【完結】遊戯王ARC-V~遊の力を矢に束ね~   作:不知火新夜

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12話_延長戦、決着?

何だろう、今からやる零児とのデュエル、すげーわくわくする。

柚子達遊勝塾生や権現坂とのデュエルとは違う、このわくわく感、ひょっとしたら零児こそが、俺が求めていた『ライバル』に、十代時代のカイザー、遊星時代のジャック、遊馬時代のカイトと同等の存在となり得るのかも知れない。

さあ行くぜ零児、俺を満足させてくれよ!

 

「戦いの殿堂に集いしデュエリストが」

「モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!」

「フィールド内を駆け巡る」

「見よ、これぞデュエルの最強進化系!」

「「アクショーン、デュエル!」」

 

先攻 Reizi LP 4000 VS 後攻 Yuya LP 4000

 

「私の先攻か。

まずは永続魔法『地獄門の契約書』を発動」

 

地獄門の契約書

永続魔法

『地獄門の契約書』の1の効果は1ターンに1度しか使用出来ない。

1:自分メインフェイズに発動出来る。デッキから『DD』モンスター1体を手札に加える。

2:自分スタンバイフェイズに発動する。自分は1000ダメージを受ける。

 

契約書って事は、零児のデッキはDDか。

永続魔法・永続罠である各種契約書を使ってアドバンテージを稼ぎ、テムジンアレクサンダーで大量蘇生を狙ったりするのが特徴的なDDデッキ。

嵌ればソリティアに発展する一方、生命線となる契約書はどれも永続魔法・永続罠だからサイクロンとかに滅法弱いし、放置していてもスタンバイフェイズにセルフバーンを喰らうんだよな。

無論、ダルク等の踏み倒し手段はあるんだけど。

観客席からも『1000ポイントも自分でダメージを受けるなんて』という声や『永続魔法でのサーチとか有りかよ、維持したら爆アドじゃねぇか』という声、更に『サイクロンとか幽鬼うさぎぶちこめば損じゃね?』という声まで上がる。

 

「地獄門の契約書の効果発動。デッキから『DDナイト・ハウリング』を手札に加える」

 

そんな声を他所に零児が手札に加えたのは、DDナイト・ハウリング。

確かDDモンスター唯一のチューナーだったっけ?

それにしても演出がおどろおどろしいな、零児が地獄門の契約書を発動すると共に出現した、悪魔のレリーフで囲った門の入り口(紫色の空間になっている)からカードが出て来るとか。

 

「次に永続魔法『魔神王の契約書』を発動」

 

魔神王の契約書

永続魔法

『魔神王の契約書』の1の効果は1ターンに1度しか使用出来ない。

1:自分メインフェイズに発動出来る。自分の手札・フィールドから、悪魔族の融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。『DD』融合モンスターを融合召喚する場合、自分の墓地のモンスターを除外して融合素材とする事も出来る。

2:自分スタンバイフェイズに発動する。自分は1000ダメージを受ける。

 

続いて魔神王の契約書を発動すると、今度は融合素材代用モンスターとして名高い『沼地の魔神王』が石板を持って出現した。

持っている石板が契約書なのか?

そしてその効果だが、1ターンに1度且つ悪魔族限定とはいえ素材さえあればポンポンと融合モンスターを正規融合出来、しかもDD融合モンスターなら墓地にまで手が出せるとか爆アドにも程があると思うのは俺だけか?

