何だ?気分転換に織田信奈の野望読んだのがいけなかったのか!?
そんなこんなで、見切り発車で始まります!
ーーワァァァァァァァァ!!
戦場に鬨の声が響き渡り、甲冑の色が異なる軍が刀を、槍を交差させる
最前線では頭上を矢が飛び交い、敵を一人倒したと思えば仲間が二人倒れる
……この場所、『川中島』では今、上杉と武田が雌雄を決している真っ最中だった
そんな中、上杉方の中でも最前線に位置する陣の中では一人の綺麗な黒髪をポニーテールにした、抜群のプロポーションを持つ女性が鉄扇を口元に当てて戦況を伺っていた
「戦況は今の所五分……何かが起きれば一気に勝敗が決まりますわね。問題は直江殿や柿崎殿、小島殿に斎藤殿が武田四天王を謙信殿の到着まで抑えきれるかどうかといった所でしょうか……それに、勘助殿や父上がどのような策を打ってくるかですわね」
女性は厳しい顔で戦場を睨む。常ならばこの女性が笑顔を崩す事はそうないのだが、彼女が……いや、正確には彼女が主と仰ぐ者が四天王以外の全ての敵部隊を相手取っているために、顔が厳しくなるのは当然とも言える事だった
……ただし、主の無事に関する心配はそんなに無いのだが
「伝令!また慶次様が突出し始めております!!」
「ハァ……またですか。幸ちゃんに慶次様を引き摺ってでも連れ戻すように伝えてください」
「はっ!」
普通なら飛び上がるくらいに驚くような事態なのだが、女性は慣れたように溜め息を吐きながら伝令に指示を出した
そして、それに呼応するように武田方の一部隊が動き出す
「ああもう……慶次様が動くから父様の軍まで動き出したじゃないですか……。全く、三姉妹の内の二人が慶次様に仕えたからと言って何もそこまで目の敵にしなくてもいいでしょうに……慶次様もいい加減私を嫁に貰って下さればいいですのに……」
この哀愁を漂わせながら顔を赤くしてもじもじするという器用な事をやらかしている女性。彼女の名前は『真田昌幸』という、後の世界のあるゲームで『戦国一のチート野郎』『真田さんマジチート』と言われる人物であった
「娘を返せェェェ!!」
「別に俺が誘ったわけじゃねぇよ!!アイツらが勝手に着いてくるって言い出して着いてきたんだよ!!」
「嘘を吐け!!オレの可愛い朱乃と愛紗がそんな尻軽な訳があるかァァァ!!」
「アンタ仕官と嫁入りごっちゃにしてないか!?嫁入りじゃないから!仕官だから!とりあえず落ち着け!アンタの部隊がアンタを見てポカーンってなってるから!俺の隊もドン引きしてるから!」
「嫁入り……だと……!?貴様に娘はやらんわァァァ!!!」
「めんどくさっ!?この親馬鹿本気でめんどくさっ!!」
バガッ
「はぐあっ!?」
「何を恥ずかしい事を堂々と叫んでおられるのですか……父上」
「ああ、愛紗……助かった。このオッサン武は弱いけど精神力が(娘関連限定で)凄まじいからな……」
「ほら、戻りますよ慶次様。姉上が少々お怒りです」
「それ聞いて戻りたく無くなったんだが……って待って待って!!引き摺るのだけは勘弁してくれ!!」
「あ、愛紗……!!悪い事は言わない、お父さんの所に戻って来なさい!!」
「復活早いなオッサン……」
「父上……それ以上私や姉上が決めた事に口出しするのなら……」
「「するのなら?」」
「以降、『幸隆様』と呼びますよ?」
「正直すみませんでした」
「弱ェな……ってか凄ぇな!?」
この後方三回転半宙返りひねり土下座をする壮年の男性……真田幸隆を可哀想な目で見ながら、黒髪をサイドポニーで縛った少女……真田幸村に引き摺られていく主の威厳など欠片も見当たらない青年
その名を『前田利益』、愛称を『慶次』と言った
一応言って置きますが、主人公は慶次です