この回の栞が可愛すぎて、やばかったですね。
それではどうぞ!
ある日の夕方。俺は寝込んでいた。
突然何を言い出すのかと思うかとしれないが、王家の能力を持つ者には不定期に来る
だが、俺にはそれがない。その代わりに一日中頭痛に襲われる時がたまにあるのである。頻度は一年に一度ぐらいであり、それが今きており俺は寝ているわけなのだが。
ついでにこの状態で能力が使えないわけではない。頭痛が増すが無理すれば問題なく使える。
「よりによって今日に引くのは運がないな……」
今日は中学生組と小学生組が学校の行事で、父さんと母さん。そして長男と長女である修と葵姉さんは公務で一日家を離れることになっており、今日は家に俺、奏、茜、栞の四人になるのだが。
茜は朝からすでに風邪でダウンしており、熱も出ている。栞はまだ小さく、俺はこの始末。まともに動けるのは奏だけになってしまう。まぁ、奏なら心配いらないと思っていたのだが……
「玄関、異常なし」 「キッチン異常なし」 「裏口異常なし」……
心配性の父さんはそう簡単にいかず、警備が何人もいる上に、父さんが玄関で粘るせいで家全体がうるさく、俺はゆっくり休めずにいた。
「くそ、父さん。心配性なのはいいんだけど、さすがにうざい……」
頭痛で苛々している俺は早く父さんたちを行かせるために部屋を出た。
「くそっ!式がいつも通りなら安心して任せられるのだが、あれではやはり不安だ」
「大丈夫よ。茜の看病も、栞の世話も私一人で十分だし、式は寝てるだけでいいから手間もかからないわ」
「しかし、警備が不安だ。そうだ、この部隊も今は任務がなかったな!」
「やめてよ、恥ずかしい!こんな能力者の巣窟に手を出すやつなんていないわよ!」
玄関で話し始めてから、すでに30分が経っている。
「いい加減にしてくれないか……うるさくて眠れん」
「式!起きて大丈夫なの!?」
「よくない。だから早く行って欲しい」
「はぁ、総ちゃん。心配しすぎよ。式ちゃんも起きてきちゃったしそろそろ行きましょう」
「さ、五月さんまで……なら、これだけは約束してくれ、奏お前の能力で未知のものだけは生成するな。万が一破産でもしたら……」
「パパ……早く行け!でないと明日から無視するから」
「は、はいぃ!」
ようやく折れた父さんが家から出て、俺はホッと一息つく、ようやく静かになった。
「はぁ……じゃあ俺横になるから」
「ごめんね式。起しちゃって」
「いいよ。気にしなくて。せっかくだし、居間で寝るよ。栞の近くにいた方がいいだろ」
「そう?なら私は茜の様子見に言ってくるわ」
俺はそのまま居間に移動すると、栞が出迎えてくれる。
「式お兄様、大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。頭が痛いだけだからねてれば治るよ」
そういいながら俺はソファに横になる。
「お兄様、私何したらいい?」
「気にしなくていいよ。今、奏が茜のこと見に行ってるから戻ってくるのを待ってような」
普通に会話をするのはいいのだが、頭が痛い早く寝たい……
「うわあああああぁあぁぁぁ!?」
「あっ、茜!どうしたの!」
「出てきたばかりのキャラがもう死んだ!」
「あんたも死ぬわよ!ちゃんと寝なさい!」
「う、うるさい……」
2人の会話が一階まで聞こえてくるってどういうことだよ……
くそ、めっちゃ頭に響いてくる……
「お兄様、いたいのいたいのとんでけ~」
すると、栞が俺の頭を撫でてくれる。
て、天使かこの子……あっなんだろう少し楽になったかも。
「どう?お兄様よくなった?」
「うん。よくなったよ栞。ありがと」
お礼に俺も栞の頭を撫でてあげる。すると栞は気持ちよさそうに笑う。それを見るだけで癒されるな。