 

「魔神王の契約書の効果で、手札の『DDケルベロス』と『DDリリス』を融合。

牙剥く地獄の番犬よ、闇夜に誘う妖婦よ!冥府に渦巻く光の中で、今一つとなりて新たな王を生み出さん!融合召喚、生誕せよ!『DDD烈火王テムジン』!」

 

DDD烈火王テムジン

融合・効果モンスター

炎属性

悪魔族

レベル 6

攻撃力 2000

 

出た、大量蘇生コンビの一角が。

石板製の契約書にくっついていた沼地の魔神王に、零児が手札2枚を取り込ませると、その身に大きな穴が空き(え、液体だから穴を作ったの方が正しい?そうだな)、其処から黒を基調とした鎧に身を包み、赤を基調とした剣と盾を装備した悪魔、テムジンが出現した。

ん?そういえばこの融合で素材としたモンスターの中に、俺の持っているペンデュラムモンスターの様な色合いのカードがあった様な…

 

「続いて『DDナイト・ハウリング』を召喚」

 

DDナイト・ハウリング

効果モンスター/チューナー

闇属性

悪魔族

レベル 3

攻撃力 300

 

次に登場したのは、狼を思わせる大顎と目だけという異様な姿の悪魔、ナイト・ハウリング。

 

「召喚したナイト・ハウリングの効果発動。

墓地の『DDリリス』を守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したリリスの攻守は0となり、破壊された場合、私は1000ダメージを受ける」

 

DDリリス

効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 4

守備力 2100→0

 

次に登場したのは、薔薇を思わせる鎧を身に纏った女性の上半身と、蛇にも植物の蔦にも見える下半身の悪魔、リリス。

 

「更に私は、レベル4のリリスに、レベル3のDDナイト・ハウリングでチューニング。闇を切り裂く咆哮よ、疾風の速さを得て新たな王の産声となれ!シンクロ召喚、生誕せよ!レベル7『DDD疾風王アレクサンダー』!」

 

DDD疾風王アレクサンダー

シンクロ・効果モンスター

風属性

悪魔族

レベル 7

攻撃力 2500

 

俺が言えた話じゃ無いが、大量蘇生コンビを揃えて来るとは、やっぱ凄いな。

シンクロ召喚の演出の後に出現したのは、青を基調とした服装に、緑のマントを羽織、レイピアに良く似た直刀を構える悪魔、アレクサンダー。

 

「私のフィールドにテムジン以外のDDモンスターが特殊召喚された事で、テムジンの効果発動。墓地のリリスを守備表示で特殊召喚する。

更に私のフィールドにアレクサンダー以外のDDモンスターが特殊召喚された事で、アレクサンダーの効果発動。墓地の『DDケルベロス』を攻撃表示で特殊召喚する」

 

DDケルベロス

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

悪魔族

レベル 4

攻撃力 1800

 

『恐ろしい物だな、テムジンとアレクサンダーのコンボは。1回特殊召喚するだけで、レベル4モンスターを2体揃えられ、しかもどちらかが立っているだけでコンボが成立するとは…!』

『本当にそうだね、アストラル。これでもしテムジンとアレクサンダーが共にレベル4だとしたら、ナイアルラアザトートで遊矢のSAN値がピンチだよ…!』

『ユベル、SAN値とは何だ?カウンターの一種か?』

『えーと、確かライフポイントの一種だったかな?』

『なんだと!?それは確かにピンチだ!』

 

おいユベルにアストラル、デュエル中にクトゥルフTRPGの話しない。

まあそれは兎も角、アストラルの言う通り、テムジンアレクサンダーの脅威が発揮された…!

零児の場にはテムジンの効果で登場したリリス、アレクサンダーの効果で登場した、三つ首の犬の上半身と、どう見ても人間にしか見えない下半身という異様な姿の悪魔、ケルベロス。

しかし、やはり見間違えじゃ無かったか、ケルベロスのカードフレームの色は。

 

「そのケルベロスのカードフレーム、もうペンデュラムカードを作り上げたのですか?」

『ぺ、ペンデュラムだって!?』

 

俺の質問に観客席の面々から驚きの声が上がる、主に遊勝塾サイドから。

そんなに驚く事か?確かに俺がペンデュラムモンスターを手にして披露した、ストロング石島戦からまだ一週間しか経っていないが。

 

「ああ、まだプロトタイプではあるが。しかし全然驚いていない様だな?」

「驚いていますよ、ヤケに早く導入したなぁ、とは」

「其処に驚くのか?」

 

あれ、俺なんか的外れな事でも言ったのか?

