【完結】遊戯王ARC-V~遊の力を矢に束ね~   作:不知火新夜

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126話_リバイバル・ゼロ

「さて今日、この遊勝塾に皆を連れて来たのは他でもない、全ての真相を皆の前で話す為だ。各次元の『俺』と『柚子』、その親族である父さんとエレンと隼、ランサーズにおいてのトップシークレットを知るARC-Vとフォースハウンド、そして零児、貴方に全てを話す為に。明日香とアキ、小鳥が此処にいたのは予想だにしなかった事態だが、問題は無い」

 

融合次元のとある都市にある遊勝塾、その一室で俺は、眼前で着席している皆に向けて、そう切り出した。

いやぁ、此処に柚子達を連れて来た理由がこれだと言うのに、想定外の人物との再会に思わず我を忘れて喜んじゃったからか、遅くなっちゃったな。

 

「びっくりした、遊矢?」

「そりゃあびっくりだよ、明日香…

まあジャックやクロウ、鬼柳にカイトが転生して来た例があるからもしかして、と思わなくもなかったけど…」

「あら、ジャック達もこの世界に転生して来たの?」

「ああ、アキ。アイツらシンクロ次元でのスターになって、毎日仲間達との満足出来るデュエルに明け暮れているよ」

「カイトは、どんな様子だった?」

「カイトが転生して来たのは俺達より60年位前だったから、かなり年食った爺さんになっていたよ、小鳥。色々あって何処かやつれた様子だったな…」

「あ、其処にいるのが今の遊矢の彼女、柊柚子さんね。初めましてと言うべきかしら、柚子。あの時の夢で会って以来ね」

「は、はい!初めまして、明日香さん、アキさん、小鳥さん!」

「もう少し砕けた感じで良いわよ、同じ男性を愛している人同士なんだから。私だって明日香達の事は呼び捨てだしね」

「いや、急にそう言われても柚子が困ってますよ、アキさん。私だって未だにちょっと他人行儀な感じなのに…」

「というかユベル、柚子や遊矢に伝えていなかったの?私達が転生して来た事」

『いやボクも、ボク達の記憶に眠っている明日香達の残留思念を呼び出した的な感じでやったと思っていたから気付かなかったよ…』

 

その人物、明日香とアキ、小鳥と再会を喜び合い、其処に柚子やユベルも輪に加わっていた一方、

 

「父さん、3年も一体何処ほっつき歩いていたんだよ!母さんや遊矢兄ちゃん、俺や遊勝塾の皆ずっと、心配していたんだぜ!」

「本当だぜェ、遊勝さン!その間ずっと、遊矢が講師として必死こいて皆を引っ張って行ったンだ!」

「あの時は遊矢、遊勝さんの事で色々言われていて、本人は毅然と撥ねつけていたけど内心傷ついていたと思いますよ…」

「これよさぬか、遊勝さんにも色々あったのだぞ」

「済まなかった、エレン。それに一行君も当麻君も権現坂君も。皆、随分と大きくなったな」

 

同じく部屋で待っていた父さんがエレン達と再会して、エレン達が喜びつつも行方不明になっていた件で色々言っていたり、

 

「リーン(ごすぅ!)ぐぼっ!?」

「遅い!何よ今頃!ずっと待っていたんだから…ずっと不安で…心細くて…怖くって…!

ユーゴのバカ!」

「リン…」

 

また同じく部屋で待っていたリンが、駆け寄って来たユーゴの腹に膝蹴りをぶちかますというストロング感丸出しな展開があったかと思ったら、数年間に及ぶ監禁生活の心細さを涙ながらに打ち明けてユーゴに抱き付いていたり、

 

「瑠璃!やっと、やっと会えた…!」

「ユート…!」

「良かったな瑠璃、ユート。これからはずっと、皆一緒だ」

「妹さん、良かったわね」

 

これまた同じく部屋で待っていた瑠璃がユートとの再会で仲睦まじい様子を見せ、それを隼と遊香が微笑ましい様子で見ていたりといった感じだったからな。

そんな本題そっちのけな状況を変えたのは、

 

