PERSONA4【鏡合わせの世界】   作:OKAMEPON

46 / 49
【2011/07/28】

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

【2011/07/28】

 

 

 集めた情報を元に割り出した『久保美津雄』の居場所は、異様な雰囲気を漂わせていた。

 

「“ボイドクエスト”……?」

 

 まるで、一昔処か家庭用ゲーム機の黎明期のRPGゲームの様な、ドット絵を思わせる立方体の集合によって形作られた世界。

 それが、『久保美津雄』の生み出した迷宮、“ボイドクエスト”であった。

 中空には、【GAME START】とその下に【CONTINUE】というゲームのスタート画面の様な文字が浮かび、ゲームカーソルの様な三角形の矢印は【GAME START】へと合わせられている。

 

 ボイド、か。

 voidとは、空虚だとかそんな意味なのだが……。

 

「何これ、ゲーム感覚って事?

 ホント、ふざけてる!」

 

 里中さんはそう憤るが、果たして久保美津雄が世界をゲーム感覚で捉えているからこの場所がこうであるのかは分からない。

 この世界に現れる“迷宮”は、その当人の“心”に依って形を成している。

 何らかの願望がそこにあるが故に、ゲームを模したかの様な“迷宮”になっているのかもしれない。

 

 ……先ず気になるのは、ゲームを模しているにしろ、この“ボイドクエスト”がモチーフにしていると思われるゲームが()()()()のだ。

 このドットの粗さを見るに、通称ファミコンと呼ばれるファミリーコンピューターでのゲームか、良くてスーパーファミコンの初期辺りのゲームが元になっているのだろう。

 久保美津雄の年齢を考えると、それこそ小学生になる前辺りに触ったかどうか、だ。

 彼がレトロゲーマーであった可能性もあるが、どちらにせよ今時の高校生が好んで遊ぶゲームとしては古いのは確かだろう。

 テレビゲームの黎明期の様な時代のゲームを模しているのは、何故なのか。

 ……彼の幼児性を表しているのか、それとも彼の何らかの願望を反映しているのだろうか。

 彼を全くと言って良い程知らぬ自分には、類推しようにも元手となる情報すらない。

 何はともあれ、この“迷宮”の奥にいるのであろう久保美津雄の所まで辿り着く他無いのである。

 

「目指せエンディング、って所だな」

 

 ゲーム好きな部分が騒いだのか少し高めなテンションでそう言った花村に、同意する様に頷いた。

 ゲーム自体は自分も好きである為、このドット調の城は何処か懐かしさすら感じる。

 見た目的には、『魔王の城』と言った所だろうか。

 

 ワクワクしている気持ちが自分にも多少はある事に内心苦笑しつつ、“迷宮”の中へと足を踏み入れたのであった。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 “ボイドクエスト”の内部へ入ると、その途端眼前にまるでゲームでステータスや台詞等を表示させる為のウィンドウの様なモノが出現する。

 何が起きるのかと警戒していると、【ぼうけんをはじめる】・【ぼうけんをやめる】と言ったゲームのスタート画面の様な文字がウィンドウに表示された。

 そしてゲームカーソルの様な三角形が出現し、一度【ぼうけんをやめる】を選択しそうになるが、結局は【ぼうけんをはじめる】を選択する。

 そして四文字分の名前入力欄が現れ、そこには自動的に『ミツオ』と入力される。

 ……『ああああ』では無いのか。

 そして名前が入力され終わると同時に、ウィンドウは消滅した。

 

『何、今の! ゲーム開始って事!?

 あーもう、ムカツク!

 先輩、あんなヤツとっとと捕まえちゃおう!』

 

 りせは憤った様な声を上げる。

 まるで馬鹿にしているかの様に感じたのだろう。

 気持ちは分からないでも無いが。

 まあそもそもこんな“迷宮”なのだし、あんな演出になるのも、久保美津雄にとって何かしらの意味があるのかも知れない。

 例えば、ゲームの主人公の様に世界を救ったり出来る様な勇者になりたかった、とか、そう言う願望の表れなのかもしれない。

 万が一そうであるならば、彼の行為を考えると皮肉でしかないのだが。

 

 りせのサーチによると、この“迷宮”は10の階層から構成されていて、最上階(=最深部)から久保美津雄の反応があるらしい。

『魔王の城』を模したかの様な城の最上階で待ち構えている辺り、久保美津雄は勇者ではなく魔王である気がするが……。

 

 りせのナビに従って微妙に狭い通路を進んで行くと、前方の分岐点に道を塞ぐ形でシャドウが待ち構えているのが見えた。

 数は合計8体。

 

 ──右手には。

 何かが書かれた紙の様なモノで自らの周囲を覆っているシャドウが1体。

 岩塊の様なシャドウが1体。

 地面から生えた剣を握った腕の様なシャドウ(本体は仮面が付いてる剣の方だろう)が2体。

 

 ──左手には。

 円盤の様な板に逆さに縛り付けられたシャドウが1体。

 蛇の様なシャドウが1体。

 三段に積み重なった頭部がまるで塔の様になってるシャドウが2体。

 

『右の方には物理以外効かなさそうなヤツが居るよ!

 左の方は、弱点と耐性がバラバラだけど、物理耐性を持ってるのは居ないよ!』

 

 りせはどの攻撃が通用するのか、見ただけで何と無く察知出来るらしい。

 しかし一度に相手する敵の数が多過ぎると、何れが何れなのかは分からないのだそうだ。

 取り敢えずは、物理攻撃に耐性を持つ敵が居るかどうかを最優先に判断して貰う様にしている。

 

 敵の名前等の情報を解析していくりせのナビを受けて、隣を行く花村と目配せをしてお互い走り出した。

 此方は右に、花村は左へと。

 一番動きが速い二人で敵陣に突っ込み攪乱し、敵の連携を取り辛くさせる。

 敵の対応が混乱している最中に巽くんや里中さんと言ったパワーファイターが一気に場を崩し、魔法攻撃を主体とする天城さんとクマは後詰めを担う。

 それがこの場の最適解だ。

 

 一気に敵の真ん中まで突っ込んで、取り敢えず一番奥にいたので目に付いた、『青のシジル』を周囲の紙ごと、一気に敵を鞘から引き抜いた軍刀で居合い切りの要領で深く切り裂く。

 悲鳴を上げて周囲の紙ごと地に崩れ落ちたシャドウの首を刎ねると、シャドウは断末魔の叫びを上げて塵へと還った。

 

 僅かな合間に一体を屠った事により、残りシャドウ達の敵意が此方に集中する。

 

 二体の『正義の剣』が敵を討ち滅ぼさんとその手の剣を振り翳してきたが、それは場に乱入して来た巽くんとタケミカヅチによって、本体である剣ごと体を砕かれた。

 巽くんの振り回した鉄板は『正義の剣』をまるで粘土細工の如く叩き潰し、タケミカヅチの拳はシャドウを跡形も無い程に砕く。

 一体だけ残った『依存のバザルド』が集中砲火を喰らって塵に還ったのは、その直後の事であった。

 

 その後も時折道を塞ぐシャドウ達の相手をしつつ階を跨ぐと、再び眼前にメッセージウィンドウが表示された。

 

『わあっはっはっはっ!』

 

『くさった ミカンの ぶんざいで

 ワシに はむかうとは いい どきょうだ!』

 

 ……腐ったミカン?

