織田信奈の野望~かぶき者憑依日記~   作:黒やん

3 / 42
センター試験が近付くにつれて勉強のやる気がなくなっていくと言う罠……試験、明後日なのに……


だけど出来たから投稿!!













原作前~四年前~
甲賀~尾張


突然だが、皆さんは転生とか憑依とかを信じるだろうか?

 

 

俺、『雪走恵二』はそれを信じている……いや、信じざるを得なくなった

 

 

だって……

 

 

「ほんとうにおきちゃったんじゃ、なぁ……」

 

 

雪走恵二、もとい『前田慶次』。第二の人生を渋々謳歌してます

 

 

……名前が変わらなかっただけ良しとしよう

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

あれから数年、ようやく俺もこの『甲賀の里』の雰囲気に慣れてきた

 

 

しかし悲しいかな……こっちに来てから前世の事は殆ど思い出せなくなってしまった。親や友達の名前なんかは特に綺麗サッパリ脳内から消えてやがる。ガッデム

 

 

車とか電灯とかなら使い方から直し方まで覚えてんのにな~……

 

 

「兄上~」

 

 

「……ん?一益か」

 

 

そんな事を考えながらボーっと庭の池を眺めていると、てててという効果音の付きそうな走り方で義妹の『滝川一益』が駆けてきた

 

 

義妹というのは、一益は実は養子で、どっかの高家から預けられたらしい。何故か親類やアホ親父がやけに一益に丁重に接してるから高家と判断しただけなのだが……正直アホだろ。こんな小さい子供にそんな仰々しく接したら却って疎外感を与えるだけだろうに

 

 

「ど~ん!」

 

 

「っとと……何時にも増して元気だな」

 

 

「だって兄上と遊べるのじゃ!勉強とかつまんな~い」

 

 

我が義妹様はどうやら遊びたい盛りらしい

 

 

……え?名字が違うって?いや、俺なんか前田家に養子に出されるらしい。何でも生まれる前から決まってたんだと

 

 

「兄上~?」

 

 

「ん?ああ、悪い悪い。今日は何して遊びたいんだ?」

 

 

「んっとねぇ……将棋をするのじゃ!」

 

 

「また年寄りくさいやつを……というか最近将棋ばっかりじゃねぇか?」

 

 

「だって妾が勝てないのは兄上だけなのじゃ。大人は皆弱いから相手にならないのじゃ」

 

 

どーせまた大人は一益の機嫌を損ねないようにわざと負けてるんだろうな……

 

 

……慶次は知らない。大人は初めこそわざと負けていたが、今ではガチで9才児に負けているという事を。全力で相手をして、その上で叩き潰されているという事を

 

 

ちなみに、里の大人は決して将棋が弱いわけではない。むしろ強い方である

 

 

「しゃーねーな。ほら、将棋板持ってきな?」

 

 

「うん!」

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

 

「あー!また負けたのじゃー!」

 

 

「はっはっはっは。俺に勝つのは10年早いな」

 

 

「もう一回!もう一回勝負なのじゃ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……まだ10才にもなってない姫に本気で負けるなんて……しかも16才の利益殿は更にその上を行くなんて………うぅ、俺24だぜ?」

 

 

「だ、大丈夫ですよ!慶次様と一益様が飛び抜けて凄いだけですから!」

 

 

「段蔵はいいよな……既に慶次殿に仕えるのが内定してんだからよ。将来安泰じゃん」

 

 

「いえ……多分私、一益様の守役としか認識されてないと思います……」

 

 

「「………………」」

 

 

「……何か、すまん」

 

 

「いえ……」

 

 

その夜、大人達(+少女一名)は枕を涙で濡らしたとか濡らしてないとか……

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「お~、ここから尾張か~」

 

 

どーも。前世とか割とどうでも良くなってきた前田慶次利益です

 

 

一益と将棋指してた次の日、突然前田家に呼び出されて急遽養子縁組を早めることになった

 

 

そう言うわけで今は尾張……ってもまだ津島なんだけども

 

 

時間に余裕持って家を出たんだが、愛馬の松風が本気出した結果……なんと二日の余裕が出来てしまった

 

 

