織田信奈の野望~かぶき者憑依日記~   作:黒やん

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今年は投稿がかなり間が空いたり、話がずれたりで本当にすみませんでした。
こんな作者ではありますが、来年もよろしくお願いいたします。


2013年
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本当に、ありがとうございました!















閑話~とある年越し~

「慶次様ー、これはどこに……」

 

「それは玄関のところに置いといてくれー。後で運んどくから」

 

「……ととさま」

 

「ん? ああ、万千代が台所辺りにいるはずだから聞いてみな。多分万千代の部屋に置くとは思うが」

 

大晦日。どこの家庭でも大掃除や年末の総整理に忙しいこの日、丹羽家でもその例にもれず大掃除を行っていた。

まぁ、主に掃除を担当しているのは慶次、愛紗、慶松。そして片付けが速攻で終わったために手伝いに来た犬千代と半ば無理矢理連れてこられた良晴なのだが。万千代と朱乃はおせち作りで忙しくしている。

ちなみに信奈は城の掃除でてんてこまいのため不在である。

 

「……さて、と。これで終いか」

 

「お疲れ様です」

 

「つ、疲れた……」

 

だが、早朝から始めていた甲斐があってか掃除も昼前には終わった。慶次は額の汗を拭い、愛紗が苦笑しながら手拭いを差し出す。それをこき使われたために疲労困憊な良晴が恨みがましく見ていて、犬千代と慶松は仲良く眠そうにしていた。

 

「あらあら、お疲れみたいですわね」

 

「姉上。そちらも終わったのですか?」

 

そんなところに、いつものようにニコニコしている朱乃がやってくる。ただし、服装はいつもとは違って動きやすい着流しだったが。

 

「……ってその着流し俺のじゃねーか。いつかっぱらったんだよ……」

 

「あらあら」

 

「……後で返せよ?」

 

「承知しておりますわ」

 

笑顔の威圧に屈する慶次であった。

 

「それで、姉上はどうしたんですか?」

 

「そろそろお昼にするらしいので、報告に、と」

 

『『早く言え!!』』

 

その言葉に飛び付くように、全力で居間へと駆けていく慶次達であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「流石に人が多いな……」

 

「慶松、慶次から離れてはいけませんよ?」

 

「……うん」

 

その夜、凡そ亥の刻半(午後11時)。慶次と万千代、そして慶松は熱田神宮に向かっていた。

理由はお察しの通り初詣だ。何せ、慶松にとっては初めての慶次達と過ごす新年である。その記念のようなものが欲しかったのだろう、珍しく慶松から初詣に行きたいと言い出したのだ。

 

「慶松、寝たかったら寝ててもいいぞ? 起こしてやるから」

 

「…………ん!」

 

慶次の言葉に強く首を横に振る慶松ではあるが、その眼はトロンとしており今にも寝てしまいそうだ。

慶松の懸命な姿を見てから、慶次と万千代は顔を見合わせて苦笑いする。そしてどうにか神宮にたどり着き、しばらくすると……

 

「皆さま、子の刻を迎えました! 明けましておめでとうございます!」

 

神宮の神司が、年明けを宣言する。

 

「明けまして、おめでとう」

 

「ええ、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いしますね?」

 

二人の目線は、結局慶次に抱っこされたまま眠ってしまっている慶松に、優しく注がれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「結局、二人になっちまったな」

 

「そうですね……」

 

初詣を済ませ、絵馬を飾り、慶次が前代未聞の御神酒の一樽丸呑みという偉業(?)を達成した後。二人は慶松を背負って帰り道を歩いていた。

 

「……そういや、お前頑なに教えてくれなかったけど、絵馬に何て書いたんだ?」

 

「…………」

 

そう。万千代は慶次に決して絵馬を見せようとしなかった。慶次が自らの『一年間、織田家が楽しくありますように』という絵馬を見せても、絶対に見せようとしなかったのだ。

 

「……嫌です」

 

「えー……すんげぇ気になるんだけどな……」

 

「絶対に嫌です!!」

 

「あ、ちょ、待てよ!」

 

「……んにゅ」

 

「お、起きたか慶松。もうちょい寝ててもいいぞ」

 

「……ん」

 

慶次は慶松を背負い直すと、顔を真っ赤にして逃げ出した万千代を追いかけるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『一年間、慶次と慶松と無事に過ごせますように

 

 

 

 

 

 

 

素直に、なれますように』

 

 


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