12年前の話なので、式が家族のことを知る時ではなく。アニメであった過去回の部分に式がいる話になります。
城下町のダンデライオン、アニメ最初見ている時はこんな重い設定があるなんておもいもしませんでした。この作品も少し重めの設定をしていますが、この回と原作を読んで思いついた次第です。
それでは、今回もよろしくお願いします!
今から12年前俺が、いや俺たちがまだ小さかったころ。
あの時の奏は今とは全然違い言葉遣いで性格も全然違った。
そう、あの日も……
「茜!お姉ちゃんと一緒に外で遊びましょ」
「うん」
奏が茜を誘って外に行こうって話になったんだ。
でも、その時は父さんも母さんも葵姉さんも用事でいなくて俺たちは留守番を頼まれていたんだ。
「ダメだよ。留守番してろって言われてたろ?」
修もそのことをわかっていたから、奏を止めたんだ。
でも、あの時の奏は素直に聞いてくれるような性格じゃなかったからな。
「修ちゃんも一緒に行けば問題ないですわ」
「留守番の意味わかってる?」
「式も外に遊びに行きたいですわよね?」
「うーん、どっちでもいい」
そして、その頃の俺は色んな事に興味が薄く、ものすごい優柔不断な性格だった。
「ほら、式もこう言ってますわ!」
「はぁ、別に式が行きたいなんて言ってないだろ……」
「うるさいわね!お兄ちゃんのくせに偉そうにしないで!」
「しょうがないだろ。お兄ちゃんなんだから」
「たかだか30分早く生まれただけじゃない!」
「それでもお兄ちゃんだ」
このころの俺はこのやり取りを聞いて心底めんどくさいと思っていた。どっちでもいいから早く決めてほしいと、今の俺が小さかったら意地でも母さんたちの言いつけを守ろうしただろうけど。
「おいしー」
しかし、茜はそんななかでも茜は飴をなめていた。暢気だったな、今の性格と大差ないかもしれん。
「もう修ちゃんなんて知らない。茜ともう行っちゃいますからね。式もついてきなさい」
そう言って奏は茜の手を引っ張って行ってしまう。
「修兄、いいの行っちゃったけど?」
「しょうがない行くぞ。式」
こうして俺たちは近くの公園に行って遊ぶことになった。後ろに見覚えのある黒服の人がいたけど、俺は一切気にしなかった。
結構長い間公園で遊んでいて、俺は修とサッカーをしていた。
その時の修の夢はサッカー選手で、言うだけありサッカーがうまかった。
「奏、そろそろ帰ろうよ」
「確かにもう疲れた。そろそろ帰ろうよ、かな姉」
別に遊ぶのは嫌いじゃなかったがその頃の俺は確か母さんに怒られたくなかったから修の言うことに賛同したんだ。
「私たちはまだ遊んでいたいの!」
しかし、この時の奏はお姫様だから、拒否されると説得は面倒であり、俺は特に何もしなかった。
「母さんに怒られても知らないぞ」
「私帰る」
「えっ、ちょっと待って茜いいものを出してあげますわ!」
帰ろうとした茜に対して、奏は確か茜の好きなキャラの玩具を出したんだったな。
「わー、ローズタイフーンの変身セット!」
茜も単純だからそれにのせられちゃって、でも――
「そんなに能力を使うとお年玉なくなるぞ」
このころの奏はもちろん自分でお金を稼ぐ手段などなく、能力の使用は全部お年玉から出ていた。もちろん一般家庭に比べたら多いが馬鹿げた金額でもない限界なんてすぐに来るのだ。
「これママに見せてあげよう!」
「えっ!?」
そして、相変わらず茜は単純で空気も読めてなかった。
「茜もっといいものを出してあげますわ!」
「かな姉、もういいんじゃない帰ろうよ」
「うるさいわね!見てなさい!」
よく考えてみればなぜここで俺は奏をしっかりとめなかったのだろう。いや、どうせこの時の俺のことだ、めんどくさいとか考えていたんだろう。
奏はそのまま能力を使って公園の遊具よりも一回り大きなお城を建てた。かなりのものだったのでお金もかなりかかったことだろう。
「わああぁぁ、大きなお城」
「ふふふ、すごいでしょ!」
「入っていい?」
「もちろんですわ」
