城下町のダンデライオンー偽物の10人目ー   作:雨宮海人

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というわけでアニメ一話ラストです。
結構いいペースで進めていますがいつまでもちますかね……
最後ちょっとシリアスですが、よろしくお願いします。


第3話

『ゲームの結果は、修様が1位。最下位は茜様と光様です』

 

全員がスタジオに揃ったので、番組が再開される。

 

俺は2個で6位だった。なんてレベル低い戦いだろうか。

 

これなら栞の心配をする必要は微塵もなかった。ついでに遥を助けた理由は、遥にも非はあるが。あの状況ならまだ時間もあり、俺が強制終了させない限り0個よりは多くとれたからである。

 

それを言うなら茜も同じなのだが、さすがにそこまでしてやる義理はない。

 

「頑張ったのにー!」

 

光については……もう言うことはない。完全に自業自得なので茜と一緒にトイレ掃除を頑張ってもらおう。

 

『それでは、国王選挙現在の順位を発表したいと思います』

 

司会者の言葉に何人かの兄弟達には緊張が走る。

 

『まずは10位から4位までを発表したいと思います!』

 

その言葉とともに順位が表示される。そこにあったのは下から修、輝、遥、岬、光、栞、奏という順番だったって――

 

俺出てないじゃん!なんで?王様になる気なんてさらさらないのに……

 

そして、隣にいる茜も同じ考えのようで、ビックリとした表情を浮かべている。

 

『続いて第三位は! 式様です』

 

俺三位かよ。なんか票を入れてくれる国民に対して申し訳なくなってくる……

 

「え……まだ呼ばれない」

 

隣の茜はさらに絶望めいた表情をしていた。しかし、茜がここまで残るなんて……ありえるか。茜は国民に愛されやすいキャラだし、やるときにはやってくれる子だからな。

 

というか隣の茜なんかめっちゃ祈ってるんだが……

 

『さて、注目の一位は葵様かそれとも茜様か?』

 

BGMとともにモニターに出てきた順位は、茜が2位。葵姉さんが1位という結果だった。

 

『1位は葵様!2位は茜様という結果になりました!」

 

まぁ、さすがに葵姉さんには勝てなかったか。

 

「よかった―!……って全然よくない!」

 

「そりゃそうだろうな」

 

茜のリアクションにツッコミを入れつつ、俺も俺自身の順位をみて、考えさせられるのであった。

 

こうして俺達のテレビ出演はようやく終わったのである。

 

 

 

「明日からトイレ掃除、そして2位……」

 

「全国にパンツ晒さなかっただけ感謝しろ」

 

「うぅ……それについては感謝の気持ちでいっぱいです」

 

家に帰って夕飯を食べているが、茜のテンションが低すぎて、つられて俺のテンションも低くなっていた。

 

「それよりも式。カメラのお金とか、体は大丈夫なの?」

 

「大丈夫だって、お金も色々な方法で稼いでるし、今日は調子悪くなかったからな」

 

「ならいいけど……」

 

茜は会話はしてくれるが、どうも食事が進んでいなかった。

 

「茜、食べないの?あなたの好物のハンバーグよ?」

 

「……」

 

母さんに対しても反応がないところを見るとかなり重症である。

 

「はぁ……」

 

いつものんきな修にまでため息を吐かれる始末だ。

 

「お前たちは王家に生まれてしまった以上、人の視線にさらされることとなる。そのことで大変なこともあるだろう。しかし、王族として最低限度の義務や責任が生じる。いずれお前たちの中から私を継ぐものも出てくるのだから。全員その覚悟はしといてほしい」

 

急に父さんがいいことを言い出した。こんなことをすぐに言える辺りさすがこの国を治める王様だと思いたいのだが……

 

「あなた、また王冠かぶってきちゃったの?」

 

家族内での話ではその王冠はなんかのギャグにしか見えないんだよな……台無しだよ色々と。

 

「いや、城には言ってありますから……」

 

「それ以前に持ってこない努力をしてくれよ。父さん……」

 

「ははは、面目ない」

 

こんな調子で夕食は過ぎていくのであった。

 

 

 

 

そして夜も更け、俺は自分の部屋で思い悩んでいた。

 

「俺が3位……」

 

王様になりたくない理由が理由なので家族の前で思い悩むわけにはいかなかったので、こうして今悩んでいた。

 

