマトを思わせる髪型から、昆布を彷彿とさせる深緑の太腿まで伸びたサラサラなロングヘアーとなり、背中から天使をイメージさせる4対の、純白の羽を生やした遊矢の変貌が注目を集めていた。

 

「ふう、どうやら成功した様だな。赤馬零王が掲げていた『リバイバル・ゼロ』は『柚子』達を犠牲にする事無く成された。ズァークも俺が呑み込み、復活する事は無くなった。これで赤馬零王が交渉に応じてくれれば良いが…

ん?何だお前ら、おジャマ・ブルーが滅びの爆裂疾風弾食らった様な顔して」

「遊矢兄ちゃん、其処は『鳩が豆鉄砲食らった様な顔』じゃないの?」

「いやいやいや遊矢、その姿とか色々とおかしいだろ今の状況!」

「一体何がどうなっておるのだ、お前はどうやってこの状況に…?」

「エレンも突っ込む所其処かァ?」

 

そんな混乱にも我関せずといった様子で、何やら納得した様な挙動を見せる遊矢、自らの変貌に驚いていた周囲に何故か、キョトンとした様子を見せていた。

それに対する周囲の突っ込みで漸く状況を理解した遊矢は、口を開いた。

 

「俺は、俺に宿りし力…

『覇王』の力、シグナーとしての力、ゼアルの力、そしてズァークを取り込んで手にした力…

それら全てを混ぜ合わせて調和させた力を解放し、人ならざる存在として生まれ変わった。その力を用いて『柚子』達の魂を覆っていたレイの意志を分離し、統合、そして生まれ変わらせたんだ。俺がユート達の、他次元の『俺』の魂を覆っていたズァークの意志を分離した上で取り込んだ様に」

「人ならざる、存在…?」

「そうだ。まあそれは後でまた話すよ、話はまだ終わっていなかったし。といっても続きは柚子達が起きてからかな」

「ん…」

「ふぁ、何だったんだ、今のは…」

「あれ、此処は…」

「ふぅ…」

「お、噂をすれば。レイが起きていない様だが…

まあずっと柚子達の中で眠っていたんだ、無理もないか。誰か、ベッドのある部屋に彼女を」

 

今起こった事態の顛末をさらりと話した遊矢は、柚子達が起きたのを確認し、皆を再び席に着かせて、再び話始めた。

アカデミアによる侵略の終結、そしてこれからの4つの次元を導くという決意を込めて。

 

「赤馬零王は『世界を1つに』という聞こえの良い、然しながら嘘では無い大義を掲げて各次元への侵略を始めた。だがズァーク封印の余波によって分断されたとは言え、其々の次元には其々の住人達が、デュエルが、文化がある。分断された後の世界が、人々が血のにじむ努力でつみあげて来たミームがある。どんな理由があれ、それをぶち壊して良い訳がないんだ。俺達はそのアカデミアの侵略を止め、4つの次元の手を取り合わせる為にランサーズを結成し、各次元を奔走した。時には信念に反する行為を、アカデミアに属するデュエル戦士達の笑顔を奪う事も行った。だがその日々も今日を以て1つの終わりを迎える。アカデミアによる各次元への侵略は潰え、赤馬零王が掲げた1つであるリバイバル・ゼロも成された。滅亡へと導く火種となるズァークも俺が呑み込み『完全なる死』を遂げた!赤馬零王が掲げた大義は既に消えたも同然!そして今日この日、俺達と赤馬零王との直談判でケリをつける!

 

然しながらケリをつけても侵略による傷が治る訳じゃない。どれ程手を尽くしても完全に元通りになる訳じゃない、侵略によって付いた傷はそれ程根深い物だ。俺も今この時、人ならざる存在となった。まあ何度も転生している奴が今更ナニイテンダって話だけどな。

 

ならば俺は新世界の皇となりて、皆を笑顔溢れる理想の世界へと導こう!これから俺の事は『決闘皇(デュエルマスター)』ユシウスと呼ぶが良い!」

 

そして、そう宣言した。

 

------------

 

「立派になったな、遊矢。いや、ユシウスと呼んだ方が良いか?私が元いた次元を離れて3年で、此処までになるとは驚いた。子供の成長は凄まじいと言うが…」

「そうかな、父さん。もう前世含めれば300年も生きていたから、正直分からないや。あ、急に言っても何言っているんだって話だよな」

「いや、大丈夫だ。お前が嘗ての世界で歩んで来た人生は、明日香君達から全て聞いている」

「そっか。でも俺は父さんの息子だって、息子で良かったって、今でも思っている。父さんが教えてくれたエンタメデュエルの神髄、それがあったからこそ今までやって来れたんだから」

 

遊矢、いやユシウスが終結を宣言してから少し経ち、室内に未だ残っていたユシウスと遊勝は2人、親子水入らずのひと時を過ごしていた。

他のメンバーは其々思い思いの場所に散らばり、レイが目覚めるまで其処で過ごす事になっている。

 

