秋色の少年は裁定者の少女に恋をした   作:妖精絶対許さんマン

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CCCコラボ、思ったよりはやく開催しそうですね。その前に英雄王を当てねば・・・・・・。


集積学園 Ⅳ

翌朝。織斑一夏にはIS学園の生徒達は前日と変わらず登校しているように見えている(・・・・・)。世界は少しずつ、確実に変化しているのに、織斑一夏は気づけない。

 

「山田先生はしばらくの間、休職される。山田先生が担当されるはずだった全ての授業は以降、私が担当することになった。質問があるものは居ないな?では、今日の授業を開始する」

 

織斑千冬は山田真耶が休職することを淡々と告げ、授業を始める。他の生徒達も内心でホッとしている。昨日の山田真耶から発せられた殺意は生徒達に深い傷を残していたからだ。

 

(ふざんけんな!こんな展開、原作(・・)には無かった!!どこのどいつだ!!俺のハーレム伝説を邪魔するゴミ野郎は!!必ず見つけ出してぶっ殺してやる!!)

 

織斑一夏は気づかない。自分が一番の異物だと言うことに。彼の英雄王が『織斑一夏』の姿を見たら、醜悪と断じ、即殺されていただろう。それほど、『織斑一夏』の魂は磨耗し、淀み、薄汚れていた。

 

(まあ、良い。山田先生が居なくなったとしても、俺のハーレム伝説には支障はねぇ。箒はとっくに俺にベタ惚れだろうし、鈴はもう喰ってる(・・・・)、セシリアは気に入らねぇが喰って(・・・)から適当に調教(・・)して弾にやれば良い。シャルロットはじっくりと可愛がってやる。俺はロリコンじゃねぇがラウラもメインヒロインだからな、喰って(・・・)から地元の不良どもに回せば良いか)

 

何度も言うが、織斑一夏は気づかない。彼のいう原作(・・)なら、昨日の時点で二人の少女が彼に接触しているはずだった。だが、彼に接触しているのはセシリア・オルコット一人だけ。すでに原作(・・)から解離していってることに、織斑一夏は気づいていない。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「・・・・・・・・・・」

 

窓際の席に座る少女は冷めた視線で織斑一夏を見ている。

 

(・・・・・・気持ち悪い)

 

少女は視線を織斑一夏から外し、机に視線を向けながらそう思っていた。

 

 

ーーーーーー篠ノ之箒

 

 

ISの生みの親、篠ノ之束の実妹。彼女の実家は神社であり、生れつき霊感が強い。実姉の篠ノ之束より、霊感が強いだろう。そのためだろうか。彼女は織斑一夏に本能的な嫌悪を感じていた。

 

(・・・・・・アイツじゃなくて、秋がISを動かして、春華もIS学園に入学していれば、あの頃のようにまた、三人で楽しく過ごせていたのだろうか?)

 

篠ノ之箒は夢想する。遠い過去、過ぎ去った温かな日常を。篠ノ之箒はISなど望んでいなかった。篠ノ之箒が望んだモノ。それは、平凡で、温かな日常だった。

 

 

 

 

 

ーーーーーー篠ノ之箒は夢想する、このIS学園(鳥籠)で。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ルーンが消えてる・・・・・・『幽霊』が現れたのか」

 

秋は昨日設置したルーンがある場所を訪れていた。

 

「手がかりなし・・・・・・困った」

 

秋はフードの上から頭を掻く。

 

「昨日現れた『幽霊』は撃退できたことは出来たみたいだね。・・・・・・ルーン魔術で撃退できる存在を『幽霊』と言っていいのかは疑問だけど」

 

