いじめ?俺には関係無いな   作:超P

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投稿して10分以内に感想が来たので死ぬほどビビりました。
何か自分の知らない利用規約に引っかかったのかと………

そうそう、この少年は俗に言うぼっちであり、オタクであり、嫌われやすいタイプの人間です。










皆様のトラウマが出てこないことを祈ります。


どんなに辛くても。

真也がランドセルを買ってから一週間が経った。

 

 

今日は小学校の入学式。

みんなはちゃんとした服に着替えてピカピカのランドセルを背負い、ニコニコ笑顔で体育館へと入る。

保護者はそれぞれ我が子の晴れ姿を写真に収め、泣くものもいる。

 

例に漏れず、如月浩太もそうだ。

如月真也、そして妹の如月咲の写真を撮っては悦に入っている。

 

 

 

無論、嫌っている達也の写真など一枚もないが。

 

 

 

 

 

 

校長の話

 

 

校長『えー、皆さんはこれから〜』

 

真也「お兄ちゃん。後で寿司屋と焼肉屋、どっちに行くか決めた?」

 

達也「………なんの事だ?」(そんな予定は入ってない………まさか)

 

真也「えっ?お父さんが好きな方に連れてってくれるって………知らないの?」

 

 

 

 

 

 

達也「……………あぁ『そのことか』」

 

 

 

 

 

 

 

達也「悪い。俺は後で用事があるんだ(こういう時、真也みたいなのは自分だけ贔屓にされている事を嫌がる、つまり正しい答えは『食事に行く事を知っていた上で行けない理由があるという程で話す』)」

 

真也「用事?なにそれ?」

 

達也「………べつに何でもいいだろ?そんなに俺の事が好きなのか?」

 

真也「うん!…………僕もいっていい?」

 

達也「……………この冗談は早過ぎたな。だがダメだ」

 

真也「えー?なんで?」

 

達也「親父が一人になっちゃうだろ?」

 

真也「だってお兄ちゃんとあんまりご飯いったことないんだもん………」

 

達也「とにかく駄目」

 

真也「なんで?」

 

達也「俺は寿司も焼肉も嫌いなんだ」

 

真也「…………じゃあラーメン」

 

達也「おい」

 

真也「やだ。お兄ちゃんとご飯食べたい」

 

達也「……………はぁ(真也の笑顔と親父の笑顔…………どちらを取るか)」

 

 

 

達也は父親から愛されてはいない。

だが父親が嫌いではない。

 

帰り道

 

 

結果として達也は、真也の笑顔ではなく浩太の笑顔を選んだ。

達也は真也にトイレに行くと言い、裏門から家の中へと一人で帰っていく。

真也はそれを知らずに正門で兄を待つ。

 

 

浩太「真也ー!お待たせ!」

 

真也「お父さん。お兄ちゃんは?」

 

浩太「…………さぁ?」

 

真也「えっ」

 

浩太「いいよ。『どうせ家にいるから』早く食べに行こう。どっちがいい?寿司?焼肉?それともレストランとか?なんでもいいぞー?」

 

真也「で、でも!僕お兄ちゃんとご飯食べたい!」

 

浩太「………真也ー?咲もお婆ちゃんもお爺ちゃんも待ってるんだ」

 

真也「でも!」

 

浩太「言うことを聞きなさい」

 

真也「……………うん」

 

浩太「よし!いい子だ」にこっ

 

 

 

 

 

 

 

 

レストラン

 

 

祖父「浩太」

 

浩太「父さん」

 

祖父「達也がいないようだが?」

 

浩太「………友達の家に遊びに行くってさ」

 

祖父「今日は家族全員での食事の筈だが?」

 

浩太「で、でも!今日は折角の入学式で!」

 

祖父「入学式に自分の子供を食事に連れてくのはいい」

 

浩太「! じゃあ!」

 

祖父「だが一人足りないな。儂は帰る」

 

浩太「待ってよ父さん!」

 

祖母「あらあら宗介さん。どちらへ?」

 

宗介「幸、儂は帰る。後はお前たちで食え。勘定はこれで払え」

 

幸「でも今日は折角の家族全員での食事ですよ?貴方がいなくては」

 

宗介「一人足りないではないか」

 

幸「宗介さん」

 

 

 

 

 

 

 

幸「誰も欠けてなどいませんよ?」

 

 

 

 

 

 

 

宗介「……………とにかく帰る」

 

幸「………そうですか」

 

真也「お爺ちゃん!帰っちゃうの?」

 