「エンタメデュエルの神髄があったからこそ、か。それにしては、随分とやりたい放題やっていた様だが?一行君達から聞いたぞ、シンクロ次元での所業を」

「あ、はは…

確かに俺は、デュエルを政治的な道具として使ったり、アカデミアに属するデュエル戦士達の笑顔を沢山奪ったりした。殊に後者は、彼らに恐らくは未来永劫消える事が無いであろう根深い傷を刻んだ。どんな理由であれ、そんな事をする免罪符にはならない。そういう意味で俺は赤馬零王と何ら変わりない、榊遊矢としての『俺』の前世たるズァークとも。

 

だから俺は今後ずっと、その罪を背負って、生きていく。生きて、奪い取った以上の笑顔を、世界中の皆に齎す!」

 

そんなひと時の中、遊勝はユシウスのシンクロ次元での所業、恐らくは『アンドバリの指輪』作戦に関して何か言いたげな様子を見せた。

そんな遊勝に対してユシウスは、己の罪を受けとめ、前に進む決意を示した。

 

「…そうか、ならば私からあれこれ言うのは止そう。

代わりと言っては何だが、久しぶりに私とデュエルだ!デュエルを通じて、お前のその意志が揺るぎない物か、見せて貰う!」

「はは、そう来たか。分かった、父さん!さ、早速始めようか!」

「「デュエル!」」

 

先攻 Lucius LP 4000 VS 後攻 Yusho LP 4000

 

「俺の先攻!

まず俺のフィールドにモンスターが存在しない事から、手札の『ジャンク・フォアード』を守備表示で特殊召喚!」

 

ジャンク・フォアード

効果モンスター

地属性

戦士族

レベル 3

守備力 1500

 

その決意を見た遊勝とユシウスの間でふと始まったデュエル、先攻となったユシウスが最初に呼び出したのは、クリーム色の装甲で覆われた機械戦士。

 

「次に俺のフィールドにジャンクモンスターが存在する事から、手札の『ジャンク・サーバント』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

ジャンク・サーバント

効果モンスター

地属性

戦士族

レベル 4

攻撃力 1500

 

次にユシウスが呼び出したのは、茶色を基調とした装甲を身に着けた機械戦士。

 

「続いて手札の『チューニング・サポーター』を墓地へ送って魔法『ワン・フォー・ワン』発動!」

 

ワン・フォー・ワン(制限カード)

通常魔法

1:手札からモンスター1体を墓地へ送って発動出来る。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 

「ワン・フォー・ワンの効果で、デッキから『ジェット・シンクロン』を守備表示で特殊召喚!」

 

ジェット・シンクロン

効果モンスター/チューナー

炎属性

機械族

レベル 1

守備力 0

 

「チューナーモンスター…

確かシンクロ召喚する際に必要なモンスターだった筈、まさか…」

 

続いて呼び出されたジェット・シンクロンの姿を見た遊勝、それがチューナーである事から、ユシウスの狙いに気付いた様だ。

 

「ああ、そのまさかだぜ父さん!俺はレベル3のジャンク・フォアードと、レベル4のジャンク・サーバントに、レベル1のジェット・シンクロンをチューニング!集いし願いが、新たに輝く星となる。光差す道となれ!シンクロ召喚、レベル8!飛翔せよ、『スターダスト・ドラゴン』!」

 

スターダスト・ドラゴン

シンクロ・効果モンスター

風属性

ドラゴン族

レベル 8

攻撃力 2500

 

「これが、アキ君が言っていた、お前の前世でのエースモンスターか。綺麗なドラゴンだ…」

 

その予感に応えるかの様にユシウスがシンクロ召喚の演出と共に呼び出したのは、ユシウスの前世でのエースであり、シグナードラゴンの1体、スターダスト・ドラゴン。

 

「ありがとうな父さん、だが俺のデュエルはまだまだこれからだ!

シンクロ召喚の素材にしたジェット・シンクロンの効果発動!

デッキから『ジャンク・シンクロン』を手札に加えて、そのまま召喚!」

 

ジャンク・シンクロン

効果モンスター/チューナー

地属性

戦士族

レベル 3

攻撃力 1300

 

「召喚したジャンク・シンクロンの効果発動!

墓地にいるチューニング・サポーターを守備表示で蘇生するぜ!」

 

チューニング・サポーター

効果モンスター

光属性

機械族

レベル 1

守備力 300

 

「更に魔法『機械複製術』発動!対象は今蘇生したチューニング・サポーターだ!」

 

機械複製術

通常魔法

1:自分フィールドの攻撃力500以下の機械族モンスター1体を対象として発動出来る。デッキからその表側表示モンスターの同名モンスターを2体まで特殊召喚する。

 

「機械複製術の効果で、デッキにいる2体のチューニング・サポーターを守備表示で特殊召喚!」

 

その姿に思わず呟いた遊勝の言葉に礼を言いつつも更なる展開を開始したユシウス、これによってフィールドにはスターダスト・ドラゴンの他、チューナーであるジャンク・シンクロンと、チューニング・サポーターが3体並んだ。

 