 それに、ワシという一人称……。

 これはまさか、諸岡先生を表しているのだろうか?

 

『きさまの ような にんげんの クズは

 えいえんの くるしみを あじわうが いい!』

 

『くらえっ!』

 

【せいさいのいちげき!】

 

 バシュッという効果音が何処からともなく聞こえ、同時に【せいさいのいちげき】と言う文字が赤く光る。

 

【ミツオは いしきを うしなった……】

 

 赤く表示されたそれは、まるでゲームオーバーを意味しているかの様な演出である。

 ……これは八十神高校を退学した時の事を表現しているのであろうか。

 ……心が反映されるこの“迷宮”でその時の事が再現(?)される辺り、八十神高校を退学した事は久保美津雄にとって心の中でかなりウェイトを占めている事柄なのだろう。

 それにまるで諸岡先生に苦しめられたかの様な表現……。

 実際にどうだったのかは置いといて、久保美津雄は退学したのは諸岡先生の所為だ、と捉えていたのだろう。

 それ故に殺害に至ったのだろうか……。

 

 道を塞ぐシャドウたちを排除しながら、そのまま一気にそのフロアを駆け抜けたのだった。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

『おはよう

 ゆうべは よく ねむってた みたいね

 パトカーの おとが あんなに すごかったのに

 きづかないで ねてるんだから』

 

 階段を登ると、再びメッセージウィンドウが現れる。

 よく分からないが、誰かの台詞であるらしい。

 内容から察するに、母親とかだろうか。

 先程の退学の時の事を考えると、これも久保美津雄が捉えていた“現実”の何処かを現しているのだろう。

 

『きっと おおきな じけんね……あれは

 アーケードのCAFEで コーヒー かってきて

 おかねは たてかえて おいてね』

 

 事件……それはやはり山野アナや小西先輩の事件だろうか。

 もしかしたら、諸岡先生の事件の事かもしれないが。

 

『きいた?

 おんなのこが ころされたんだって

 ぶっそうに なったわね

 あんしんして であるけないわ……

 きをつけてね

 あまり おそくならない ようにね』

 

 そこでメッセージウィンドウは消えた。

 

 ……女の子が殺されて、か。

 と言う事は、先程のは山野アナの事件か小西先輩の事件の時の事を表現しているのだろう。

 ……しかし奇妙なのは、先程から一切『久保美津雄』の感情が伝わって来なかった事である。

 まるでそんな人物などそこには居ないかの様な、第三者が見ている様なそれは、何処か薄ら寒いモノを感じてしまう。

 この“迷宮”はある意味『久保美津雄』の心その物である筈なのに、肝心の『久保美津雄』が何処にも居ないのだ。

 

『あれ……? この先行き止まりになってるよ』

 

 困惑した様なりせの声が響く。

 確かに、十字路の様な通路の先は三方向とも壁で囲まれていて、パッと見た所進路が見当たらない。

 

 この“迷宮”はゲームを模しているのだ。

 何かしらの条件を満たさないと先に進めない仕掛け、とかはありそうである。

 しかし、先の二フロアに関しては見落としたであろうモノは無さそうなのだが……。

 一先ず、りせにこのフロアがこのエリアだけなのか確かめて貰う。

 

『えっと……この階層自体は結構広いみたい』

 

 ふむ……。

 取り敢えず何か仕掛けが無いか、調べるしかないか。

 ゲームではよくある様な危険なトラップを警戒しつつ、取り敢えず十字路の右手奥の壁際、そこにあるドット調のマーライオンの様なオブジェとそこから流れ落ちる水によって作られた泉を調べ様と、オブジェに手を触れた瞬間。

 一瞬の浮遊感の後に、先程とは全く別の場所に居た。

 振り返ってもそこには壁しか無く、花村達の姿は見えない。

 

『先輩! 大丈夫!?』

 

 りせの焦った様な声に、大丈夫だと返した。

 困惑はあるものの、外傷の類いは無い。

 どうやら何かしらの仕掛けが作動し、分断されてしまった様だ。

 背後の壁に手を当てても、何の変化も無い。

 一方通行なのだろう。

 辺りを見回してみると、どうやらこの場所も先程の十字路の様な構造であるらしい。

 違うのは、階段であった場所はただの壁であると言う事だろうか。

 

 追い掛けてきた花村達と合流し、そのまま先に進む。

 どうやら通路奥にあるマーライオン風のオブジェの内の幾つかが所謂ワープ装置の役割を果たしている様だ。

 最初のワープは面食らってしまったが、法則を理解すればどうと言う事も無い。

 強いて言えばワープ先でシャドウの強襲を受ける事を警戒しないといけないのが少々疲れる程度だろうか。

 

 幾度かのワープを繰り返して行くと、十字路とは違う通路に転移した。

 通路の先にはこれ見よがしに扉がある。

 

『あの扉の向こうにはシャドウがいるよ! 気を付けて!』

 

 半ば予測していたその情報に、一つ溜め息を吐いて剣を握る手に力を籠める。

 そして、皆の準備が整っている事を確認してから、一気に扉を開け放って部屋の中へと雪崩れ込んだ。

 

 部屋の中で待ち構えていたのは。

 既に幾度か戦った、緑の服に身を包んだデフォルメされたキューピット……《恋愛》の『盲愛のクピド』が二体に、黒く光るカンテラを掴んだ白亜の鴉……《隠者》の『アメンティレイヴン』が四体に、ボロ布が垂れ下がった冠の中に浮かぶ書物……《女教皇》の『偽りの聖典』が二体。

 それと初見のシャドウである、中空に浮かぶ台座に座した修道女……《女教皇》の『導きのマリア』が二体だった。

 取り敢えず数が多い『アメンティレイヴン』を自分が相手する事にし、「残りは任せた」と合図を送ると、了解と言う返事の代わりに、花村はクルクルッと手にした短刀を手の中で取り回す。

『アメンティレイヴン』は電撃が弱点だ。

 一気に片を付けるべく、高火力の電撃魔法を得意とする《皇帝》アルカナの『トート』へと切り換える。

 

「来い、トート!」

 

 書物を抱えた狒狒の様な姿をしたトートは、元々の魔力の高さに加えて電撃属性の攻撃を強化する能力を備えている。

 更に、万が一電撃を反射されても無効化する事が可能だ。

 トートが持っている本を掲げると、《マハジオンガ》が白い閃光の奔流となって『アメンティレイヴン』達を呑み込み、跡形もなく消し去った。

 更に、偶々雷撃が蹂躙した範囲に居た一体の『導きのマリア』の姿をも溶かす。

 

『あ、『導きのマリア』の弱点は電撃みたいだね!

