いじめ?俺には関係無いな   作:超P

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今回は胸糞悪い感じです。


教育と折檻は紙一重だ。

如月家

 

学校での一時的な教育を行った後。

気絶した達也を担いで家に入り、浩太は達也を自分の部屋で『教育しなおす』。

浩太にとって最も気に入らない事。それは『視線が集まる』事である。

シングルファザーという面倒くさい立場というだけでも耐えきれないというのに、このクズはよく問題を起こす。

 

校内でどういう問題が起きているのかは重要ではない。というかどうでもいい。

 

問題なのは『こいつが問題に関わっている』という事だ。

 

だから体に覚えさせ、思い出させる。

もう一度自分の価値を体に教える為に。

もう二度とこのような間違いが起きない為に。

 

何度も何度も何度も何度も何度も。

 

浩太「おい…………起きろ」

 

達也「」

 

浩太「一度言ってわからないようなら体に教える。前にも言ったなぁ?」

 

達也「」

 

浩太「…………起きろッ!」

 

浩太は助走をつけて達也の腹を全力で蹴り飛ばす。

達也の体は小学生のそれとなんら変わらない。当然、大人の足で蹴り上げられたら宙に浮く。

ちなみに達也はこの時に痛みで一度目が覚めている。

 

だが自身の置かれている状況を理解し、もう一度自分で意識を飛ばす。

 

達也「」

 

浩太「チッ………また意識を飛ばしたかよ?………本っ当に気味の悪ぃ特技だな………」

 

達也「」

 

浩太「まぁな?………いつもならここで放置するけどさぁ?」

 

達也「」

 

浩太「今日はいい物があるんだよねぇ……」

 

 

そう言うと浩太は仕事用の鞄から器具を取り出す。ニタニタと、逃げる事のできない弱者を痛めつける愉悦を楽しんでいるのだ。

 

その器具の色は暗く、とてもゴツい。

先端には金属で出来た小さい刃が付いており、一目で危険なものだという事が分かるほどに凶悪な外見である。

 

その器具の名は『スタンロッド』である。

 

スイッチを入れる事で大出力の電流を発生させるというれっきとした『武器』である。

用途は主に囚人や捕虜の拷問などに使われる。

このスタンロッドは威力は抑えてある。だが、それでも大人が痺れるぐらいの電圧だ。

小学生が受けるには十分過ぎるぐらいの電圧である。というか小学生が受けるようなものでは無い。

 

 

浩太「じゃあ始めるぜ?」

 

浩太がスイッチを入れるとスタンロッドはバチバチと音を立てて放電する。

 

達也「ひっぎぃッ⁉︎…………カハッ⁉︎」(ヤバイ!ここまで強力な電撃はさすがに我慢できない!)

 

達也は電流を受けた瞬間に目が覚ました。

脳が危険信号を出したのだ。このままでは死ぬと。

 

達也は父親からあらゆる拷問紛いの教育を受けている。

タバコの火を押し付けられ、洗面器に顔を長い時間押し付けられ、電撃を浴びせられる事もあった。

だから多少はあらゆる責めに耐性がある。

 

だがそれも常識の範囲内だ。

 

人間はおろか、猛獣さえもダウンさせる電撃を浴びては無事では済まないだろう。

 

 

 

浩太「それキモいからねー?てか動くなよ!」ドゴォ!

 

達也「ぶふぅ⁉︎」

 

浩太「お前さぁ………なーんであんな面倒なことしたわけ?」

 

達也「……ハァ…………ハァ…………?」

 

浩太「だーかーらー」

 

 

 

 

 

浩太「なんで俺に迷惑ばっかりかけんだよって言ってんのッ!」ドスッ!

 

 

 

 

 

 

達也「グッ⁉︎」

 

浩太「気絶すんなよ?今のはただお前の腹にちょっとだけつま先を当てただからな?」

 

達也「………………」

 

浩太「本当なんで生まれたの?ねぇ?」

 

達也「…………あなたが…………俺を、作ったから」(まだ耐えられる、まだ耐えられるはずだ、その程度ならまだ)

 

浩太「おめーなんていらねーんだよッ!」バチバチッ!

 

達也「ぐ、ぐわあぁぁぁぁぁぁあ!?」(連続で⁉︎あと5秒は待たないと!)

 

浩太「あーあ………首筋にくっきりと焦げ目がついちゃったなぁwww」

 

達也「」ピクピク

 

浩太「ははっ!きめぇ!きめぇよ!なーに痙攣してんだよぉ!」ドゴッ!

 

達也「ぐ、………………うっ!」(流石、に、身体が、言う、事をき、聞かな、い、、)

 

浩太「うわっ!吐いたよこいつ!きったねぇなぁ………ざけんなっと♪」ブスッ

 

達也「いギィィイィィ⁉︎」ガタガタガタガタ

 

浩太「大丈夫だよー、太ももにはな?大切な器官はないんだよ?だからどんなにカッターが刺さってもだいじょーぶ♡」 ドスッドスッドスッドスッ!