宗介「真也…………立派な人になるんだ」

 

真也「?」

 

浩太「父さん!」

 

 

宗介は浩太の言葉に耳を貸さず、金だけ置いてレストランを立ち去る。

 

 

浩太「くそっ…………なんで父さんは達也なんかを!」

 

幸「大丈夫よ浩太。あの人もいずれ分かるわ」

 

 

 

 

 

 

幸「達也などいらないという事を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰り道

 

宗介は肩を落とし、自分の荷物を置いてある浩太の家へと向かう。

 

 

宗介(…………我が子に差などない。自分の血を受け継いだ可愛い息子じゃないか。儂の孫は二人ではない……三人だ)

 

宗介(確かに離婚は達也の発覚だ。だが達也が生まれてしまったのは浩太の責任。……………いや、生まれてしまったのではない。『生まれてきてくれた』のだ)

 

宗介(儂は…………何をしてやれるのだろうか?幸も達也を居ないものとして扱う。浩太は達也を除け者にする。真也もいつ洗脳されるか分からん………)

 

 

 

 

 

 

 

如月宅

 

 

宗介が家に入ろうとすると、中から掃除機をかける音がする。

 

 

宗介(………誰もいない筈だ。なぜ掃除機の音がする?)

 

 

宗介は用心して中に入る。

どうやら掃除機の音は浩太の部屋から聞こえてくるようだった。

 

 

 

 

 

達也「…………あ、祖父さんか」フィィィィン!

 

 

 

 

 

 

宗介「…………達也」

 

 

 

 

宗介が見たもの。

それは小さい腕で必死に浩太の部屋に掃除機をかける達也の姿だった。

部屋は散らかっており、ビールの空き缶や食い散らかした菓子の袋などが散乱してある。

部屋の隅には簡単に掃除ができるように『使い慣れた』モップや雑巾が置いてある。

 

 

 

 

宗介「……………何をしている?」

 

達也「何って………掃除ですよ」(まずい、この人は優しすぎる。俺の現場は世間一般的に見てもかなりおかしい。それをどうにかしようとなんてされたら親父がなにをするか……)

 

宗介「……………なぜ?」

 

達也「それは言われたからですね」(いや、ここにこの人が来ている時点で親父は既に俺に怒りを抱いてるだろう)

 

宗介「……………誰に?」

 

達也「貴方の息子に」

 

宗介「……………なぜレストランに来ない?」

 

達也「呼ばれてませんし、知りませんでしたから」

 

宗介「……………何をだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

達也「今日食事をする事を」

 

 

 

 

 

 

 

宗介「………………!!」

 

宗介「…………………………今からレストランに来い」

 

達也「いや、行きませんよ」

 

宗介「……………なぜ?」

 

 

 

 

達也「親父は嫌がりますからね」

 

 

 

 

宗介「……………………⁉︎」

 

達也「婆さんも嫌がるでしょうし………面倒臭いですから」

 

宗介「……………それでいいのか?」

 

達也「……?すみません。どういう意味ですかね?」

 

宗介「そんな生き方でいいのかと聞いているんだ………!」

 

達也「問題無いですね」

 

宗介「!」

 

 

 

 

 

 

 

 

達也「これが俺ですから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それを聞いた時。

宗介は耐え切れずに長年枯れていたと思っていた涙を零してしまった。

腕が震えた。おそらく足も震えが止まらない状態だろう。

宗介は思った。

 

 

なぜ、こんな扱いを受けなければいけないのかと。

 

 

まだ達也は5歳だ。

 

行きたい所もある。やりたい事もある。食べたいものもある。

ワガママを言っても許される年齢だ。

しかも今日は一生に一度の小学校の入学式。

普段なら駄目なお願いでも受け入れてもらえる日だ。

浩太はそれなりに大きな会社で働いている。

給金だって三人の子供を育てるには十分過ぎるぐらいには貰ってる筈だ。

なのに

 

 

この子は父親から掃除をしろと言われているのだ。

 

 

 

掃除道具を見れば分かる。

 

かなり使い慣れた状態だ。

きっと今回が初めてでは無いのだろう。先程の掃除機のかけ方も小学生とは思えない程に慣れていた。

そして達也の生気の無い目、とても5歳がする瞳では無い。

 

これではまるで死人がするような目ではないか。

 

宗介は耐え切れなくなり、泣きながら達也を抱きしめる。

 

 

宗介「達也っ……………お前は、お前は………!」

 

達也「ちょ、祖父さん離して下さいよ、掃除ができないじゃないですか」

 