 先輩ナイス!』

 

「っしゃあ! ならもう一体は俺が片付けるっス!」

 

 りせの解析を聞いた巽くんがそう叫び、電撃を纏ったタケミカヅチの拳が一気呵成に残った『導きのマリア』に叩き付けられ、『導きのマリア』は何も出来ないまま消滅した。

 

 厄介な《マカラカーン》を使われる前に、と天城さんとクマと里中さんの三人に袋叩きにされた『偽りの聖典』は弱点属性を続け様に突かれて消滅し、『盲愛のクピド』達は放った《ポイズンアロー》ごとジライヤの《マハガルーラ》に吹き飛ばされて行く。

 

 シャドウを殲滅し終えて部屋の奥にあった扉を開けると、そこには上の階へと続く階段があったのだった。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 階段を登ると、フロアの構造自体は先程の階の様な変則的なモノではなく、一階・二階と似た様な感じであったが、辺りの雰囲気が少々変化していた。

 茶色系統を主としたブロックで壁などが構成されていた先程迄の階層とは違い、薄暗い緑色系統で周囲が構成されている。

 そしてやはり、階段を登るとほぼ同時に眼前にメッセージウィンドウが出現した。

 

【じょしアナが あらわれた!】

 

 まるでモンスターが出現したかの様なその演出に、ゲーム画面そのままの様な【たたかう】・【にげる】と言った行動を選択するコマンドが表示され、直ぐ様【たたかう】が選択される。

 

【ミツオの こうげき!】

 

 バシュッと言う音の演出がなされ、一瞬メッセージウィンドウが揺れた。

 そして気の抜ける様な電子音と共に【じょしアナを たおした】と文字が点滅する。

 そしてファンファーレが鳴り響いた。

 

【ミツオは レベルアップした!

 たのしさが 4 アップした!

 むなしさが 1 アップした!】

 

 ゲームによくあるレベルアップ時の演出が終わったかと思うと、メッセージウィンドウは唐突に消える。

 辺りには静寂だけが残った。

 

『今の……どう言う事?

 久保美津雄は、【犯人】じゃないんじゃ……』

 

 まるで自らが山野アナを殺害したのだとでも言いた気なその演出に、皆が戸惑っている。

 

 確かに今の字面だけを見れば、久保美津雄が山野アナの殺害犯に見えるだろう。

 しかし。

 

「まだ確かな事は言えないが……、ヤツが【犯人】だとは思えない。

 さっきの……何か変だとは感じなかったか?」

 

「変? クマにはぜーんぜん分かんなかったクマ!」

 

 何故かクマは胸を張ってそんな事を宣った。

 そんなクマの様子に、少し肩の力が抜ける。

 

「いや、な……。

 私の気の所為かもしれないが、そもそも“攻撃”と言うのがおかしいんだ」

 

 何故なら、【犯人】は被害者に直接手を下した訳では無い。

 テレビに落としただけである。

 その行為を“攻撃”と表現したのかもしれないが……。

 

 しかし何故、山野アナを殺害したかの様な表現をしたのだろう。

 その意義も理由も、皆目見当がつかない。

 全く読めない『久保美津雄』の“心”こそが、ある意味、この“迷宮”で一番恐ろしいモノなのではないだろうか……。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 行く手を阻むシャドウ達を退けて新たな階層に到達すると、再びメッセージウィンドウが現れた。

 先程と同じく、【したいはっけんしゃ】が現れたのだと演出する。

 そして全く同様に【たたかう】が選択され、【したいはっけんしゃ】が倒されたと言う演出の後に、レベルアップで“かなしさ”と“むなしさ”のステータス上昇を伝えてメッセージウィンドウは消滅した。

 

 先程も気になったのだが、上がったと表示されたステータスが“虚しさ”なのである。

 しかも、先程は1だった上昇率が今回は8も上がるなどと、かなりアップしているのだ。

 そして、さっきは“楽しさ”だったのが今回は“悲しさ”になっている。

 何故虚しさなのか……。

 

 ……そして、もう一つ気になっているのが、《じょしアナ》も《したいはっけんしゃ》も、個人を指している訳では無い表現だと言う事だ。

 それは“誰でも良かった”という意識の表れなのかもしれない。

 だけど、別の解釈をする事も出来るのではないだろうか。

 

 そう、例えば。

 そもそも久保美津雄は彼女らの顔や名前すら知らず、ただ“女子アナ”・“死体発見者”と言う伝聞情報しか知らない……直接会った事など無いからだ、とか。

 その場合、先程の訳の分からない内容は、単に久保美津雄の『妄想』であると言う事になる。

『妄想』の中で、顔も知らない会った事も無い人間を殺す、か……。

 ……良い趣味とは言えないが、まぁ考えるだけなら個々人の自由ではあるし、そこをとやかく言う必要は無い。

 もしあれらが彼の『妄想』であったのなら、“虚しい”だの何だのとあった理由もある程度の推測が出来る。

 

 集めた断片的な情報からでも、久保美津雄の対人関係が壊滅的な状態である事は容易に伺う事が出来た。

 その原因の多くは彼自身に由来しているのであろうが、原因が何処にあるにせよ、久保美津雄が鬱屈した感情を懐き易い状況であったのは確かだろう。

 そんな中久保美津雄は、最初は憂さ晴らしか何かで、『妄想』の中で他者を痛め付けていたのではないだろうか。

 憂さ晴らしなのだから、例え『妄想』の内容がそんなものであっても、最初の内はスッキリしたり楽しく感じるのも理解出来ない訳では無い。

 しかし、所詮は『妄想』。

 何れ程『妄想』に逃避した所で、久保美津雄の現実が変わる訳では無い。

 だから、“虚しさ”を覚えたのでは無いだろうか。

 

 ……まぁこれは所詮、断片的な情報を無理矢理繋ぎ合わせた憶測に過ぎず、それこそ『妄想』の類いなのだろうが。

 

 久保美津雄の真意が何処に在ろうとも、そんな事はどうだって良い事である。

 

 彼がこの世界に居座り続ければ、そう遠くない内にシャドウにより殺されると言う事。

 

 それだけは確かなのだから。

 彼を捕まえて彼方の世界に引き摺り戻す理由は、それで十分なのである。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 階段を登っても、メッセージウィンドウは出現しなかった。

 その代わりに、ラジオのチューニングを合わせるかの様な雑音が聞こえ……。

 

 ━━チガウ……

 

 何処か空虚で陰鬱な何者かの声……恐らくは久保美津雄の声が辺りに響く。

 

 ━━チガウ……チガウ……チガ……チガウ……チガ……チガウ……チ……チガ……チガガチ……チガガウ……チガウウ……チガ……ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガァァァッッ!!!!

