魔法科高校の劣等生~Lost Code~   作:やみなべ

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北山雫は、どちらかと言えばクールな印象の強い少女だ。

何があっても動じない…と言うほどではないにしろ、この年頃としては非常に冷静で肝も座っている。

そんな彼女でも、教室に入った瞬間、視界に飛び込んできた光景には思わず「え”」というあまり優雅ではない声を漏らし、我が目を疑ってしまった。

それは共に登校してきた光井ほのかも同様の様で、その表情は「唖然」としているとしか言いようが無い。

 

だが、それも無理からぬことだろう。

何しろ出会ってまだ三日目とは言え、鼻持ちならない者も少なくない同級生たちの中、(亡い)胸を張って「友人です」と断言できるクラスメイトが、暑いとは言わないが制服を着ていれば決して涼しくもないこの時期に、人の目を惹き付けてやまない鮮やかな深紅のコートを着込んでいるのだから。

 

(なに…アレ)

 

声にこそ出さなかったが、ついついそんな思いが頭に浮かびあがる。

昨日知らされた魔法の大本たる魔術の存在と、今なおそれを残す魔術師たち。

聞けば、魔術の大原則は「秘匿」らしいが…………………あんな悪目立ちする格好では、秘匿も何もないだろう。

その上、暑苦しいことこの上ない。手袋の方は色々と事情があるようだが、知らない者には関係のない話。

 

実際、新たに教室に入ってくる者は雫たち同様一度足を止めて顔を引き攣らせ、既に教室内にいる面々も不審物でも見るような眼差しをチラチラと向けている。

これにはさすがに雫達としても他人のフリをしたい所だが、幾らなんでも失礼だし薄情過ぎる。

とはいえ、この視線の中に飛び込んでいく蛮勇も持ち合わせてはおらず……結果、反応に困った挙句に立ちつくす事しかできずにいた。

そんな二人の背に、淑やかな声が投げかけられる。

 

「おはよう、ほのか、雫。どうしたの、こんな所で立ちつくし…て……」

 

それまでの、いっそ音楽的とさえ言ってよい深雪の声が、徐々に困惑で染め上がっていく。

きっと、彼女も雫達と同じ思いに違いない。

密かに「そんな顔も綺麗って、さすがに反則」などと考えながら、「わかるわかる」とばかりに首を縦に振る二人。

『赤信号、みんなで渡れば怖くない』ではないが、せっかく三人になった事だし……と思っていたら、些か決断が遅かったらしい。

 

「あ、雫さん、ほのかさん、深雪さん、オハヨ~」

 

新入生らしい堅さなど微塵もない、力と一緒に気も抜けたような声でヒラヒラと手を振る竜貴。

さすがに、見つかってしまった以上無視はできない。

ただ、曖昧な表情かつ微妙にぎこちない動作で返礼するくらいは許されるだろう。

 

「…う、うん。その、おはよう」

「おはよう」

「お、おはようございます」

 

特に三人の態度に疑問は抱かないのか、気にした素振りも見せない竜貴。

出来れば、少しくらいは察してほしいと思うのは、贅沢な要望なのだろうか。

 

 

 

  *  *  *  *  *

 

 

 

その後、荷物を置いた三人は授業開始まで深雪の席の周りで雑談に興じた。

別に、竜貴を除け者にした訳ではない。彼は彼で、あの挨拶の後は前日同様自らの席でボンヤリと過ごしていたからだ。友人としてあいさつはしたが、深雪との距離を縮めて男子に睨まれたくなかったのだろう。

まぁ、あんな格好で登校しておいて今さらという気しかしないが……。

 

そうして、あっという間に時間は流れて昼休み。

深雪は達也と共に生徒会長にお呼ばれしたとかで生徒会室へ向い、残る三人は食堂へと足を運ぶ。

ほのかとしては深雪達と一緒にいたかったのだろうが、さすがに生徒会室に同行する勇気はなかったらしい。

竜貴は今日も弁当を持参。本来食堂へ行く必要はないのだろうが、「学食のレベルを見たい」との事。

明日試してみるかどうかは、今日実際に見てから判断するつもりらしい。変な所で慎重な男である。

 

といった具合に食堂へと向かい、雫とほのかは自らの食事を確保。

その間に竜貴が席を探しに行ったのだが、追いついてみれば……

 

「ヤッホー、二人とも昨日ぶり」

「こんにちは、北山さん、光井さん」

「というわけで相席させてもらったんだけど、良いよね?」

「ぁ…う、うん」

「皆が良ければ」

 

そうは言うが、正直司波兄妹という共通の友人がいないと、まだ身構えてしまう部分がある。

あちらもあまり一科生二科生という枠に拘ってはいないようだが、それでも昨日の事があるので若干の気まずさは拭えない。また、偏見の存在を否定できないが、数少ない男子の片割れ…西城レオンハルトのちょっと柄が悪そうな所が苦手だったりするのもある。

ただし、竜貴にはそんな素振りは微塵もない。むしろ彼にとっては、彼がいることが重要なのだろう。

何しろ、知る限りでは唯一と言っていい学内の男友達なのだから。

誰だって、異性ばかりに囲まれていれば同性の存在が恋しくなるだろう。

 

ちなみに、竜貴がこのグループの席に着くまでのやり取りだが「よっ」「ん、いい?」「おう」で終了。

ほぼ単語(?)のみで行われたやり取りは、簡潔どころの話ではない。

 

「にしても、暑っ苦しいカッコしてやがんなぁ」

「ああ、これね。まぁ、その辺は慣れだよ、慣れ」

「慣れるほど着てんのか?」

「別にファッションじゃ無くて必要だから着てるだけだしね。夏も何も関係ないし」

「ふ~ん、必要ねぇ……」

 

竜貴の言葉にやや意味深な相槌を返すレオ。

外見や態度こそやや荒っぽい所のある彼だが、二科生とは言え一高に入学できた学力の持ち主だ。

知的レベルは決して低くないし、恐らく察しもいいのだろう

今のやり取りだけでも、何かしら気付いた事があるらしい。

 

とはいえ、彼もまだ高校に入学したばかりの15歳の青少年。

その視線は、竜貴の前に広げられた弁当に釘づけになっている。

ちなみに、彼自身の食事は既に平らげてしまった。

食べ盛り育ち盛りの欠食少年としては、大盛りで頼んでもなお物足りないらしい。

竜貴は竜貴でその手の飢えた猛獣に心当たりが無いでもないだけに、レオの視線の意味を正しく理解している。

なので、三段の弁当箱の一つをそっとレオに向けて押し出す。

 

「食べる?」

「ダンケ」

 

『食べ…』の段階でスタートを切ったとしか思えない迅速さの返事。

ついでに、感謝の言葉と彼の箸が竜貴のおかずを取るのはほぼ同時だった。

 

「ったく、意地汚いわね。食べ物たかるって、乞食じゃなんだから」

「でも、一人暮らしで自炊してるってすごいですよね」

「うん、それに美味しそう」

 

