いじめ?俺には関係無いな   作:超P

15 / 23
実際の体験が含まれます。

ここまで酷くはありませんでしたが。


それでも知りたくなかった。

 

学校

 

 

達也「あの時は悪かったな、変なモン見せちまって」

 

美久「ううん。なんとなくだけど………貴方は悪くないでしょ?」

 

達也「いや、まぁそうなんだけどさ………」

 

 

やはりこの子はいい子だ。

性格が良いとか、外見が良いとかじゃない。…………まぁ、どちらも平均以上なのは確実だが。

 

 

 

誰にでも優しくするというのは、実は難しい事なのだ。

 

 

 

今まさに針のむしろ状態の俺に話しかけられて普通に対応する。

これだけでも側から見たら聖人レベルではなかろうか?

そしてこのクラスの空気を察知してあまり人気のないところで会話をする始末。

もうあれだね、良い嫁さんになるよこいつ。

 

 

美久「でも………大丈夫なの?」

 

達也「気にすんな、気にしたら負けだ」

 

美久「ふふっ………それ間違ってるわよ?」くす

 

達也「いや……………これはだな」

 

 

こういうボケまで拾ってくれるとはな。

何気にノリの良いやつなのかもしれん………ま、じゃなきゃ横寺となんてやってけるわけないか。

 

 

達也「………そういや、昨日はあんな所で何してたんだ?」

 

美久「えっ?あぁ、あそこで歌の練習をしてたの」

 

達也「歌?」

 

美久「えぇ」

 

美久「わたしの弟、来週誕生日なの。わたしは毎年歌を歌ってあげてるの………家はあまりお金がないから」

 

達也「ほう、そりゃ弟さんも良い姉を持ったもんだな。弟さんは幸せだろうよ」

 

美久「ふふっ、どうもありがとう」にこっ

 

美久「それじゃ、わたしは戻るわね」たったったっ

 

 

 

是非とも幸せな人生を送って欲しいものだよ。

…………本当にさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トイレ

 

 

達也「………やべ、漏れる」たったったっ

 

???「それまじかよ?」

 

???「本当だよ」

 

???「無いわー………お前も欲しいモンとか無いわけ?」

 

(ん?なんの話だ?)

 

 

 

 

 

 

???「でも今時誕生日に歌はねぇよ!」

 

 

 

 

 

 

遠藤弟?「だよな!正直寒いってのwww」

 

???「貧乏臭ぇwww無いわwww」

 

???「俺はチャリとか欲しくなったなー」

 

???「遠藤、お前も買って貰ったらどうだ?」

 

遠藤弟?「無理無理。うちは貧乏だからなー、………まじ金持ちの家に生まれたかったよ」

 

???「でもお前のネーちゃん美人じゃん?」

 

遠藤弟?「あいつヤラセてくんねーじゃん?」

 

???「そこはさ、顔隠して無理矢理………」

 

遠藤弟?「それ弟じゃなくてもいーじゃんwww」

 

???「確かに!だなwww」

 

???「ヤる時呼べよ!」

 

遠藤弟?「呼ぶ呼ぶ!全員で腰立たなくなるまで犯してやろうぜ!」

 

(……………遠藤の弟かよ)

 

 

正直、胸糞悪い。

 

なぜ実の姉にそんな事が言える?

姉と仲良く暮らせているのに金が欲しいだと?

金持ちのうちに生まれるってだけで姉と離れ離れになるんだぞ?

 

姉の想いはどうなる?

お腹を痛めて産んでくれた母親は?

必死で働いて育ててくれた父親はどんな気分になると思う?

 

そんな恵まれた家庭でよくもまぁ、姉とヤりたいだの金持ちのうちに生まれたいだのと言えたもんだ。

 

 

 

その日、俺は珍しく給食に手をつけなかった。

 

 

 

 

 

 

翌週

 

 

遠藤弟「姉ちゃん!」

 

美久「大志、どうしたの?学校で話しかけるなんて珍しいわね?」

 

大志「いや、あのさ」もじもじ

 

美久「落ち着いて話してみて?なんなの?」

 

大志「今日の歌なんだけどさ…………」

 

美久「うん、それが?」

 

大志「いや、ちょっと俺の行きたい場所で歌って欲しいなー………なんて」

 

美久「場所?別にいいわよ。他の人に迷惑のかからない場所なら」

 

大志「(よっしゃwww)じゃあ駅前で待ち合わせね!」

 

美久「え、駅?別の街に行くの?」

 

大志「ダメかな?」

 

美久「(誕生日だもの………それぐらいいいわよね)……分かったわ」

 

 

 

達也(…………………どうしたものか)聞き耳

 

 

 

 

 

 

