【完結】遊戯王ARC-V~遊の力を矢に束ね~   作:不知火新夜

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116話_無双乱舞という名のフルボッコ

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「プロフェッサー、緊急事態です!他次元でカード化した人間の収容施設が何者かによって破壊され、収容者が次々と脱走しております!これにランサーズ、及び裏切り者が噛んでいる模様!救援を送り、脱走の阻止を図っておりますが効果なく、むしろ救援に送ったデュエル戦士からも裏切る者が現れております!」

「な、何だと!?」

 

セルゲイと遊香がアカデミアに突入を開始して数分が経過した頃、その内部は文字通り蜂を突いた様な騒ぎとなり、とある一室で待機していた零王はその報告に愕然とした様子を見せた。

他次元でカード化し、アカデミアへと転送・収容させた人々は、零王が掲げる『アークエリア・プロジェクト』において要である柚子達程では無いにしても重要な存在、故に収容施設は中央部の地下深い所に頑丈な設計で建てられ、警備にも万全を期していた筈だったにも関わらず、突如としてその頑丈な施設が壊され、万全だった筈の警備があっさりと破られ、阻止も全く以て功を奏さない。

今まで順調すぎる位に順調に進んでいた、アークエリア・プロジェクトをベースとした各次元への侵略、だがシンクロ次元での惨敗という1つの失敗を機に、アカデミア軍の勢いは急転直下と言える程に後退、今は逆に、ランサーズに追い詰められる事態にまで陥っていた。

こうなればもう手段を選んでいる状況ではない。

 

「各地に配備されているデュエル戦士に、収容施設からの脱走者の確保に向かわせろ!いち早く被害を食い止めるのだ!ドクトル率いる研究班が有するパラサイトモンスターも解放して構わん!直ぐにその様に連絡せよ!今はなりふり構っている状況ではない!」

「はっ!」

 

報告に来たデュエル戦士にそう声を荒げて指示を出した零王、その口調も、指示の内容も、普段の彼であれば下さない様な物ばかり、どれだけ追い込まれているかを物語っていた。

 

「お、おのれ…!

おのれ榊遊矢ぁぁぁぁぁぁ!何処まで世界を破壊する積りか、貴様は!?」

 

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「こっちだ、急げ!アカデミアの追手が迫っているぞ!」

「ここまで来ればもう大丈夫よ。後は向こうの次元でランサーズメンバーが待っているから」

 

その収容者の脱走を主導しているのがセルゲイと遊香、まずセルゲイの指示を受けた、収容者に紛れ込んでいる洗脳兵士に指示を飛ばして内部から収容施設を破壊し、同時に遊香が外部から脱出経路を強引に作り出す事でルートを確保、其処からセルゲイと洗脳兵士達が脱走を先導、或いは阻止に動くデュエル戦士達を妨害したりナノマシンを感染させて洗脳を施して同じく脱走の先導等に当たらせたりし、一方の遊香は周辺の物体を破壊して阻止に動くデュエル戦士達の進路を妨害していた。

2人及びセルゲイの操り人形と化したデュエル戦士達の奔走も相まって、収容者の脱走は順調に進んでいた中、

 

「微小な生体反応…

紫雲院素良の脳に仕込まれていた虫と酷似した反応だ、やはりアカデミアで作られていた物だったか…

あんな美しさの欠片も無いゴミクズを未だに使って来るとは、見苦しいにも、醜いにも程がある…!

ハァッ!」

 

そんな最中、何かしらの反応を感じ取ったセルゲイは何処か憤慨した様子を露わにしながら、左腕から何本もの触手を放ち、それらを飛来する中で枝分かれさせ、何かを貫くかの様な音が次々と発せられた。

そして、

 

「貴様らアカデミアの、美しさの欠片も無い連中に教えてやろう…!

洗脳とは虫に丸投げして相手を仕込む事ではない、己が意志で相手を仕込む事だ!」

「ぐぅ!?あが、がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

何か生物を放つかのような挙動を見せていた研究者みたいな風貌の男に触手を突き立てたかと思えば、それを通じてその男にナノマシンを感染させ、洗脳を施し始めた。

そして、

 

「セルゲイ様、なんなりとお申し付け下さいませ」

「よし、ならば収容されていた連中の脱走を先導しろ。貴様の働きに期待しているぞ…!」

「はっ!では行ってまいります!」

 

例によってその男の洗脳は何の障害も無く終結し、セルゲイの指示通り収容者の脱走を先導する任に付いて行った。

 

「我は今、技術の極致に至った!見ろ!この貴様らより何光年も先を行く崇高なテクノロジーを結集した、美しきフォルムを!シンクロ次元の、榊遊矢の技術力はァァァァァァ、世界一ィィィィィィ!」