呆れるエリカと感心する美月、そしてレオに少なからず共感する雫。

実際、竜貴の弁当は量が多いだけでなく、彩り鮮やかな上にバランスも良く、食欲をそそる。

正直言って、弁当が開けられた瞬間女子4名は小さくない敗北感を覚えた物だ。

間違いない、この面子の中で最も生活力があるのは竜貴である。

だからこそ、その味にも大いに興味があるのだが……

 

「皆も食べる?」

「「「「……いいです」」」」

 

大いに興味はあるが、既に自分の分の学食があるし、カロリーとかそういうのが色々気になるので辞退する。

また、充分売り物になりそうなクオリティを誇る竜貴の弁当だが、一つだけ難点が。

これを一口でも食そうものなら、小さくない敗北感が巨大な敗北感へと急成長しそうなこと。

せめて、ある程度覚悟ができるまでは手を出すまいと誓う。

 

「……美味ぇな」

「ありがと。興味があるなら、今度レシピ貸そうか? うちの初代から書き貯めたレシピ集があるから」

「お前ん家って、ああ……その、アレなんだろ?」

「あ、言っても大丈夫だよ。こんな場所だから逸らしやすいし」

 

事実、雑然とした食堂内では誰も彼もが雑談や食事に集中していて他人の事などほぼ見ていない。

ここに深雪でもいれば話は別かもしれないが、そうでないなら特に何もしなくても誰の意識にも残らないだろう。

まぁそれでも、念のために昨日と同様の術は使っているのだが。

 

「じゃ聞くけどよ、魔術師ってのは料理の研究まですんのか?」

「そっちは完全に趣味。初代に至っては、世界中の一流ホテルのシェフ百人以上とメル友になってたらしいし」

「なんつーか、イメージ壊れるな」

「まぁ、気持ちは分かるよ。僕も、『メシ使い』って呼ばれてたり、『家政婦』って言われると『バトラーと呼べ』って反論してた話を聞いた時は、すっごく微妙な気持ちになったし」

(家事好きと茶道楽の家系って聞いてたけど……)

(うん、筋金入りだよね)

 

魔法だの魔術だのに関わるより、飲食業やサービス業にでも従事した方がいいのではないだろうか。

 

「で、結局なんでそんなカッコする必要があるの?」

「え、エリカちゃん……」

「物怖じしねェ奴だな」

 

魔術の世界の事は知らないとはいえ、魔法においても他者の術式を詮索するのはマナー違反だ。

なら当然、魔術に関わるであろうこの深紅のコートのことも聴いては悪いと思って聞かなかったのだが…エリカはあっさりその点に言及する。

とはいえ、気にならないかと言えば嘘になる。実際、ほのかと雫も食事の手を止めて静かに様子をうかがっていた。

で、当の竜貴はと言えば、相も変わらずである。

 

「ほら、僕今日から一応風紀委員だからさ。念のために、ね」

「それとこれと何か関係あるの?」

「簡単に言うと、これって衛宮の勝負服みたいなものでさ。外敵じゃなくて外界に対する一級品の守りの概念武装で、魔法にも充分対応できるって克人さんも言ってたから」

 

竜貴からすれば簡潔に説明したつもりなのだろうが、魔法師達からすればちんぷんかんぷんである。

なんとなく防具の一種なのだろうと言う事はわかるが、『外界』『概念武装』などと言われてもさっぱり意味がわからない。

なので、とりあえずわかる所から攻めてみることにする。

 

「あの、克人さんってまさか……」

「十文字会頭のこと?」

「そうだけど?」

「相手は十文字家の総領よ? どうやって……」

「何年か前に、ちょっとね」

 

基本口が軽い…というか秘密に対して緩い竜貴だが、これに関して話す気が無いのはありありと伝わって来た。

どうやらこの少年、自分のことにはいい加減だが、他者が関連してくると途端に口が堅くなるらしい。

となると、後聞けるのは全く未知のワードに関してだけだ。

 

「じゃ、質問を変えるけど……概念武装って何?」

「う~ん、これ説明が結構難しいんだよねぇ……」

 

『はてさて、どう説明したものか』と腕を組んで悩む竜貴。

どうやら、『教えない』『はぐらかす』といった選択肢はないらしい。

それだけみんなを信用していると言う事か、あるいは知られても困らないと考えているのか。

あるいは、その両方か……。

 

「あんまり時間もないし簡単に言うと、概念武装って言うのはルールを強制する器物のことなんだ」

「……どういうこと?」

「つまり、極端な話になるけど『死』を顕す概念武装があった場合、これの攻撃を受けると『死』という概念で上書きされて即死しちゃったりするわけ」

「えっと……それって何かの毒とかそういう話?」

「毒だったら身体の中に入らなきゃ意味が無いでしょ? 概念武装の場合、重要なのは攻撃が当たったという事実であって、傷やダメージの有無はあんまり関係ないから」

 

竜貴としてはできるだけ噛み砕いて説明しているつもりなのだろうが、皆には全く意味がわからない。

“現実的”に考えて、当たっただけで傷一つ負っていないのに死に至るなどあり得ない。一体全体どういう理屈なのか。

 

「むぅ~…………よし、例えを変えよう。防性の概念武装の方がわかりやすいかもだし」

「……」

「ギリシャ神話の大英雄、ヘラクレスの事は知ってるよね。彼の最大の偉業『十二の難行』、その最初に『ネメアーの獅子』って言うのが出て来るんだけど、こいつは分厚い皮の下に筋肉が変化した堅い甲羅を持っていて、そのせいで刃物や棍棒なんかを一切受け付けなかったんだ。一応、ヘラクレスはこいつを三日間締めあげることで倒したんだけど…おかしな話だよね。筋肉は全身を覆っていて首も例外じゃない。その筋肉が甲羅みたいに堅いなら、首を絞めたって意味はない筈なんだから。なのに絞め殺せたと言う事は、ネメアーの身体は『武器を受け付けない』っていうルールで守られていたことが伺えるわけ。ヘラクレスはこのルール…概念の穴をついて、武器を使わず身一つで闘う事で攻略したんだ。こういうのが概念武装の特徴であり、弱点なわけだね。わかった?」

「「「「「ごめん(なさい)、さっぱりわからない(わかりません)」」」」

「え~……」

 

竜貴としては会心の解説だったようだが、空振りに終わる。

正直に言うと「どんなもんだい」とさえ思っていたのだが、だからこそ落胆具合がスゴイ。

もしかしたら、結構教える事が好きなタイプなのかもしれない。ただし、だからと言って上手いかどうかはまた別の問題だが。

 

まぁ、これは竜貴一人の責任と言う訳でもない。

そもそも皆にとっては、『筋肉が甲羅になっているから傷を負わなかった』と言う部分までは一応わかるのだが、それが実は『武器を受け付けないと決まっていたから』と言われても意味不明なのだ。

そんなルール一つで左右される程、『闘争』と言う物は甘くないと知っているからこそ、理解できない。

いっそのこと、ゲームを例に出して「炎属性の相手には炎は効かない」くらいにしておけばよかったのである。

 

「じゃ、じゃあ…そうだな、えっと……」

 

なんとかわかりやすい説明の仕方はないかと頭を振り絞る。

ただし、良く思い出してほしい。本来魔術や神秘は秘匿する物。

それを説明する為に頭を悩ませるなど、根本的に間違っているとしか言いようが無いことを。

 

