【完結】遊戯王ARC-V~遊の力を矢に束ね~   作:不知火新夜

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当初の予定を変更し、今日より連載を再開します!
尚、この8章Aパート時点での禁止制限は2016年7月の物となります。


8章・A『其々の道。シンクロ次元に残った零児達』
101話_復活!ライディングデュエル


Side 零児

 

「それでは、『スピード・ワールド―ReACT』のテストを開始する。クロウ、フィールド魔法の発動を頼む」

『分かったぜ、零児!フィールド魔法『スピード・ワールド―ReACT』発動!』

 

スピード・ワールド―ReACT(オリジナルカード)

フィールド魔法

このカードはフィールドを離れない。

1:このカードがフィールドゾーンに存在する限り、アクションカードを使用出来る。アクションカードは1枚しか手札に加える事が出来ない。

2:お互いのスタンバイフェイズ時に発動する。フィールドゾーンのこのカードの上にスピードカウンターを1つ置く(最大12個まで)。

3:自分フィールドゾーンのこのカードの上に乗っているスピードカウンターを任意の数取り除いて発動出来る。取り除いたスピードカウンターの数によって、以下の効果を適用する。

●4個:自分の手札の『Sp(スピードスペル)』を任意の数、相手に見せ、その枚数×800ポイントのダメージを相手ライフに与える。

●7個:自分のデッキの上からカードを1枚ドローする。

●10個:フィールド上に存在するカードを1枚破壊する。

 

遊矢達が今後の作戦の為、このシンクロ次元から旅立ってから幾日か、残った私とV-CRANのメンバーは、シティに紛れているかも知れないアカデミア軍敗残兵の捜索、近いうちに開設されるLDSの系列校の準備等に当たっていて、今はその一環として新型アクションフィールドのテストを行っている。

『遊戯王5D’sの世界』での遊矢の前世である不動遊星や、ジャック・アトラス達の記憶に根付いている『ライディングデュエルのあるべき姿』にアクションデュエルの要素を加えて作られたこのスピード・ワールド―ReACT、『単にバイクに乗ってデュエルするだけ』と彼らが語っていたシンクロ次元のそれとは違い、スピードカウンター及び専用魔法カテゴリ『Sp』の存在によってバイクに乗るからこその戦略が存在するこのライディングデュエル、それを蘇らせたいという彼らの想いと技術が生み出した、何も事情を知らない人からはこれぞ『才能と熱意の無駄遣い』と突っ込まれそうな代物だが、そのルールを聞けば普通のデュエルやアクションデュエルのそれとはまた違う、戦略の奥深さを感じられる。

尚『遊戯王5D’sの世界』でのそれは更に、Spでは無い魔法カードをプレイする(発動では無くプレイ、よってセットするだけでも適用される)と2000ものセルフバーンを喰らうという無茶苦茶な(それでいて幾らでも悪用できそうな)物だったり、肝心のSpが既存の魔法カードの劣化版ばかりだったり通常魔法しか無かったりといった物だったそうだが、流石にそれはデュエルモンスターズに対する冒とくではないかという事で、この様な形に落ち着いた。

まあその様な裏話は此処までにして、今日は遊矢達が慣れ親しんで来たライディングデュエルと、今の我らが親しんでいるアクションデュエル、2つが合わさったそれを一足先に味あわせて貰うとしよう。

 

「それではテストデュエルを始める。月行、宜しく頼む」

「はい。宜しくお願いします、零児隊長!」

「「『ライディングデュエル・アクセラレーション!』」」

 

先攻 Reiji LP 4000 VS 後攻 Gekkou LP 4000

 

先攻は私か。

 

「私のターン」

 

Reiji

スピード・ワールド―ReACT スピードカウンター 0→1

Gekkou

スピード・ワールド―ReACT スピードカウンター 0→1

 

よし、此処はこうするか。

 

「まずは永続魔法『地獄門の契約書』発動」

 

地獄門の契約書

永続魔法

『地獄門の契約書』の1の効果は1ターンに1度しか使用出来ない。

1:自分メインフェイズに発動出来る。デッキから『DD』モンスター1体を手札に加える。

2:自分スタンバイフェイズに発動する。自分は1000ダメージを受ける。

 

