相変わらず奏回です。
それでは、よろしくお願いします。
「はぁ、結局時間かかったじゃない」
事故の後処理をした俺たちはようやく学校に着いた。
「だってあの壁邪魔にならない場所に運ばなきゃならなかったから」
「いいじゃないか。間に合ったことだし」
「でも、あの壁なんなの?」
あの速度の車をあそこまで綺麗に受け止められる物質なんてあっただろうか?
もしかして今は存在しない物質を作ったのでは……
「強力な衝撃吸収材でできた壁よ。咄嗟の判断にしてはよかっでしょ?」
「でも、無駄に大きくなかった?カナちゃんならもっと効率よく――」
「早く行くわよ」
茜の質問に奏は顔を赤くしながら歩いていってしまう。
咄嗟の判断だったからあのサイズだったのだ。それだけ茜のことが心配だったということだろう。
口に出せば殺されかねないので絶対に言わないけど……
「あっ、そういえばお金使わせちゃってゴメン!いくらなの?」
「いいわよ。どうせあなた貯金そんなにないじゃない」
「払うって!バ、バイトでもして稼いで……」
茜ができるバイトって何があるだろう?全然思い浮かばないんだが。
「――4000万よ」
「よっ、せん……」
まぁ、妥当だな。おそらく未来の物質だしな。もっと高いと思った。
「い、一生かけて払うから~……」
「だから、いいって。それよりも茜先に行ってて、生徒会室に取りに行かないといけないものがあるから」
「えっ、わかった。じゃあカナちゃん、式先に行ってるね」
「ああ」
茜が先に行ってしまい。俺と奏の二人になる。
「それにしても、奏。生徒会に取りに行くものなんてあったか?」
「いいから、ついてきて」
有無を言わせない対応に少し疑問を覚えながら俺は奏の後についていく。
そして、少し歩いたところで奏が振り返り、こっちに向かってきて――
――パシッ!
思いっきりビンタされた。
「痛っ!?何すん――」
俺は文句を言おうと思ったが、その続きを言えなかった。
そこには今にも泣き出しそうな奏がいたからである。
「正直に答えなさい。あんたあの時何しようとしたの?」
このまま正直に言ったら何言われるかわかったものではない。軽口をはさんで誤魔化すとしよう。
「あの時って何のことだ?」
「惚けるつもり!」
奏の声に俺は一瞬怖気ずいてしまう。
ここで、嘘をついても何一つ得しなさそうだ……正直に言おう。
「調子が悪くて能力がうまく使えなかったから無理して茜を能力で突き飛ばそうとしました」
「その時自分の事は?」
「何も考えていませんでした。せめて茜だけでもと……」
「バカっ!あんた、朝から調子悪いと言ってたのに何無茶してるのよ!茜じゃないんだからもっとよく考えてから行動しなさい!」
「でも、茜を助けるために……」
あの状況、俺には奏の姿は見えてなかった。助けられるのは俺だけだったはずだ。
「それであんたが怪我したら元も子もないじゃない!」
奏が俺の事を上目使いで睨んでくる……ずるいなこの姉さんは。反論する気が失せてしまう。
自分も似たようなもののくせに、せめて少しだけ仕返しするとしよう。
「ごめん、
「……ずるいわね。式にその呼び方されたら許したくなるじゃない。もういいわ、そろそろ行かないと委員会に遅れちゃう。行きましょ」
「わかったよ」
おそらく、二人きりになった理由は茜が俺のやろうとしたことに気付いておらず、茜の前でビンタして怒るわけにはいかなかったのだろう。
だが、茜は抱擁なのに、俺にはビンタなのか。手厳しい限りである。
それにしても、茜のことといい、他のことといい。奏はやっぱり家族の事を一番に思っている優しい姉なんだな。
と口には出さず俺はビンタされたところを押さえながら奏の後をついていくのであった。そして気付いた。
「ねぇ、奏。俺の頬にもみじできてないよな?結構痛かったんだけど。それにこれから委員会なんだけど……」
「……あっ」
奏の反応で俺の顔は大変になってることがわかり、俺はこの後顔を隠しつつ委員会に出るはめになるのであった。
短い!(2回目)
奏がめっちゃヒロインしてますね。
兄弟間で年とともに呼び方がかわるってよくありますよね。というわけでかえてみた。
どうでもいいですが、作者は一番好きなのは奏です。
もちろん他のキャラも大好きですけどね。
そうでなければとっくに奏ヒロインってタグに付けますしね。
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