【完結】遊戯王ARC-V~遊の力を矢に束ね~   作:不知火新夜

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さて、前々より予告していたコラボ祭、遂にスタートです!
記念すべきトップバッターは、この『遊戯王ARC-V~遊の力を矢に束ね~』の原案を出して頂いたGMSさんの『遊戯王ARC-V 二人の榊遊矢』です!

尚、このコラボ祭での時間軸は99話から100話の間です。


7.5章『幕間のコラボ祭』
Ex14話_いざ行かん、並行世界の舞網市へ!


「これが此処で開発された次元転送装置か。随分と大掛かりだな」

「確かに、アカデミアのデュエルディスクに内蔵されている物や、ランサーズの『ディメンジョン・ムーバー』と比べると大掛かりですが、そもそもの方向性が違います。予め転送先の座標に航路を繋いでから対象の転送を行う従来型とは違い、これは転送先の座標を狙って対象を発射する形で転送を行うのです。一方通行の上、確実性を確保するとなると此処までの大掛かりな物にせざるを得ませんが、前以て航路を繋ぐという作業が無い分、ステルス性はかなり高いです」

 

此処シティにアカデミアの大軍が侵略して来たのを俺達ランサーズとデュエルチェイサーが鎮圧し、近いうちにやって来るであろうアカデミアとの総力戦に向けて対策を練っていたある日、俺達ランサーズ首脳陣(俺と零児、それとARC-Vメンバー)は、洗脳によって俺の配下となったロジェの案内で、治安維持局内に設けられた開発課を訪れていた。

其処で開発されていた、ランサーズメンバーが持つディメンジョン・ムーバーと同じ次元転送機能を持つ装置を見せられたのだが、成る程『繋いで送る』のではなく『飛ばす』のか。

確かに航路が確立していない関係から確実性は劣りがちになるし、帰りのルートを別に構築しなければならないが、その航路を確立させる作業が無いから次元転送を察知されにくいのは利点だな。

今まではフォースハウンドの面々を1人1人、融合次元の市街地を経由してアカデミアに潜入させていたので向こうにバレる事無くスパイ活動出来てはいたが、今度の作戦ではそんな悠長な手段を取っていられない、向こうに気付かれず、尚且つ直接転送できる手段が欲しい。

それを踏まえるとこの転送装置は使えるな。

 

「ところで、テストは行っているのか?確実性が劣りがちな以上、その辺りの検証と、それに基づく配慮が必要になる。それを知りたい」

「分かりました。テストの実績の方ですが(ビーッ!ビーッ!)む、どうした?」

「申し上げます!装置が原因不明の暴走を起こしております!局員が只今対処に当たっております、皆さんは急いで避難を!」

「何!?分かった、遊星様、皆さん、どうぞこちらへ!」

 

っておい、言ったそばから異常事態かよ、大丈夫か、これ、っ!?

 

「柚子、危ない!」

「え、遊矢!?」

 

暴走の報告を受け、ロジェの案内で避難しようとしたその時、何やら嫌な予感を察知、柚子のいる場所で何かが起こると言わんばかりの指向性を持った脳内の警鐘に従って回避しようと柚子を抱きかかえた。

 

「く、間に合わ、うぉぉぉぉぉ!?」

「え、な、きゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「ゆ、遊矢!柚子!」

「遊矢兄ちゃん!柚子姉ちゃん!」

「お、おい、2人共!」

「おいお前ら、放しやがれェ!遊矢と柚子が明らかにヤバい状況なンだぞ!」

「今行っては貴方も巻き込まれてしまいます!此処は避難を優先して下さい!」

「彼らの言う通りだ!2人を救い出したいのは私も同じだが、今行っては危険だ!」

「「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」

 

が、其処から飛び立つまでの時間が無く、俺達2人は何か引力のある空間に吸い込まれてしまった。

 

------------

 

「うぉっ!いたた…

大丈夫か、柚子?」

「う、うん。ありがとう、遊矢」

『そういう遊矢は大丈夫かい?何だか擦りむいているみたいだよ』

『あの勢いだったからな、骨まで響いていなければ良いが…』

 

謎の空間に吸い込まれてしまった俺と柚子、暫しの間その真っ暗な空間を飛んでいたら何やら光が差した場所が見えたので、その場所から放り出されるタイミングを見計らって受け身の体勢に入った。

