【完結】遊戯王ARC-V~遊の力を矢に束ね~   作:不知火新夜

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95話_フルモンスターVSフルモンスター

Side 権現坂

 

ランサーズの一員として臨んだアカデミアとの大規模戦、それから帰還した俺達に来た、エキシビションマッチのオファー。

いの一番でそれを受けた遊矢に続く形で、この男権現坂もまたそれを受けた。

零児殿からは「アカデミアとの戦いで疲れている中、無理に出る事は無い」と言われはしたが、今の俺は寧ろ、このどうしようもない複雑な想いに向き合いたいが為に、受諾の意志を変えなかった。

 

アカデミアとの戦いの折に遊矢が実行した『アンドバリの指輪』作戦。

嘗てこのシティにおいてデュエリストクラッシャーとしてその悪名を轟かせたセルゲイ・ヴォルコフ、紆余曲折を経てサイボーグと化した彼に、遊矢が設計した新たなる素体を身に着けさせ、その能力を活かしてデュエル戦士達を瞬時に洗脳、他のデュエル戦士と同士討ちさせるという、俺の知る遊矢が立案したとは到底信じられぬ程の外道極まりない作戦、その実行を遊矢から持ちかけられた時、俺や一行、当麻は無論の事、強い反対意思を表明した。

其処までの外道な行いはアカデミアと一緒では無いか、相手がアカデミアだからと言って何をしても良いと言うのか、そんな言葉が飛び交った。

だが俺が此処まで強い反対意思を示したのは、それだけが理由では無かった。

遊矢は嘗てこのシンクロ次元へと転移する前、ランサーズの掲げる理念として『各次元が其々交流し、其々の文化を受け入れ、分け与える事で互いに切磋琢磨し、更なる発展を遂げる事こそ4つの次元のあるべき姿』と宣言した。

その4つの次元には、俺達の次元や此処シンクロ次元、今しがたアカデミアの侵略に晒されしエクシーズ次元は無論、アカデミアを擁する融合次元も含まれている筈だ。

このアンドバリの指輪作戦はそのアカデミアの、其処に属するデュエリストの精神を、下手をすれば融合次元の在り様を徹底的に叩き潰しかねない暴挙、これでは理念と行動の矛盾では無いか、そう思い至った俺は、反対意思を示さずにはいられなかったのだ。

 

だが遊矢の反論、それを声高に叫ぶ遊矢の悲愴なる面持ちを見た俺達は、黙らざるを得なかった。

遊矢(と、何故かそれに賛同していた零児殿と柚子)とて、この作戦が正しくない事位は重々承知していた、誰をも犠牲にしない、真に正しい作戦があればそれを実行するに越した事は無いとも考えていた。

だがアカデミアに侵略の意志を変えるつもりが無いのは火を見るよりも明らかな以上は『真に正しい作戦』など無い、なれば他に最高の手は無いかと考えた上での、遊矢の苦渋の決断だったのだろう。

そして遊矢が、そうまでしてもこの次元の人々を、我らランサーズを守らねばならないという決意に至った経緯も容易に想像が付いた。

 

遊矢の前世の前世、『遊戯王5D’sの世界』の不動遊星として生まれたばかりの頃の遊矢が直面した未曽有の大災害『ゼロ・リバース』、それ以来生きる為に様々な悪行に手を染めて来た幼少期の生活…

それらの記憶はトラウマとなって当時の遊矢を蝕み、リストカットを行うまでに精神を粉々にし、今尚遊矢の心に深い傷として残り、悪夢や幻聴といった膿を吹き出し続けているのだと、あの後柚子から聞いた(遊矢自身が教訓として治そうとしていないとも言っていたが)。

そのトラウマと『原作知識として持っていながら何もせずに、ゼロ・リバースが引き起こされるのを見ているしか無かった』という後悔が、遊矢を此処までの外道な手段を決断させたのだろう。

そう考えるとこの作戦もやむを得ないと、俺も一行も当麻も一応は納得したが、それでも胸の内に引っ掛かる物はある。

それに折り合いを付ける為、そう思い至った俺は、この後に待っているエキシビションマッチのデュエルに向けて、決意を新たにした…

 

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「権現坂様、宜しくお願いしますわ。互いの全力を尽くしましょう!」

「望む所だ、ティリエル殿!この男権現坂、何時如何なるデュエルでも全力!」

『それではエキシビションマッチ2回戦!ライディングデュエル・アクセラレーション!』

 