おっかしーなー。どんだけ多く見積もっても半日余ればいい方だったのに……松風マジチート

 

 

途中で何回か野盗と遭遇したけど俺が降りて戦うまでもなく松風が蹴散らしてたからな

 

 

 

……前世ではごくごく普通の一般人だったのだが、この世界に生まれた影響か、それほど命を奪うことへの抵抗が無いように感じる。とは言っても初めて人を手にかけた時は吐きながら泣き叫んだが……

 

 

抵抗が薄れた……というか決意を決めたのは伊賀の忍衆が甲賀の里を襲撃してきた時だ。その頃の俺は人を殺したくなくて、忍の訓練も槍や刀の鍛練もサボってばかりいた。そんな時に、襲撃が起きた

 

 

あの時の事は生涯忘れることはないだろう。何も出来ない俺を庇いながら戦っていたくの一でもあった母さんが俺を抱き締めながら事切れたあの光景だけは……

 

 

戦国という時代が指す意味を思い知った。強い者が生き弱い者は死んでいく。そんな弱肉強食の理を思い知らされた

 

 

それから、俺は槍や刀の鍛練に必死になった。時には寝る時間も惜しんで槍を突き続け、興福寺や比叡山などの道場に通い、偶々出会った塚原卜伝師匠(女性。クソ強かった)にも教えを受けた

 

 

……もう、家族を喪う悲しみを味わいたくない。誰も、俺の前では殺させない。その一心だった

 

 

幸い俺には武術の才があったらしく、教えられたものを次々と吸収し続けた結果、『鬼才』とか厨二な称号をつけられる羽目になったが……

 

 

まぁ、そんな余談はどうでもいいとして、ここは尾張国、津島。つまりは守護の斯波氏がお飾りの織田氏の支配下にある国である。確か現当主は……信秀さんだっけか

 

 

何が言いたいかと言えば……

 

 

「いるんだろーな……織田信長が」

 

 

歴史に疎い……というか興味が一切ない俺でも知っている戦国の覇者、織田信長がいる可能性があるという事だ

 

 

親父に聞いた所、織田家は尾張にしかなく、豊臣や徳川に至っては聞いたことすら無いらしい。何やってんだよ秀吉と家康(の先祖)

 

 

 

「……ま、無いもんは仕方ねぇな。休憩しようぜ松風~」

 

 

「ブルル!」

 

 

返事をするように嘶き、足を止めた松風から下りる……うん、いい天気だ

 

 

折角の昼寝日和なので、すぐ近くにあった土手の芝っぽい草が生えている場所に寝転ぶ。松風も俺が下りた後に川の方に行き、水を飲んでいる

 

 

そして俺が槍を横に置いて目を閉じてからしばらくした時だった

 

 

「ーーそこの武人のお方。警戒もせずにこんな街道外れの土手で寝転ぶなんて不注意です。0点ですよ?」

 

 

そんな声が聞こえてきた

 

 

特に敵意や悪意は感じなかったので、そのまま身体を起こし、背伸びをしてから声の方を向くと……

 

 

「お早う美人さん」

 

 

「まぁ。お上手ですね。67点です」

 

 

「おろ、手厳しい」

 

 

そこには扇で口元を覆ってクスクスと笑う美人さんがいた。何か点数付けてくる変な奴っぽいが

 

 

「今何か変な事を考えませんでしたか?」

 

 

「イイエナニモー?」

 

 

「……まぁ、いいです」

 

 

まさか心を読んでくるとは……恐ろしい

 

 

「俺を不注意とか言うならアンタも不注意だろ。年頃の女一人で街道外れを歩くなんざ危ないだろうに」

 

 

「私は大丈夫ですよ。そこらの暴漢に負けるような鍛え方はしていませんから」

 

 

「えらい自信だな……だったら俺も大丈夫だよ」

 

 

「あら?腕に自信がお有りで?」

 

 

「それなりにな」

 

 

「そうですか。……ふふふ、70点です」

 

 

何が?と聞きたくなったが話が進まないので黙っておく

 

 

「……で?アンタは一体何しにここへ?」

 

 

見たところ桶や釣竿、洗濯物も食器も持ってないから川に用事があるとは考えにくい。間者か?