「チューニング・サポーターはシンクロ素材とする場合、自らをレベル2モンスターとして扱う事が出来る!この効果でレベル2としたチューニング・サポーターに、レベル3のジャンク・シンクロンをチューニング!集いし願いが、新たな大空へ誘う。光差す道となれ!シンクロ召喚、レベル5!希望の風、『アクセル・シンクロン』!」

 

アクセル・シンクロン

シンクロ・効果モンスター/チューナー

闇属性

機械族

レベル 5

守備力 2100

 

その内の2体を用いてシンクロチューナーであるアクセル・シンクロンをシンクロ召喚したユシウス、これによってシンクロモンスターであるスターダスト・ドラゴンを用いればアクセルシンクロを行う事も可能となった。

だが、これだけで終わるユシウスでは無い。

 

「シンクロ召喚の素材にしたチューニング・サポーターの効果発動!ドロー!

まだまだ行くぜ!デッキから2枚目のジェット・シンクロンを墓地へ送り、アクセル・シンクロンの効果発動!

このカードのレベルをジェット・シンクロンのレベル分、つまり1つ下げる!」

 

アクセル・シンクロン レベル 5→4

 

「俺はレベル1のチューニング・サポーター2体に、レベル4となったアクセル・シンクロンをチューニング!集いし星が雨となりて、聖なる翼へと束ねられる。光差す道となれ!シンクロ召喚、レベル6!魂を風に乗せ世界を巡れ!『スターダスト・チャージ・ウォリアー』!」

 

スターダスト・チャージ・ウォリアー

シンクロ・効果モンスター

風属性

戦士族

レベル 6

攻撃力 2000

 

ユシウスが更に呼び出したのは、背中にジェットエンジンを組み込んだ翼を持つ機械戦士。

 

「シンクロ召喚の素材にした2体のチューニング・サポーターの効果発動!

それにチェーンしてシンクロ召喚したチャージ・ウォリアーの効果発動!

計3枚ドロー!

まだまだぁ!魔法『貪欲な壺』発動!対象は3体のチューニング・サポーター、ジェット・シンクロン、そしてジャンク・シンクロン!」

 

貪欲な壺(制限カード)

通常魔法

1:自分の墓地のモンスター5体を対象として発動出来る。そのモンスター5体をデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから2枚ドローする。

 

「貪欲な壺の効果で対象の5枚をデッキに戻してシャッフルし、2枚ドロー!」

「手札が5枚に戻った…!

凄まじいデュエルタクティクスだ…!」

 

遊勝の言う通り、チューニング・サポーターやチャージ・ウォリアー、そして貪欲な壺の効果で手札がデュエル開始時の5枚に元通りとなったユシウス。

手札=出来る事と言って良い程手札アドバンテージが重要なデュエルモンスターズにおいて、この状態は此処からの超展開を予期していると言っても過言じゃない。

 

「そして魔法『死者蘇生』発動!対象はアクセル・シンクロン!」

 

死者蘇生(制限カード)

通常魔法

1:自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

「死者蘇生の効果で、アクセル・シンクロンを守備表示で蘇生する!

今蘇生したアクセル・シンクロンの効果を、さっきデッキに戻したジェット・シンクロンを墓地へ送って発動!

アクセル・シンクロンのレベルを1つ下げる!」

 

アクセル・シンクロン レベル 5→4

 

「俺はレベル6のチャージ・ウォリアーに、レベル4のアクセル・シンクロンをチューニング!レベル10!集いし星が流れる痕に紡がれる全ての想いが、絆と共にこの世界を満たさん!光差す道となれ!アクセルシンクロォォォォ!光来せよ、『真閃珖竜スターダスト・クロニクル』!」

「ま、眩しい!?」

 

真閃珖竜スターダスト・クロニクル

シンクロ・効果モンスター

光属性

ドラゴン族

レベル 10

攻撃力 3000

 

「カードを3枚セットしてターンエンドだ!」

 

Lucius

LP 4000

手札 1

モンスター スターダスト・ドラゴン(攻撃表示)

真閃珖竜スターダスト・クロニクル(攻撃表示)

魔法・罠カード セット×3

 

そして、チャージ・ウォリアーと、自らの効果でレベルを下げたアクセル・シンクロンによるアクセルシンクロによって、黄金に光輝くドラゴンを呼び出し、3枚のカードをセットしてターンを明け渡したユシウス。

だが、

 

「随分とまた動き回ったな、ならば次は私の番だ!私のターン、ドロー!」

「おっと、そのドロー時に罠発動!スターダスト・ドラゴン、モード・チェンジ!『バスター・モード』!」

「何?」

 

バスター・モード

通常罠

自分フィールド上のシンクロモンスター1体をリリースして発動出来る。リリースしたシンクロモンスターのカード名が含まれる『/バスター』と名の付いたモンスター1体をデッキから表側攻撃表示で特殊召喚する。

 

ユシウスの展開は終わってはいない…!

 

「新たなる力を纏いて、再臨せよ!『スターダスト・ドラゴン/バスター』!」

 

スターダスト・ドラゴン/バスター

効果モンスター

風属性

ドラゴン族

レベル 10

攻撃力 3000


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。