で、放り出されると其処には地面が見えたので柚子を庇いつつ受け身を取りはしたのだが、流石に勢いを殺しきれなかったのか、受け身の為に放り出した右腕が結構痛い、どうやら擦りむいた様だ。

でもアストラルが懸念する程酷くは無いし、何より柚子が無事で安心したよ。

さて、俺達の無事は確認出来た所で、今の状況確認だ。

俺達の身に起こった事、それらの要因はもしかしなくても転送装置の暴走だろう。

その暴走によって発生したワームホールの様な物に俺達は吸い込まれ、何処か別の空間に飛ばされてしまった、という所だろう。

まあ帰り道に関しては心配ない、デュエルディスクは左腕に装着され、『ディメンジョン・ムーバー』はそのデュエルディスクの所定のスロットに装填されている、シティの座標を基にサーチすればそれ程長い時間は掛からずに帰れるだろう。

そうなると次の問題は、その転送された『此処』は一体何処なの…か…?

 

「あれ、此処って…」

「舞網市の、メインストリートよね、あそこに見えるの」

『確かにそうだね。十数年も此処に住んでいるんだ、見間違える筈も無い』

『という事は、私達だけ帰って来てしまった、という事か?』

 

皆の言う通り、俺達が飛ばされた路地みたいな場所から見回してみると、出口の先には舞網市のメインストリートらしき光景が広がっていた。

此処は紛れも無く、舞網市内だ、けど…

 

「どうしたの、遊矢?何か気になる事があるの?」

「ああ。何か知らないけどさ、違和感があるんだよな…

ずばり言うと『舞網市は舞網市でも、俺達の舞網市では無い』って感じか?」

「私達の舞網市じゃない!?そんな事が…!」

『いや、もしかすると遊矢の考えは正しいかも知れない。私も何処かこの空間に違和感を覚えている』

『言われてみれば、何だか変だね。海音達の一件がある以上、その可能性は高い』

 

海音達か、あいつらは確か並行世界の舞網市から来たんだよな。

火野海音、三和櫂、そして月影レナの3人は、俺が遊士だった頃に遊戯王OCGに迫る人気を博したカードゲーム『カードファイト!ヴァンガード』のカード達がデュエルモンスターズのカードとして流通している舞網市から、俺達が使っているそれとそっくりな次元転送装置のテストで、俺達のいる舞網市へとやって来たんだっけ。

当時は融合次元のデュエリストを狙うテロリスト(遊香)が暗躍していた関係から、それに関する存在じゃないかと捕縛しようとして一行と変態(当麻)、エレンの3人がデュエル、当麻(変態)のみが勝って他の2人は敗北したり、ラッキースケベと言う名のセクハラが起こったり、その罪に対する処罰が下されたり、俺もまた海音と本気のデュエルを楽しんだりしたっけ。

確か向こうでもこちらと同じく、向こうのアカデミアによる侵略という脅威にさらされているんだよな、あの3人ならそうそう苦戦する事態にはならないとは思うが、元気でやっているだろうか?

と、過去の思い出に浸る暇は無いな、もし此処が俺の懸念通り並行世界の舞網市であれば、その時の海音達同様に帰る術が確立されている以上、無闇に此処を荒らしまわる様な真似をするべきじゃないが、かと言って、この世界の俺や零児達LDSもひょっとしたら俺達の次元転送を察知しているかも知れない、となると…

 

「ねぇ、遊矢…」

『遊矢、ちょっと良いかい?』

『遊矢、考え事をしている時に済まないが…』

「ん?どうしたんだ、柚子、ユベル、それにアストラル?」

「何か、遊矢の一部のデッキから薄らと光が…」

『それに、その光っているデッキから何かしらの力を感じるんだよね』

『それにこの感覚、何処か懐かしい感じだ。そう、それは遊矢が遊馬だった頃にNo.を探し当てた時の様な…』

「何?どういう事だ…?」

 

と、考え事をしていると、柚子達から俺のジャケット内に保管しているデッキ達の一部から光が発せられていると言われ、それを出してみる。

光っているのは『ユベル』と『オノマトホープ』、『三幻魔』に『バリアン』、という事は…!