しかし、その城は上にのぼる階段はどこにもなく上に行く方法が一つもなかった。
「どうやってあそこまで登るの?」
「ああ~、私としたことが」
「ほら、貯金がなくなったんだ。しょうがない、お兄ちゃんが瞬間移動で上に連れてってやるよ」
「ほんと!」
茜はうれしそうに修の方に行くが、奏はその様子に納得がいかなかったんだろう。
「待って!私が階段を生成しますわ!」
「お前もう貯金ないだろう」
「かな姉、能力は使いすぎちゃダメだって父さんも言ってたよ」
俺はこの時自分の事を知らなかったが父さんたちも警戒していたのだろう。俺には能力の使用に対してできるだけ注意するように言っており、めんどくさがりの俺でもさすがに注意したが
「大丈夫!」
奏は完全にムキになっており、階段を生成してしまった。
「やった!」
「怒られても知らな――」
その様子に茜は喜び階段を上ろうとしたところで――
何本もあった城の柱がきれいになくなったのだ。
「「えっ!?」」
茜はそのことをただ呆然と見つめていただけで、支えを失った城の二階部分が茜だけでなく、奏にも当たるコースで落ちてきたのだ。
「止まれ!」
その時、俺は咄嗟の判断で能力を使ったが当時の俺の能力で持ち上げられるものは人一人ぐらいでしかなく、俺は力の限り城を支えようとしたが徐々に重力に負けて城は落ちてきていた。
「茜!」
修が茜を押すような形で茜を安全なところに突き飛ばした所で、
「ぐっ!?」
俺は生まれて初めて能力使用による頭痛に襲われた。ここまで無茶な能力の使い方をすることが初めてだったので頭が割れそうになる痛みにその場に崩れそうになるが。俺の視界には奏がいて事態を飲み込めず動けずにいた。
「かな姉!」
俺は最後の力を振り絞って、奏に覆いかぶさるように突っ込んだ。
その後俺の記憶はない。
目が覚めた時には病院のベットの上だった。
結果、茜をかばった修は足に大怪我を負い、日常生活には支障はないが激しいスポーツはできなくなった。俺は奏を庇った際、瓦礫が背中や頭に直撃したらしく、中々の怪我を負ったが背中に大きな傷跡ができたこと以外特に問題はなく修みたいな後遺症もなかった。
そして、修はサッカー選手になるという夢を断たれることとなった。
だが、その日から俺は変わった。自分がめんどくさがりで、力も使えないハンパものだったから修が足をダメにしたんだと。もし、そのままだったらまた同じことを起こす、そんなのは絶対に許せない。だから、
『家族を守れるような人間になりたい』
俺はそう願うようになった。まさか、力を使えない原因が俺の出生にあり、守りたいと思った家族はほんとの家族じゃないなんてあの時の俺は露ほどにも思わなかったけど。
まずは強くならないとと思い、格闘技などに手を出したり、今まで興味がなかったものも役に立つかもしれないと様々なものに手を出したり。自分にできることを何でもやる勢いだった。
「今振り返ると、俺も変わったもんだ。よく考えると色々違うけど今の輝と似たような思考だったのかもな」
昔を振り返り、帰り道夕陽を眺めながら俺は考える。
俺には王様になってまでやりたいことはない。俺が守りたいのは今の小さな平和だからだ。
でも、他のみんなは違う。光は目立ちたく、茜は静かに暮らすため、葵姉さんは俺と同じ考えなのかもしれないが……
皆それぞれ考えてる。でも、一番王様に執着してるのはどう考えても奏だ。
俺だけでなく奏でもあの日を境に変わった。お嬢様な性格も真面目になり。そして、王様になり修の足を治すこと、それだけに全てを捧げてもいいとすら考えてる。
危ういが俺にそれを止める権利はない、俺もそれ相応の無茶を重ねて来てるからな。
だからこそ、奏だけとは限らないが、俺が守っていけたらいいと思う。
紗千子と会い、再確認できたことに俺は感謝しつつ、俺は家に帰宅するのであった。
いうまでもなく式の人生の方向性が大きく変わる話でした。
もし、この事件がなかったら式はただのめんどくさがりやになっていたことでしょうね。
それではお気に入りなどよろしくお願いします。