「よくなったし、少し様子を見に行くか」
「うん!」
俺たちが階段を上がる頃には奏がちょうど部屋から出てくるところだった。
栞はそのまま奏の所に行くが、俺は階段で座って話を聞くだけにする。
「ん?どうしたの栞」
「茜お姉様風邪どう?」
「大丈夫よ、今薬飲んで眠ったところ」
「茜お姉様におかゆ……」
「そうね、おいしいの作らないとね。栞はそのまま大きくなってね」
「何言ってんだ奏。それより、おかゆ作るんだろ?」
「式!大丈夫なの動いたりして!」
「大丈夫。今は楽な方だから、用が済んだんなら俺は寝るとするよ」
俺はそのまま居間に戻り、今度こそソファに横になり、そのまま眠りにつくのであった。
「お兄様、起きて」
「ん~。どうしたんだ栞?」
俺が目を開け時計を見ると、そこまで時間は経っていないようだった。
「おかゆ、作ったの!」
そう言って栞は俺におかゆを渡してくる。さすがに栞が一人で作れるわけではないから奏と一緒に作ったのだろう。
「ありがと。栞」
俺は栞から器を受け取ろうとするのだが。なぜか栞は器をテーブルに置いてしまう。
「えっ……どういうこと?」
「あーん」
なぜかおかゆをスプーンですくって俺に向けてくる栞、いやすごく可愛いんですけど……
「栞、大丈夫だよ。お兄ちゃん一人でも食べ――」
「あーん!」
栞、たまに頑固な時があるからな。従うとするか。
「あ、あーん」
そして幼稚園の女の子におかゆを食べさせられる俺。情けなさ過ぎて心が痛くなってきた……
「お兄様、おいしい?」
「うん、おいしいよ」
しかし、栞の手前。笑顔を絶やすわけにはいかなく、俺はそのままおかゆを栞に食べさせてもらうのだった。
なんだろ、本当に心が病みそうだ色んな意味で……
「ごちそうさま。それで、奏はどうしたんだ?」
「奏お姉様は茜お姉様におかゆを食べさせに行ったよ。私は風邪がうつっちゃうから来るなって」
なるほどね。確かに栞にうつったらそれは一大事だ。
だが、それにしても上がうるさい。声ではないのだがなぜか物音がする。
「何してんだあいつらは?」
「お兄様、私見てくる!」
そう言って栞は居間から出て行ってしまう。しょうがない、俺もいくか。
俺が階段を上ろうとすると、栞が座っていた。そして、
「39度!熱上がってるじゃない!」
「うーん。大丈夫だよ。カナちゃん」
「待ってなさい!今、万能薬を――」
すごいな、あんなによくなってた頭痛がまたぶり返してきた。しかもその原因が姉にある辺り余計に頭を痛くする。
「栞、ちょっと待っててな」
俺は栞を置いて、無言で部屋に侵入して、奏の頭にチョップした。
「あいたっ!?式!何するの!」
「お前こそ何をしやがる。おかげでまた頭が痛くなって来てるんだよ。茜、大丈夫だよな?」
「うん、高熱だけどカナちゃんが万能薬なんて生成する必要ないよ。寝てれば治るよ」
「そ、そう、わかったわ。それじゃあ最高の名医を生成するわね!そうすれば2人とも……」
「「なにもわかってない!?」」
普段は完璧を目指してるくせしてどうしてこんなにパニックになってるんだ。
いくら家族思いとは言え今の俺にはめんどくさいことでしかない。
「もし、何か生成したら……逃げるよ全力で!」
「俺もだ」
「わっ、わかったわかったから2人とも無理しないで!」
すぐに逃げれるような体勢になる俺たちに奏は焦っているご様子だが。
「あれ?栞」
「栞、入ってきちゃだめでしょ……」
そんな中、栞は迷うことなく茜の方に歩いていき、ほっぺたにキスをした。
「「「えっ」」」
「元気の出るおまじない!」
「ふにゃあああぁぁぁ」
栞のあまりにも可愛い天使のキスで茜はそのままベットに横になってしまう。
栞、こんなこともできたのか!恐ろしい子!