 

「な、書き換わっている、だと…!?」

「ど、どうしたの遊矢?書き換わっているって、一体何が…!?」

 

光っていた4つのデッキは何れもエクシーズモンスター、それもNo.を搭載したデッキ。

アストラルの言葉からしてNo.に関連する異変があったのではないか、と調べてみると、案の定だった。

 

「No.の戦闘破壊耐性が、蘇っている…!」

「えっと、確かNo.エクシーズモンスターって、遊矢が遊馬だった頃はNo.モンスター以外と戦闘を行う際の戦闘破壊耐性が付いていたのよね、異世界の力がって感じで。それが蘇ったって事は…!」

『No.が、力を取り戻したという事か…?』

『でも何でまたアストラル世界でもバリアン世界でも、ハートランドでも無いこの場所で…?』

 

その効果テキストに「『No.』モンスター以外との戦闘では破壊されない」という文言が追記されていた。

一体、何故だ…?

考えられるとしたら、この舞網市にもまた、遊馬だった頃のNo.その物か同等の力を持ったNo.モンスターが存在するという事。

で、その力にあてられ、遊矢として転生する際にその力を失いOCGのそれと変わらない物となっていたNo.が戦闘破壊耐性だけとはいえその力を取り戻したって事になるな。

まあユベルの困惑も分からなくはないが、海音達のいた舞網市では別のカードゲームに登場するカードが存在するんだ、No.の存在する舞網市があってもおかしくはない。

とは言え、No.の危険性は身を以て知っている、なるべくならそれを所有している奴とは会いたくない物だが『遊矢、考え事は其処までにした方が良さそうだ』ん、どうしたアストラル?

 

『遊矢、不味い事になったみたいだよ。此処から直ぐ近くで足音が聞こえる。何だかこっちに、一直線に向かっているみたいだよ』

「と言う事は、何らかの手段で俺達の存在を察知したって事か。恐らくはこの舞網市のレオ・コーポレーションが送り込んだ輩か、或いはNo.所有者か…

しまったな、考え事に熱中し過ぎたか…」

「遊矢が気にする事は無いわよ、私だって色んな事が有り過ぎて何が何だかって状況だもん」

『そろそろ来るぞ。遊矢、柚子、ユベル』

 

段々と近づいて来る足音、それに身構えていると、

 

「いたz、瑠璃!?何故瑠璃が此処に「そのネタはもう良いから」ぐはっ!?」

「俺、だと?そうか、やはり此処は並行世界の舞網市だったか…」

「遊矢が、2人…

此処が本当に並行世界の舞網市だったなんて…」

 

其処に現れたのは、恐らくはこの舞網市の『榊遊矢』と思われる俺そっくりな奴と、シティに残っていた筈の隼、そして紫色の髪の毛の少年の3人だった。

 

「ああ、やっぱり並行世界の俺なのね…

だけど、1つ訂正しておくよ。2人じゃなくて3人だよ」

 

ゑ?

 

「さ、3人!?」

「3人か、この世界での俺は双子なのか?成る程、俺達は2人で1人の榊遊矢!って訳か」

『遊矢、どっかの平成2期最初の仮面ライダーじゃないんだから』

『仮面ライダー?どんなモンスターだ?種類は?ステータスは?どんな効果を持っている?』

『アストラルもこんな時にボケるな!良いかい、仮面ライダーというのは遊矢が持っている『M・HERO』カテゴリの元ネタになった特撮ヒーローの事だよ』

 

アストラル、お前は相変わらずのデュエル脳だな、そして問い詰め方がその仮面ライダーの片割れそっくりだ(汗

 

「違う違う。詳しく説明すると長くなるから簡単に説明すると俺も並行世界からこの世界に来ているのさ」

「そして、ファントムさんは元の世界に帰る手段を見つけるためにレオ・コーポレーションに協力しているんです」

 

あ、そうだったのか。

 

「この舞網市って並行世界の遊矢を引き寄せる磁石か何かなの…?」

「かも知れないな。ともあれ、そういう事なら話は早い。そっちが良ければ、少しの間そっちのレオ・コーポレーションにお邪魔したいんだけど?まあ元の世界に帰る術があるにはあるんだが、ちょっと込み入った事情があるし、何より此処に転送される時に右腕を怪我しちゃってさ」

 

そう言いつつ、先程怪我した右腕を見せる。

まあ擦りむいた程度なんだが。

 

「まあ怪我と言っても大した事は無いんだが「ダメよ遊矢!悪化して右腕が動かなくなったりしたらどうするの!?」…とまあ俺の彼女がこんな感じで心配しているし、念の為に、さ。それにそっちも、その積りで此処に来たんだろ?」

 