「実際に存在するものなんだけど、『拘束』の概念武装があってね。これに捕まると、全身だろうが身体の一部だろうが関係なく、身動きが取れなくなるんだ。だから、指一本でも捕まるとそれで詰み。言わば、そこから見えない鎖でぐるぐる巻きにされる様な物だからなんだ」

「へぇ~」

「なるほどなぁ」

「ホントにわかった?」

「「もちろんわかってる(ぜ・わよ)」

 

などとレオとエリカは答えるが、実はやっぱり良く分かっていない。

ただ、頭を悩ませる竜貴が哀れだったので、口裏を合わせているだけである。

精々が「催眠術みたいなものか」くらいの認識だ。

 

しかし、同時にその認識が正しくない事だけはわかる。

わかるからこそ、敢えて口にしないのだ。それは残りの面々も似たような物で、ほのかなどは既に自力での理解を半ば放棄している。

 

(達也さんがいれば、私達にもわかるように説明してくれたのかなぁ……)

「そ、それで、竜貴君のコートはどうして魔法が効かないんですか?」

「魔法って、つまりイデア上のエイドスに魔法式を介して干渉して、それから本体に作用するわけでしょ?

 このコートに物理的な防御力はほぼないけど、外界からの干渉…つまり、魔法式によるエイドスの書き換えなんかを遮断する性質があるって考えれば、良いと思う…気がする。克人さんもそんなこと言ってた気がするし」

 

既にすっかり自信を喪失している様で、答える声には覇気の欠片もない。

きっと、似たような説明をされたであろう十文字家の総領に、密かに同情する。

同時に、竜貴に魔法への有効性を説いた時にも苦労したことだろう。

 

「まぁ、そんなだから魔法で作った空気の塊とかぶつけられたら、普通にダメージもらっちゃうんだけどね」

 

一応、コートの内側には防護系の術式を掛けられるだけ掛けているので、下手な防弾チョッキよりよほど頑強なのだが。

それこそ、ハンドガンやナイフ程度では傷一つ負わない程に。

 

「お前って、んなもんまで作れんのかよ」

「作るって言うか、加工したって言うのが正解かな。

 概念武装は基本的に作るものじゃ無くて、元々ある物をそういうものとして精製した物だから」

「どういうことでしょう?」

「概念武装は基本的に儀式や積み重ねた歴史、語り継がれる伝承を蓄積してできるんだけど、実はそれだけじゃ意味が無いんだ。素の状態は言わば宝石の原石みたいなもので、加工を施すことで武器として成立する訳。いや、武器と言う性質を考えれば、金属の塊みたいなものかも。叩いて余計な物を除去して、研いで特性を研ぎ澄ます…そういう意味では、刀を創る工程に似てるかな。

 もちろん、ただ古ければいい訳じゃないし、加工には専門的な知識と技術が不可欠で、手順を間違えると台無しだけど」

「でも、それってつまり…聖遺物(レリック)みたいなものなんじゃ……」

 

ほのかの解釈はあながち間違っていない。

レリックとは、魔法的性質を持つオーパーツを意味する。

人工物とは断定できなくても、自然に組成されるとは考えにくい物質もレリックと呼ばれるのだ。

そしてそれらは、現代科学技術でも再現が困難であるが故に、『聖遺物』と呼ばれる。

 

一部には、これらを創りだしたのは魔術師ではないか…という考えすらある。

だからこそ、魔術師の持つ知識と技術は貴重なのだ。

実際、竜貴には材料さえあれば概念武装…レリック級の品を創る事が可能なのだから。

否、それこそ物によっては特別な材料(この場合、概念武装に加工可能な遺物のことだが)が無くても、創る事が可能だ。例えば、『瓊勾玉』などは本家が宝石魔術に長けていることもあり、さして難しくもなかったりする。

ただし、聖遺物なんて単語を使ったせいで、竜貴には思い切り勘違いされてしまったが。

 

「聖遺物? うん、そうだよ。これにしたって、元はとある聖人の聖骸布だし」

「聖骸布って…ちょっと待った! じゃ、それってまさか……」

「あ、衛生面は大丈夫だよ。ちゃんと洗ってるし」

「そうじゃなくて! それバチカンとかが知ったら……」

 

聖人の骸を包んだ布…であるが故に聖骸布と言う。

そんな宗教的に尋常じゃ無く貴重な物をコートに加工し、あまつさえ戦闘に用いるなど…知られたら偉い事になるのではなかろうか。

 

なにしろ、宗教の問題と言うのは非常にデリケートだ。

下手をすれば、それこそ複数の国を巻き込んだ戦争に発展しかねない。

だというのに、竜貴自身はと言えば……

 

「ま、大丈夫でしょ。この手の遺物を武器にしてたのは教会も同じだから。

 っていうか、そもそもこれをうちの先祖にくれたのだって教会のシスターだし」

(((((どういうシスター【だよ・よ・ですか・なの】……)))))

 

五人が五人とも、それを譲ったと言うシスターに呆れかえる。

貰って加工する方もする方なら、譲る方も譲る方だ。

 

と言う事に気を取られてしまったが故に、彼らは見落としてしまった。

教会がこんな物を武器にしていたと言う事は、そんな武器が必要な敵がいたということ。

それがいったい何を意味するのか……それを知らずに済んだのは、果たして幸せなのかどうか。

 

 

 

  *  *  *  *  *

 

 

 

結論として、食堂のレベルは決して低くなかった。

ただ、とある王からは魔術師や鍛冶師として大成しなくても、宮廷料理人としてなら無条件で大歓迎の太鼓判を押された一族としては、わざわざ金を払ってまで食べようとは思わない水準だ。

彼の王の場合、下手に料理の水準が下がると大変不満そうな視線を向けられる。なので、決して落胆だけはさせまいと誓う身としては、料理の腕を錆つかせない為にもやはり基本は弁当で行く事を決意した。

 

放課後。

あらかじめ克人より呼び出しを受けていた竜貴は、さっさと帰宅する友人たちと別れて部活連の本部へと向かう。

要件としては、推薦者として竜貴を風紀委員長に紹介すること(先日会っているのでこちらはあまり意味が無いが)と、一高生徒たちにどういった形で竜貴の存在を知らせるかの打ち合わせだ。

本来なら教職員…いや、魔法協会が出張ってくるべき問題だが、此度は全て克人が請け負うことになっている。

これは竜貴との関係を知らせたからではなく、彼が既に師族会議に十文字家当主代理として参加し、実務をこなしていることもあり、彼に対応が一任されたからだ。

 

「では、お前の扱いに関してはこの形で全校生徒に説明するが、構わないか?」

「いいですよ。まぁ、落とし所としてはそんな所だと思いますし」

「古式魔法師からも失われた秘法…ロスト・コード、その継承者か。まぁ、あながち間違ってもいないか」

「何かを隠す時は、適度に真実を混ぜた方がいいって言いますしね」

 

