いじめ?俺には関係無いな   作:超P

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お祖父ちゃんは如月グループの会長です。


残酷だけど、俺は愛を知った。

宗介「…………精一杯、儂の可愛い孫を抱きしめさせてくれ」

 

達也「………ま、いいですよ」

 

達也(愛を教えてくれる本当の意味で優しい人………俺はあなたと出会えた事を誇りに思う)

 

宗介は全力で愛を込めて孫を抱きしめる。

 

これから長い間愛を感じないであろう愛する孫に。

自分の環境に何も不満を感じる事ができ無い可哀想な孫に。

劣悪な環境で孤独になってしまった哀れな子供に。

 

 

宗介「儂は何があってもお前を見捨て無い」

 

達也「……………………………はぁ、これが最初で最後です」

 

 

 

達也「ありがとう、祖父さん。俺は貴方に愛を教えてもらった。幸せを教えてもらった。生きる喜びを教えてもらった。初めてこの世界も捨てたもんじゃないと思えた。人は信頼できる生き物なのだと思えた。俺は孤独から救われた」

 

 

達也は言い終わると宗介から離れる。

宗介は名残惜しそうにするが、達也はスルッと宗介の腕の中から出てしまう。

まるで『もう孫でいるのは終わりだ』とでも言うように。

 

 

 

宗介「もう…………儂はお前にできる事はないのか?」

 

達也「…………一つだけ」

 

宗介「!なんでも言ってくれ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

達也「俺、本が好きなんですけどね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1年 遠足

 

 

真也「お兄ちゃん?何読んでるの?」

 

達也「本だよ」ペラ

 

真也「知ってるよー、そうじゃなくて何の本?」

 

達也「人間失格」ペラ

 

真也「ふーん、面白い?」

 

達也「お前にゃ理解できんよ」ペラ

 

真也「ふーん………あっ、この前の入学祝い、何貰った?」

 

達也「………本と環境と図書カード」ペラ

 

真也「本ってそれ?」

 

達也「…………おう」ペラ

 

達也(このやり取りに意味は無い。全く無い。それでもこのやり取りを望む小学生は何を考えて言葉を話してるんだ………?理解できん)

 

真也「でも今遠足だよ?」

 

達也「遠足中に本を読む事が罰則の対象だという事実は無い。更に言えば例えそれが罰則の対象だとしても小学生なら大した罰則にはならん」ペラ

 

真也「遊ぼうよ!」

 

達也「俺はいい」ペラ

 

真也「えー?なんでー?」

 

達也「眠い」ペラ

 

???「あー!達也の奴本なんか読んでるー!ダメなんだぞー!」

 

真也「かんちゃん!」

 

かんちゃん「真也!なんで止めないんだよー!」

 

真也「お兄ちゃんね?眠いんだってー」

 

かんちゃん「せんせーにいってやるー!」

 

 

かんちゃん、と呼ばれたクラスメイトは先生を呼びに行ってしまった。

面倒だ、そう思い達也はその場から去り、近くの木の陰に隠れた。

 

 

達也(結局、爺さんには迷惑をかけてしまった…………あの書斎、マンション一室をくれるなんて………図書券だっていくら分だ?本もかなりある…………もう本不足には困らない。だがこの恩は一生かけてでも返さなきゃならないな)

 

???「達也くーん!」

 

達也「……………中谷か」ペラ

 

未来「もー、未来って呼んでほしーの!」

 

達也「何か用か?」ペラ

 

未来「あそぼーよ!滑り台で!」

 

達也「俺が本を読んでるのが分からないのか?この天然め」ペラ(その年頃の子は他人の事情など御構い無しに遊びに誘う。そしてそれを断るとまた面倒な事になる。具体的に言うと泣いたり怒ったり)

 

未来「えー、つまんないのー」

 

達也「そうか?俺は面白いと思うがな」ペラ

 

未来「未来がつまんないのー!」

 

達也「お互いの価値観は違うようだな。じゃあ解散という事で……………」ペラ

 

かんちゃん「あっ!いた!達也!」

 