 

 空虚さの中に何処か狂気染みた何かを孕んだその声は、何かに対する否定を繰り返していたかと思うと、壊れたレコードが同じ部分を再生し続けているかの様な支離滅裂なノイズを撒き散らし、絶叫の様な音を最後に唐突に消えた。

 

『な、何今の……』

 

 この“迷宮”で初めて聞いた『久保美津雄』の心の声の明らかに異常な様子に、りせは困惑の中に何処か怯えを見せる。

 りせに限らず、花村たちも不安や戸惑いを各々その顔に浮かべていた。

 

 ……よく考えてみるまでもなく、久保美津雄は少なくとも諸岡先生を殺害している。

 そんな久保美津雄の精神状態が、異常な状態にある可能性は高いのだろう。

 あの否定は、何に対する否定だったのか……。

 それは久保美津雄では無い自分には分かり様も無い事柄である。

 

 気を取り直して道を進んでいくと、不意にりせのナビがシャドウの接近を告げた。

 

 こちらに近付いてきたシャドウは八体。

 岩塊に仮面を貼り付けた様な『苦悩のバザルド』が三体。

 ペアのダンサーの様でありながらその頭は一つしか無い『ライフダンサー』が二体。

 十何匹ものピンク色の蝶で体を構成された『浮気のパピヨン』が三体。

 どれも《恋愛》アルカナに属するシャドウだ。

 バザルドには物理攻撃が通り辛いのが少々厄介であるが、然程脅威とはならないシャドウたちである。

 

「ペルクマーっ!」

 

 今回先手を取ったのはクマだ。

 クマは『浮気のパピヨン』達をピンポイントに狙って極寒の空間を作り出した。

 身体を構成する蝶が冷気によって力尽きたかの様に地に落ちたパピヨン達は、軽く武器で攻撃するだけで簡単に消えていく。

 

『ライフダンサー』が放った烈風は《隠者》の『クラマテング』に全て吸収され、花村達の元へは届かない。

 それ所か、カウンターアタックとして放たれたコノハナサクヤの『マハラギオン』で、『ライフダンサー』達は消し炭にされる。

 

 残った『苦悩のバザルド』達は、タケミカヅチが《マハジオンガ》で弱点を突く事でダウンを取った所を、『モト』の《マハムドオン》で一気に片を付けたのだった。

 

 全滅させた所で一息吐こうとしたその時。

 りせが焦った様に新手の出現を伝えてくる。

 

『大変! 新手が合流しようとしてる』

 

 その警告の直後、複数のシャドウに背後から強襲された。

 

 頭から桃色の花を咲かせた嬰児の様な《女帝》の『貪欲のバンビーノ』と、黄金に輝く甲虫の様な《皇帝》の『剛殺蟲』、そして、青い制服に身を包んだ太った警官の様な《法王》の『偏執のファズ』に周囲を取り囲まれる。

 内訳としては、バンビーノが二体、剛殺蟲が二体、ファズが二体だ。

 剛殺蟲は弱点である闇属性と耐性は無い物理攻撃しか通らないのが厄介である。

 

 《チャージ》で既に力を溜めていた『剛殺蟲』がその鋭く立派な角で繰り出してきた《剛殺斬》を、慌てずモトから切り換えた《戦車》の『キンキ』が去なしつつ受け止めた。

 物理を完全に無効化するキンキは、難なく『剛殺蟲』の角を鷲掴み、そしてそれをハンマー投げの要領で振り回して、もう一体の『剛殺蟲』へと叩き付ける。

 硬質なモノがぶつかり合う音が響き、その衝撃からか『剛殺蟲』たちはぐったりと倒れ、そこを花村と里中さんに攻撃されて、『剛殺蟲』は溶ける様に消滅した。

 

『偏執のファズ』は巽くんに、『貪欲のバンビーノ』はクマと天城さんによって倒された事により、通路は再び静寂に支配される。

 

 怪我をしたり疲労が見え始めている様子は無いので、小部屋で一時休憩を取った後、再び探索を開始したのであった。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

『おはよう

 ゆうべは よく

 おんなのこが ころされたんだって』

 

『アーケードのおとが あんなに すごかったのに

 パトカーのCAFEで コーヒー かってきて』

 

『おかねは あんしんして たてかえて

 きづかないで であるけないわ…』

 

『きいた? おはよう

 ぶっそうに おそくならない ようにね』

 

『あんしんして きをつけてね』

 

 新たな階に到達するなりメッセージウィンドウが出現した。

 だが、最早文字の大きさすらも不整で意味を全く成していない滅茶苦茶な内容のメッセージが、壊れかけのラジオが垂れ流す様な雑音と共に、凄まじい速さで点滅しながら次々に表示されてゆく。

 そして、ブツッという急にテレビの電源を落としたかの様な音と共にメッセージウィンドウは消滅した。

 

「もしかして、ここにいるクボミツオの不安定な心が反映されてるクマか……?」

 

「支離滅裂ってか……、イッちゃった感じ?」

 

 狂気を滲ませたメッセージを、うげっと引いた顔でクマと里中さんはそう評する。

 それに同意する様に皆が頷いた。

 何にせよマトモな状態で無いのは確かだろう。

 そんな状態の者が何を仕掛けてくるか分からない。

 一層気を引き締めて探索を開始した。

 

 緑色基調だった先程までの階層とは違い、この階層は、地下を思わせる様な暗い青色を基調としている。

 足元を照らすのは、作り物めいた松明の様な光源だけだ。

 フロアを探索していくと、如何にも何か有りそうな感じの、作り物めいた安っぽさの中でも辛うじて重厚さを感じさせる扉に行き当たった。

 

『何だろう……、シャドウが中に居るみたいだけど、結構強そうな感じがする』

 

「中にはそのシャドウだけなのか?」

 

 りせに訊ねると、りせは中を探るのに集中しているのか、暫し沈黙した。

 

『えっと、ちょっと待って……。

 ……ううん、中に何かの反応があるよ。

 シャドウはそれを守っているみたい』

 

 態々シャドウに守らせてる位だ。

 きっとこの先で何かしら役に立つものなのだろう。

 ゲーム的に言えば、キーアイテムを守る番人代わりの中ボス、と言った所なのだろうか。

 

「成る程な……。

 何を守っているのかは分からないが、手に入れておくに越した事は無さそうだ」

 

 皆はどう思う?と訊ねてみた所、全員がそのアイテムを手に入れる事に賛成した。

 そうと決まれば話は早い。

 準備を整えてから、一気に扉を開け放った。

 

 中で待ち構えていたのは、戦隊モノの特撮によくありそうな感じの人型ロボットの様な大型のシャドウだ。

 子供の玩具売り場に売られてそうな外観のそれには、肩の部分が右は『正』左は『義』とペイントされている。

 そのロボットの身の丈程もある巨大な剣を片手に、こちらを威圧する様に見下ろしていた。

 

『ソイツは《正義》アルカナの『逃避の兵』!

 光とか闇の属性は効果が無いみたい!』

 

 ある程度以上に強力なシャドウは光や闇属性の即死魔法を無効化する事が多いので、それは想定内である。

『逃避の兵』は侵入者を排除すべく動き出し、その左手を突き出してきて周囲に霧状の何かをバラ撒いた。

 

『今のは《淀んだ空気》だよ!