もしかしてあれか、俺しか持っていない筈のペンデュラムモンスターを零児が所持している事自体に驚いた、とでも思っていたのか?

 

「恐らく貴方が想像している俺は、自分しかペンデュラムモンスターを持っていないと、自分にしかペンデュラム召喚を扱えないと思っているのでしょうが、そいつはとんだロマンチストですね」

「ロマンチスト?」

「はい、己の空想通りに事が進むと思い込んだロマンチストです。ペンデュラムモンスターは、一週間前の俺とストロング石島とのデュエルで初めて存在が確認され、そしてその場で俺がペンデュラム召喚を披露しましたが、それから未だにデュエルディスクを用いて使用できますし、ペンデュラムスケールも存在しています。ならばペンデュラムモンスター、及びペンデュラム召喚はデュエルのルール上使用出来ると、公式で認められている物です。使って良いと言われたら使いたくなるのはデュエリストの真理、そんなカードを作りたくなるのはカードデザイナーの真理って物では無いですか?それを、自分にしか扱えないと思い込むのは傲慢ですし、俺にしか使えないから駄目だと口を出すのは横暴です、そんな奴はデュエリストの風上にも置けません。俺はあくまでペンデュラムモンスターを初めて手にし、ペンデュラム召喚を初めて披露した、ただそれだけの第一人者に過ぎません」

 

そんなアンフェアな事をして俺TUEEEE!とか、そんなの俺が望んだ事じゃ無い。

そんな俺の想いを聞いて少しの間驚いた顔をした零児だったが、直ぐに表情を戻し、いや少し微笑んだようにも見えるな?

 

「そうか、重ね重ね済まないな。私は君という存在を見誤っていた様だ。君は私が思っている以上に、デュエリストとして、人間として見上げた存在の様だ」

「そ、そうですか?あ、ありがとうございます」

「では、話は此処までにしてデュエルを続行しよう。

私はリリスとケルベロスでオーバーレイ。2体のレベル4・悪魔族モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築。この世の全てを統べるため今、世界の頂に降臨せよ!エクシーズ召喚、生誕せよ!ランク4!『DDD怒涛王シーザー』!」

 

DDD怒涛王シーザー

エクシーズ・効果モンスター

水属性

悪魔族

ランク 4

攻撃力 2400

ORU 2

 

エクシーズ召喚の演出と共に登場したのは、紫の鎧に身を包み、大剣を構える悪魔、シーザー。

あ、水属性だけど波紋を纏わせたシャボン玉を武器にしたりはしないからな?

それにしても此処でシーザーか、俺のアブソリュート・ドラゴンは発動タイミングの関係で、バトルフェイズに入らないと使えないけど、始めちゃうとシーザーの効果が発揮出来るし…

 

「私はこれでターンエンド」

 

Reizi

LP 4000

手札 1

モンスター DDD烈火王テムジン(攻撃表示)

      DDD疾風王アレクサンダー(攻撃表示)

      DDD怒涛王シーザー(攻撃表示)

魔法・罠カード 地獄門の契約書

        魔神王の契約書

 

すげぇ、先攻1ターン目なのに3体ものDDDモンスターを並べ、しかもシーザーの効果でモンスター破壊に対する牽制もばっちり、そしてプロトタイプとは言えペンデュラムモンスターを持っている事から、レオニダスを手札に握っている可能性もある。

これだよ、これこそ俺が求めていたデュエル、初見で俺と肩を並べる『ライバル』とのデュエルを、俺は今まで待ち望んでいたんだ、これなら満足出来るぜ!