 

達也「ふ、ふうぅう、ふうぅう」(意識を、いしきを、イシキヲ!)

 

浩太「…………深呼吸による痛覚の麻痺、ねぇ………どこで覚えたんだか知らないけど………」

 

達也「ふうぅう!ふうぅう!」(何としてもこの人に俺を殺させはしない!、、真也の、咲の、親、は、人殺しになんてなってはダメだっ!呼吸を!酸素を供給しろ!血流をよくしろ!脳に酸素を回して意識を保て!)

 

浩太「いくら何でも刺し傷は無理っしょwww無理無理www」

 

達也「………ふぅ…………ふ、ふぅ」(死ぬものか、死ぬものか、死ぬものか、死ぬものか、死ぬものか)

 

浩太「あ、やべ!死ぬ?おい死ぬなよ?」

 

達也「…………………ふ、ふ、ふぅ」(当たり前だ………宗介さんのくれた愛を、真也のくれた家族の絆を、咲のくれた兄弟の繋がりを、こんなところで捨てたりできない、)

 

浩太「………んー、ま、これ使って心マもできるしー………」

 

 

 

 

 

 

浩太「そこ、片付けとけよ?」

 

 

 

 

 

 

 

達也「…………………ふぅ、ふ、ふぅ」(おわっ、終わった、のか?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浩太は部屋と達也自身の傷の後始末を押し付けると、真也達の寝床へ向かう。

辺りには静寂だけが残り、達也は一人、深呼吸で痛みを和らげようとする。

 

 

 

(…………”今日も生きることが出来た”………)

 

(あの人が殺人を犯せば”弟達や宗介さんは悲しむ”………それだけは避けなければ………!)

 

(…………目立った外傷は右の足と肋骨………左の鼓膜……あ)

 

 

 

 

 

(舌の感覚が無い…………)

 

 

 

 

 

(……………やれやれ、俺も精神が未熟だな………ショックで五感の一つを失うなんて)

 

 

 

達也はこの家に来てからほぼ毎日

 

 

 

浩太から家庭内暴力を受けている。

 

 

 

否、それは家庭内暴力などいう生ぬるい物では無い。

それは拷問に近い。

気に入らない事があれば全て達也に矛先が向く。

しかも殴る蹴るだけでは無く先程のように拷問器具を使う事もあるのだ。

 

 

包丁で刺された事は何度もある。

電気椅子は死ぬかと思った。

水責めは思い出したくない。

断食の時は最後の方の記憶が無い。

首を絞められる体験をして生きてる小学生は珍しいだろう。

失明、失聴はまだ無いが今回は治らないかもしれない。

 

 

役所に行けば一発で父は捕まる筈だ。

 

 

 

だがそれはしない。

自分の体さえ耐え切れるのならば何も問題は無いのだから。

いや、むしろ自分でストレスを発散できるのであれば好都合だ。

 

弟達は危険にならないのだから。

 

このまま自分はあの人のストレスを発散させなければいいだけの事。

 

 

 

 

それが最善の道だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日

 

 

咲「おはよーお兄ちゃん!」

 

真也「おはよー………咲」

 

達也「あぁ、おはよう。二人とも」

 

真也「あー!お兄ちゃん!昨日はどこに行ってたのさ⁉︎」

 

達也「………あー…………悪い,ちょっと野暮用でな」

 

真也「僕、昨日トランプやりたくてずっと待ってたんだよ!」

 

咲「咲もー」

 

達也「悪いな、無理だ」

 

真也「むー………父さんが来たからいいけどさー」

 

 

 

 

浩太「おはよう。二人とも」スタスタ

 

 

 

 

真也「あ!父さん!おはよー!」

 

咲「ぱぱーおはよー」

 

達也「………おはようございます」

 

浩太「……………さて、ご飯にしようか。もう出来てるな?」

 

達也「……えぇ」

 

真也「お兄ちゃんって早起きだよねー」

 

咲「咲、お兄ちゃんより早く起きた事ないよー?」

 

達也「……………ははっ、俺は誰よりも早く起きてるからな」

 

咲「えー」

 

浩太「ほら早く食べなさい。咲?お父さん仕事があるんだ。早く行くぞ?」

 

咲「わわわ!待ってよう!」たったったっ

 

真也「お兄ちゃん!今日学校行く時にしりとりしようよ!」

 

達也「………俺より早く家を出れたら考えてやらん事もない」

 

真也「負けないもんねー!」たったったっ

 

 

 

 

 

 

浩太「………………傷は?」

 

達也「消しましたよ」

 

浩太「見つかったら殺すから」

 

達也「肝に命じます」

 

浩太「真也としりとりをするな」

 

達也「……えぇ」

 

浩太「あいつが事故に遭わないように守れ。いいな?」

 

達也「はい」

 