「栞、そんなのどこで?」
「えっとね。お父様とお母様がやってたの」
「まさか、あの二人がね……」
奏は顔を赤くして、栞の頭を撫でていた。
それにしても、父さんと母さんは結婚して何年たっても仲がよろしいようで……
「栞、それ男の人にはやるなよ」
「えっ、お兄様にも?」
「そうだ――いや、兄弟ならいいぞ」
「式、今欲望の方が勝ったわね」
そ、そんなことはない!はず……栞が可愛すぎるのがいけないと俺思うんだ!
「それより、長居する理由はないだろ。俺はもうひと眠りするよ」
俺はさっきと同じくソファに寝転がり、目を閉じるのであった。
再び俺が目を覚ますと、時間はかなり経過していた。
「もう、こんな時間か。ぐっ……」
頭痛が始まってから半日ぐらい、そろそろ頭痛がピークになる時間帯である。
「お兄様、起きたの?」
そこにはなぜか栞がいた。いつもなら栞はもう寝ている時間のはずだが。
まぁ、起きてたいと思う時もあるか。奏が許可したのだから俺が口出すことじゃないか。
「ああ、頭が痛いけどな。奏では?」
「今、茜お姉様のところ」
そうか、といいかけたところで、上から物音がする。何してるんだ?あいつら――
そう考えていたが、ドアが開き。そこから、
「あ、茜お姉様?」
「あれ、カナちゃんは?」
「お前の所に行ってたんじゃないのか?」
ふーむ、どうも話がかみ合わない。それに何で上から物音が?
「いっつ……」
「式、大丈夫?」
「病人に心配されるほどじゃない」
そこまでいったところで……
「ぎゃああああああぁぁぁぁ!?」
「ぐっ、頭に響く……修か?」
いきなり、修の叫び声、何かあったのか――
「GO!」
次の瞬間武装した集団が家の中に入り込んでくる。ちゃんと思考ができれば状況判断もできたのだが、あいにく今の俺は頭痛により、思考がままならなかったので本能に従い――
「何してやがる!」
「うわっ!?」
俺はソファから起き上がり、侵入者に掴みかかりそのまま放り投げ、近くにいる2人に対しては能力を使い茜と栞の近くから吹っ飛ばす。
「がっ!」 「ぐっ!」
視界には銃で武装したやつが残り5人……思ったよりも多いか。
俺はその集団に能力を無理やり使ってでも排除しようとした瞬間。
「あんた達が脅威だぁ!」
奏のツッコムようなノリの声で、俺は目が覚めた。
「式様、私たちは護衛に選ばれた軍のものです!」
武装集団の一人が説明してくれてようやく状況が把握できた。
「全く。いきなり家に突っ込んでくるとはどういう用件ですか?」
「す、すいません!異常な悲鳴と熱源反応を確認したもので……」
「どうせ、瞬間移動で帰ってきた修にビビった奏がなんかしたんじゃないですか?あー頭痛すぎて頭冴えてはきた」
「にしても、式様。うちの部隊のやつら三人も撃退されるとはさすがです」
「ん。余裕ですよ。調子悪くなければさっきの状況も覆せる自信あったし、師匠に比べたらまだまだですね」
「あ、あの方に比べられたらさすがに……」
俺にボディーガードの技術から色々なことを教えてくれた師匠は、軍の中でも恐れられる存在らしい。
「まぁ、父さんの指示でしょうから、壊したものを元に戻してさっさと帰ってください。俺、横になりたいんで」
「「「す、すいませんでしたー!」」」
一応、奏のことを見に行ったらちょうど隊長と思わしき人が奏に通信機を渡したところだった。
あー、父さん死んだな。物理的じゃないけど。
「信用してくれてなかったんだ」
『ち、違うそういうことじゃなくてな。そうだお土産何がいいかな』
「もういいです、帰ったらお話しましょう」
『待って、かなで――』
通話は一方的に切られてしまい、その後軍隊の人たちも速やかに退散していくのだった。
「あー、気分最悪だ……能力使っちゃったから頭ガンガンする……」
「大丈夫式?ごめんなさい、ちゃんと父さんに釘をさしとくべきだったわ」
「いいよ。それより、俺もう寝るから、おやすみ」
俺はやるべきことをやったあと、自分の部屋に戻り、眠りにつこうとしたのだが、
なぜか部屋をノックする音がして体を起こす。
そこにはなぜか栞がいた。
「あ、あの。お兄様大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。それで何かあったのか俺の部屋まで来て」
「その……」
栞をよく見ると自分の枕を持っているのが見えた。奏は何をしてるんだ?