 

「俺のターン!ドロー!」

 

お、この初手か、ちょっと面白い事してみようか。

 

「まずは魔法『オッドアイズ・フュージョン』発動!」

「フュージョン、という事は融合か」

 

オッドアイズ・フュージョン

通常魔法

『オッドアイズ・フュージョン』は1ターンに1枚しか発動出来ない。

1:自分の手札・フィールドから、ドラゴン族の融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。相手フィールドにモンスターが2体以上存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、自分のエクストラデッキの『オッドアイズ』モンスターも2体まで融合素材とする事が出来る。

 

「オッドアイズ・フュージョンの発動時、貴方のフィールドにモンスターが3体存在し、俺のフィールドにモンスターが存在しない為、エクストラデッキの『オッドアイズ』モンスターを2体まで融合素材にする事が出来る!」

「何、メインデッキからなら聞いた事があるが、エクストラデッキから融合素材だと?」

「俺はエクストラデッキの『オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン』と、手札の『貴竜の魔術師』を融合!2色の眼の龍よ!その碧の輝きを解き放ち、荒ぶる風で敵を惑わせ!融合召喚!『オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン』!」

 

オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン

融合・効果モンスター

風属性

ドラゴン族

レベル 7

守備力 3000

 

融合召喚の演出と共に俺の場に登場したのは、エメラルドを思わせる緑の体躯に2色の眼を持ったドラゴン、オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン。

 

「特殊召喚に成功したボルテックス・ドラゴンの効果発動!貴方のフィールドに表側攻撃表示で存在するモンスターを1体、此処はアレクサンダーを、貴方の手札、いやシンクロモンスターなのでエクストラデッキに戻って貰います!ハリケーン・フォース!」

「何っ!?くっ…!」

 

よし、バウンスならシーザーの効果は通じない、これで大量蘇生コンビの片割れはいなくなった!

 

「次に、スケール1の『星読みの魔術師』と、スケール8の『竜穴の魔術師』を、ペンデュラムスケールにセッティング!」

 

ペンデュラムスケール(青):1(星読みの魔術師)

ペンデュラムスケール(赤):8(龍穴の魔術師)

 

「来るか、ペンデュラム召喚」

「はい、行きますよ!これによってレベル2から7のモンスターが同時に特殊召喚可能!

揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!

ペンデュラム召喚!出でよ、我が僕のモンスター達よ!

レベル7!世にも珍しき2色の眼を持ちし竜、『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン

ペンデュラム・効果モンスター

闇属性

ドラゴン族

レベル 7

攻撃力 2500

 

よし、どんどん行くぜ!

 

「更に俺は「なんだ中島?今デュエル中だが…何?分かったが、しかし…」どうかしましたか?」

「いや、こちらの話だ、気にせず続けてくれ」

 

いや、そう言われてもLDS、或いはレオ・コーポレーション関係で何か良からぬ事が起こっているというのは、通信傍受に使っているスマホの電源を切っていても、深刻そうな顔で分かる。

そんな状況下で零児はデュエルを、本気の状態で続行できるか?否だ。

 

「このデュエル、貴方に預けます」

「何?」

「今現在LDS、或いはレオ・コーポレーション関係にて良からぬことが起こったのでしょう?ならば社長として現場に急行し、対応に当たってはどうです?」

「君の気遣いはありがたいが、私もデュエリストだ、一度やると決めたデュエルをこっちの都合で投げ出す訳には…」

「何を言っているんです!俺とのデュエルは機会があればいつでも出来ますが、LDS関係で今起こっている事への対応は、一たびそれを誤ればそちらにとって大打撃になりかねない、そうでしょう!?今貴方がすべきは事態の対応に当たり、早急に収束させる事、そうでしょう!

それに、そんな大事を気にした状態の貴方と、デュエルに集中出来ない状態の貴方とデュエルをしても俺は満足しない!俺は貴方と本気のデュエルがしたいんだ!」

「っ!分かった、済まないが、この勝負は預からせて貰う…

中島、今そちらに向かう。それでは遊矢、また今度、デュエルをしよう」

 

そう言いつつ、本気で申し訳なさそうな顔で、零児はフィールドを後にした。

 

こうして、零児とのデュエルは無効試合となった。

沢渡を襲った俺似の不審者の件もあるし、この決着を付ける機会は大分先の事かな。


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