城下町のダンデライオンー偽物の10人目ー   作:雨宮海人

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今回からアニメ5話。水着回です。
しかし、水着の描写をしてないことに今更気付いたが気にしない。
それでは今回もよろしくお願いします!


第13話

時は夏になり、我が家もバカンスのためにどこかの南の島に来ていた。

 

なぜ明確な場所がわからないかというと、修の瞬間移動でうちのプライベートビーチとやらに移動してしまったからです。

 

つまり、この場所をしっかりと把握しているのは修だけというで、俺は一抹の不安を抱えているわけで。

 

そんな、俺は海パンを穿いて、パーカーを羽織っており。のんびりとみんなが遊んでいる姿を眺めていた。

 

みんな、ビーチボールをしたり、貝殻集めをしたり、パラソルの陰で休んでいたりそれぞれ海を満喫しているようだった。

 

「うちプライベートビーチなんて持ってたんだ」

 

「人目を気にせずのんびりできるようにっていう親父の配慮だよ」

 

それにしては、今まで聞いたことがなかったことや。いくらプライベートビーチといえどあの心配性の父さんが警備の一つも置いてないなど、不審な点が多すぎるわけなのだが。

 

「葵姉様、これ」

 

「わぁ、綺麗な貝殻ね」

 

純粋に楽しんでいる葵姉さんや栞の方を見ているとこんなことを考えてる自分が嫌になってくるわけで……

 

「どうしたの式?随分とおとなしいけど?」

 

近くにいる奏が話しかけてくる。その姿はもちろん水着なのだが、なんというか直視しずらいので、俺は茜たちの方を見ながら会話を続ける。

 

「何でもないよ奏。別にのんびりしてたいだけだよ」

 

「ならパラソルとイス生成しようか?」

 

「いいよ。座っているだけで十分だし」

 

「スイカわりしようよー!」

 

ちょうどいい、タイミングで光が提案してきたので俺は思考を切り替えることにする。

 

「いいねー!」

 

こうして、兄弟でスイカ割りをすることになったのだが、遥は参加する気がないようで本に何か書いていた。

 

遥は能力を使った時すぐにメモするものがあると書く癖があるからな。何か予知したのだろう。

 

「何を予知したの?」

 

奏も気になるようで、遥の近くに行き本を覗き込むようにして話しかける。

 

「スイカを割る確率だよ」

 

「ふーん、栞80%!?でも、確率が全てじゃないしね」

 

栞の確率高いな。少し気になる。

 

「遥、俺にも見せてくれ」

 

俺も遥の本の中を見るとそこには奏が50%と栞が80%とある以外他のみんなの確率はかなり低く。俺に至っては0%だった。

 

「あれ?俺0%か、まぁ、そんなにやる気はなかったけど」

 

何かやる前から0%とか言われるとそれを覆したくなるが。栞が80%ならこんな体験あんまりないだろうし栞に割らせてやりたいな……なるほどだから0%なのか。

 

ここは、遥の確立に沿って栞に割らせてあげるとしよう。

 

「スイカ割り始めるよー!」

 

茜の声とともにスイカ割りが始まる。順番は輝、光、岬、茜、修、葵、奏、栞、俺の順番だった。

 

あっ違う、これ俺の意思とは関係なく俺に順番が回ってこないやつだ……

 

まぁ、どうでもいいから眺めているとするか。

 

「うおおぉぉ!」

 

輝の確率は8%、力み過ぎて見当違いの方に行ってしまい。当たる気配すらなかった。

 

「それー!いっけなーい外しちゃった!」

 

光は2%、光もアイドルっぽく外すのが前提だったから確率が低かったのか……

 

「はぁーー!」

 

岬の確率は5%、しかし、ある意味確率を超越するように振りかぶったバットはすっぽ抜けてしまい。遥の座っている所に直撃しかける。あぶねぇな……

 

「茜ちゃん頑張れー!」

 

「姉上もっと右です!」

 

「行き過ぎだよー!」

 

「ちょっと左ー!」

 

