【完結】遊戯王ARC-V~遊の力を矢に束ね~ 作:不知火新夜
125話_思わぬ待ち人
「此処が、融合次元か。何て言うか、ヨーロッパの街並みってイメージそのまんまな風景だな」
「確かにそうだな。融合次元へと来たのは3年ぶりだが、余り大きな変化は見られない。と言ってもその時に私が飛ばされたのはアカデミアで、周りの風景を見る余裕はそれ程無かったが…」
月影からの報告を受けた翌日、俺は融合次元へと転送、市街地に足を踏み入れていた。
4つの次元全体が関わるデュエルアカデミアの侵略、それを阻止する為に各次元を飛び回った俺達ランサーズの活動の締めくくりとなる、アカデミアのトップで零児の父である赤馬零王との直談判の為に。
その為に今回連れてきたメンバーは零児と、
「此処が、融合次元…
何処か、殺伐とした雰囲気がするわね…」
「ふむ、何処か古風な佇まいだ。これで殺伐とした雰囲気を醸し出していなければ完璧だが…」
「何の考えを巡らしているんだよお前は」
「何つーか、物々しいって言うのかな、そんな感じだぜ…」
「正に軍事都市か、風情って価値観がねェのかァ…?」
柚子達ARC-Vメンバー、
「しかし遊矢、私や柚子が此処に来ても大丈夫なのか?増してやアイツらまで…」
「兄様が了解しているなら、大丈夫だと思う」
V-CRANからセレナと零羅、
「痛い痛い痛い痛いギブギブギブギブ!腕ひしぎは痛いからやめて!」
「だったら次は吊り天井じゃぁぁぁ!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「…何時までプロレス技をソイツに掛けているんだ、ユーゴ。此処から先はふざけていられないぞ」
そしてつい最近発見された『異次元の俺』ことユートとユーゴ、ユーリ。
まあユーゴがユーリにプロレス技を掛けているのは何時もの事だ、流そう(此処に転送されるまではユートも一緒になって掛けていたが、流石に此処では真面目にしていた)。
と、其処へ、
「方々、遠路はるばるお疲れ申し上げるでござる」
「月影こそ、今日までのアカデミアでの潜入任務、ご苦労だった。お前達の活躍が、事態を此処まで導いたと言っても過言じゃない。ありがとう」
「勿体無きお言葉にござる。一度引き受けた任務は命を賭けて完遂する、我ら風魔の掟に則った迄」
報告を入れてくれた月影本人が、迎えとしてやって来た。
昨日はその月影の報告の詳細が気になって、イマイチ眠れた気がしないんだよな…
『もしもし、俺だ』
『月影にござる、遊矢隊長。今しがた、リン殿、黒咲瑠璃殿を保護しまして候』
『そうか、そっちも順調の様だな。こっちもエクシーズに派遣されていたアカデミア軍の無力化に成功した所だ』
『左様でござったか、迅速な任務遂行、お疲れ申し上げる。今両名の身柄は、現地における味方となりうる方に移しまして候。
隊長殿達にとって縁のある方々でござる』
『なんだって、それは本当なのか?分かった、皆にも伝えて置く…』
『それとセルゲイ殿が提案していた人質解放の件、滞りなく遂行し、今第4部隊の一部メンバーが他次元への帰還を指揮しておられる所にござる。半日あれば完遂できるでござ候』
『了解だ、後は俺達が向かうだけか。さっきの件からして、少し寄り道するべきだな…』
『承知。では拙者が出迎えに』
『連絡は以上か?分かった、じゃあまた後で会おう』
という、リンと瑠璃を救出した事の報告においてやり取りがあったんだが、俺達に縁のある『方々』?
方々って事は複数人だよな、1人だけは予想が付くんだけど、後は見当も付かないな、一体誰だ…?
「さて、色々と気になっておられる様子、今リン殿と瑠璃殿が居られる場へと案内するでござる。ささ、此方へ」
と、そんな様子を察知した月影の先導で俺達は案内され、
「此方がリン殿、瑠璃殿、そしてこの次元での協力者が居られる場所でござる」
何やら小高い丘の上に聳え立つ岩山、にカモフラージュしたレンガ造りの建物へと連れていかれた。
俺の予想通りなら、此処は…!
「此処はマージョリー殿の様にデュエルアカデミアの方針に反感を抱き、アカデミアから脱出した方々が本拠とする場所…
方々のデュエルスクール、人呼んで『遊勝塾』にござる」
「ゆ、遊勝塾!?」
「な、何と!?この融合次元の地に、遊勝塾が!?」
「ウソダドンドコドーン!」
「何だって!?それは本当なのか一行!?」
「何で俺に振るンだ当麻ァ!」
ああ、やっぱしか。
月影から打ち明けられたその真実に、うすうす感づいていた俺と零児、父さんとは、遊勝塾とは余り関係の無いセレナ達は大して驚かなかった一方、遊勝塾関係者であ5人、というかARC-Vメンバー全員は驚愕に満ち溢れていた、というか当麻、びっくりする気持ちはわからんでも無いが一行に振るなや。
…まあそんな関係ない所でのツッコミは後にして、だ。
報告の時に仄めかす様な月影の発言でもしかしたらと思ってはいたが、まさか父さんがこの融合次元に来ていたとはな、もしかしたらエクシーズ次元に来て少し経った時、行方不明になったタイミングで融合次元へと転送されたのかな。
と予想が当たっていた事で思わず油断した為か、月影が報告の際に言っていた事を一部忘れていた。
「此方にリン殿、瑠璃殿、そして此処の代表の方が居られるでござる」
月影に案内されたとある部屋で、
「久しぶり、十代!」
「遊星!会いたかった、ずっと、会いたかった…!」
「お帰り、遊馬!」
俺は、嘗て一生を共にした3人の声を、姿を、感じ取ったんだ。
そして抱き付いて来たっぽい3人らしき存在による衝撃が身体に、って、
「あ、明日香に、アキに、小鳥!?」
「ええ、私よ、明日香よ、十代!あ、今は遊矢、だったわね」
「そうよ、アキよ、遊星!」
「うん!小鳥よ、遊馬!」
「え、え、明日香さん達が、この遊勝塾に…?
これって、いつぞやの夢の続き…?」
『わ、わーお…
まさか3人も、転生して来たクチ?』
夢でも、幻でも無かった。
俺の眼の前には、俺の前世での恋人達、天上院明日香、十六夜アキ、観月小鳥、3人の、見間違える筈も無い姿が、俺との再会に感激していると言わんばかりの泣き笑い顔があった。