城下町のダンデライオンー偽物の10人目ー   作:雨宮海人

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岬回になります。
この回の声優さんすごいですよね。分身一人一人の声が違って、特徴もとらえてて純粋にすげぇ!と思いました。
それでは今回もよろしくお願いします!


第15話

「なぁ、式。部活の助っ人頼むよ!」

 

いつも通りの放課後、俺はクラスメイトからサッカー部の助っ人を頼まれていた。

 

「今日はただの練習か?ならいいけど」

 

「もちろん!お前のプレーは部のみんなに刺激になるから頼んどいてくれって先輩に言われちゃってさ」

 

「ならいい。最近運動不足だったからちょうどいいし」

 

俺はこうして練習の時だけ部活に参加することが多い。もちろん部活に誘われたり、試合の時に助っ人として頼まれることもあるが、基本どの部活もメンバーは十分におり、助っ人の俺が入ることで試合に出れなくなるような選手がでる時は断っている。

 

前にも言ったが俺自身そこまでスポーツに執着がないのでそれで試合に出るのは失礼だと思ったからだ。

 

「助っ人といえば、中学生の方では岬ちゃん大活躍だって聞いたぞ」

 

岬の能力は最大7人までの分身を作れるというものだが、分身たちはそれぞれ何かしらに特化しているので部活をしている連中からすればかなり都合がいいだろうな。

 

「お前も岬ちゃんみたいに試合ときも……」

 

「断る。試合の時は出ないって言ってるだろ?出るのは、面子が足りなくてどうしてもって時だけな」

 

「はいはい、じゃあ頼むぜ」

 

こうして、俺はサッカー部でサッカーをしてから、帰宅するのであった。

 

 

 

「あー、久々にいい運動した。ただいまー」

 

少々遅くなってしまったが、玄関を靴を見る限りまだ帰ってないやつも多かった。

 

「あっ、式おかえり。今日真島さんが来るんだ」

 

茜が出迎えてくれる。真島さんとは王族専属のライターをやっている人です。父さんの高校時代の後輩らしく、俺も何度も会っている。

 

「ん?インタビューか。葵姉さんと奏はまだ帰ってないみたいだが」

 

「うん。だから岬に頼んだんだよ」

 

「岬か。なら別に問題ないな」

 

俺がかわってやってもよかったが、もう頼んでしまっている以上俺の出る必要性はないだろう。

 

俺は階段を上がり自分の部屋に入ろうとするが。

 

「聞いてよ遥!みんな勝手だと思わない?……もう!なんで聞いてくれないのよ!帰れよ!バーカ、バーカ!」

 

「またかよ……」

 

遥と岬の部屋から今回は岬の声が聞こえる。ほんと騒がしいったらありゃしない。

 

俺はノックしてから、扉を開ける。

 

「岬、入るぞ。遥もいたのか。そして、これはどんな状況だ?」

 

部屋に入ると、遥は普通に椅子に座っていたが。岬はなぜか八人いた。いや、今一人下に降りて行っちゃったけど。

 

そして、他の分身たちもそれぞれ勝手に動いていた。色欲のシャウラなんかは遥に抱きついてる始末だ。

 

「あんたたち!勝手なこと言って――あれ?あいつどこ行った!?」

 

「一人なら下に行っちまったぞ?」

 

「回収してきて!」

 

岬にしては珍しく機嫌が悪そうなので俺は下でポテチを食っていた暴食のブブを回収してくる。

 

「私の愚痴を聞いてもらうために呼んだんだから座りなさいよ!」

 

「自分に自分の愚痴言っても仕方ないと思うんだけど?」

 

「どうせ、しょうもない悩みなんでしょ。贅沢の極みね」

 

「そうそう、もっと気楽にいきましょうよ」

 

分身に岬はボコボコに言われ、シャウラに至っては遥に抱きついたままである。

 

「座れって言ってるでしょ!……もういいですよ!皆さんどうぞご勝手に!」

 

「ゴメン悪かったわよ」

 

「一旦落ち着きなさい」

 

「食べる?」

 

「うるさい!どうせ頼られるのは分身で私は誰にも必要とされてないんだ!」

 

なるほど、そういう悩みか。それを聞くだけでまさかここまで時間を使うとは。

 

ついでに俺もなぜか分身たちと同じように座らされていた。

 

「は?なんだよ、今日も学校でモテモテだったじゃん」

 

「それはあんた達のことでしょ!私はあんたらのおまけかっつぅの!」

 

いや、おまけはどちらかといえば分身だろ……

 

分身たちもこれには呆れているようで、だるそうな表情である。

 

そんな中ノックの音がして、茜が部屋に入ってくる。

 

「岬ー、真島さん来たからお願いね」

 

「嫌だ」

 

「うん、じゃあ下で待ってるから――えっ!?」

 

茜は部屋から出ようとして、自分の聞き間違いかと岬の方を見るが岬は無反応である。

 

「反抗期きたあああああぁぁぁぁ!?」

 

「茜、間が悪すぎだ」

 

「私じゃなくても式兄帰ってきたんなら代りにやってよ」

 

「嫌だ。茜に頼まれて承諾したのは紛れもなくお前だ。自分の言葉に責任を持て」

 

「うっ……でも私がいつもインタビューやってるし」

 

「それはお前がそう思っているだけだ。俺もたまにやってる」

 

「じゃあ、いつもやってないあか姉やってよ」

 

「はぁ、お前な……」

 

「だめだよ。こういうのは岬が――」

 