「今発動した地獄門の契約書の効果発動。

デッキから『DDスワラル・スライム』を手札に加え、そのまま発動。

このカードと手札の『DDD反骨王レオニダス』を融合。絶望的な状況にも全力で立ち向かう反骨の王よ。自在に形を変える神秘の渦に融け込み、真の王と生まれ変わらん!融合召喚!出でよ、神の威光伝えし王!『DDD神託王ダルク』!」

 

DDD神託王ダルク

融合・効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 7

攻撃力 2800

 

最初に発動したこのデッキに置けるサーチエンジンである地獄門の契約書、それによってサーチしたスワラル・スライムの効果でレオニダスをも用いて融合召喚したのは、嘗てフランスとイギリスとの間で起こった百年戦争で活躍した聖女ジャンヌ・ダルクをベースとしたモンスター、ダルク。

先程さらっと言った、スピード・ワールドが持つデメリットの悪用手段、その1つとして思い浮かんだのがこのダルクだ。

予めスワラル・スライムの効果でダルクを出してから何時も通りの動きを行う事で、大量のライフアドバンテージを得る、そんな手段が容易に想像ついてしまった事もあって、その再現はされなかった。

幾らライフアドバンテージが其処まで重視すべきものでは無いとはいえ、たった1枚のカードから6000ものライフゲインがされたらやり過ぎだと思う。

 

「次に融合素材として墓地へ送られたスワラル・スライムを除外して効果発動。

手札からDDDモンスターを特殊召喚する!現れ出でよ、神々の黄昏に審判を下す最高神!『DDD壊薙王アビス・ラグナロク』!」

 

DDD壊薙王アビス・ラグナロク

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 8

守備力 3000

 

その融合を行ったスワラル・スライムを除外して呼び出したのは、神々の黄昏(ラグナロク)の名を冠したモンスター、アビス・ラグナロク。

 

「特殊召喚したアビス・ラグナロクの効果発動。

墓地のDDDモンスターを蘇生する!現れ出でよ、絶望的な状況にも全力で立ち向かう反骨の王!『DDD反骨王レオニダス』!」

 

DDD反骨王レオニダス

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 7

攻撃力 2600

 

その効果によって蘇生したレオニダス、そういえば遊矢がサムと名乗るドアボーイから『調律の魔術師』というチューナーモンスターを貰ったそうだが、その効果を使えば面倒な動きなしでこのレオニダスを展開出来、尚且つ其処から『DDD呪血王サイフリート』をシンクロ召喚出来るな、今度遊矢に頼んでそのカードを解析してみるか。

 

「続いて手札の『DDネクロ・スライム』を墓地へ送って魔法『ワン・フォー・ワン』発動」

 

ワン・フォー・ワン(制限カード)

通常魔法

1:手札からモンスター1体を墓地へ送って発動出来る。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 

「ワン・フォー・ワンの効果で、デッキから『DDラミア』を守備表示で特殊召喚」

 

DDラミア

効果モンスター/チューナー

闇属性

悪魔族

レベル 1

守備力 1900

 

それは兎も角、私の展開はまだ終わらない。

 

「私はレベル7のダルクに、レベル1のラミアをチューニング。その紅に染められし剣を掲げ、英雄たちの屍を越えて行け!シンクロ召喚!生誕せよ、レベル8!『DDD呪血王サイフリート』!」

 

DDD呪血王サイフリート

シンクロ・効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 8

攻撃力 2800

 

そのサイフリートを、今言った物とは別のパターンで呼び出す。

サイフリート、読者には『ジークフリート』と言った方がなじみ深いだろうか?

 

「まだまだ行くぞ。墓地の『DDネクロ・スライム』の効果発動。

このカードとたった今シンクロ素材としたダルクを除外して融合。神の威光伝えし王よ、亡者の魂をも取り込む神秘の渦に融け込み、竜をも倒す勇者となれ!融合召喚!生誕せよ、レベル8!『DDD剋竜王ベオウルフ』!」

 

DDD剋竜王ベオウルフ

融合・効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 8

攻撃力 3000

 

更に登場したのは、サイフリートと同じく英雄叙事詩に登場する英雄の名を冠したモンスター、ベオウルフ。

ウルフという名の通り人狼みたいな姿だが、実の所は狼との関係は無いらしい。

 

「此処では終わらない。フィールドに存在する地獄門の契約書を墓地へ送ってラミアの効果発動。

このカードを守備表示で蘇生する。

私はレベル7のレオニダスにレベル1のラミアをチューニング。シンクロ召喚!並び立て、サイフリート!