宗介「掃除なんてしなくていいんだ………!」

 

達也「掃除をしないと家が汚れるんですよ!」

 

宗介「そんなのどうでもいい………!」

 

達也「いや、これは俺の仕事ですから」

 

 

 

 

 

 

 

 

宗介「子供が仕事などするな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

達也「仕事と言っても家事の範疇ですし」

 

宗介「………!それで、お前は幸せなのか?」

 

達也「俺は幸せですよ」

 

宗介「嘘をつくんじゃない……!」

 

達也(この人は親父とは違う生き方をしている…………薄っぺらい優しさを振りまくような事をしない、中身のある言葉で人と話す人間性)

 

達也「嘘なんかついていない。今こうして生きてるのが幸せですよ」

 

宗介「それは幸せではないんだ……………!『当たり前のこと』なんだ!」

 

達也「その当たり前が俺にとっては幸せなんですよ。こうして養ってもらっている事こそが俺の幸せ。これ以上は望まないし望めない。あー、俺は何て幸せなんだろう」

 

宗介「儂のところに来い!」

 

達也「婆さんが嫌がるでしょ」

 

宗介「お前は儂の孫だ!誰にも否定はさせん!」

 

達也「…………宗介さん」

 

宗介「な、なに?」

 

達也「宗介さん、俺は幸せだよ」

 

宗介「なぜ………名前で儂を呼ぶ?」

 

達也「俺はですね?今の環境に満足してる」

 

 

 

達也「父の元で比較的不自由の無い生活を送らせて貰ってるし、兄弟も元気で過ごせてる。学校にも通わせてもらってるし服も着せてもらえてる。食事も貰えるし睡眠も取らせて貰えてる」

 

宗介「………なにを言ってる?」

 

達也「更に言えば」

 

達也「法の下で守られているし人権もある。基礎的な教育は学べたし人間としての扱いは受けられる環境にある。呼吸をする事ができるし話す事ができる」

 

 

今達也が言っている事は、基本的に子供が受ける事のできる権利である。

それはできて当然、当たり前の権利。

 

 

それを幸せと言ったのだ。

 

 

達也「だから宗介さんの所へは行けません」

 

宗介「せめて………せめて、いつものように呼んでくれないか?」

 

達也「できません。宗介さんは本来、俺とは関係の無い立場ですし」

 

宗介「なぜだ……!儂の所ならお前ぐらい育てられる……!」

 

達也「あの人はいずれ貴方の椅子を継ぐおつもりです。今からでも無駄な行動は慎んだ方がいい。後で捨てられてしまいますよ?」

 

宗介「………一つ教えてくれ」

 

達也「なんでしょう」

 

宗介「どこでその知識を得た?」

 

達也「………」

 

宗介「その年でその話し方、判断力、知恵を持つのははっきり言って異常だ………どこでその才を得た?」

 

達也「…………ま、宗介さんならいいでしょう」

 

宗介「頼む………教えてくれ……!」

 

 

 

 

達也「教わったんですよ、世界から」

 

 

 

 

宗介「世界……」

 

達也「この世界では俺以上の扱いを受けている子供が沢山いる。俺はね?どんな扱いでも生きていればいいんだ。逆に言えば何があっても生きていたい。だから学んだ。本から、テレビから、先生から、動物から、天気から、会話から、辞書から、同級生から、環境から、扱いから、そして」

 

 

 

 

 

 

達也「貴方から」

 

 

 

 

 

 

宗介「……………」

 

達也「…………はっきり言って俺は貴方から優しさを学ばなかったらタダの廃人になっていた。ですが俺は優しさを知った。貴方は俺が初めてここに来た時、一人だけ受け入れてくれた。その時の優しさは俺の世界を変えた」

 

宗介「…………ならなぜ?」

 

達也「優しさは麻薬みたいなもんです。触れれば触れるほど頼りきってしまう。だから俺は貴方を拒絶する」

 

宗介「………」

 

達也「俺がここに留まる理由は十分だ」

 

宗介「………頼みがある」

 

達也「了承するとは限りませんがなんでしょう?」

 

宗介「最後だ。これが最後でいい。儂に甘えてくれ」

 

達也「………………」

 

宗介「お前が何を思っていようが、何を考えていようが関係無い。儂の孫であり、儂の家族である事に変わりは無い。儂は可愛い孫に甘えたい、………いや、甘えてもらいたいのだ。………たとえそれが最後になろうとしてもだ」

 

達也「何をしろと?」

 

 




救いは今の所無いです。

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