俺達も海音達が転送された時、確保の為に行動したんだ。

未知なる存在が突然自らの縄張り(といっても舞網市は俺達の領地じゃ無いが)に入って来たとなれば、それがどういう奴かを知り、保護したり排除したりしたくなるのは自然な事だ。

 

「…そうだね。エクシーズ次元のデュエリストなら勧誘、融合次元なら捕縛、どちらにせよエネルギー反応地点にいたデュエリストを保護するのが俺達の目的だよ」

「…まさか、並行世界のデュエリストとは思ってもいなかったがな」

 

今の、ファントムと呼ばれた『俺』の口振りからして、この世界でも融合次元、恐らくはアカデミアによる侵略の脅威が迫っているのだろう、その状況であれば尚の事だ。

それにしても、エネルギー反応か、それは俺達が転送して来た事か、或いはNo.か…

 

「そしたら、案内を頼む。柚子を早く安心させたい」

「任せてよ。それじゃあ、俺達に付いて来てくれ」

 

こうして俺達は、ファントム達の先導でこの舞網市にあるレオ・コーポレーションへと向かう事にした。

 

『成る程、M・HEROを変身召喚させる際、遊矢がモンスター名を宣言した後、何やら訳の分からない口上を言う事が多いが、そういう事だったのか』

『そういう事。アストラル、君も遊矢の相棒として長いんだし、そろそろそういった雑学的な知識を蓄えた方が良いよ。そういった事にも、デュエルを面白くする要素はあるんだ』

 

お前らは何時まで仮面ライダー談義をしているんだ?

 

------------

 

「まさか、並行世界の榊遊矢だったとはな。流石に私も驚いた」

 

所変わって、レオ・コーポレーション会議室。

ファントム達の案内でレオ・コーポレーションへと来た俺達、LDSの医療チームによって右腕の手当てを受けた後、此処に案内され、話し合いに応じた。

やっぱこの世界でもレオ・コーポレーションの社長は零児だったんだな、となると父親である赤馬零王はアカデミアのトップか?

 

「さて、知っているとは思うが一応自己紹介しておこう。私の名前は赤馬零児だ」

「僕はレオン・ウィルソンです!」

「私の名前はレベッカ・ホプキンスよ」

「俺の名前はユーゴだ!融合じゃねぇからな!間違えんなよ!」

「君はいい加減にそれをやめられないのか…

俺はユートだ、宜しく頼む」

「黒咲隼だ」

「俺はこの世界の榊遊矢だ。ホント驚いたよ、2人目の俺と会うことになるなんて」

「ホントにね。あ、俺の事はファントムって呼んでよ。元の世界でもそう呼ばれてたし、榊遊矢が2人だとややこしいから皆からはこう呼んでもらってるんだ。今は3人だけどね」

 

其処には零児とユーゴ、ユートと隼、それにファントムを含めた2人の『俺』と、レオンと名乗った先程の少年、レベッカと名乗った金髪の少女が集まっていた。

それにしてもこっちのユーゴもそのネタかよ、ユートの言葉からして最早持ちネタと化していそうだ。

 

「そうなると俺も別の名で呼んでもらった方が良いな…

並行世界から来ました、榊遊矢です。俺の事は遊士(ゆうし)とでも呼んでください。あ、『暗炎星―ユウシ』の事じゃ無いですし、金貸しでも無いですからね」

「並行世界から来ました、柊柚子です。ほ、本当に遊矢が3人もいる…

それに零児さんもユートも、隼もヒューゴーも…」

「ユーゴーじゃねぇ!ユーゴだ!」

『最早被害妄想の域だね。こっちのユーゴが食いついた熱血の大巨人レスラーネタを聞き間違えるとか…』

 

あ、遊士という呼び名は言うまでも無く、最初にいた世界での俺の名だ。

十代とか遊星とか、遊馬とかだともしこの並行世界の、他次元にいたら面倒くさいからな(実際、既に故人とはいえこっちのシンクロ次元には不動遊星がいたんだし)。

 

「改めて、ありがとうございます。元いた世界で次元転送装置の暴走に巻き込まれてしまって、この世界に流れ着いた所だったんです。まあ、元の世界に帰る術はあるんですが、その間に新たな厄介事に巻き込まれそうな火種を抱えていた状態でして…」

 

言うまでも無く、この世界に来て力を取り戻したNo.の事だ。

 