「私、奏お姉様は茜お姉様の看病してほしくてそれで」
なるほど、奏を追いだしたのか。でも、やっぱり一人で寝るのはまだ怖いか。可愛いな栞は
「偉いぞ栞。それじゃあお兄ちゃんと一緒に寝ようか」
「うん!」
俺のベットは一人用にしては比較的に大きいものなので、栞が入ってきても何の問題もない。
こうして、俺は栞といっしょに横になったのだが。
「……お父様」
横で栞はぐっすり眠っているのだが、俺は寝れずにいた。別に栞がいるからではなく、頭痛のせいである。
「あー、つらい」
そんなことをしていると、奏が俺の部屋にゆっくりと入ってくる。
「はぁ、やっぱりここにいたのね。一瞬焦っちゃったじゃない」
「よくできた子だけど。まだ小さいからなしょうがないだろ」
「し、式。起きてたの?」
「頭痛くて寝れないんだよ。でも、栞のことはいいから奏は茜の方に――」
「あんたも病人でしょ。茜なら大丈夫、さっき寝てるの確認したしね」
そういいながら、奏は俺の頭を撫でてくる。なんだろう、栞と違ってすごく恥ずかしく感じる。
「やめろよ、なんか恥ずかしい」
「いいじゃない。私、あなたのお姉ちゃんよ」
奏はそのまま撫でるのをやめてくれず、でもそのおかげなのか、頭痛が少し楽に――
俺はいつの間にかそのまま眠りについてしまうのだった。
次に俺が目を覚ました時にはまだ朝日が昇る前の時間だった。
「今何時だ……」
時計で時間を確認しようと思ったのだが、覚醒した俺の意識の目の前に映ったのはなぜか奏での顔だった。
えっ!?なんで、というか近い、顔近い!
一体何が起こってるんだと混乱したが、下の方を見ると俺と奏の間に栞がいて、栞の手がしっかりと奏の服をつかんでいた。
なるほど、これで動けなくなってそのまま俺のベットで寝たのか。それにしても――
普段家族の寝顔を間近で、まして奏というのがレアすぎて目が離せない。
しかし、そうも言ってられず。奏が目を覚まそうとしていたので、俺は視線を逸らす。
「ん?もう朝?」
「まだ日も上がってないよ。そろそろだと思うけど」
「そう、って!?」
何かを叫ぼうとした奏の口を咄嗟に手を出して塞ぐ。
「栞が起きちゃうだろ。全く人のベットに入り込みやがって」
「し、しょうがないでしょ。栞を起こすのはなんか悪いと思っちゃったのよ」
「そのまま栞見てろ。頭痛もよくなったから朝飯とかは俺がやっとく」
「ん、ありがと」
俺は栞に気付かれないように起き上がり、自分の部屋を出た。
はぁ、マジで緊張した。なんとか平常心を保てたけど、やっぱりあのスタイルといい、いつも見せない無防備な表情といい色々ヤバイ……
「ふぅ、何考えてんだ、切り替えろ俺!」
自分に喝をいれ、俺は朝日が窓から入ってくるのに眩しさを感じながら、朝の準備を始めるのだった。
一話でおさめようとしたら結構長くなりました。
というわけで式くんにブレイクアウトはありません。能力の制御がきかなくなると頭が痛くなってさらに能力が制御できなくなるという悪循環が作者の頭で浮かんでさすがにそれは危なすぎるなと思い、こういう形になりました。