 即死魔法にかかり易いし状態異常にされ易くなってるから、気を付けて!』

 

 如何にも物理攻撃でゴリ押ししてきそうな外見なのに、状態異常攻撃を絡めてくる辺り、中々一筋縄ではいかない相手なのだろう。

 

『逃避の兵』は手にした剣を軽く振るって力を溜めた。

 《チャージ》を使った……と言う事は、物理攻撃が主体である可能性は高い。

 ペルソナを《魔術師》の『ランダ』へと切り換える。

 

「ランダ、《ボディーバリアー》!」

 

 召喚するだけで敵からのヘイトを集めるランダだが、範囲攻撃を使われる事を警戒して、《ボディーバリアー》──他者のダメージの肩代わりをするスキルを行使させる。

 その直後。

 

『逃避の兵』は手にした剣を大きく振るって、此方に斬りかかってきた。

 剣が薙いだ軌道にそって、周囲が切り裂かれていく。

 しかし、此方を切り刻む筈だったその攻撃は、金属同士を叩き付けたかの様な甲高い音と共に、全て『逃避の兵』自身へと跳ね返った。

 ランダは、物理攻撃を全て相手へと跳ね返す。

『逃避の兵』の攻撃──《マインドスライス》が此方への状態異常付与の効果も秘めていようとも、そもそも当たらないのならば意味は無い。

 跳ね返されたダメージは、ランダが肩代わりしていた皆への分も合わさってかなりのモノになった事だろう。

 だがしかし、『逃避の兵』は踏鞴を踏むかの様な仕草をしただけで、あまりダメージとして響いている様には見えなかった。

 

『物理攻撃には耐性があるみたい!

 他の属性で攻撃して!』

 

 りせが素早く分析をした結果に、思わず舌打ちをしそうになった。

 物理が効き辛いと言うのも中々厄介である。

 耐性が無いのなら、全部ランダで跳ね返してやればその内自滅するかと思ったのだが……。

 

「よし、これならどーだ!」

 

 ダンッと勢いよく踏み込んだトモエが、手にした諸刃の薙刀に氷を纏わせて切り込む。

『逃避の兵』の左腕を半分程損壊させたその一撃によって、『逃避の兵』の左腕全体が氷に包まれた。

 

『氷結は効くみたい!

 物理攻撃の分威力は落ちちゃうけど、それならまだダメージは通り易いよ!

 千枝先輩、ナイス!』

 

 この手の物理攻撃に耐性がある敵には分が悪い里中さんと巽くんだが、属性が付与された物理攻撃を仕掛ければ、ダメージの減衰は緩和出来る様である。

 それならば、と巽くんも《震電砕》で『逃避の兵』の左腕を完全に破壊した。

 

 反撃の様に『逃避の兵』が仕掛けてきた《利剣乱舞》は再びランダによって跳ね返され、その衝撃で『逃避の兵』は横倒しに倒れる。

 

「鳴上、チャンスだぜ!」

 

 花村に頷き返し、一気に畳み掛けるべくランダから《永劫》の『ケツアルカトル』へと切り換えた。

 ジライヤとケツアルカトルが放った《ガルダイン》はお互いを呑み込んで更に強大な竜巻と化して、『逃避の兵』を空高く巻き上げてその身体を破壊する。

 

「クマさん、私たちもやるよ!」

 

「了解クマー!」

 

 コノハナサクヤの《アギダイン》が竜巻に弄ばれている『逃避の兵』の身体を一部が溶け始める程の温度で熱し、直後にキントキドウジの《ブフダイン》がそれを一気に冷却した。

 竜巻が消え去り、床に叩き付けられる様に落下した『逃避の兵』は、その衝撃で身体のあちこちに罅を走らせる。

 関節の調子が狂ったのか、金属が激しく擦り合わされる様な音を響かせるその動きはぎこちない。

 手にした剣を鞭の様にしならせて《クレイジーチェーン》を仕掛けてくるが、その動きに精彩は無く、難なく全員が回避する。

 

「燃やし尽くせ、スザク!」

 

 止めに《節制》の『スザク』が放った《核熱発破》によって全身を砕かれた『逃避の兵』は、悲鳴と共に塵と化して消えたのだった。

 

『逃避の兵』を倒すと、壁の一部が動いて如何にもな宝箱が姿を現す。

 注意しつつそれを開けると、中には拳程の大きさのガラス玉の様な真っ黒な何かが入っていた。

 軽く叩いたりしてみても、特には何も起きない。

 それに僅かに拍子抜けしつつも、この先で必要になるのかもしれない、とそれを無くさない様に大切に仕舞った。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

『わあっはっはっはっ!

 くさった ミカンの ぶんざいで

 ワシに はむかうとは いい どきょうだ!』

 

 新たな階に辿り着くと、まるで二層目と同じ様な台詞が流れ、【諸岡が あらわれた!】と表示される。

 今まで、古い時代のゲームの様に片仮名と平仮名でしか表現されてこなかったのに、諸岡先生の名前だけは漢字でハッキリと表示された。

 そして。

 

【どうする?】と出てきた選択肢が、先程までの【たたかう】・【にげる】ではなく、今回は【ころす】・【にげる】であった。

【たたかう】を即決していた【じょしアナ】と【したいはっけんしゃ】の時とは違い、カーソルは何度も何度も……まるで久保美津雄の迷いを示す様に【ころす】と【にげる】を忙しなく行き来し……。

 

 ──終には【ころす】を選択した。

 

【ミツオの こうげき!】

 

 何かを鈍器で全力で殴った様な音と共にメッセージウィンドウが大きく揺れ、画面が真っ赤に染まる。

 

【諸岡を 殺した】

 

 おどろおどろしさすら感じる真っ赤な画面の中に、真っ黒に染まった文字が表示された。

 

【ミツオは レベルアップした!】

 

 レベルアップで流れる音も、音割れしているかの様だ。

 

【ちュうもくドが 16 アッぷシた!

 わダイせいガ 17 あっぷシタ!

 かッこヨさが 3 アップしタ!】

 

 ステータスアップを知らせる文字は、フォントが不整で大きさもバラバラである。

 メッセージウィンドウが消えると同時に不快な音は止み、辺りは静けさに包まれた。

 

「注目度とか、話題性とか、意味分かんない!

 人を殺しといて、格好よさとか、ふざけてる!!」

 

 許せないと憤る里中さんに同調する様に花村達も頷く。

 ……久保美津雄の真意が何処にあり、その行動の理由が何であったのかは分からないが。

 少なくとも彼が諸岡先生を殺害したのは揺るぎ無い事実なのだろう。

 ……。

 何れにせよ、久保美津雄迄の居場所まではそう遠くは無い筈だ。

 

 先を急いでいると、またもやシャドウが行く手を阻む。

 まるで縫いぐるみの様な『お守りレキシー』が四体。

 特撮に出てきそうなファイターの様な『獣神のギガス』が四体。

 真紅の車体を持つ戦車の様な『真紅の砲座』が四体。

 物理攻撃が効き辛い『真紅の砲座』と、物理攻撃や即死攻撃以外はダメージが通り辛い上に《テトラカーン》や《マカラカーン》を使ってくる『お守りレキシー』が同時にこうも大量に出現されるのは中々厄介だ。

 早速『お守りレキシー』は『獣神のギガス』に《マカラカーン》を使用する。

 これで《マハブフーラ》などで『獣神のギガス』の弱点である氷結属性を一気に突いて殲滅する方法は取れなくなった。

 