先攻 Tiriel LP 4000 VS 後攻 Noboru LP 4000

 

遊矢とソラト殿によるエキシビションマッチ1回戦が終わり、この男権現坂と、ソラト殿の双子の妹で、鬼柳殿のマネージャーを務めるティリエル殿による2回戦、それはティリエル殿の先攻で始まった。

まあ良い、権現坂道場が掲げるは『不動のデュエル』、慌てず騒がす常にどっしりと構え、無駄に動かぬ事こそ至上、むしろ俺のデッキの理想からして後攻となった事が幸いだ。

さてティリエル殿、貴殿のデュエル、この目で見させて貰うぞ。

 

「私の先攻!

まずは『森羅の水先リーフ』を召喚!」

 

森羅の水先リーフ

効果モンスター

水属性

植物族

レベル 3

攻撃力 1500

 

先攻を取ったティリエル殿が召喚したのは、リーフの名の通り、葉っぱみたいな頭のモンスター。

 

「召喚したリーフの効果発動!

デッキの上から2枚めくって…

どちらも植物族モンスターでしたから、2枚とも墓地へ送りますわ。

次に手札の『ダンディライオン』を墓地へ送って、たった今墓地へ送られた『にん人』の効果発動!

このカードを攻撃表示で蘇生しますわ」

 

にん人

効果モンスター

闇属性

植物族

レベル 4

攻撃力 1900

 

次に登場したのは、人参が人の様になった、名前のまんまの出で立ちのモンスター。

 

「にん人の効果コストで墓地へ送られたダンディライオンの効果発動!

『綿毛トークン』2体を守備表示で特殊召喚!」

 

綿毛トークン

風属性

植物族

レベル 1

守備力 0

 

今度は名前の通り綿毛のモンスタートークンか。

 

「続いて墓地の『グローアップ・バルブ』の効果発動!

デッキの一番上のカードを墓地へ送り、このカードを守備表示で蘇生しますわ」

 

グローアップ・バルブ

効果モンスター/チューナー

地属性

植物族

レベル 1

守備力 100

 

そして5体目として出て来たのは、球根に眼が付いている様な姿のチューナー。

これでレベル2から10までのシンクロモンスターをシンクロ召喚出来るな、たった2枚の手札消費で、凄まじい展開力だ。

 

「私はレベル3のリーフと、レベル1の綿毛トークン2体に、レベル1のグローアップ・バルブをチューニング!地獄に咲き誇る野薔薇の女王よ、己が縄張りを荒す不届き者を排除しなさい!シンクロ召喚、レベル6!『ヘル・ブランブル』!」

 

ヘル・ブランブル

シンクロ・効果モンスター

光属性

植物族

レベル 6

攻撃力 2200

 

『ティリエル選手、一挙に5体ものモンスターを並べ、シンクロ召喚しました!何やら不気味な雰囲気を漂わせている様な…』

 

其処からシンクロ召喚したのは、巨大な薔薇を身体中に絡ませた貴婦人の様なモンスター。

何やらこのモンスター、不穏なオーラを纏わせているな…

 

「更に、グローアップ・バルブの効果で墓地へ送られた『薔薇恋人(ラヴァー)』を除外して効果発動!

手札の『ローンファイア・ブロッサム』を守備表示で特殊召喚!」

 

ローンファイア・ブロッサム

効果モンスター

炎属性

植物族

レベル 3

守備力 1400

 

まだまだ展開は終わらないと言わんばかりに登場したのは、実と思われる部分が爆弾みたいになったモンスター。

 

「ローンファイア・ブロッサムをリリースして効果発動!

デッキから2体目のローンファイア・ブロッサムを守備表示で特殊召喚!

そのローンファイア・ブロッサムをリリースして効果発動!

デッキから3体目のローンファイア・ブロッサムを守備表示で特殊召喚!

更にそのローンファイア・ブロッサムをリリースして効果発動!