「ままま、式君も茜ちゃんも今日は私が代りにやるから」

 

「えっでも!?」

 

「いいの、いいの」

 

シャウラに押されて、そのまま茜は部屋から出ていってしまう。

 

しかし、シャウラと茜でインタビューか、絶対に無理だな。フォローしてもいいがダメなら戻ってくるだろうし放置でいいか。

 

「あのさー、必要されてないとか言ってるけどさ」

 

「ごめん、それは私の我儘。私って何やっても平均以下だから勉強も運動も頭もスタイルも全部普通。お姉ちゃん達やあんた達が羨ましかったんだ」

 

「まぁ、確かにわからんでもないが――」

 

「いいんだ、普通の私が特別な人間に話しても理解されるわけないよね」

 

普通の人間が分裂とかするかよ……

 

にしても、今の言葉は少し俺の癪に障ったな。

 

「なぁ、岬。お前は俺のこと特別な人間だと思ってるのか?」

 

「それはそうだよ。運動もできて頭もいいし、みんなからも人気者。どう考えても特別じゃない」

 

「それは俺が努力したからな。勉強も運動も俺は岬よりは努力している自信がある。特に俺は勉強は苦手だからないい成績とるためには普通の人より何倍も勉強しなきゃって思ってる」

 

「それも才能だよ。努力できる才能、十分特別じゃない」

 

「じゃあ、岬にもあるな。才能。お前の分身たちができることがお前にできないなんてことは絶対にないだろ。やろうと思えばできる、お前がやろうとしないだけだ」

 

「うっ……うぅ」

 

岬は完璧に叩き潰されてしまったようで、今にも泣きそうな声をあげる。

 

ここらへんでいいだろう。と思い俺は遥の方を見る。

 

岬を励ますのは簡単だが、その効果が絶大なのは俺ではなく遥だ。遥に任せるとする。

 

「いいじゃん普通で。ていうか僕の周りは変なやつらばっかりで、だから逆に岬が特別なわけで、岬が『岬』じゃなかったら僕は困るんだけど」

 

さすが遥。こういう時の口まわしは上手で助かる。茜とかではこうはいかないだろう。

 

「それに必要されてないっていうけど――」

 

遥がそこまでいいかけたところで、茜とシャウラが部屋に突撃してくる。

 

「ねぇ、岬やっぱりインタビューやって!葵姉ちゃんは無関心だし、カナちゃんは偏ってるし、式も頼りになるけど一度言ったこと曲げない頑固者だし、この子に至ってはエッチな回答しかしないんだよ!」

 

「客観的に物事が見れて、社交性のある岬にしか頼めないんだよ!」

 

茜と遥は見事なまでに社交性ないしな。

 

「遥~、茜ちゃんにメチャクチャ怒られちゃった、慰めて~」

 

そして、シャウラは遥に抱きつくと、相変わらずだな~

 

「そこ、勝手に何してるの!?」

 

「あなたが本心からしたいことをしてるだけよ?現に式君にはしてないでしょ?」

 

「しないでよろしい」

 

「わ、私はそんなこと思っとらん!」

 

「何言ってるんだ。自分がオマケとか私たちが羨ましいとか言ってたけど、私たちみんな岬の一部なんだぜ」

 

そう言われると岬は顔を真っ赤にしてしまう。やっぱりこの双子は仲がいいな。

 

あっ、またブブがどっか行っちゃったぞ……

 

「もう、行けばいいんでしょ!全くみんな私がいないとだめなんだから!はいはい、自由時間終わり!全員中にもどれって……また一人いねぇ!?」

 

「さっき降りていったぞ」

 

「それじゃあ、いってくるね!」

 

いつも通りになった岬は笑顔で部屋から出ていくのであった。

 

「ふぅ、やっぱり岬には僕がいないとだめだな」

 

「そうかもな。そして、なんの予知をしてたんだ」

 

俺はずっと座っていたが、立ち上がり遥のノートを見る。そこには岬が立ち直る確率があった。

 

結果は立ち直る確率100%。能力を使うまでもなかったかもしれないがな。

 

「眠い……」

 

すると、いきなり岬のベットから怠惰のベルが起き上がってくる。どうやら回収し忘れていたようである。

 

「うわぁ!回収し忘れてる!?」

 

「ほれ、さっさと岬の所に戻れ……」

 

俺は能力を使って怠惰のベルを岬の元まで送る。

 

「それにしても岬じゃないけど、僕も式兄さんは少し羨ましいと思うよ」

 

「ん?なんのことだ?」

 

読んでいた本を置いて、遥がいったことに。俺は首を傾げた。

 

「家族のこと何でもわかってるようで、岬を励ますためにあえて恨まれそうな役を買ってたしね」

 

「そんなことねぇよ。まぁ、俺は家族を大切に思ってる自覚はあるけど、うらやまれるようなことじゃない」

 

確かに俺は家族のことを知りすぎてるところがある、でもそれは俺自身が本当の家族じゃないから。だから理解するためにしてきたことなので、羨ましがられるなんてお角違いにも程があるのだ。

 

「それに、お前も岬がいないとだめだろ。相談することはちゃんと相談して、お前もはやく姉離れできるように頑張れよ」

 

「ほんと、式兄さんには敵いそうにないや」

 

そうやって俺達兄弟は笑い合うのであった。




アニメ5話終了になります。
6話はかなりオリジナルを加えているのでアニメと違う話が多々ありますが楽しみにしてくれると嬉しいです。

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