「来い、デカラビア!」

 

 《愚者》の『デカラビア』を召喚し、《磨耗の魔法陣》でシャドウ全体の麻痺を狙う。

 取り逃しは出たが、『獣神のギガス』は四体とも、『真紅の砲座』と『お守りレキシー』も半分は麻痺状態になった。

 

 そして素早くデカラビアを《恋愛》の『ラファエル』に切り換え、《空間殺法》で一気に纏めて薙ぎ払う。

『ラファエル』は状態異常の敵に対してはより致命傷を与え易くなる特徴がある。

 故にまだ倒し切れはしなかったが『獣神のギガス』達はもう虫の息であり、麻痺していた『真紅の砲座』は中破した様な状態になった。

 

「いっくよー、トモエ!」

 

 掛け声と共にトモエと駆け出した里中さんは『獣神のギガス』の一体に飛び膝蹴りを決め、トモエは一気に二体を切り裂く。

 残った『獣神のギガス』を花村とジライヤが背後からの一撃で仕留め、『お守りレキシー』を《マハブフーラ》と《マハラギオン》が呑み込んで消滅させた。

 

 残ったのは『真紅の砲座』が四体だけだ。

 しかも、二体は中破状態である。

 

『真紅の砲座』が苦し紛れに撃ってきた《アギダイン》は《正義》の『ソロネ』に吸収され、砲撃の隙を一気に突かれて全員に袋叩きにされた『真紅の砲座』たちもまた、消滅したのであった。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

『おお ゆうしゃ ミツオ

 みごとであった!』

 

『そなたの』

 

『そそソSoそなたのNoのの……』

 

『のnoののノノののノのノのnOオおのおののオのおのおおのおのNOおォオのおのおぉぉぉのおぉおオおぬおぬnuぬのおぉぉぬぉヌォォヌヌぬォォォ』

 

『ぬ◼◼◼ぬ◼◼◼め◼◼◼おメめォぬコぉるめぬめるおめお◼お◼お◼メめぉ◼ぉめ◼こ◼ぉ◼る◼ろ◼こぉ◼◼◼め◼◼◼ぉこ◼ろ◼ぉぉすRoロこスぉすぉぉ』

 

 

 再び出現したメッセージウィンドウは、始めからノイズが走っているかの様に画面が滅茶苦茶な状態であった。

 同時に辺りに響き渡る黒板を爪で引っ掻く様な不快な音を数十倍酷くした様な雑音に、耐えきれず思わず耳を塞ぐ。

 横目で見やると、花村たちも顔を顰めながら耳を押さえていた。

 

 意味を成す成さない所の問題では無い程文字化けしているかの様なメッセージは、既に『久保美津雄』が正常な精神状態では無い事をありありと伝えてくる。

 最後にはメッセージウィンドウはバグが生じたのか、砕け散る様に消滅した。

 

『……先輩、近いよ』

 

 久保美津雄が居るのは一つ上の階だとりせは告げる。

 泥の様に湧き出てくるシャドウを蹴散らしつつフロアを一気に走破して辿り着いた階段の前には、手首がそのまま身体になったかの様な姿をした真っ黒なシャドウが待ち構えていた。

 

『ソイツは『キリングハンド』!

 アルカナは《魔術師》だよ!

 光属性とか闇属性は効かないみたい!』

 

 りせがそう分析するのとほぼ同時に、『キリングハンド』は指を鳴らす様な仕草をする。

 すると、泥が染み出てくるかの様に新手のシャドウが現れた。

 こちらは『キリングハンド』とは色違いの白い手のシャドウだ。

 

「来い! カーリー!」

 

 《剛毅》の『カーリー』を呼び出し、《空間殺法》で一気に二体纏めて切り刻む。

 物理攻撃の威力を強化する『カーリー』の特性も相俟って、『キリングハンド』は小指と薬指にあたる部分を半ばから切断されて転倒した。

 しかし、物理攻撃に耐性があったらしい白い手のシャドウ──『ゴッドハンド』が指を鳴らすと、たちまち『キリングハンド』の傷は再生される。

 

『回復魔法を持ってるみたい!

 ソイツを何とかしないと、厄介だよ!』

 

『キリングハンド』が再び指を鳴らして『ゴッドハンド』をもう一体呼び出す。

 まさか無限に呼ぶ気なのだろうか。

 それは厄介だ。

 兎も角、絶え間無く攻撃を仕掛けて回復魔法を使わせたりや新手を召喚させない様にしなくてはならない。

 物理耐性の無い『キリングハンド』を里中さんと巽くんが、残りは『ゴッドハンド』を暗黙の内に引き受けた。

 

「嗤え、バフォメット!」

 

 《道化師》の『バフォメット』を呼び出し、《デビルスマイル》で相手の動きを制限させる事を試みる。

 バフォメットの怖気立つ様な声の無い嘲笑は、『キリングハンド』には効かなかった様だが『ゴッドハンド』には効果を示し、『ゴッドハンド』は怯えた様に身を縮こまらせた。

 ここで《亡者の嘆き》で追撃して仕留めれば直ぐに片が付くが、『キリングハンド』が残っている以上は再び召喚されるだけなので、倒すのなら三体合わせてほぼ同時に倒さねばならない。

 

 《デスバウンド》で攻撃しようとした『キリングハンド』は、浮かび上がった瞬間をトモエとタケミカヅチの双方に叩き落とされ床に倒れ伏す。

 この期を逃さず《女帝》の『スカディ』へと切り換えた。

 

「花村、クマ!

 同時に仕掛ける! 合わせてくれ!」

 

 《コンセントレイト》で魔法の威力を高め、クマと花村に合図を送ってからそれを《ブフダイン》として解き放つ。

 キントキドウジの放った《マハブフーラ》とジライヤの放った《マハガルーラ》も合わさった暴風雪は、一気に『ゴッドハンド』を含む三体ともを呑み込んだ。

 弱点を突かれた『ゴッドハンド』は成す術も無く消滅し、『キリングハンド』は凍り付いて動かない。

 そこを袋叩きにされた『キリングハンド』は、『ゴッドハンド』を新たに召喚する隙も無く塵へと溶けていったのであった。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 階段を登るとメッセージウィンドウではなく、見上げる程に大きな扉が出迎えた。

 

『この先に居るよ。気を付けて!』

 

 りせのナビに頷いて、扉を開けようと手をかけるが。

 ……? 開かない。

 と言うか、扉に触れる前に何か硬い壁にでも触れている様な感じだ。

 何かに“封印”されている感じ、とでも言えば良いのだろうか。

 如何にもゲームチックな……と思いつつ、もしやと思って先程手にいれたあの謎のガラス玉を取り出す。

 すると、黒いガラス玉から、黒い靄の様な何かが滲み出てきて、それが扉を浸食した。

 靄が完全に抜けきってガラス玉が透明になるのとほぼ同時に、浸食が限界に達した扉は独りでに開く。

 

 扉の向こうに広がっていたのは古代ローマにあったコロセウムによく似た……より正確にはゲームにありがちな闘技場を模したかの様な空間であった。

 その中央辺りでは、『久保美津雄』が何事かを喚き散らす久保美津雄と対峙していた。

 ……? 何やら様子が少しおかしい。

 早速取り押さえようとして駆け出そうとする巽くんを抑え、少し久保美津雄の様子を観察する。

 

「どいつもこいつも、気に食わないんだよ……。

 だからやってやったんだ、このオレが!