「んん!皆、再会の喜びに浸るのは分かるが、今日ここに集まったのは遊矢から何か発表があるから、では無かったか?」

「零児の言う通りだ。遊矢、私達を此処に連れて来た当の本人であるお前が目的を忘れてどうする」

 

この状況から蚊帳の外になっていた零児とセレナだった(ユーリは何処か居心地が悪そうな感じで言い出したくても言い出せない様子、セルゲイや零羅は我関せずといった様子だった)。

 

「あ、そうだった。皆、再会を堪能したい気持ちは有るだろうけど、一先ずは俺の話を聞いて欲しい。其々、好きな席に着いてはくれないか?」

 

零児達の指摘で本来の目的を思い出した俺は、皆に所定の席に着くよう促し、皆も応じてくれた(父さんはどうやらこの3年間の間に足を悪くした様で、杖をつきながらだった)。

そして冒頭に戻り、俺は全てを話し始めた。

 

「さて皆は、この世界には此処融合次元を含む4つの次元が存在する事は知っていると思う。けど、その4つの次元全てにデュエルモンスターズというカードゲームが殆ど同じルールで大昔から存在し、それが例外なく社会に浸透しているのは何故か、そう考えた事は無いか?」

「む、確かにそう言われてみると不思議だ。余りに浸透し過ぎて、疑問にも思わなかったが…」

「その謎、そして今の状況に至った理由…

全ては今から遥か昔、4つの次元がまだ1つだった頃に遡る」

「何!?この世界は元から次元が4つあったのでは無かったのか!?」

「1つだったんだ、大昔はな。その世界では今の4つの次元の様にデュエルモンスターズが、今のルールのまま存在し、その影響力は今の何処の次元にも遜色ない程、しかも融合、シンクロ、エクシーズ…

今では其々の次元に分散された、エクストラデッキからモンスターを呼び出す方法、嘗てはそれが全てあったんだ。一方その世界にはソリッドビジョンを発展させたリアルソリッドビジョンも存在していたが、この頃はまだまだ黎明期、家庭用インテリアや企業のモニュメント的な物程度にしか使われなかった。それが或る日とある科学者によって、デュエルのシステムとして導入、モンスターのリアルソリッドビジョン化が成し遂げられ、デュエルモンスターズもリアルソリッドビジョンも革新の道を突き進み、今俺達の次元を発信地として浸透してきているアクションデュエル程の臨場感と白熱感をもたらし、その科学者は時代の寵児として称えられた。それを成し遂げた科学者、その名は…

 

赤馬零王」

 

その話の中で、4つの次元が元は1つだったという事実には若干名驚いたのがいただけだった一方、その中で今やアカデミアのトップに君臨する赤馬零王が、そんな大昔に科学者として名を馳せていたという事実に部屋内はざわつき始めた。

まあそりゃそうだろうし、信じていない存在もいるだろうが、続けるか。

 

「だがそんな激しく熱いエンターテイメントとしてのデュエルは、とあるデュエリストの台頭と共に終焉へと向かう事になる…

そのデュエリストは『自分にはモンスターの声が聞こえる』と公言し、実際にモンスターと心を通じ合わせたかの様に共に走り、飛び、フィールドを駆け回り、勝ち上がって来た。そんな彼に触発されるかのようにライバルは彼に追いつけ追い越せという姿勢でデュエルは過激化、観客はそんな過激化するデュエルを楽しみ、デュエリスト達に更なる過激化を要求して行く、正に過激化のスパイラル、そんな中でもそのデュエリストは4体の、其々の召喚方法における『頂点の竜』をエースカードとして勝ちを重ね、頂点に上り詰めた。そして過激化のスパイラルに呑み込まれながらも勝ち続けた彼は暴走、リアルソリッドビジョン化したモンスターを駆使して、いや、観客の求められるままに動く事を強いられたモンスター達の怒りを解き放ち、世界に対する破壊活動を繰り広げた。そのデュエリストの名はズァーク…

 

各次元に存在する『俺』達、ユート、ユーゴ、ユーリ、そして俺、そのオリジナルとなった人物だ」

「な、何だって!?」

「俺達が、世界を破壊したデュエリスト…!?」

「そ、そんな馬鹿な…!?」

「う、嘘でしょ…!?

ユーゴが、そんな…!?」

「ユートが、世界を破壊していた『悪魔』…!?