悩んでて思い出すのは、新年。父さんが選挙について発表した日だ――

 

 

 

 

「冗談かと思ったか? 前々から言ってただろう? 茜と式が高校卒業する時に国王選挙をするって、時間もあるしゆっくり頑張れよ」

 

みんなの前で父さんが笑顔で言ったが、俺からすれば信じられないような事だった。

 

なぜなら俺は本当の家族ではない。そんな俺が国王の候補に入るなんて信じられないことである。

 

「父さん、その選挙。辞退することはできなの?」

 

「えっ、式。王様になる気ないの?」

 

俺の言葉に兄弟たちは驚きを隠せないらしい。奏に至っては立ち上がるほどだ。

 

「それなら私も――」

 

「だめだ。お前たちは王族なんだぞ。しっかりとした理由があるならまだしも、それがないのに選挙に出ないことは許さんぞ」

 

茜の言葉を遮って父さんは全員が選挙に出るように言った。この言い方からして俺の本当の家族ではないというのは理由にならないという意味なのだろう。

 

「……わかったよ」

 

 

 

 

――こんなことがあったが、実際何もしなければ王様になることはないと思っていたが、蓋を開けてみれば3位である。

 

それだけ国民に期待されており、俺は裏切っているという意味だ。それだけで心が痛くなる。

 

「くそっ……」

 

そんなこんなで悩んでいると、急にドアがノックされる。

 

「式。起きてるか?」

 

どうやら相手は父さんのようだったので、俺はすぐに部屋のドアを開ける。

 

「何か用?」

 

「少し話さないか?お前の体も心配だったんだ。いくらなんでも今日は能力を使いすぎだったろ?」

 

「さっきも言ったけど大丈夫だよ」

 

さっき茜にも心配されたが、俺の能力である観念操作にはデメリットがある。

 

それは能力を使いすぎると頭痛がして、ひどいときは動けなくなるまでに悪化することもある。

 

だが、医者からはこのデメリットは奏のように元からあるものではなく、俺が偽物だから能力が中途半端になったのだと言われている。

 

もちろん、兄弟達には奏と同じようなデメリットと説明しているが。

 

「それならよかった。それで私に言いたいことがあるんじゃないか?」

 

「さすが父さん。お見通しって感じだね…… やっぱり俺は選挙に出るべきじゃないんじゃないかな。俺自身今は告白する勇気はないけど大人になったら国民全員に自分が父さんの子供でないことを説明するつもりだよ。もしそんな奴が王様になったら国民はきっと後悔すると思うんだ」

 

俺は今自分が思ったことを口にするが父さんはいつもの笑みを崩す気配はない。

 

「前も言ったと思うが、お前は俺たちの家族だ。これは誰に言われようが曲げるつもりはない。その時点でお前も王様になる権利はあるんだ。そして、さっき言ったが王族には義務や責任がつきまとう。お前にはそのことを理解してほしい」

 

相変わらず父さんは甘い。普通そんなことが簡単に世間に通じるわけないのに……

 

「もしもの時は、王の権限でどうにかしてみせる。お前は国民が認めるぐらい優しいやつなんだ。みんなも受け入れてくれるさ」

 

「無茶苦茶だよ。まぁ、だからこの家族が好きなんだろうけどね。……わかったよ積極的に王様になるとつもりはないけど選挙にはちゃんとでるよ。ありがとう、悩み聞いてくれて」

 

「その悩みは私と五月にしか相談できないことだからな。溜め込んだりせずいつでも相談してきなさい。それじゃあ、明日も早いから寝るとするよ」

 

「ああ、おやすみなさい。父さん」

 

「おやすみ。式」

 

そうして、父さんは部屋から出ていった。

 

そして、俺はベットに転がり、天井を見つめる。

 

「ほんといい父親だよな……」

 

父さんだけじゃない母さんも。事情は知らないけど兄弟たちも仲良くやっている。こんな日々が俺は好きでしょうがない。

 

「王様にはなりたくないけど、やっぱりこんな日常を守れる人間にはなりたいな」

 

そんなことを呟きながら俺は目を閉じ、明日のために寝るのであった。

 




やっぱりパパは優しいね!という回ですね。
そして、能力に欠点を加えています。不完全な能力というやつですね。(シャーロット程ではない)
次からはアニメ2話の話となります。ゆっくりとお待ちください。

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