デッキから『森羅の番人オーク』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

森羅の番人オーク

効果モンスター

地属性

植物族

レベル 6

攻撃力 2400

 

『おや、ティリエル選手、デッキのローンファイア・ブロッサムを使いきって上級モンスターをリクルートしました。一体どの様な意図が…』

 

ティリエル殿の行動の意図が分からんのか。

ターンが始まってからティリエル殿は墓地肥やしを繰り返している、中でもデッキからの墓地肥やしが多い。

恐らくティリエル殿は、デッキからローンファイア・ブロッサムを全て墓地へ送る事でデッキを圧縮し、狙いのカードが墓地へ送りやすくしているのだろう。

他にも今は制限カードに指定されている装備魔法『継承の印』による蘇生も考えられる。

そんな事も分からんとは実にけしからん、この非常時に。

まあそんなMCへの突っ込みはさて置き、ローンファイア・ブロッサムの効果でリクルートされたのは、棍棒を持った巨人の様なモンスター。

風貌からして頼りになりそうな番人だ。

 

「特殊召喚したオークの効果発動!

デッキの上から3枚めくって…

3枚ともに植物族モンスターですから、全て墓地へ送りますわ。

その墓地へ送られた『森羅の花卉士ナルサス』、『森羅の葉心棒ブレイド』の効果発動!

それにチェーンして手札の『森羅の賢樹シャーマン』の効果発動!

まずシャーマンの効果で、このカードを攻撃表示で特殊召喚!」

 

森羅の賢樹シャーマン

効果モンスター

風属性

植物族

レベル 7

攻撃力 2600

 

まだまだ行くぞと言わんばかりに登場したのは、大樹に顔があるかの様なモンスター。

 

「次にブレイドの効果でこのカードを手札に戻しますわ。

そしてナルサスの効果で、デッキの一番上に『森羅の実張りピース』を置きますわ。

まだまだ行きますわ!グローアップ・バルブを除外して、オークの効果で一緒に墓地へ送られた『スポーア』の効果発動!

このカードを守備表示で蘇生し、このカードのレベルを、除外したグローアップ・バルブのレベル分上げますわ!」

 

スポーア

効果モンスター/チューナー

風属性

植物族

レベル 1→2

守備力 800

 

更に登場したのは、毛玉に顔が出来たかの様なモンスター。

それにしてもさっきから植物族モンスターばかりが墓地へ送られるな…まさか!?

 

「ティリエル殿、1つお聞きしたいのだが、もしやお主のデッキは…」

「察しが良いですわね、権現坂様。そう、私のデッキは植物族モンスターだけで構成されていますわ。私のデッキの主力である森羅モンスター達はデッキの上をめくり、植物族モンスターであればそれを墓地へ送る効果を持つ者たちばかり、その効果を活かす為にフルモンスター構築にしているのですわ」

 

やはりティリエル殿のデッキは、植物族のフルモンスターでっきであったか…

まさかこのシンクロ次元にも我らと同じフルモンスターデッキの使い手がいたとは、感慨深い。

 

「さて、デュエルを続行しますわ!私は、レベル4のにん人に、レベル2となったスポーアをチューニング!聖なる森に潜みし華麗なる棘の狩人よ、戒めの鞭を持ちて今こそ姿を現しなさい!シンクロ召喚、レベル6!『スプレンディッド・ローズ』!」

 

スプレンディッド・ローズ

シンクロ・効果モンスター

風属性

植物族

レベル 6

攻撃力 2200

 

『ティリエル選手、2回目のシンクロ召喚です!今度は薔薇を思わせる姿の女戦士です!先程自らのデッキをフルモンスターであるとカミングアウトしましたが、本当にフルモンスターデッキなのかと思いたくなる展開力です!』

 

だが今はデュエル中、感慨に浸るのは後だと気を引き締めた俺の前で繰り広げられたシンクロ召喚の演出、それと共に登場したのは、両手から薔薇を思わせる鞭を装備した女戦士。

 

「まだまだ行きますわ!私はヘル・ブランブルとオーク、そしてスプレンディッド・ローズでオーバーレイ!」

「オーバーレイ、と言う事はエクシーズ召喚か!」

 

我らがこのシンクロ次元に来てまだ半月余りだが、こうして他次元の召喚方法を少しずつ、然しながら自然と導入するその様、何やら以前の我らを見ている様だ。

遊矢の前世である不動遊星の仲間であったジャック・アトラス達の尽力が土台となったか、我らランサーズが紹介したのが切っ掛けか、どちらにせよこうしてすんなりと受け入れられるのは嬉しい限りだ。

遊矢がランサーズの掲げる理念として宣言した『各次元が其々交流し、其々の文化を受け入れ、分け与える事で互いに切磋琢磨し、更なる発展を遂げる事こそ4つの次元のあるべき姿』、少なくとも俺達の次元や此処シンクロ次元では、それが根付き始めている様に思える。

 

「3体のレベル6モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!数多の妖精を統べる騎士よ、あらゆる外敵を薙ぎ払いなさい!『妖精騎士イングナル』!」

 

妖精騎士イングナル

エクシーズ・効果モンスター

地属性

植物族

ランク 6

守備力 3000

ORU 3

 

そのエクシーズ召喚の演出と共に登場したのは、緑を基調とした装備、同じく緑色の長剣を持った騎士。

 

「まだまだこれからですわ!シャーマンの効果発動!