そもそも『幽霊』とは厳密にいえば不可視の存在では無い。『幽霊』とは人間が死に逝くとき肉体、陰性の『魄』から離れた陽性の『魂』が天に昇る過程において、『魂』が現世への未練、まだ生きたいという執念がギリギリ形をなした存在。知性はなく、ただ虚ろに彷徨う浮遊霊となる。霊感がある人間や霊脈の流れが強い場所ではうっすらとだが視認することができる。だが、『幽霊』のカテゴリーの中で最も質が悪いのが憎悪に染まった『魂』(・・・・・・・・・・)だ。

 

「・・・・・・少し攻めてみるか。術者にも会えるかも知れないし」

 

昨夜と同じように『風』のルーンを刻みながら、木々の間を歩いていく。まだ見ぬ魔術師との殺しあいを想像しながら。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「秋さんは・・・・・・何故、進学されなかったんですか?」

 

「・・・・・・唐突だね。別にこれといった理由はないよ」

 

夜。『幽霊』が出現する時間まで秋は虚の部屋で待機していると、虚が話しかけてきた。

 

「蒼崎さんは何も言われなかったのですか?」

 

「何も。先生とは戸籍的には親子ってことにはなってるけど放任主義的なところがあるからね。進学するかしないかは自分で決めろってさ。だから、僕は進学しなかった」

 

もちろん、担任の教師や同クラスの何人かが進学するように勧めてきたが、秋は進学の話を蹴った。

 

「・・・・・・魔術師だからですか?」

 

「それもあるね。僕は士郎さんや凛さんみたいに器用じゃない。非日常(人殺し)をしながら、日常を過ごすことなんて出来ない」

 

魔術師は闇に生き、闇で死ぬ。光の中で生きている人々は秋にとって、眩しすぎる。手を伸ばそうと、届かぬ世界なのだから。

 

「時間だね。布仏さん、窓を閉めきってカーテンを引いておいて。妹さんにも伝えておいて」

 

秋は緑の外套を羽織り、窓を開けて出ていった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「これが『幽霊』か・・・・・・数が多いな」

 

校舎に続く歩道には『ナニカ』達ーーーーーー秋や虚が『幽霊』と呼んでいた者達が歩いていた。

 

「襲ってこない・・・・・・?」

 

『幽霊』達のほぼ真ん中と言っていい場所に秋は立っているのに、『幽霊』達は襲いかかってくるどころか、秋の横を素通りしていく。

 

「まさか・・・・・・」

 

秋は一つの可能性を思い付かんだ。それが外れていてほしいと願い、腰から鎖で吊るしている『夜天の書』を起動する。『夜天の書』のページが勢いよく捲れていき、とある英霊のページで止まった。

 

「宝具展開ーーーーーー己が栄光の為でなく(フォー・サムワンズ・グロウリー)

 

秋の姿が黒い靄に覆われていき、やがて姿を変えていく。靄は晴れ、そこには伽藍の堂の居候の一人、『織斑春華』が立っていた。

 

「女・・・・・・!」

 

「女ダ!」

 

「殺セ!!殺セ!!殺セ!!殺セ!!殺セ!!殺セ!!殺セ!!殺セ!!殺セ!!殺セ!!殺セ!!殺セ!!」

 

『幽霊』達は『織斑春華』に襲いかかる。『織斑春華』に一番近かった『幽霊』は『織斑春華』に触れようと半透明な手を伸ばす。

 

「ふっ!」

 

一閃。半透明な『幽霊』の手は『織斑春華』が両手に握っていた陰陽二振りの短剣が切り落とした。

 

「・・・・・・そうか。お前達は、君達は・・・・・・」

 

『織斑春華』に化けていた秋は春華の姿のまま、『幽霊』達に憐憫の視線を向ける。

 

「でも、依頼は依頼だ。君達は現世に留まっていてはいけない」

 

秋は干将で目の前の『幽霊』を切り裂く。莫耶を投擲、奥から走ってくる『幽霊』の胴体を切り裂く。

 

「オオオオオォォォォ!」

 

「ーーーーーーっ!起動せよ(セット)身体強化・Ⅱ(ブースト・ツヴァイ)