 

 

「あ、いえ。私自身は何も用は無いのですが姫様が……」

 

 

「姫様?」

 

 

「万千代~!!」

 

 

突然、川の方から大きな声が聞こえてくる。その方を見てみると、松風に跨がった金髪に近い茶髪のこれまた美少女がいた

 

 

「見て見て!こんな立派な馬見付けちゃった!この馬、私の愛馬にするわ!!」

 

 

「いや、松風は俺の相棒なんだが……」

 

 

「姫様がすみません……。姫様、その馬は彼のものです。勝手に自分のものにしてはいけません。0点です」

 

 

「え~……」

 

 

渋々といった様子で松風から下りて俺達の方に近付いてくる姫さん(仮)

 

 

その風体は姫と呼ぶにはあまりに奇抜だった……動きやすそうではあったが

 

 

「ん~?何よそいつ。万千代の家臣?」

 

 

「シバくぞガキ」

 

 

何で初対面の奴に仕えなきゃならんのだ

 

 

そして隣を見ると、万千代と呼ばれていた美人さんが溜め息を吐いていた

 

 

「溜め息吐くと幸せが逃げるらしいぞ?」

 

 

「誰のせいですか誰の……この方は織田の姫様ですよ?せめて敬意を払って接しなさい。相手が姫様で無ければ手討ちにされても文句は言えません。2点です」

 

 

「って言われてもな……」

 

 

「何よ!私が偽者とでも言う気!?」

 

 

「いや、そこまでは言わねーが………なんか、こう、俺の中の姫様の像ってのがだな……」

 

 

「ああ……それは、何と言うかすみません。これでも織田の姫君で、嫡子なんです」

 

 

「万千代!?」

 

 

俺の言いたい事がわかったのか、微妙な顔で頭を下げてくる美人さん……っても多分同い年位だが

 

 

「別に頭下げる必要はねーだろ。えっと……」

 

 

「ああ、まだ名乗っていませんでしたね。丹羽長秀、と申します」

 

 

そう言ってお辞儀をしてくる美人さん……もとい長秀。何か礼儀正しい奴だな

 

 

「俺は前田利益。慶次と呼んでくれ。後敬語はいらん。見た感じ同い年位だろ?タメに敬語使われると何かむず痒い」

 

 

「では私も愛称の万千代と呼んで下さい。敬語はもう癖みたいなものなので……68点です」

 

 

俺と長秀……もとい万千代と自己紹介していると、万千代の横で茶髪の姫さんがピョンピョン跳ねていた

 

 

「ちょっと!!私を無視しないでよ!!」

 

 

「………」

 

 

「存在から無視!?」

 

 

何コイツ超イジリやすい

 

 

「普段は爺が煩いけど、今日は万千代しかいないから特別に私の名前を教えてあげるわ!!感謝しなさい!記念すべき元服してから初の名乗りよ!!」

 

 

「へぇ~」

 

 

ぶっちゃけどうでもいい

 

 

「私の名前は織田上総介信奈!!信奈様って呼びなさい!!」

 

 

茶髪……もうオチビでいいか。オチビが(無い)胸を張って名乗る

 

 

「わかった。オチビだな」

 

 

「話聞いてた!?私は信奈よ!の・ぶ・な!!」

 

 

「わかった。オチビだな」

 

 

「話聞いて!?お願いだから!!」

 

 

「ヤ」

 

 

「一文字で断られた!?」

 

 

「ふふふ、楽しそうですね。」

 

 

楽しくないわよー!と喚くオチビをよそに優雅に笑う万千代

 

 

……信奈って誰だよ。信長どこ?

 

 

「それに前田の姓……貴方が前田家に養子に来る『鬼才』でしたか」

 

 

「不本意ながらそう呼ばれてるな……本っ当に不本意ながら」

 

 

「嫌なの?『鬼才』って通称」

 

 

「まぁな」

 

 

誰が好き好んで厨二ネームを持つものか

 

 

そんな感じで割と和気あいあいと時間を潰して、その日は二人と別れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……養子先の前田家当主の前田利久爺さんが、守護の斯波義統の怒りを買って切腹させられたのは、その二日後、俺が養子になった直後だった


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。