「ええと、右で行き過ぎで、ちょっと左?え、えっ、えい!」

 

10%と高い確率だった茜も周りの言葉に惑わされすぎてしまい。スイカとは違う場所でバットを振ってしまう。

 

「よいしょっと!」

 

「兄上おしい!」

 

「葵お姉様、頑張って」

 

「えい!あれ?外しちゃった」

 

1%であった修と葵姉さんも外してしまう。しかし、二人の実力なら割れそうな気もするのだが、動きが明らかにわざとであった。二人とも俺と同じく栞に割らせる気だっだのだろう。

 

というか葵姉さんの反応が光以上にあざとい……しかも狙ってない辺りさすが葵姉さんである。

 

そして、とうとう奏の番になる。さっきのセリフといい、50%の確率といい。絶対にやる気であろう。

 

「ふっ……」

 

「ひっ!?」

 

案の定、奏では遥に向けて悪い笑みを浮かべる、やる気があるじゃない、殺る気に溢れてる……

 

遥は能力の都合上それに頼る節があるからな。奏はそれが全てじゃないことを教えてやろうとしてるんだろう。相変わらず優しい……と思う、たぶん、おそらく……

 

あそこまで殺る気に溢れられると悪意しかないように見える……

 

奏は茜に回された後、みんなの誘導で、いや、全くぶれない足取りでスイカに向かって行ってる。

 

全て完璧だ。これは割れたか!?

 

「とおぉぉ!」

 

奏が振り下ろしたバットがスイカに直撃する!しかし――

 

「えっ!?うそっ!?」

 

「割れてねぇ……」

 

思わず口に出してしまうほどだった。あの速度で振り下ろされて割れないって栞じゃ到底割れないんじゃ……

 

「根性のあるスイカね……」

 

奏の番は終わり、次は栞の番となる。

 

「次は栞ね」

 

「いけぇー!」

 

「頑張れ栞ー!」

 

みんなが応援するが、どうも栞の表情は嬉しそうじゃない。なぜだ?

 

だが、栞はぶれない足取りでスイカの前にまで到達する。

 

みんなもそこだーと応援するが。なるほど、栞の能力でスイカと対話すれば近づくのは余裕か。

 

でも、栞はそこで動きが止まってしまう。あー、栞は割られるスイカが可哀想なのか。優しいな栞は、

 

しかし、あのスイカはどうせ食べられる運命だしな~。まぁ、遥を信用して見守るとしますか。

 

少し待つと、ようやく決心した栞が触るようにスイカを叩くのであった。

 

「のおぉぉぉ!」

 

「あれじゃ割れないわね」

 

「さすがに無理か。次は俺の番――」

 

といいかけたところで、スイカが綺麗に10等分されるのであった。

 

いやいやいや、えっ!?何あれ切れ込みとか入ってたの!?

 

「えっ!?」

 

「割れた~!」

 

「よし!」

 

「綺麗過ぎじゃない……」

 

何はともあれスイカは割れたのでの、みんなでスイカを食べることになり。食べ終わった後またみんなは遊んでいた。

 

栞は砂浜にスイカのお墓を作っていた。

 

「栞、お墓作ってるのか?」

 

「うん、スイカさんのお墓」

 

お墓というのことは何かが埋まってそうだが、プライベートビーチだしいいか。本当ならダメだけど。

 

「栞は優しいな」

 

そう言って栞の頭を撫でると、栞は気持ちよさそうな顔になる。その顔が可愛すぎて困るんだが……

 

「茜ちゃん、ビーチバレーやろうよ」

 

「いいよ~」

 

「茜、あの仕切りの向こうには行くなよ」

 

「わかってるけど、あれってなんなの?」

 

「気にするな」

 

修の言葉に疑問を覚えた俺は、何となく仕切りの柵に対して能力を使ってみるが……

 

「能力が使えない?いや、能力は発動してるのに柵に力がいってない」

 

あれだけ小さな柵を少し動かそうとしただけなので、まるで壁に力を使ってるみたいな……

 