あくまでも、竜貴のことは古式魔法師の一種…として扱う。

ただし、神話や伝承に語られる様な魔法の中には、未だに再現できない物が多くある。

それらの一部を現代に伝える魔法師…というのが表向きの竜貴のプロフィールだ。

 

ただ、その形態は現代の魔法とはあまりにかけ離れており、現状では互換は不可能。

その為、竜貴に現代魔法との懸け橋となってもらうべく、一科生として学ぶ…と言うのが建前だ。

確かに、克人の言う通り大きくは間違っていないだろう。

 

「それで……」

「? なんです」

「お前のことだ、既に何人かには話しているんだろ」

 

なにを、とは聞くまでもない。

かつて初めて出会った時も、竜貴はあっけらかんと自分が何者であるかを克人に暴露した。

あの時はさすがに剛毅な克人も頭を抱えたが、今となっては苦笑を浮かべる程度の思い出だ。

 

「えっと……7人程」

「別にその事でとやかく言う気はないが、あまり巻き込んでやるなよ。

 そちら側は、ある意味でこちら側より凄惨だ」

「そっちも大概だと思いますよ? 所詮は人間同士の小競り合いとはいえ、その小競り合いの挙句に自滅しかねないのが人間ですし。こっちは少し周りに被害が出るのが精々ですけど、そっちは規模がシャレになりませんから」

「小競り合い…まぁ、それも一つの見方か。戦争も、言わば同族同士の縄張り争いだ。目的は滅ぼすことではなく、より良い物を、より多くの物を手に入れることだからな」

 

ただ、その縄張り争いのなんと血生臭い事か。

竜貴の言葉は最悪の結末ではあるが、そこまでいかなくても酷い物は幾らでもある。

どちらがより酷いかを比べることに意味はなく、方向性が違うだけで、どちらも碌でもないことに変わりはない。

違いがあるとすれば敵は同じ人間か、あるいは敵に人間以外を含むかどうかという所だろう。

問題なのは、人間以外が含まれた時、それは縄張り争いから生存競争へと変わる事か。

というのが、竜貴の見解なのだろう。

 

ただ、曲がりなりにもその一端に触れた経験の在る克人としては、できれば二度とあちらには関わりたくない。

人それぞれ考え方も捉え方も違うだろうが、克人としては人間と闘う方が良い。

少なくとも、相手が人間なら殺せば死ぬ。そして、死ねば終わってくれる。同時に、それは自分にも言えること。

 

それがどれほどありがたい事か、克人は身に染みてわかっていた。

殺しても死なない、死んでなお終わらない相手など御免被る。何より、死んだだけでは終われないなど、悪夢以外の何物でもない。自分が死んだだけでは後に残された者たちの苦難は終わらないかもしれないが、自分個人に関しては終わる事ができる。それは一つの…そして人間に許された最後の救いだ。

 

だが、神秘の側にはそれすら許されない場合が存在する。

その、なんと残酷なことだろう。叶うなら、誰も関わらせずに竜貴には三年間を過ごしてほしい物だ。

 

「さて、あとは渡辺にお前を紹介するだけか」

「って言っても、昨日会ったんですけどね」

「それでもお前を推薦したのは俺だ。なら、俺から紹介するのが筋だろう」

「わかってますよ。ただ、友達が生徒会枠で風紀委員になるとかで、会長さんに呼び出されてるんですよね」

「ふむ、となると渡辺もそちらか。なら、好都合と言えば好都合だな」

「なんでです?」

「お前がどう風紀委員の仕事をこなすか、あらかじめ七草にも聞かせておいた方が良いだろうからな」

 

克人の言葉に、竜貴は小首を傾げる。

風紀委員の仕事など、要は何か起こった時に周囲に被害が出ない様、迅速に制圧することだけの筈。

竜貴の領域干渉は強力だし、赤原礼装もあって直接的な魔法は無効だ。

なので、竜貴としては圧倒的な防御力に任せて一人ずつ腕づくで制圧すればいいと思っている。

強化の魔術を用いれば、魔法師が相手でも引けを取らない自負もある。

 

とはいえ、領域干渉や赤原礼装はあくまでも防性のもの。

身を守ったり、魔法を使わせない事は出来ても、当事者たちを制圧できるかは別の問題。

竜貴はこれで結構過激な所があるので、克人としてはその辺りに一抹の不安があるのだろう。

 

そうして二人は生徒会室に足を運んだのだが、丁度部屋に入ろうとする一団を発見する。

 

「生徒会室にいたのではなかったのか、七草」

「あら、十文字君、それに衛宮君まで」

「いやなに、ちょっと予想外のイベントがあってな」

「ふむ……問題は?」

「ない」

 

克人の問いかけに、摩利は威勢良く簡潔に答える。

そう言うのであれば、克人としても深く追求する気はないのだろう。

無言で頷き返すと、生徒会役員+摩利+司波兄妹に続いて生徒会室へと入っていく。

 

「それで、勧誘は巧くいったのか?」

「あら、話が早い…そっか、衛宮君から聞いたのね。ええ、二人とも快く引き受けてくれたわ」

(俺は決して、そんなつもりはなかったのだが……)

 

成り行きの結果として副会長との模擬戦の末に、風紀委員になる事が決定した達也は言葉に出さずぼやく。

この相手には言っても無駄だろうと既に理解しているからだ。

 

「それで、十文字君の方は?」

「一応、渡辺に紹介しておこうと思ってな」

「相変わらず律義な奴だ」

「それに、七草がいるのも都合が良い」

「私?」

 

克人に名指しされ、真由美が可愛らしく首を傾げる。

普通ならわざとらしく映りそうな仕草だが、それが実に自然で違和感が無い。

普通の男子高校生なら、この仕草一つで挙動不審に陥るだろう。丁度、彼女の傍らに立つ某副会長の様に。

ただし、普通の男子高校生からは些か逸脱した達也と竜貴からの反応はない。

 

「部活連会頭として、1年A組衛宮竜貴を風紀委員に推薦する。

 ついては、職務遂行の手法についてお前達の意見を聞かせてやってほしい」

「? どういうことだ?」

「確か、衛宮君なら領域干渉で纏めて鎮圧…で終わりじゃないの?」

 

二人にとっては今更な問いに思えた様で、揃っていぶかしんだ様な表情を浮かべている。

克人としてもわからないではないが、問題なのはその後だ。

 

「確かに、衛宮ならば魔法を纏めて抑え込むこともできるだろう。

 だが、それで終わりではない。場合によっては、当事者たちを強制的に制圧する必要も出て来る」

「まぁ、そうよね」

「だが、腕っ節の方もお前のお墨付きだろ」

「ああ、確かに風紀委員として申し分ない事は保障する。

 問題なのは……衛宮、もし離れた場所で魔法の不適正使用があった場合、お前ならどうする」

 

それは、確かにあまり見逃してはならない問題だ。

今のところ明かされている竜貴の能力では、近距離はまだしも遠距離での対処は難しい。

十文字の言う通り、一応確認しておいた方がいいかもしれない。

と思っていたら、予想外の答えが返ってきた。

 