 

後ろから掴みかかろうとする『幽霊』を魔術で強化した脚力でバック転するように飛び上がり、『幽霊』の背後に立つ。『幽霊』は振り返ろうとするが、投擲された莫耶がブーメランのように戻ってきて、『幽霊』の胴体を再び切り裂く。

 

「はあっ!」

 

左右から迫る『幽霊』を斬り捨て、近くの木に飛び乗る。

 

(本当は使いたくないけど・・・・・・)

 

秋は『太陽』のルーンを空中に書く。ルーンは太陽の如き光を放ち、木の回りに集まっていた『幽霊』達を消し去っていく。

 

「・・・・・・ふぅ」

 

秋を黒い靄が包み、春風の姿から秋の姿に戻った。辺りに『幽霊』が居ないことを確認して、木から飛び降りる。

 

「女ハ・・・・・・死ネェェェェェェェェェ!!!!」

 

「しまっ!?」

 

木の裏に隠れていたのか、『幽霊』の一人が秋を掴まえようとする。秋はとっさに身を引くが、『幽霊』の指先が顔を掠めた。その瞬間、『幽霊』の記憶(呪い)が秋の中に流れ込んできた。

 

『ちょっとアンタ。今、私をいやらしい目で見てたでしょ?』

 

『えっ?み、見てないですよ』

 

『嘘つくんじゃないわよ!誰か来てください!!この男にレイプされそうになりました!!』

 

『幽霊』の記憶(呪い)の中で女性が男性の腕を掴み上げ、大声で叫ぶ。回りはショッピングモール。目撃者は大勢いるが誰も助けようとしない。二人から目を反らし、足早に去っていく。

 

『何の価値もないアンタみたいな男はレイプ魔の汚名でも背負って死になさい、屑』

 

女の口元に嘲笑を浮かべ、その場を去っていく。その後はトントン拍子で話が進んでいった。男性は警察に連れていかれ、証拠不十分で釈放された。だが、男性の人生はこの事件のせいで、レールを外れていった。

 

『女が憎い・・・・・・!ISが憎い・・・・・・!篠ノ之束が憎い・・・・・・!白騎士が憎い・・・・・・!ーーーーーー人間が憎い!!』

 

「ーーーーーー!!!!!」

 

秋は黒鍵で『幽霊』の首を切り落とした。『幽霊』は霞のように消えていった。

 

「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・!!」

 

秋は顔を青くし、荒い息を吐く。それほど、『幽霊』の記憶(呪い)は強烈だった。女性への怨念、ISを生み出した篠ノ之束への憎悪、生者への嫉妬、負の感情が秋の中に流れ込んでいた。秋はとっさに橙子に叩き込まれた精神防御の魔術を使い、『幽霊』の精神汚染を防いだ。

 

「きっついなぁ・・・・・・」

 

秋は気力を振り絞り、太い木の枝に飛び乗る。幹に『太陽』のルーンを刻み、幹に体を預け、目蓋を閉じていく。『幽霊』から流れ込んできた記憶(呪い)を忘れるように。




・篠ノ之箒

原作(・・)ではメインヒロイン。一夏と春華、秋とは幼馴染み。生まれながらに霊感が強い。そのせいか、『織斑一夏』に当初から何故か不快感を抱いていた。秋には恋愛感情は無く、あくまで仲が良い異性という認識。この作品ではモッピーではない。

・山田先生の休職

島に張られた呪いの結界と、千冬に押し付けられる形で仕事が増え、ストレスのせいで体調を壊し休職。

・『幽霊』の考察

あくまで独自の考えです。過度なツッコミはやめてください。

・『太陽』のルーン

ロード・エルメロイ二世の事件簿 双貌塔イゼルマにて橙子が使ったルーン。



『織斑一夏』の台詞の中で、刀奈と簪の名前が出てこなかったのにはちゃんと理由があります。

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