デッキの一番上に置いたピースをめくり、墓地へ送りますわ。

墓地へ送られたピースの効果発動!

それにチェーンして手札にある、2枚目のシャーマンの効果発動!

まずはシャーマンの効果で、このカードを攻撃表示で特殊召喚!

次にピースの効果で、墓地のローンファイア・ブロッサムを守備表示で蘇生しますわ!

今特殊召喚したシャーマンの効果発動!

デッキの一番上をめくり…

植物族モンスターですから、墓地へ送りますわ。

その墓地へ送られた『森羅の姫芽君スプラウト』の効果発動!

このカードをレベル8モンスターとして守備表示で蘇生しますわ!」

 

森羅の姫芽君スプラウト

効果モンスター

光属性

植物族

レベル 1→8

守備力 100

 

それにしても、ティリエル殿のデッキは本当にフルモンスターなのかと疑いたくなる展開力だ。

此処までに2回のシンクロ召喚と、その2体のシンクロモンスターを用いて1回のエクシーズ召喚を行い、今のフィールドにはイングナルの他、2体のシャーマン(どちらもレベル7)、リクルート出来るローンファイア・ブロッサムに、レベル8となった、今しがた蘇生した平安時代の姫を思わせるモンスターもいる。

 

「私は2体のシャーマンでオーバーレイ!2体のレベル7モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!森羅の霊峰、その森に住まう精霊を鎮めし神よ、今こそフィールドに君臨し、平穏を乱す輩を追放しなさい!『森羅の鎮神オレイア』!」

 

森羅の鎮神オレイア

エクシーズ・効果モンスター

闇属性

植物族

ランク 7

攻撃力 2800

ORU 2

 

その内の2体であるシャーマン2体を用いたエクシーズ召喚で登場したのは、グリフォンを思わせる巨大な鳥の様なモンスター。

 

「まだ行きますわよ!ローンファイア・ブロッサムをリリースして効果発動!

デッキから『森羅の仙樹レギア』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

森羅の仙樹レギア

効果モンスター

炎属性

植物族

レベル 8

攻撃力 2700

 

そして、ローンファイア・ブロッサムの効果でリクルートされたのは、シャーマン以上に巨大な大木の様なモンスター。

 

「たった今特殊召喚したレギアの効果発動!

デッキの一番上をめくり…

植物族モンスターですから、墓地へ送り、1枚ドローしますわ!

私はレギアとスプラウトでオーバーレイ!2体のレベル8モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!森羅の霊峰を守護する神よ、今こそフィールドに君臨し、外敵を追放しなさい!『森羅の守神アルセイ』!」

 

森羅の守神アルセイ

エクシーズ・効果モンスター

光属性

植物族

ランク 8

守備力 3200

 

『ティリエル選手、これで3回目のエクシーズ召喚です!果たしてこれが本当に、フルモンスターデッキの動きなのか!?』

 

MCの驚きを他所にエクシーズ召喚されたのは、強大な神獣を思わせる姿(神を名乗っているのだから実際そうなのだろう)のモンスター。

 

「先程ドローした『フェニキシアン・クラスター・アマリリス』を墓地へ送って、オレイアの効果発動!

墓地へ送ったフェニキシアン・クラスター・アマリリスのレベルの数、つまり8枚、デッキの上からめくり、それを好きな順番で並び替えますわ。

そしてアルセイの効果発動!宣言するのは、3枚目の『森羅の賢樹シャーマン』!

デッキの一番上をめくり、宣言した3枚目のシャーマンでしたので、手札に加えますわ!

私はこれでターンエンドですわ」

 

Tiriel

LP 4000

手札 2(シャーマン、ブレイド)

モンスター 妖精騎士イングナル(守備表示)

      森羅の鎮神オレイア(攻撃表示)

      森羅の守神アルセイ(攻撃表示)

魔法・罠カード なし


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