 どうだ、何とか言えよ!!」

 

 耳障りな声で喚き散らす久保美津雄に向き合っているのは、虚ろな瞳が金色に染まった……『シャドウ』だ。

『久保美津雄』は地団駄踏むかの様に激しく身振り手振りを交えて喚く久保美津雄を、剰りにも空虚な瞳で何も言わずに見詰めていた。

 冷めているとか、そんな次元ではない。

 何もかもがどうでもよく、自分自身の言葉を塵と同価値程度にしか感じていない事を、その空虚な瞳は物語っていた。

 

「たった二人じゃ誰も俺を見ようとしない。

 だから三人目をやってやったんだ!

 オレが、アイツを殺してやったんだっ!!」

 

 こちらが見ている事にも気付かぬ程に激昂した久保美津雄は、そう主張するが。

『久保美津雄』はそんな自身に何の興味も無いのか、身動ぎ一つせず、ただ虚ろな瞳で虚空を見詰めている。

 

 三人を殺した、と主張しているがそれはただの妄想でしかない。

 実際に殺した、……殺してしまったのは諸岡先生だけだ。

 ……久保美津雄の言葉は虚飾と妄想だらけである。

 だから、なのだろうか。

 彼の『シャドウ』が何の反応も返さないのは。

 

「な、なんで黙ってんだよ……」

 

 まるで壁にでも話し掛け続けているかの様に無反応な様子に、喚き続けていた久保美津雄も気味が悪そうにぼやく。

 

『何も……感じないから……』

 

 漸く久保美津雄の言葉に反応した『久保美津雄』の答えは、それだけだった。

 蚊の鳴く音すら相対的に騒音に聞こえる程に、生気も抑揚も無く消え入りそうなその声は、聞いているだけのこちらの背筋を何故かゾクリと震わせる。

 そしてまた、『久保美津雄』は貝の様に口を閉ざした。

『久保美津雄』の言葉に過剰に反応して逆上した久保美津雄は、最早聞き取るのが困難な程に罵声を撒き散らし始める。

 

「な、何コレ? ……どっちがシャドウ?」

 

 まるで久保美津雄自身の方が『シャドウ』の様に見えてくるその様子に、里中さんは困惑した様に声を上げた。

 しかし、『シャドウ』とは本人が抑圧している側面であると同時に、目を反らしたい己でもある。

 虚勢を張り続け自ら望んで虚構に溺れている久保美津雄が目を反らしたかったのは、“現実”の……虚構を剥ぎ取られた自分自身なのだろう。

 そう考えれば、久保美津雄の『シャドウ』がこれである事には何の不思議も無い。

 自らの目を覆う虚飾を剥ぎ取った久保美津雄の姿が、この『シャドウ』なのだろうから。

 

『僕には……何も無い……。何も、出来ない……。

 僕は、無だ……』

 

 生気を欠片も感じ取れない程に今にも消えそうな声で、ボソボソと『久保美津雄』は久保美津雄に語る。

 

『そして……。君は、僕だ……』

 

 初めて、『久保美津雄』は久保美津雄をその瞳に映す。

 しかしその瞳は何の感情も映さず、虚ろなままだ。

『久保美津雄』の言葉に、久保美津雄は目に見えて狼狽え、それを誤魔化そうとしているかの様に吠える。

 

「何だよ……何だよ、それッ!

 オレは……、オレは無なんかじゃ……」

 

「駄目、このままじゃ……!」

 

『シャドウ』を否定しようとした久保美津雄の行動に、天城さんが思わず声を上げると、それに反応したのかここにきてやっと久保美津雄はこちらの存在を認めた。

 

「な、何なんだお前ら!?

 どうやってここへ……くっそ、誰なんだよ!

 こんなとこで何やってんだよ!?」

 

 訳も分からず混乱する久保美津雄に、巽くんが怒声を上げる。

 

「るせえ! テメェを追って来たに決まってんだろが!」

 

「久保美津雄。

 あなたが諸岡先生を殺害した犯人で、間違いないか?」

 

 一応念の為にそう尋ねると、混乱していた久保美津雄は、何故か嬉しそうにやや引き攣った様な笑みを浮かべて壊れた様に笑い声を上げた。

 

「は、はは、あはははははは!!

 そうだよ、そうに決まってんだろ!

 オレがあのクソ野郎をやってやったんだよ!!

 アイツだけじゃないぜ!

 前の二人も殺してやった!

 そうだ、俺は無なんかじゃない!」

 

 そうだ、そうだ、とまるで自分に暗示をかける様に呟き、久保美津雄は虚飾を誇る。

 だがその瞳は何処か虚ろであり、目の前に居る筈のこちらを映してはいない。

 

「お前らもだ……。

 こんな所まで追いかけて来やがって!

 お前らも殺してやる!」

 

 こちらに指を突き付けそう吠えるが、よく見ると僅かにその指先は揺れている。

 そして、久保美津雄は再び沈黙に沈んだ『久保美津雄』へと向き直って唾を吐きかけた。

 

「ニセモノが何言おうが知るかよ!

 ははは、そうだ、お前なんか関係ない!

 俺の前から消え失せろッ!」

 

『久保美津雄』は黙ったままその否定の言葉を聞いている。

 俯きがちな虚ろな瞳には、自身を否定する己の姿すら映ってはいない。

 反応が無い『久保美津雄』から目を背ける様に久保美津雄は再びこちらに視線を向け、狂った様に吠え猛った。

 

 

「みんな殺してやる!

 まとめて殺してやる!

 オレは出来る……。

 オレは、出来るんだからな!」

 

 

 そんな宣言をする久保美津雄に、漸く『久保美津雄』は顔を上げて久保美津雄をその瞳に映す。

 

『認めないんだね、僕を……』

 

 ボソっと呟かれた直後、久保美津雄は突如脱力したかの様にその場に尻餅をついた。

 

「うっ……。なんだ、これ……。

 うわあぁぁっ!!」

 

『シャドウ』の暴走が始まり、『久保美津雄』が黒い泥に覆われて一気に膨張する。

 その衝撃に久保美津雄は弾きとばされ、壁際まで転がって気絶した。

 胸郭はちゃんと動いているので生きてはいるのだろう。

 今はそんな事よりも、目の前の『シャドウ』の方が優先だ。

 

 

『僕は……影……』

 

 

 泥から出てきたのは、まるで頭が極度に肥大化した嬰児の様な姿の『シャドウ』であった。

 宙に浮かぶ『シャドウ』の頭の周りには、文字化けした文字の様な何かが浮かんでいる。

 

 

『おいでよ。

 ……空っぽを、終わりにしてあげる』

 

 

 ボソボソとそう言った直後、『シャドウ』は金切り声の様な叫び声を上げた。

 途端にその姿をブロックの様な塊が覆い隠していく。

 

 

 ━━邪魔な奴は殺す。

 ━━目障りな奴は殺す。

 ━━気に食わない奴は殺す

 

 ━━みんな見てくれ!