「黒鍵とか使っちゃダメですよね」

「刃物は禁止だ。それ以前に、アレも魔法では再現できない魔術の一種だろう」

「ちょっ、刃物って!?」

「ちなみに、その黒鍵と言うのは?」

「投擲用の剣だそうだ。刀身は魔術で編むらしいから、携帯は比較的容易だろう。

 問題なのは、こいつの黒鍵は車で撥ねられた様な衝撃が加えられる事だが……」

「禁止禁止! そんなの絶対禁止ぃ―――――――――!」

「いや、さすがに加減はするつもりだったんですけど……」

「それ以前に、刃物を投げれば殺人未遂になりかねませんので、法的にも却下です」

 

生徒会会計、市原鈴音が冷静に…ただし若干顔を引き攣らせながら念を押す。

まさか、校内でそんなマネをされるとは、誰も予想しない。

書記の中条あずさは既に涙目になり、副会長の服部刑部や深雪は唖然とし、達也でさえも固まっている。

 

「なら……ガンドとか?」

「十文字……」

「すまん、それは俺も知らん」

 

摩利は尋ねるが、そちらは克人も知らないようだ。

なので、七草は恐る恐るガンドとは何ぞやと言う事を問いかける。

 

「あの、衛宮君。そのガンドって…なに?」

「相手を人差し指で指差すことで病いを与える、北欧に伝わる呪いですね。

 うちの本家が得意で、僕も少しくらいなら……」

「却下」

「え…でも、僕のガンドじゃ長くて一日体調を崩す程度ですよ?」

「ダメな物はダメ! 結果的に怪我をさせるならまだしも、はじめから病気にさせるなんてダメに決まってるでしょ!!!」

 

案の定というかなんというか、真由美大爆発である。

同時に、何故わざわざ克人が竜貴を連れて来たのか理解できた。

見た所、竜貴は一日病気になるくらいは大したことではないと思っている。

確かにそうかもしれないが、だからと言って風紀委員が生徒を病気にさせるのを良しとする訳にはいかない。

この辺りの認識の齟齬がある事を察し、なおかつ確実に竜貴を思いとどまらせるために、この場を利用したのだろう。

 

「大体、魔術はそんなに手早く使える物なのか?」

 

摩利からの問いは、達也もまた疑問に思っていた事だ。

昨日使われていた視線を逸らす魔術はいつ起動させたかわからなかったので除外するにしても、カップを修復した魔術は彼が想像していた物より遥かに早かった。

魔術と言うのは、長ったらしい呪文と複雑なシンボル、忙しく組み替えられた印などを用いて行われる、時間のかかる非実用的な物だと思っていたのだ。

 

昨日の魔術とて、達也からすれば充分に遅いと言える。

しかしそれでも、想像より圧倒的に早かったのは事実。

ならば、戦闘用の魔術となればもっと早く発動できるのではないか。

そしてその予想は、的中していた。

 

「できますよ、ほら」

 

適当な壁に人差し指を向けると、竜貴の指先から黒い塊が発射された。

速度としては弾丸には及ばないものの、十分早い。

 

黒い塊として認識できるので回避ないし防御も可能だろうが、何より発動までの速度が凄まじい。

汎用型を操作して魔法を発動させるまでの手間を考えれば、確実に先んじる。

下手をすれば、特化型はおろか…四葉の秘匿技術に匹敵するやもしれない。

アレでは、一科生でも何が起きたかわからずに被弾する可能性は高い。

 

「………………驚いたな。魔術と言うのは、もっと時間がかかるものと思っていたが……」

「そう、ね。あれなら確かに、魔法師が相手でも引けを取らないわ」

「しかし、どういうことでしょう。呪文やそれに類する物を使ったようには見えませんでしたし……」

 

摩利、真由美、鈴音の三人は口々に先ほど目にした「本物の魔術」について驚きを露わにする。

それだけ、受けた衝撃が大きかったのだろう。

とはいえ、それは他の面々もまた同様。あずさは泣きそうになっていた事を忘れ、服部もまたたった今見せられた光景に息をのんでいる。どうやら、生徒会役員は全員一応事情を知っているらしい。

そして、司波兄妹にしても例外ではない。

 

「魔術と言っても色々ですよ。十小節以上の詠唱が必要な瞬間契約(テンカウント)もあれば、今みたいに魔力を通すだけで起動できる一工程(シングルアクション)まで、多種多様ですから。

 それに、僕にも一応刻印がありますから、これくらいは」

「あの、刻印…っていうのは?」

「これのことです」

 

絞り出すようなあずさからの問いに、竜貴は右腕の袖を捲って上腕をあらわにする。

皆の目に飛び込んできたのは、薄らボンヤリと光を放つ腕輪状の“何か”だった。

 

「魔術刻印と言って、簡単に言えば魔術師にとっての汎用型CADですね。

 ここには僕の母や曾祖父が鍛え上げた魔術が刻まれていて、式を選んで魔力を通せば術が発動します。

 もちろん、それだけでは使えない物もありますけど」

「まさに、CADそのもの…といったところですね」

「なら、それがあれば私達にも魔術が使えるの?」

 

むしろ、肉体そのものに刻み込んでいる関係で、CADを操作するというプロセスが不要な分、こちらの方が優れているだろう。

ただし、竜貴が語っていない刻印継承に関するアレコレを無視すればの話だが。

 

「いえ、それは無理です。刻印は、基本的にその血族でなければ継承できませんし、仮に継承させても意味をなくして『刻印だった物』になるだけですから」

「まぁ、そう都合良くはいかないか」

「ちなみに、魔法師で言う所の特化型や武装一体型に相当するものもありますよ。

 魔術を強化したり、特定の魔術を起動させたり…と言った事に使う、杖みたいなものですね」

「そう聞くと、魔法も魔術も案外似た様な物に思えて来るな……魔術から生まれた事を考えれば、当然なのかもしれないが」

 

とはいえ、中々に興味深い話だったのも事実だ。

特に「魔術刻印」の存在は驚愕に値する。

魔法師にとって魔法とは、基本的にその人物一人の物。

血縁者であれば似たような魔法の得手不得手があるものだが、それでも修得した魔法を次代に教える事は出来ても、継承することはできない。

もしこれを魔法に転用できたら、どれほど発展に貢献するか計り知れない。

また、かつて魔法の開発に協力した魔術師が残したキーワードのうちの一つの正体も明らかになった。

それがなぜ彼らに絶望を与えたかまでは、未だわからないが。

 

「衛宮君、念のために伺いますが、魔法をそう言った刻印にすることは可能だと思いますか?」

「さあ? それは試してみないと何とも…ただ、あんまりお勧めしませんよ」

「というと?」

「刻印は言わば臓器みたいなもので、継承するには色々不都合があるんですよ。

 うちは歴史も浅いんで、定期的に薬を飲んだりしなきゃいけませんしね」

「もしや、君の香水はそれが理由か?」

「あれ、良くわかりましたね。あんまり目立たないのを使ってる筈なんですけど……」

 

遠坂の方では色々と使い分けているようだが、竜貴はあまりそう言った事に力を入れていない。

不審に思われないようにする以上の意図はないので、逆に竜貴が香水を使っていることに気付く者は少ないのだ。

 