浩太「後お前、今日は家に帰ってくるな」

 

達也「………はい」

 

浩太「ランドセルに必要なもんまとめて3日ぐらいどこかに行ってろ。真也達は隣の家に預ける」

 

達也「………(………女か。異性の匂いをプンプンさせるのは真也達の教育に悪いと理解できないのか?)分かりました」

 

浩太「書類は?」

 

達也「ここに。………それと今回の企画は少し穴が多い気が……」

 

浩太「お前の意見は聞かん。お前は仕事だけしてろ」

 

達也「はい(………あの効率の悪さで企画が通る訳がない)」

 

 

 

 

 

 

 

一時限目

 

 

先生「はーい!二人組を作ってー!」

 

真也「お兄ちゃーん!一緒に」

 

達也「先生。余るのでペアをお願いしていいですか?」

 

先生「えっ?」

 

達也「ペアを」

 

真也「お兄ちゃん?僕と」

 

唯「ねー、真也君?あたしとペア組まない?」

 

真也「唯ちゃん?………いいよ!」

 

???「せんせー!みんなできたー!」

 

先生「えっ、でも達也君が」

 

 

 

 

達也「先生」

 

 

 

 

先生「な、なに?」

 

達也「ペアをお願いします」

 

先生「………しょうがないわねー」

 

 

 

 

 

 

休み時間

 

 

蓮歌「…………ねー」

 

達也「(横寺………!関わるのは避けた方がいい)悪い、トイレ行ってくる」

 

蓮歌「あっ!…………行っちゃった」

 

???「蓮歌ちゃん!何してるの?」ドキドキ

 

蓮歌「あ、あのね?達也君に話したい事があったんだけど………」

 

???「!俺呼んでくるよ!」

 

蓮歌「えっ」

 

???「行ってくる!」

 

蓮歌「へ?えぇ?えええ?」

 

 

 

 

 

達也(…………授業前までここにいるしかない)

 

???「達也!」ドンドン!

 

達也「……誰だ?」

 

勇太「勇太!なんか蓮歌ちゃんが話したいんだって!」

 

達也「……………悪いが腹痛でな」

 

勇太「ちゃんと話さないとダメなんだぞ!」

 

達也「(どこの世界に腹痛よりも会話を優先させる決まりがあるんだよ)聞いてたか?俺は今腹痛で」

 

勇太「でてこいよー!」よじよじ

 

達也「………危ないぞっ!落ちたらどうする気だ⁉︎」

 

勇太「へっへーん!お前がドア開けないから……って、あ⁉︎」ずるっ

 

 

 

 

 

 

 

 

クラス

 

 

先生「………勇太君?なんでドアに登ったりしたの?」

 

勇太「ヒグッ………だって……ぐすっ………達也が………ぐすっ………ドアあげないがら!」

 

達也「…………(…………あー、これで診察して骨折してたら面倒だな……)」

 

先生「達也君?トイレで何してたの?」

 

達也「…………ちょいと腹痛で」

 

先生「…………(面倒ね………でも一応怪我人がでてるし……達也君が怒られて終わればいいわよね)お父さんを呼ぶしかないわね」

 

達也「…………!(どこをどう解釈したらその解決方法に結びつくんだ?)」

 

先生「お父さん怖い?でもだーめ。ちゃんと怒られて来なさい。いいわね?」

 

達也「………はい(…………2日続けて、か…………死んじまうのか、俺?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浩太「お前はッ!俺をッ!おちょくってんのかッ⁉︎」ドガッバキッドスッ!

 

達也「ぐふっ、うごっ、ひぎぃ!」(笑うしかないな………いや、笑う体力がもったいない、やめよう)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日 昼休み

 

 

勇太「オイ!」

 

達也「………(勇太………だっけ?上の名は………)望月か」

 

勇太「決闘だ!」

 

達也「………ごめんだね」

 

勇太「男と男の戦いだ!校庭に来い!待ってるからな!」

 

達也(いかないけどな)

 

 

 

 

 

 

 

 

先生「で?なんで泣いてるの?(………めんどくさっ)」

 

達也「達也が来るって言ったのにぃ!」ぼろぼろ

 

達也「………(……いってないんだが)」

 

先生「(ま、こっちの親呼べばいっか)お父さん呼ぶからね?」

 

達也「…………はい(……………やべっ、流石に足震えてきた)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浩太「死ねぇ!死ねぇ!もう死んでくれよぉ!」ドスッドスッドスッ!

 

た「ヒギィィぃぃい⁉︎イギぃィぃいあぁぁぁあア⁉︎(腹にカッターか………声は我慢できないな………もはや笑えないぞこれ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

達也は二年に上がる頃、既に悲鳴を上げる事はなかった。

 

 

 

 

 




達也は自分が不幸だとは本当に思っていません。

自分を犠牲にするという風にも思っていません。

ただ、大切な人を傷つけたくないだけなのです。





その思考は歪んでいるのですが。

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