そして私は、サイフリートとベオウルフでオーバーレイ。2体のレベル8・DDモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築。2つの太陽が昇る時、新たな世界の地平が開かれる!エクシーズ召喚!現れ出でよ、ランク8!『DDD双暁王カリ・ユガ』!」

 

DDD双暁王カリ・ユガ

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

悪魔族

ランク 8

攻撃力 3500

ORU 2

 

そしてそのベオウルフと、2体になったサイフリートの片方をエクシーズ素材に、遊矢との第2戦でも世話になったカリ・ユガを出す。

と言っても今の状況下ではカリ・ユガの1の効果は殆ど役に立たないが、コイツの効果はそれだけじゃない、それより今は他の効果の方が重要で、特に2の効果はフリーチェーンと化した『大嵐』、これで月行が魔法・罠カードを大量にセットしようとエンドサイクの要領で除去出来る。

『魔宮の賄賂』に近い効果を持ったサイフリートが居る事も踏まえれば正に万全に近い布陣、そんな私のフィールドを見ながら、ふとエクシーズ次元へと潜入した遊矢の事を思い出した。

遊矢の事を知ったのは、彼の父、いや『榊遊矢』としての彼の父である榊遊勝からその存在を聞いた時だろうか、「まだまだ子供なのにデュエルがジジ臭いというかえげつないというか…一体何処でそんなデュエルを覚えたのか」と苦笑いしながら語っていたのを今でも思い出す。

今となればそれは前世での悲惨な境遇から身に付けざるを得なかったが故と分かるが、確かに舞網チャンピオンシップに出ていた彼のデュエルは、彼が『完全決闘』と名付けたそのデュエルは、少なくとも小学生がやったとは思えない程えげつなかった。

手札1枚を『神罰』に変える『神光の宣告者』と生きた『虚無空間』の代表格である『大天使クリスティア』、そして除外を防ぐ事で『ブレイクスルー・スキル』や『スキル・プリズナー』を無力化させる『王宮の鉄壁』という3点セットで相手にほぼ何もさせないそのデュエルで、連勝に次ぐ連勝、それは昨年、ジュニアユースクラスに昇格して初めて参戦してからも変わらず、榊遊勝が失踪して直後に張られていた『臆病者の息子』というレッテルは何時の間にか『完全決闘者』という異名に変わり、畏怖される存在となった(まあ観客の、民度の低いバッシングに対して悪役感丸出しな態度でこき下ろしたのもあっただろうが)。

その圧倒的な強さゆえに私も、当時はまだ構想段階だったランサーズのメンバー候補としてチェックしてはいたが、如何せんその時の彼、いや彼ら『遊勝塾』の塾生達が異世界の召喚方法を使っていたとは思わず(後になって聞いたら『覇王の力』で召喚エネルギーを掻き消していたらしい)、あくまで『メンバー候補』として頭の片隅に置いていただけだった。

その認識が変わったのは間違い無く、ストロング石島とのデュエルで披露したペンデュラム召喚を始めとした未知の召喚方法の数々、そして遊勝塾及び交流があった権現坂道場から相次いで感知された異世界の召喚方法に関する反応だろう、それによって頭の片隅に置くだけだった私の、遊矢への興味は一気に跳ね上がり、近々彼と接触する機会を設けようと決意した。

その矢先に私の側近である中島が、沢渡を使って遊矢からペンデュラムモンスターを強奪しようとしたという報告と、その時のデュエルで大恥をかかされたらしい沢渡が闇討ちを企てているという噂を聞き、更にその折にエクシーズ次元から来たユートによって沢渡が襲撃されたと聞いた時には驚きを禁じ得なかったが、逆にこれを好機と見て、母さん達と共に沢渡への襲撃の件に関する抗議の名目で遊勝塾に出向いた。