そんな、そんな筈は…!」

「遊矢…

何というか、訳ありな存在によく転生するわよね…」

 

更に明かされた各次元に存在する『俺』の真実、それに他次元の『俺』ことユート達3人と、リンと瑠璃が信じられるかと言わんばかりの様子を見せた一方、ランサーズの活動においてずっと行動を共にし、その最中で起こったあの出来事を、それによって起こった俺の変化を感じ取っていた柚子達や、前世で俺の過去を聞いていた明日香達は感づいていたのか複雑そうな表情を見せた(セレナ?ユーリとは面識が殆ど無いしそれほど反応は無かった)。

 

「ズァークの、彼のモンスター達の破壊衝動は留まる事を知らず、更なる破壊の為に力を追い求め、4体の頂点の竜とズァークは融合、神にも等しき力を持つ『覇王龍ズァーク』と化して更なる破壊を始め、抵抗するデュエリスト達をなぎ倒していった。最早彼を、覇王龍ズァークを止める事は不可能と思われ、世界は終末へのカウントダウンを刻んでいった」

「あ、あぁ…!世界が、滅んでいく…!お願い、止めて!」

「零羅!?この尋常じゃない様子…!

遊矢、それは、その話は、作り話では、無いのだな…?」

 

そして話を進めている中で何かを感じ取ったのか怯えた様子を見せた零羅を見て、零児はこれが本当の話であると確信を持ってくれた。

その加害者の片割れたる俺だからか、その様子に複雑な心境を覚えるが、続けよう。

 

「はい。だが終末の時は回避された。赤馬零王が、大自然が持つ膨大なるエネルギーを用いて作り出された4枚の魔法カード『エン・フラワーズ』『エン・バーズ』『エン・ウィンズ』『エン・ムーン』…

それによって覇王龍ズァークは元の4体の『頂点の竜』に分離、ズァーク自身も4人、つまり今の『俺』達に分離された事で封印が成され、世界の終末は寸での所で回避された。然しその代償は大きく、封印の為の4枚のカードを使ったデュエリストも、1つだった世界も、覇王龍ズァークの分離に巻き込まれる形で其々4つに分離した。それによって分離し、長い年月を経て其々独自に発展した4つの世界こそ、今ある4つの次元なんだ。其々に殆ど同じルールでデュエルモンスターズが存在するのは、其々の次元に固有のエクストラデッキからモンスターを呼び出す術があるのは、それが理由なんだ」

「だとしたら遊矢、その、ズァークを封印したデュエリストと言うのは…」

「ああ、その封印したデュエリストの名は赤馬レイ、赤馬零王の娘で、各次元に存在する『柚子』達、セレナ、リン、瑠璃、そして柚子、そのオリジナルとなった人物だ」

「わ、私達が元は、プロフェッサーの娘だと!?」

「私達は元々、赤馬零王の娘!?」

「嘘でしょ!?私達を拉致した人が、父親だったなんて…!」

「そんな、そんな事が…!?」

 

世界を破滅へと導いた覇王龍ズァーク、それを阻止した赤馬零王の娘レイ、その2人が、その欠片たる俺達が長い年月を経てこうして一堂に会して驚愕の真実を明かされる、それにざわめきが更に増していく室内。

 

「す、少し待ってくれ遊矢!今までお前が話してくれた事が真実だとしてもだ、その『頂点の竜』か?話の流れから言ってエクシーズ召喚の頂点の竜があり、それは俺が持っている筈だが、俺はそれを持った事も無ければ見た事も無い!」

「俺もシンクロ召喚の頂点の竜を持っている筈だ、けれど俺、んなもん知らねぇぞ!」

「僕もだよ!僕は融合召喚の頂点の竜を持っている筈だけど、そんな物は持っていないし知らない!」

 

それに待ったをかけたのは、他次元の『俺』3人。

その頂点の竜の存在に見当がついた面子は「何言っているんだコイツ」と言いたげな、怪訝な視線を3人に向けているが、3人共に嘘はついていない(・・・・・・・・)

何故なら、

 