「私も匂いなんかには一家言あってな」

「へぇ~」

「ねぇ、竜貴君。私が聞くのもおかしな話だけど、良かったの?」

「なにがですか?」

「なんていうか…その、色々教えてくれてるけど、魔術って基本的に隠す物なんでしょ?」

「まぁ、お近づきの印という事で」

「そ、そう……」

(良く言ったものだ。実際には、元からこちらもある程度想定していたような情報か、あるいは得てもそれだけでは実益に繋がらない物ばかりだと言うのに)

 

屈託のない笑顔を浮かべる竜貴に対し、密かに克人は苦笑を浮かべる。

よくよく思い返してみればわかる事だが、与えられた情報は量は多くても豊かではない。

 

達也と深雪は一応、衛宮が剣を創る事を生業とする魔術師である事は知っているが、それが結局どんなものかまではわからない。元々、魔術師たちがレリックの存在に関与している事は想定されていた事を考えれば、単なる事実確認の延長だ。この点においては、赤原礼装や概念武装の存在も似たような物。

それでなくても、いずれは魔法の通じない代物を持っている事もバレていたので、結局は早いか遅いかだ。実物があることで「奪う」という選択肢も生じるが、元々竜貴の所持品の強奪は最終手段としてではあるが考慮されていたので、状況に目立った変化はない。

その特殊性にしても、実物が無ければ検証も研究もできないので、全ては入手してからの話になる。

 

ガンドの相手を病気にさせる効果は脅威に思えるが、直接的にダメージを与える方法など魔法には幾らでもある。むしろ、病気にさせると言うのは些か以上に迂遠でさえあるだろう。

また、剣の魔術師という事で白兵戦主体という誤解をされやすいことを逆手に取り、衛宮の遠距離攻撃がこの程度と思わせるミスリードにもなる。加えて、遠坂と衛宮ではガンドのレベルに天と地どころではない差があるので、竜貴のそれを参考にして挑もうものなら大惨事確定という性質の悪いブラフまで仕掛けているときた。

 

正しく「新しい発見」と言える物は魔術刻印の存在だが……竜貴の言葉が真実なら、奪うと言う選択こそ悪手。

レリックの製造方法同様、細心の注意を払って引き出さなければならない情報だ。

 

より深く詳しく知るためには、竜貴から教わるなり奪うなりしなければならない。だが、奪うことに失敗すれば、それこそ二度と接触を持てなくなる可能性すらある上、最悪他国に流れてしまうかもしれない。

となれば、よほど切羽詰まらない限りは強硬手段に出る可能性は低い。

 

こういった事情を承知しているからこそ、竜貴は敢えて情報を開示したのだ。

それも魔法師達にとっては魅力的な情報の数々でありながら、核心部分には触れず、今後も教える気は全くない情報を。その上、自分達の詳細には触れていないという念の入りよう。

口が軽いのは事実だが、同時にこう言った人の悪さも併せ持つのが、衛宮竜貴という少年である。

 

(とはいえ、狙いが判然としないな。交渉のための布石か、それともこちらの出方をうかがっているのか……)

 

迂闊に手が出せないのを承知の上で赤原礼装を見せびらかす様に纏っている事を考えると、魔法師側の反応を探っている可能性が高い様に思う。

しかし、その理由まではわからない。魔法師側の反応から、竜貴は一体何を探ろうとしているのか。それは…

 

(ふむ…先輩たちの反応は概ね予想通りだから特に問題は無し。でも、達也君は落ち着き過ぎてて、むしろ違和感があるんだよねぇ…普通の魔法師なら、雫さんたちみたいにまず『困惑』がある筈。なのに、彼の反応は会長さん以上に落ち着いていた。つまり、魔術と魔法を混同していない証拠。ということは、やっぱり普通の魔法師じゃないってことか……)

 

竜貴がこうして情報を開示していた理由、その一つがこれだ。

昨日は普通の魔法師達と一緒に情報を与え、今日は魔術師の存在を知る者たちと一緒に情報を与えた。念の為、普通の魔法師である雫達の反応も再確認した上で。この中でエリカは例外ではあるが、他の皆を参考にできたので特に問題にはならない。

そしてこれらを見比べた結果、司波兄妹は教える前から魔術師の事を知っていた可能性が高いと結論する。

 

初めて達也を見かけたときに感じた違和感。

もしかしたら彼こそが、自分が一高に寄越された理由かもしれない。

そうである以上、多少探りを入れるべきと考えたのだ。

 

(ま、そうとは限らないからあんまり先入観を持つべきじゃないんだけど)

 

達也が鍵を握っているかもしれないし、そうではないかもしれない。

未だ判然としない状況ではあるが、やはり達也との縁は大事にすべきだろう。

それがわかっただけでも、情報を開示した甲斐があると言う物。幸いというかなんというか、今のところ候補も他にはいないので、なおさらだ。

むしろ、衛宮や遠坂にとってはほとんど不利益にならない情報ばかりでそれがわかったのだから、充分得をしたとさえ竜貴は思う。

 

「とりあえず、だ。衛宮、風紀委員としての活動に強化以外の魔術の使用は禁止。

 仮に何か使うのなら、事前に俺達三人に許可を取れ。いいな」

「ちなみに、礼装は?」

「俺の知る限り、学生相手に使っていい様な物はなかったと思うが?」

「ですよね~。これ(赤原礼装)みたいな防御系ならともかく、他のは不味いか。

 ああ、それならいっそこっちでも使えそうなのを創るかなぁ」

(剣を創るのが専門とは言っていたが…魔法に照らし合わせるなら、竜貴は魔工師に近いわけか。

 それに、あのコートは……)

 

巡り合わせのせいで今日はつい先ほどまで竜貴と会う事はなかったのだが、なんとはなしに竜貴を『情報の次元から視た』瞬間、達也は少なからぬ驚きに見舞われた。

何しろ、『視た』はずなのに『何も視えなかった』からだ。

昼を共にしていない達也は知らないことだが、衛宮の赤原礼装は『外界に対する守り』の概念武装である。

達也の目は存在そのものの情報を解析できるのだが、そんな彼の目をあの外套は寄せ付けない。

彼の目には、竜貴だけが周囲から切り取られたような『空白』として映る。

空白と言う違和感のおかげで存在を知覚することはできるが、これではその奥へと踏み込む事ができない。

外套その物を直接解析できるならまだしも、イデアと言う『外界』を介している以上、あの外套は鉄壁に等しい。

 

まぁ、仮に解析できても「特に珍しい材質は使われていない」という結論しか出ないだろう。

彼の目は「現在」においては全てを見通すと言っても過言ではないが、「過去」に関してはかなり限定される。

遡れてもせいぜい一日。それでは、あの外套の真価を見極める事は出来ない。

あるいは、蓄積された概念を解析できればまた話は別なのだろうが……少なくとも、今の彼に無理なことに変わりはない。

 

(おそらく、魔法の干渉を寄せ付けない性質があるんだろう。アレ自体が、既に一種のレリックだ。

 あんな物を創れるのだとしたら、アイツならレリックの複製くらいはできてしまうかもしれないな)

 