先生「達也君?みんなと遊ばないで本を読んでるっていうのは本当なの?」

 

達也「えぇ。この通り」ペラ

 

かんちゃん「ダメだぞ!みんなで遊ばなきゃ!」

 

達也「みんなってのは誰の事だ?」パタン

 

かんちゃん「えっ?」

 

達也「みんなってのは学年での事か?それともクラス?まさかこのメンバーの事を言ってる訳じゃないよな?」

 

かんちゃん「えっ、えっ、えっ」

 

達也「(確か………そう)前城、俺は体調があまり良くないんだ。だから俺はいい」

 

先生「本当なの?達也君」

 

達也「生徒を疑うんですか?」

 

先生「そ、そんな事はないけど………」

 

かんちゃん「なんでお前ばっかり………!う、うがー!」バリッ

 

 

思い通りにならない苛立ちと、理解できない内容の会話を目の前でされたストレスから、前城は達也の本を引っ張って破いてしまう。

そして走って何処かへと逃げてしまった。

 

 

先生「あ、何て事を!ちょっと待ちなさい!寛太君!」

 

未来「酷ーい」

 

真也「あーあー、お兄ちゃんの本が」

 

達也「…………」ヒョイ

 

先生「ごめんね?達也君。寛太君も悪気があったわけじゃ」

 

達也「じゃ、俺向こうで寝てますんで」スタスタ

 

先生「えっ」

 

達也「それじゃ」スタスタ

 

先生「あ、ちょっと!」

 

 

 

 

 

 

 

 

川の近く

 

 

達也「…………ふぅ」ペラ

 

 

達也(中谷未来、近所に住む中流階級のお嬢様。入学後に話すようになり真也とは遊ぶ仲に。いわゆる幼馴染という奴だ………だが人の空間に入り込んでくるタイプ、俺と合わない)

 

達也(前城?寛太、クラスのガキ大将でヤンチャ。先程が初の会話だが………こちらはジャイアンになりそうだな……おそらく中谷に恋心を抱いてる。面倒だ)

 

達也「………だからと言って合う人間がいるわけじゃないんだけどな」

 

???「なんの話ー?」

 

達也「(……!)横寺か」

 

達也(横寺蓮歌、マイペースでおっとりとしたいわゆる天然の女子。反面、誰にでも優しいので男子の” あの ”イジワルの標的になりやすい)

 

蓮歌「何してるのー?」

 

達也「お前も見て分からんのか………本を読んでるんだよ」ペラ

 

蓮歌「なにをー?」

 

達也「人間失格」ペラ

 

蓮歌「わっ、あれ読んでるのかー」

 

達也「………知ってるのか」

 

蓮歌「うん、知ってるよー」

 

達也「…………そうか」ペラ(他の子よりは接しやすいが………やはりまだ子供か。沈黙はつまらないと感じるらしい)

 

蓮歌「話終わっちゃうよー、何かお話しよーよー」

 

達也「他の奴らと遊んで来いよ。ここにいるよか何倍もマシだぜ?」ペラ

 

蓮歌「男子が虫近づけてくるんだもーん」

 

達也「………それはある意味仕方がない」ペラ

 

蓮歌「達也君と一緒の方がいいー」

 

達也「なぜ」

 

 

 

 

 

 

蓮歌「優しいからー」

 

 

 

 

 

 

突然拍子抜けな事を言われた達也は一瞬、本を読む手を止めてしまう。

だがすぐに手を進めて本を読もうとしたが、読む気が失せてしまったので本を閉じて中谷と話をする事にした。

 

 

 

達也「……………やれやれ、頭は大丈夫か?………買い被り過ぎだ」パタン

 

蓮歌「?なにそれ?」

 

達也「…………………何でもない」

 

蓮歌「わたしも寝ていーい?」

 

達也「別に構わな………人の腹を枕にするのはどうかと思うがな」

 

蓮歌「寝てるーおやすみー」

 

達也(寝てる人間はおやすみと言わないぞ、横寺)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕暮れ

 

 

達也「…………んっ?しまった!」(集合は3時!!この空色だと5時は回っている!)