「知らなくて当然だ。お前達を覆う様に巣食っていた『ズァークとしての意志』、それを目覚めさせるきっかけとなるであろう頂点の竜の記憶、それを頂点の竜のカードごと、俺が呑み込んで消化したからな。知らなくて、持っていなくて当然だ」

「ゑ?」

 

ズァークに関する事は全て俺が請負、既に解決しちゃったからな。

 

「まあそれは一先ず置いて、赤馬零王は長い年月を経て今、俺達の次元へとやって来て、『俺』達と『柚子』達も、今この時に転生を果たした。其処には何かしらの干渉らしきものがあった様だが、まあ今話す事では無いな。此処から先は今までの話を踏まえた、俺の推測だ。零児、赤馬零王が残したファイルに『アークエリア・プロジェクト』と『リバイバル・ゼロ』なる計画の概要的な物があったでしょう?」

「ああ。確かあれには4つの次元に其々存在する『君』達と『柚子』達がそのキーパーソンに挙げられていたが…まさか?」

「ええ、そのまさかです。赤馬零王がアカデミアに属する大量のデュエル戦士を各次元へ送り、侵略を行わせつつ、各次元の『柚子』達をアカデミアに集めていたのは、4つに分断された各次元を再び1つに戻すアークエリア・プロジェクト、そして4人に分かれたレイを再び1人の人間として蘇らせるリバイバル・ゼロ、その実現の為なんだ」

 

そして俺の口から出て来た、アカデミアによる侵略の真相を聞き、言葉を失う皆。

その心中で渦巻いているのは果たして、実は世界を元に戻したいという大義の為に動いていた赤馬零王に対する複雑な想いか、どんな理由であれ各次元への侵略を行った事に関する怒りの再燃か、その原因となったズァークに対する憎悪か、或いは…

と、その時、

 

「な、何これ!?」

「ブレスレットが!?」

「光を放って…!?」

「一体何が起こって…!?」

 

柚子、セレナ、リン、瑠璃…

4人の『柚子』達が身に着けていたブレスレットが突如光を放ち出した。

そういえば其々が着けているブレスレットは、あの回想でズァークを封印したレイが発動した4枚の魔法カードが変化して出来たブレスレットだった、となると…!

 

「遊矢、これは一体どういう事だ!?」

「一体全体、リン達に何が起こってるんだよ!?」

 

間違いない…!

 

「始まったんだ、リバイバル・ゼロが!」

『な!?』

「さっき話した通り、レイがズァークを封印した際に今の『柚子』達4人に分かれたが、その直前、4枚の魔法カードの力が其々をモチーフとしたブレスレットとなり、レイの腕に身に着けられたんだ。そしてそれが今の『柚子』達にも受け継がれている…

つまりあのブレスレットには4枚の魔法カードの力が、ズァークの復活を阻止するための力が宿っているんだ。だがさっき言った様に俺がズァークを呑み込んだ事で、ズァークは『完全なる死』を遂げた。ならもう魔法カードの役目は、その力を受け継いだ『柚子』達の役目はもう終わったという事だ…

ズァークの復活阻止という役目が終わった以上、魔法カードは、ブレスレットは、『柚子』達は…!」

 

必要ない、という事になる…!

 

「何を呑気に説明してんだよ!?レイだかズァークだか、リバイバル・ゼロだか何だか、難しい事はしらねぇけど、俺にとっちゃリンこそが俺にとっての大事な存在なんだよ!何とかしろや!」

「瑠璃が昔どんな存在だったか等どうだって良い!俺にとっては今の瑠璃こそが大事な妹なんだ!また再び一緒になれたのに、それを誰かの勝手で引き裂かれてたまるか!何とかならないのか!?」

 

余りの事態に激昂し、俺に詰め寄るユーゴと隼。

ああ、その気持ちはよく分かる…!

 

「俺だって同じ想いだ!俺が嘗てどんな存在だったか、柚子がどんな存在だったか、それを加味したとしても、俺にとって柚子は大事な恋人なんだ!ずっと一緒にいたい、失いたくない気持ちはお前達と一緒だし、失わせはしない!下がって見ていろ、俺が何とかして見せる!」

 

そう言い放ち、ブレスレットから更なる光を発した状態の4人に近づき、

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

覇王の、いや、ズァークをも取り込んだ今の俺の『力』を解放した…!


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