 

 

 ブロックが組合わさって形作られたのは、まるで粗いドットの絵をブロックで表現したかの様なゲームの勇者を模した人形であった。

 右手にブロックで出来た剣を持ち、それを高らかに翳して宣言する。

 

 

 ━━ボクが“みちびかれしゆうしゃ”ミツオだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆




【今回戦った中ボスたちの性能】

《7階》
『逃避の兵』【正義】(物:耐、光・闇:無)
・利剣乱舞、クレイジーチェーン、マインドスライス
・ムドオン
・チャージ、淀んだ空気
・バステ成功率UP
(チャージ、バステ成功率UPをスキルに追加)


《9階》
『キリングハンド』【魔術師】(光・闇:無)
・デスバウンド
・チャージ
・召喚(ゴッドハンドを召喚する)
(チャージをスキルに追加)

『ゴッドハンド』【魔術師】(物:耐、氷:弱)
・ディアラマ、アムリタ、サマリカーム、ヒートライザ
(ヒートライザ、アムリタ、サマリカームをスキルに追加)


(7階に配置されていた中ボスを9階に移動させ、ボイドクエストクリア後の大型シャドウを7階の中ボスとして配置しました)




◆◆◆◆◆




《仲間のペルソナ》


【陽介】
『ジライヤ』【魔術師】(風:耐、雷:弱)
・パワースラッシュ、神風撃
・ガルダイン、マハガルーラ
・マカジャマ、テンタラフー
・スクカジャ
・ディア
・トラフーリ、デカジャ、疾風ガードキル
・素早さの心得、疾風ブースタ、混乱成功率UP


【千枝】
『トモエ』【戦車】(氷:耐、火:弱)
・黒点撃、ヒートウェイブ
・ブレインシェイク、凍殺刃
・ブフ、マハブフ
・チャージ、心眼覚醒、タルカジャ
・アドバイス、氷結ブースタ、攻撃の心得
・ヘビーカウンタ


【雪子】
『コノハナサクヤ』【女教皇】(火:耐、氷:弱)
・アギダイン、マハラギオン
・ムドオン
・ディアラハン、メディラマ
・アムリタ、リカーム
・火炎ガードキル
・神々の加護、火炎ブースタ


【完二】
『タケミカヅチ』【皇帝】(雷:耐、風:弱)
・バスタアタック、ミリオンシュート、震電砕
・ジオダイン、マハジオンガ
・メディア
・龍の咆哮、チャージ
・マハタルカジャ、マハスクンダ、ラクカジャ
・電撃ガードキル
・電撃ブースタ、気絶成功率UP、小治癒促進


【クマ】
『キントキドウジ』【星】(氷:耐、雷:弱)
・毒串刺し
・ブフダイン、マハブフーラ
・メディラマ、ディアラハン
・リパトラ、エナジーシャワー、サマリカーム
・マハタルカジャ、氷結ガードキル、トラエスト
・氷結ブースタ、防御の心得


【りせ】
『ヒミコ』【恋愛】
・アナライズ
・トレジャーサーチ、エネミーサーチ


◆◆◆◆◆


《今回番長が使用したペルソナ》

【愚者】
『デカラビア』(雷・光:無、風:耐、物:弱)
・アギダイン、メギドラ
・磨耗の魔法陣
・マハタルンダ、テトラカーン
・物理耐性、真・物理見切り、火炎ハイブースタ


【魔術師】
『ランダ』(物:反、氷:弱)
・狂乱の剛爪
・アギダイン、マハラギオン
・テンタラフー
・ヘイトイーター、ボディーバリアー
・氷結見切り、鮮血の先導者


【女帝】
『スカディ』(氷:吸、風:耐、火:弱)
・アイオンの雨
・マハブフーラ、ブフダイン
・コンセントレイト
・氷結ハイブースタ
・火炎反射、ソードブレイカー、魔術の素養


【皇帝】
『トート』(雷:無、光:反、風・闇:弱)
・ジオダイン、マハジオンガ
・マハンマ、メギド
・電撃ブースタ、電撃ハイブースタ
・魔封防御、英気の泉


【恋愛】
『ラファエル』(氷:反、光:無、闇:弱)
・空間殺法、天軍の剣
・メギドラ
・チャージ、ヒートライザ
・メディアラハン、アムリタ
・パニッシャー


【戦車】
『キンキ』(物:無)
・マッドアサルト、ギガンフィスト、シールボムズ
・レボリューション、チャージ
・ハイパーカウンタ


【正義】
『ソロネ』(火:吸、光:無、闇:弱)
・アギダイン、マハラギオン、ハマオン
・コンセントレイト
・ハマ成功率UP、マハラクカオート
・闇耐性、闇からの大生還


【隠者】
『クラマテング』(風:吸、火:耐、雷:弱)
・烈風波、空間殺法
・ガルーラ、マハガルーラ
・マハスクンダ
・疾風ブースタ、疾風ハイブースタ、電撃耐性


【剛毅】
『カーリー』(氷・闇:無、雷:弱)
・空間殺法、緋炎刀
・ブフダイン
・チャージ、ヘイトイーター
・豪傑の双腕、物理ブースタ、物理ハイブースタ


【死神】
『モト』(闇:反、雷:無、風:弱)
・ヘビーショット
・マハムドオン
・デビルスマイル、テンタラフー、有毒の魔法陣
・亡者の嘆き
・バステ成功率UP、ムド成功率UP


【節制】
『スザク』(火:反、氷:弱)
・核熱発破
・アギダイン、マハラギオン
・マハスクカジャ
・火炎ブースタ、火炎ハイブースタ
・マハスクカオート、氷結耐性


【道化師】
『バフォメット』(闇:無、光:弱)
・マハラギオン、マハムドオン
・デビルスマイル、亡者の嘆き
・物理見切り
・バステ成功率UP、ムド成功率UP


【永劫】
『ケツアルカトル』(風:耐、光:無、闇:弱)
・ヒートウェイブ
・マハガルーラ、ガルダイン、マハンマオン
・マハスクカジャ
・疾風ブースタ、疾風ハイブースタ


(番長や仲間のペルソナのスキルには、PQなど由来のモノも含まれております)

(使えるけど出番はないペルソナ)
【女教皇】
『キクリヒメ』(火:無、雷:耐、闇:弱)
・マハラギオン
・メディラマ、ディアラハン、サマリカーム
・火炎ブースタ、勝利の息吹、神々の加護
・闇耐性


◆◆◆◆◆



『刹那の児』戦をやるのを忘れてたので、『青龍』(節制)・『サキュバス』(悪魔)・『フウキ』(星)・『ナラシンハ』(太陽)の出番は無くなってしまいました。
これらのペルソナのファンの方がいらしたら、すみません。
『刹那の児』は、画面外の何処かで倒したのだと思っておいて下さいませ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。