まあそれに対する遊矢の入念な根回しに基づく交渉術と、遊勝塾生の並外れたデュエルタクティクスの前に少なくない罰金を払わせられはしたが、今この状況になった事を踏まえればそれもまた必要経費だ、そう、彼が私の想像を遥かに超える程の存在であることを知り、彼との仲が深まり、そして彼こそ榊遊勝に代わるランサーズの最高指揮官に相応しいと判断し、結果として今その席に就き、その剛腕を振るうに至った事を踏まえれば。

その振るった剛腕が、確実に物議をかもすであろう事は明白ではあるが。

このシティにおけるスターであるジャックとのデュエルを利用したプロパガンダや治安維持局長官であるロジェを洗脳するのはまだ可愛い方、フォースハウンドをアカデミア本拠地に潜入させてのゲリラ活動、挙げ句には先日のアカデミアからの侵略に対して『アンドバリの指輪』作戦を考案・実行し、アカデミアの部隊に大打撃を与えるという暴挙にまで及んだ。

だが私がもし遊矢の立場であり、遊矢と同じ様な力があれば、私もそれを考え、実行したであろう、現に私はアンドバリの指輪作戦に賛成だった。

このシンクロ次元に潜入する前、遊矢に3年前の榊遊勝が失踪した件の真相、4つの次元の事やアカデミアによる侵略の事を聞いた榊遊勝が赤馬零王に直談判する為にLDSの次元転送装置を無断で利用して他次元へと飛んだという話を私がした時に返した「父さんは蛮勇、むしろ少しばかり臆病になるべきだった。戦力も士気も理念への想いも十分な相手に直談判しようとしてそれが出来る筈も無いし、仮に出来た所で考えを改める訳が無い」という言葉も分かる、私も似た様な考えだから。

それに遊矢とて出来るならば榊遊勝が行った様に直談判での決着を付けたいと考えているそうで、「『対話と圧力』、交渉における常識です。俺が仕掛けた策は全てその『圧力』に過ぎません。そう、赤馬零王達アカデミアの連中を交渉の場に引きずり出す為の『圧力』です」と言っていた。

その圧力が強過ぎる感は否めないが、それでも状況は見事に、遊矢の思惑に沿った形で動いている、ランサーズメンバーの皆は勿論の事、このシンクロ次元の民衆から(一部はそのどす黒い闇を知って尚)慕われている事も含め、やはり彼を最高指揮官に任じて正解だった。

 

私は、私自身を含め皆が皆遊矢を慕うのは、300年もの間何度もその人生を繰り返し続けた事で身に付いた遊矢の人となりにあると考えている。

優しさに満ち溢れながらも冷酷非道、熱血漢ながら滅多な事では動じない、犯罪者であろうと受け入れる度量を持ちながらも戦いの際敵には一切の容赦がない、無駄のないデュエルタクティクスながらデッキはどれも本人曰く『ファンデッキ』寄り…

ざっと上げただけでも、遊矢が如何に沢山の『矛盾』を抱えているかが分かるだろうが、そのどれもが遊矢の偽らざる本性、彼の心中ほど『混沌(カオス)』という言葉が似合う存在はいないだろう。

その深い深い混沌故、中にはそれを胡散臭いと感じ取って距離を取ろうとする存在も出て来るだろう(実際、この前再び並行世界から我らの元に現れた火野海音の仲間はそう感じ取っていたそうだ)が、大抵はその深みに惹かれ、その中心部で強烈な光を発するデュエルモンスターズへの熱意の眩しさに心奪われていく。

それ故に遊矢の周りには人が集まり、彼と同じ道を歩みたいと慕う者が増えて行くのだろう、これまでも、そしてこれからも。

彼の5%余りしか生きていない私に身に付いている筈も無いその混沌、その中で尚光を失わないデュエルモンスターズへの情熱、それが榊遊矢という男を形作っていると、そのカリスマ性の土台となっていると私は思っている。

彼の背中は、近いようで余りにも遠いな…

 

「私はこれでターンエンドだ」

 

Reiji

LP 4000

手札 0

モンスター DDD壊薙王アビス・ラグナロク(守備表示)

DDD呪血王サイフリート(攻撃表示)

      DDD双暁王カリ・ユガ(攻撃表示)

魔法・罠カード なし


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