一応は魔工師を志望する達也としては、竜貴の持つであろう技術と知識には並々ならぬ関心があった。

元々あったのだが、知れば知る程にそれが高まってくるのを自覚する。

ただそれすらも、必要とあらば容易く制御できてしまえる自分が……ほんの少しだけ寂しくもあった。

 

 

 

  *  *  *  *  *

 

 

 

さしあたっての要件を終えた竜貴は、そのまま達也と共に摩利に連れられて生徒会室奥の階段を使って風紀委員会本部へ降りる。

初めて入り、今後は度々利用することになるであろう本部室は……些か小汚かった。

 

「少し散らかっているが、まぁ適当に掛けてくれ」

 

足の踏み場が無いわけではない。椅子に椅子以外の用途は求められておらず、ただ長机の上が書類とか本とか携帯端末とかCADとかで埋め尽くされて天板が見えないだけ。

生徒会室は大変整理整頓が行き届いていたのだが、風紀委員会本部はこの有様。

まさか、トップの人間性が反映されているのか、とは思っても口にしてはいけない事柄だろう。

うっかりそんなことを口走ろうものなら、血を見ることになりかねない。

 

「風紀委員会は男所帯でね。整理整頓はいつも口を酸っぱくして言い聞かせているんだが……」

 

言ってる内容だけならお母さんみたいだ、というのも言ってはいけない類だろう。

なので、竜貴はそんな不必要に地雷を踏む様なマネはせず、代わりにもっと建設的な事を口にした。

 

「委員長さん」

「なんだ?」

「とりあえず、ここ片づけて良いですか? 良いですよね? って言うか片づけます!」

「あ、ああ」

 

最早、質問でもなければ確認でもなく、宣言に等しい。

摩利からの返事を待つことなく、竜貴は早速机の上の片付けに着手。

まず書類と本と携帯端末とCADに分別し、更に書類と本を分類ごとに分けて行く。

竜貴の勢いに一時呆然としていた達也と摩利だったが、さすがに見ている訳にもいかず手伝おうとするも……

 

「俺も手伝おう」

「あ…ああ、私も手伝うぞ」

「結構です!」

 

椅子から腰を浮かせた段階で、ピシャリと言葉の竹刀で鼻っ面を叩かれてしまった。

普通なら大変失礼なことだろうが、言われた本人達はそんな印象を受けてはいない。

何しろ、竜貴のテンションは刻一刻と上昇し続けていく物だから、そんな事を想うことすら忘れてしまう。

 

「ふふふふ…この程度こなせなくて、なんの衛宮か!

 僕を満足させたければ、この三倍は持ってこい!!」

「水を得た魚…と言う奴でしょうか」

「というか、大丈夫なのか、彼は?」

 

今までとは別人の様に大はしゃぎで片づけに勤しむ竜貴。

どうも、散らかっていることが許せないタイプと言うわけではなく、片づけると言う行為そのものに快感を覚えるタイプの様だ。前者はともかく、後者は割と珍しい。

 

「昨日聞いた限りでは、茶道楽と家事好きの家系らしいですよ」

「いや、アレは家事好きと言うよりも片付け魔の類だろ」

「あ、委員長、達也君。まだもうちょっと掛かるから、これでも飲んで待ってて」

 

そう言って、片づけの手を一端止めた竜貴が二人の前に二つ湯呑を置く。

湯呑なので、中に入っているのは当然の如く日本茶だった。

 

「いや、待て! こんなのどこにあった!?」

「? 部屋の隅で埃被ってましたよ。上に書類とか色々のってたんで、今まで誰も気づかなかったのも仕方ないですけど」

 

片づけの手を止めることなく、視線だけで示された場所には確かに湯呑や急須一式の姿。

この様子だと、摩利が風紀委員になる以前から、この部屋はこの有様だったらしい。

 

ただ、達也としては一つ不安な点がある。

水道もあるし、お湯は魔法で簡単に湧かせるので、それはいい。

問題なのは、このお茶の茶葉は一体どこから来たのかと言う事だ。

下手をすると、長年放置されてとっくに賞味期限が切れたよろしくない代物ではないか。

 

「一応聞くが、茶葉はどうしたんだ?」

「え? ああ、古くなってたから捨てたよ」

「なら、これはどこから来たんだ?」

「どこって、ここ?」

 

懐をまさぐりだしたかと思うと、竜貴の手にはビニールに小分けにされた茶葉の姿。

どうやら、常日頃から持ち歩いているらしい。

 

「どこの食通だ、君は……」

 

驚くべきか呆れるべきか……とりあえず、茶道楽と言うのも伊達ではないらしい。

 

そうして、瞬く間のうちに本部室内を片付けていく竜貴。

10分も経たないうちに、部屋は生徒会室と甲乙つけがたいレベルにまで整頓された。

 

「なんというか…もうこれで食べていけるんじゃないか?」

「同感ですね。まぁ、さすがにCADの扱いは良く分からない様ですが」

 

実際、CADをはじめとした端末の整理の際には、どう手をつけて良いかわからないようで、達也に助けを求めてきたりもした。ただし、手際良く片づけていく達也に、何やら対抗心を燃やしていたようだが……達也としては心底勘弁してほしいことだろう。

魔法や勉強、あるいは体術ならまだしも、片づけの腕を競う気はない。

だが、竜貴としてはまだこれで終わったつもりではないようだ。

 

「じゃ、次は床と窓、それに……」

「待て待て待て! 大掃除でも始めるつもりか!!」

「竜貴、さすがに今は自重すべきだ」

「うぅ~…わかった、楽しみは後に取っとくことにする」

((楽しみなのか……))

 

まるでおもちゃを取り上げられた子どもの様にしょんぼりしていた。

特に竜貴の容姿は大変幼いので、その印象がさらに強まる。

うっかりすると、訳もなく変な罪悪感がこみ上げてきそうだ。

 

「さて、いい加減本題に入るが……」

「ええ、それが良いでしょう。竜貴が何か見つけたら、また話が進まなくなりますし」

「……ごめん。なんていうか、こう……血が騒いじゃって」

 

一体なんの血を受け継いでいるのかつっこんでやりたいが、ぐっと我慢。

それをすれば、また更に話しが遅れてしまう。

 

「とりあえず、君たちがそれぞれ風紀委員に推薦された理由は…わかっているか?」

「未遂犯に対する罰則の適正化と、二科生へのイメージ対策…でしたか。イメージ対策の方は逆効果だと思いますが」

「僕の場合、校内だけでも管理下に置いておきたいから、でしたっけ」

「まぁ、そう言う事だ。特に竜貴君の場合、魔術の情報は欲しいがそれをいたずらに広められても困るからな、その為の保険も兼ねている。もちろん、君たちの実力に対する期待も大なわけだが」

 

実際、達也の戦闘技能も竜貴の領域干渉も風紀委員としては大変魅力的だ。

色々と思惑が絡んでこそいるが、純粋に一風紀委員として期待もしている。

ただそれは、摩利や真由美と言った差別意識を持たない人間だからこその物。

そうでない人間からは、さぞかしやっかまれることだろう。

達也としては、それが億劫でならない。

 