なるほどそう言うことか。修のやつ随分と面倒なことをしてくれる。まぁ、善意でやってるかもしれんし黙っといてやるか。

 

「あー、光どこに飛ばしてるの!」

 

「茜ちゃんお願ーい!」

 

「オーケー!私の跳躍力に任せなさい!」

 

「おい、茜話し聞いてたか!?」

 

「うわぁー、結構伸びる!」

 

だめだ、茜のやつ話聞いてないな。しかもあのボールの軌道だと……

 

「待て茜!それ以上は――」

 

「大丈夫、大丈ぶううううぅぅ!?」

 

やっぱりぶつかった。これはもう言い訳しようないな。

 

「修、ちゃんと説明しろよ」

 

「式、お前気付いてたのか……」

 

「えっ、なにこれ……」

 

茜は自分のぶつかったビーチの絵が書かれてる絵を見ながら首を傾げていた。

 

「気付いてしまったか。ここは南の島ではない。近所の空き地に建てたプレハブの中だ」

 

そんなことだろうと思った。でも、パッと見てわからないからよくできている。

 

それに、砂も海水も本物だった。無駄に凝っているなほんとに。

 

「えー!私たちを騙してたの!」

 

「兄弟揃って海なんて警備が大変だからな」

 

「いや、この偽物ビーチにも金かけすぎだろ。どっからこんな金出したんだ?奏か?」

 

「私がこれ作るためにお金払うわけないじゃない」

 

「だよなー」

 

「そんなことよりも。ひどいよ!騙すならもっとばれないように努力してよ!」

 

「そっちじゃないと思うけど、光がここまで怒るのは相当だと思うよ!」

 

「大丈夫だ。砂と海水は本物だ」

 

「なら、いっか」

 

「光、丸めこまれてるよ!」

 

「別に隠さなくてもいいのに、楽しければそれでいいし」

 

いや、茜お前は気付いてないからそうかもしれないが、これには絶対裏があると思うんだけど。

 

「悪かった純粋に楽しんでほしかったんだよ。でも、さっき式が言ったように金がかかってるから、代わりにテレビ中継されてるけどな。式にばれたら壊されそうだったから超高性能の小型カメラでだけどな」

 

「えっ!?」

 

「やっぱりか。しかも、俺にばれないためにそこまでするとは、最初から相談してくれればなにも言わなかったというのに」

 

「いや、そんなことより、修ちゃん。今、テレビって……いやぁぁぁぁ!?」

 

パニックになった茜はここから逃げるように空を飛んで行くが、ここはプレハブの中であることをもう忘れているらしい。

 

「ぶっ!?」

 

「「あっ!?」」

 

そのまますごい勢いで壁にぶつかってしまう。そして、空が割れた。比喩ではなく物理的に……

 

「やっちゃったよ……はいこれ葵姉様羽織っときな。奏でも、なんか上着生成しとけ」

 

「あ、ありがとう式くん」

 

「……そうね」

 

葵姉さんは俺からパーカーを受け取り、腕を通さず羽織り。

 

奏では俺を背中を少し睨んだ後、自分の上着を生成していた。

 

そして、大きな音を立ててプレハブ小屋は倒壊するのであった。

 

場所は把握してなかったが、結構街中で人の視線にさらされる。これは茜じゃなくてもちょっと恥ずかしいな。

 

ということは茜は……

 

「いやああああぁぁぁぁ!?」

 

さっき以上の悲鳴を上げて、その場にへたり込むのであった。

 

「修、まずは茜とか瞬間移動で家に戻してくれ、収拾がつかん」

 

「わかったよ……」

 

修が回収作業を始めるけど……もうこれ収拾うつけようないな。

 

どうしようもなくなり、俺は頭を押さえるのであった……

 

 

 

 




プレハブの中に海を再現。しかも簡単に気付かないレベルのものを作るのってすごいお金かかりそうですよね。
作者は今年海行ってないです。というか基本人生で海に行った回数が少ない笑

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