「その厄介事とはNo.のことかね?」

「やっぱり知っていましたか。はい、その通りです。元いた世界では普通のエクシーズモンスターと変わりなかったんですが、この世界に来た事で力を得たみたいなんですよ」

「その、No.が力を得た影響なのか、遊矢、じゃなかった、遊士の一部のデッキが光を放っていたんです、薄らとですけど。それにNo.達の効果テキストにも追記された文章があって…」

「成る程な。この世界におけるNo.は正体不明のカードと言っても過言では無い」

「俺達の次元、エクシーズ次元で突如として出現したのがNo.というカードだ。心の闇や欲望を増幅し、持ち主を暴走させる。恐らくは貴様の持つNo.もその力を得たのだろう」

 

零児からの問い、それに対する俺と柚子の返答に、ユートと隼がこの世界におけるNo.という存在を、自らのデッキに入っていたらしいそれを取り出しながら説明してくれた。

話を聞くと、遊馬だった頃のNo.と変わらない力を持ち、しかもエクシーズ次元においてはNo.に関する伝承が全く無いとなると、危険度は更に上だろう。

てか隼、お前の持っているそれ『No.16色の支配者ショック・ルーラー』じゃねぇか…

こっちの世界じゃ禁止カードだぞ、それを普通にデッキに入れるとか、この世界の禁止制限はどうなっているんだ…

と、この世界の禁止制限を勘繰るのは後にしよう、今は俺のデッキに眠るNo.に関してだ。

この世界に来て力を取り戻したと言っても、ZEXALの力を有する俺であれば制御は容易だが、それを言った所で聞き入れてくれる筈も無い。

それを使うのは危険だとして、没収されてしまうか、暫し預ける事になるかも知れない。

だが、幾ら此処に邪魔している身とは言え、俺にだって譲れない物はある。

No.はつい最近まで普通のエクシーズモンスターではあったが、それでも俺やアストラルにとっては、過去(遊馬だった頃)の死闘の形見、思い入れのあるカードなんだ。

となれば…

 

「事情は把握しました。その力を持ったNo.を17種類も持っているとなると、危険極まりないと思われても致し方ないのは理解出来ます。

 

 

 

ですがこのNo.達は俺にとって思い入れのあるカードなんです。いきなりはい分かりました、と渡す訳には行きません。

という訳で…

 

 

 

おい、デュエルしろよ」

 

其処、テンプレ言うな。

 

「ふむ、確かにデュエルはするべきだろうな。No.の侵食は鉄の意志と鋼の強さがあれば抑えられるのは黒咲達が証明している。だが、17枚も持っているならば危うい可能性は高い…」

「ならばそれを制御しきれているかデュエルで試せ、という訳か」

「分かりやすくて良いね。やっぱ、デュエリストならデュエルで言葉を交わさないとね」

 

どうやら此処にいる皆もまた同じ考えか、話が早くて良かった。

と、思っていた時期が俺にもありました。

 

「私がやろう!」

「僕がやるよ!」

「私がやるわ!」

「俺がやるぜ!」

「俺がやろう!」

「俺がやる!」

「此処は俺の出番だな!」

「此処は譲れないよ!俺が遊士の相手になる!」

「「「「「「「「………」」」」」」」」

 

だが、俺とのデュエルを巡って俺が俺がの大論争となり、一触即発の雰囲気と化し、その状況下で俺に『俺達の誰とデュエルをするんだ』と言いたげな視線を向けられる…

これは、どうした物か…

よし、やっぱり此処はライバル対決と行くか!

 

「そしたら、零児。1戦目の相手お願いします。

 

1戦目は、このNo.をふんだんに搭載したデッキで戦います」

「…良いだろう。

異次元をも、異世界をも制する王の力。君に見せてあげよう」

 

俺の指名に笑みを浮かべながら応じる零児、一方でがっかりと言いたげな表情の他の面々。

まあデュエルはこれだけじゃないから安心しな。

そう心中で言いながら、零児と共にアクションフィールドへと移動した。

 

「中島、アクションフィールドを発動しろ!」

「はい!アクションフィールド、オン!フィールド魔法『招き蕩う黄金劇場(アエストゥス・ドムス・アウレア)』発動!」

 

零児の指示で、中島さんが発動したアクションフィールド、それは名前の通り黄金に輝く劇場と言わんばかりの物だ。

さあ行きますよ、零児!

 

「行くぞ、遊士!」

「はい、零児!」

「戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!」

「モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!」

「「「「「フィールド内を駆け巡る!」」」」」

「「見よ、これぞデュエルの最強進化系!アクショーン…」」

「「デュエル!」」


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