 

一方で洗脳を終え、放っていた触手を全て引き戻したセルゲイは突如、羽織っていた上着を投げ捨て、自らの身体を『合成生体仕様素体』に組み替えた遊矢を称えるかの様に雄叫びを上げると、その身体へと青白く光る電気の奔流が殺到、セルゲイへと流れ込んだ。

 

「オォォォォ!来る、流れて来るぞ、俺を目覚めさせる息吹が!第2ラウンドの始まりだァァァァ!」

 

それを一身に浴びるセルゲイ、生身の人間であれば感電によって死して尚黒く焦げて行く所ではあるが、身体がナノマシンで出来たサイボーグであるセルゲイにとって電気はエネルギー源、大量のそれが流れ込んで来るとなればむしろ身体能力を100%近くまで引き上げられる燃料を得たのと同義、セルゲイもそれを認識しているのか、歓喜の雄叫びを上げていた。

一方、電気の奔流の発生元をたどると、全てアカデミアの施設や、脱走の阻止に当たっているデュエル戦士達が身に着けているデュエルディスク等からであり、

 

「な、なんだ!?デュエルディスクが急に動かなくなったぞ!?」

「あ、あれ!?リアルソリッドビジョンが、急に消えただと!?」

 

電気をセルゲイによって根こそぎ吸収された事で、まずデュエルディスクはその機能を停止させ、脱走阻止の為に呼び出したリアルソリッドビジョン製のモンスター達がその姿を消失してしまい、阻止の手段がリアルファイトのみになってしまった。

 

------------

 

「ば、馬鹿な、こんな筈では!この崇高なる脳を持った私が開発したパラサイトモンスターが、こうも簡単に破られるとは(ブツン!)な、何が起こった!?」

「も、申し上げます!各施設にて次々と停電が発生!どうやらランサーズのメンバーが電気を吸収している模様で、収容者の脱走阻止に当たっているデュエル戦士達のデュエルディスクにも被害が発生、任務続行が不可能な状態に陥っている模様です!」

「な、何と!?電源供給体制に不備は無かった筈!?」

 

そして零王達が待機していた一室でもそれによる混乱の余波を受ける形となり、監視カメラもその映像を確認する為のモニターも、そして室内を照らす為の照明すらも沈黙した中で外での混乱が報告されていた。

その様子に、研究班を率いる科学者で、零王からの緊急の呼び出しでこの部屋へと来ていたドクトルは信じられないと言わんばかりに狼狽していた。

一方の零王は、余りにも想定外な展開が発生し過ぎてしまった事から却って落ち着いた様な、というか何に対しても投げやりといった様な、そんな様子で、

 

「君が危険思想を持った役立たずという事が分かったのが収穫か…

ドクトル、後で君の処罰を検討させて貰おう。連れて行け」

「お、お待ちくださいプロフェッサー「早く連れて行け!」「は、ははっ!」お、お待ちを!」

 

ドクトルへの処罰を独断で決定、その場にいたデュエル戦士に連行を通達した。

 

「まだだ、まだ私の元には『ピース』が残っている。あの2人がいる限り、私の計画は滞りなく進められる。警備にはホルアクティ・フォース達を就かせている以上、あの2人を連れ出すのは不可能だ…!」

 

------------

 

「よし、この辺りで充分か。隊長、今は大丈夫か?」

『問題ないでござる。セルゲイ殿、そちらの状況はどうでござるか?』

「順調に過ぎる位に順調だ。そろそろ塔の警備も手薄になっている筈、突入するなら今だ」

『承知!では方々、参ろうぞ!』

『了解!』

 

各地の混乱の原因となっているセルゲイの電気吸収、当のセルゲイ本人は、収容者の脱走に一定のメドが付いた事から日影と連絡を取り、彼らに突入のGOサインを出した。

 

「平井遊香。今から隊長達がリン、黒咲瑠璃両名の救出の為に、あの2つの塔へと向かう。貴様は西側の塔に向かい、隊長達に同行しろ。俺は収容者の脱走がひと段落したら東側へ向かう事にする」

「分かったわ」

「それとだ。先程、紫雲院素良にも仕込まれていた寄生虫と同じ生体反応をキャッチした。ソイツ等は俺が潰しておいたが、恐らくは両名にも仕込まれているだろう。その事、隊長達に伝えて来い」

「分かっているわ、2人の身柄に関わる一件だもの」

 

そしてセルゲイ達も、2人の救出任務に向けての打ち合わせを行い、まずは遊香が西側の塔へと向かって行き、

 

「さて、そろそろ良いだろう…!

待っていろ、ホルアクティ・フォース!」

 

少し経ってからセルゲイも、東側の塔へと向かって行った…!


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