「そういえば、僕が部活連枠で、達也君が生徒会枠。あと教職員枠もあった筈ですよね。そっちは誰が?」

「1-Aの森崎だ」

「……委員長、今なんと?」

「ほぉ、君でもそんな顔をすることがあるんだな」

「委員長がどう思っているかは知りませんが、まだ高校に入ったばかりの若輩ですから」

「なんだろうな。言っている事は至極まっとうなのに、恐ろしく似合わないぞ」

「放っておいてください」

 

珍獣でも見る様な眼で見られたからか、若干不満そうに顔を背ける。

当の本人にも、多少なりとも自覚があるのだろうか。

 

「昨日の件もあって推薦取り下げを考えていたんだが、君たちも無関係ではないからね」

「竜貴はともかく、俺は当事者です」

「そう、自称当事者の君の推薦を入れるのに、彼を断るのでは筋が通らない」

「二人とも外すというのが、一番平和的だと思いますが」

「何の解決にもならないな」

「別に解決する必要もありませんし、できるとしても見込みは薄いでしょう」

「典型的な一科生だからな、アイツは」

 

『やれやれ』とばかりに、肩をすくめて見せる摩利。

できるなら一科生と二科生の間にある区別意識を改革したい所ではあるが、簡単にできることではない。

もしできるなら、とっくに真由美が実行に移している。

そう簡単にはいかないからこそ、二科生である達也の風紀委員登用と言う刺激の強い薬を使おうと言う考えになるのだ。

 

「それで、どうする? どうしても嫌だと言うのなら、無理強いはしないが」

「半ば以上無理強いされた結果として、俺は今ここにいるんですが」

「……」

「…………」

「……………………」

「…………………………………………」

 

ジト目を向けるも、摩利は特に気にした様子もなく沈黙を保ったまま切れ長の目を向ける。

やがて、先に根負けしたのは達也の方だった。

 

「……副会長と模擬戦までしてしまいましたし、なによりここで断ったら深雪がどんな顔をするか……」

((シスコンだ【な】))

 

小さく呟かれた後半の一言に、竜貴と摩利の心の声がシンクロする。

 

「ここまで来たら、今更引き下がれませんよ」

「そうだな、人間諦めが肝心だ」

「良い性格してますね、先輩」

「そう言う君は大分屈折しているがな」

(達也君の負け)

 

衛宮家は女性比率が高いので、竜貴は「口では女性に敵わない」という人生の真理を幼くして理解していた。

どうやら達也はまだその真理を得ていない様なので、彼が早めに悟りを開くことを切に願う。

なんというか、特に摩利や真由美には絶対に勝ち目がなさそうなので、竜貴としても決して対立はすまいと心から誓うのであった。

 

「ところで、副会長と模擬戦って……なんでまたそんなことに?」

「服部の奴が達也君…というか、二科生の風紀委員入りに反対してな。

 色々あって、達也君から服部に決闘を挑んだ訳だ」

「模擬戦ですよ、委員長」

「達也君って、結構好戦的?」

「断じて違う。火の粉は払うが、自分から火の中に飛び込む趣味はない」

「ただし、妹が絡むとその限りではない、か?」

「否定は…しません」

「思い切り『妹の目が曇っていないことを証明する』と言っていたからな。否定しても空々しいだけだ」

(やっぱりシスコンだ)

 

元より仲の良い…良過ぎる兄妹だとは思っていたが、益々変な方向にイメージが固まっていく。

しかも性質の悪いことに、その変な方向があながち間違っていないから困りものだ。

 

「……当然のように、君は達也君が勝ったと思ってる訳か」

「え? だって、勝たなきゃ力の証明にならないんじゃ……」

「善戦して認めさせた、と言う線もあるぞ」

「でも、違うんですよね?」

「確かにそうだが……何故だ?」

 

それまでの悪戯っ子の様な物とは違う、真剣な眼差しが竜貴に向けられていた。

ただ、竜貴としても返答に困る。

言葉にできないのではなく、安易に言葉にしていいものではないと思うからだ。

 

(達也君から血の匂いがするから…なんて、言っちゃまずいよね)

 

実際に血を浴びた経験があるかどうかという意味ではなく、血を浴びることを躊躇しないかどうか、と言う意味ではあるが、やはりあまり人に話すようなことではあるまい。

エリカにも似たような匂いはあるが、達也のそれは濃度の桁が違う。

十中八九、命のやりとりをした経験があると思うが、していなくても似たような匂いを彼は纏うだろう。

とはいえ、やはりここは素直に答えるべきではない場面だ。

 

「服部副会長、達也君のことを明らかに無視してましたし」

「なるほど……まぁ、そう言うことにしておこう」

 

竜貴が誤魔化す為に言ったことは摩利も勘づいているようだが、それ以上追及はしない。

藪を突つく事を警戒したのか、それとも言わずとも彼女にはわかっているのか。

中々どうして、一筋縄ではいかない人の多いこと。

 

「それで委員長、僕たちこれからどうすればいいんですか?」

「ん? いや、今日の所は特にないから帰ってくれていいぞ。

 なにしろ、明日から死ぬほど忙しくなるからな」

「入って早々不吉な事を言わないでほしいんですが」

「なんと言っても事実だからな。まぁ、毎年恒例の馬鹿騒ぎだ。

 生憎、私達は踊る側にも見る側にも回れんがな」

「救いの欠片もありませんね」

 

つまり、自分達だけが熱狂の外側で後始末と尻拭いに奔走すると言う事だ。

達也の言う通り、全く以って救いが無い。

別に一緒になって踊るつもりはないが、せめて傍観者でありたいと言うのが偽らざる本音なのだろう。

もちろん、摩利の言う通り風紀委員になった以上そんな贅沢は許されないのだが。

 

「へぇ~、楽しそうですね」

「今のを聞いてよくそんな事が言えるな」

「どうせ巻き込まれるのは確定なんだから、せめて楽しんだ方が良いよ。

 少なくとも、こっちは気の持ちようで楽しむ余地がありそうだし」

 

本家の連中が「うっかり」やらかした時の後始末や尻拭いは散々やって来た。

そんな竜貴からすれば、学校レベルの馬鹿騒ぎなどまだ救いがある。

 

「…………………苦労したのか」

「うん。まぁ、色々とね。実家を出て良かったのは、当分はそっちから解放される事かな……僕のいない間に何が起こるかって考えると、胃が痛くなるけど」

 

腹をおさえ、がっくりとうなだれる。

思い出しただけで、胃の中に鉛の塊でも生じたような気分になっているようだ。

 

「まぁ、詳しい事は明日話すとしよう。嫌でも明日は来るんだ、なにも今のうちから気が滅入る様な話を聞くこともあるまい」

「不安を煽らないで頂けませんか」

「この程度で調子を崩すほどヤワじゃないだろ。ま、それならそれで風紀委員を辞めるいい口実になるぞ」

「だってさ、頑張って達也君」

「それはさすがに後ろ向き過ぎるだろ」

 

なにより、摩利の言う通りそれくらいのことで調子を崩すほどヤワではないし、鬼の霍乱で体調を崩したとしても、即座に戻してしまえるのでやはり意味が無い。

ほんの少しだけだが、自分の能力が恨めしいと思う達也であった。


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