 

 

先生「おーい!達也君ー!蓮歌ちゃーん!」

 

 

先生「どこなのー!返事をしてー!」

 

 

達也「起きろ!横寺!もう日が暮れる!」(捜索が始まってもおかしくない!)

 

 

 

 

 

 

 

 

学校

 

 

先生「なんであんなところ行ったの!」

 

蓮歌「うわぁぁん!ごめんなさぁぁい!」

 

先生「達也君も!どうして黙ってるの!」

 

達也「………すいませんでした」(あの後、結局絞られてしまった。中谷は心配をかけた事について怒られ、俺は心配をかけた事と中谷を誘ってグループから離れた事を責められた)

 

先生「もうじき親御さんが来る………こってり絞って貰いなさい!」

 

???「蓮歌、蓮歌!」

 

蓮歌「おがぁさぁぁぁん!」

 

蓮歌母「蓮歌をあんな危ない所に連れてくなんて………!なんて子なの⁉︎」

蓮歌の母の癇癪が達也に目一杯降りかかる、と同時に連絡を受けたのであろう浩太が走ってこの場に向かってくる。

 

浩太「あぁ!すいません!達也の父でございます!」

 

蓮歌母「あなたが達也君のお父さん⁉︎ちょっとあなたご自分の子供にどんな教育をしてるの!」

 

浩太「すいませんすいません!うちのがとんだご無礼を!」

 

例歌母「謝っただけじゃすまないわよ!」

 

 

 

 

 

 

浩太「お前も謝れ!」バキッ

 

 

 

達也「ぐふっ」ドサッ

 

いつものように達也の頬を殴りつける浩太。

いつも通りに殴ってしまった浩太はその場に生まれた違和感に気づかない。

 

蓮歌母「⁉︎」

 

蓮歌「⁉︎」

 

先生「⁉︎」

 

目の前で起きた事に理解が追いつかない周りの面々は突然の出来事にパニックになっている。

それもそのはず

中学生や高校生ならまだ教育方針次第では殴る家庭もあり得なくはない。

だが小学生の頬を振りかぶって殴るなど虐待といっても過言でないのだ。

 

 

 

浩太「ほらっ!ちゃんと!頭を地面につけて!謝るんだ!」ぐりぐり

 

 

その後に続けられる執拗な追い討ちに、蓮歌の母親は怒るどころではない。

 

蓮歌母「ちょっと!あなたやり過ぎよ⁉︎血が出てるじゃない!」

 

浩太「えっ?あぁ、これはうちの教育方針なんです」ドスッ!

 

先生「で、でも」

 

浩太「女の子を川に連れていったりして!もし溺れでもしたらどう責任とるんだ⁉︎あぁ⁉︎」ドガッバキッ!

 

達也「ご、ごめんな」(ま、まずい!親父、殴るのはいいがこの場所でこのタイミングは非常にまずい!)

 

浩太「ふざけるなよッ!お前がッ!やったことがッ!全部ッ!俺に来るんだぞッ⁉︎」ゴスッゴスッゴスッ!

 

蓮歌母「もういいわよ!やめて!やめて頂戴!」

 

先生「お父さん!それ以上は危険です!」

 

浩太「ふうー、ふうー、…………こいつも反省しております。どうかご勘弁を」

 

蓮歌母「え、えぇ」

 

浩太「それでは真也が待っていますのでこれで失礼させて頂きます」

 

達也「」

 

浩太「………んっ?なんだこの本?ボロボロな………捨てちまえ」

 

達也「」

 

 

 

 

 

父が消えた後

 

 

蓮歌「あれ………達也君の大事な本」

 

蓮歌母「えっ?」

 

蓮歌「お祖父ちゃんがくれたって………」

 

蓮歌母「…………とってあげましょう」

 

蓮歌「いいの⁉︎」

 

蓮歌母「………………………えぇ(あんなの見せられてこれ以上酷い事出来るわけないじゃない)」

 




DVはいじめに繋がる原因の一つです。

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