 

昼休み

 

 

美久「達也君、ちょっといい?」

 

達也「お?どうした?」

 

美久「今日ね?弟の為に歌を歌うんだけど………」

 

達也「………………それがどうした?」

 

美久「いえ、良かったらこない?貴方にも聞いてほしくて………」

 

達也「……………おう」

 

 

 

 

 

 

駅前

 

 

美久「お待たせ、大志」

 

大志「え、えぇ〜!?他の人もいんのかよ?」

 

達也「……………」

 

美久「お友達なのよ………だめ?」

 

大志「(んー………いざとなったら誘っちまえばいいや)いいよ!一緒に行こう!」

 

 

 

 

 

 

廃屋

 

 

美久「大志?こんな所で歌うの………?」

 

大志「姉ちゃんってさ」

 

美久「?」

 

 

 

大志「馬鹿だよね」がばっ

 

 

 

 

美久「大志⁉︎何してるの!やめなさい」ジタバタ

 

大志「でてこいよ!」

 

 

ぞろぞろ

 

 

美久「大志………今なら許すわ。やめなさい!」ジタバタ

 

大志「いっつもそれだ。いつまでも子供扱いしてんなよ!」

 

達也「……おい」

 

大志「アンタも混ざれよ!」

 

達也「………………」

 

大志「おい!いいのか?こんな上玉食えるんだぜ?」

 

???「うひひ」カチャカチャ

 

???「馬鹿みたいに来ちゃってさー?ほーんとアホらしいwww」カチャカチャ

 

美久「いや!助けて達也君!」

 

達也「あのさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

達也「本当にやんのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

大志「なにいってんだよ!早く」

 

達也「だからマジでやんの?」

 

大志「はぁ?お前何言って」

 

達也「ヤった後は?」

 

大志「は?だから………」

 

達也「その後は何?殺すの?」

 

???「んだこいつ?」

 

???「で、でもさ、………ヤった後どうすんの?」

 

???「知らねーよ!どうすんの、大志?」

 

大志「え、俺」

 

達也「喋らねえようにするには殺すしかねーだろ。じゃないとお父さんとか先生に殺されるかもな。………あ、子供もできるかもしれん」

 

大志「……………」

 

達也「学校はどうなるんだろうな?クラスメイトはどんな反応するんだろうな?親戚も、近所の奴らも。てか警察にパクられるかな?」

 

大志「……………」

 

???「………」

 

???「………」

 

美久「達也君……………」

 

達也「無理な計画はやめとけ?身を滅ぼす。てなわけでそのお粗末なモノはとっととしまえよ。正直とても見苦しい」

 

大志「……………姉ちゃん、俺」

 

美久「…………誕生日は終わり、帰ってて」

 

大志「………………本当は俺、こんなつもりじゃなくて」

 

達也「失せたほうがいい」

 

大志「………………」トボトボ

 

???「俺らも………」ぞろぞろ

 

???「くっそー……勿体ねー………」ぞろぞろ

 

美久「……………」

 

達也「……………」

 

美久「……………」

 

達也「……………」

 

美久「本当はね?分かってたの」

 

達也「……………」

 

美久「大志は私の歌を聴いてなかったの、最初の年以外は。そして去年から私を女として見てたのも」

 

達也「……………立てるか?」スッ

 

美久「ありがとう。」ガシ

 

美久「……今日付いてきて貰ったのも、こんな事があるかなって」

 

達也「………暇だったしな」

 

美久「…………あの子ね?トイレで色々と言ってたらしいの」ふるふる

 

達也「…………」

 

美久「私の歌はね?寒いんだって」ぽろぽろ

 

美久「お姉ちゃんよりも、お金が欲しかったんだって」ぽろぽろ

 

達也「……………俺は」

 

美久「…………ヒック、」ぽろぽろ

 

達也「………………俺は姉のほうが大事だと思う」

 

美久「………………グスッ」ぽろぽろ

 

達也「大志にとっては金の方が大事なのかもしれない。姉なんていらないのかもしれない」

 

達也「だがな?きっとお前がいなくなったらあいつは後悔するだろうよ」

 

美久「………………」ぽろぽろ

 

達也「……………胸は貸してやるから、後で歌を聞かせろよ?」

 

 

 

 

 

 

遠藤は泣いた。

大きな声で泣いた。

大好きだった弟に裏切られた悲しさから。

自分の歌を歌を寒いと言われた悔しさから。

弟を理解できなかった自分の不甲斐なさから。

 

 

 

 

そして達也のあたたかい胸の鼓動を聴いて。

 

 

 

空に向かって泣き叫んだ。




裏切られるのはとても辛いんです。

最初から信じてない人から裏切られるより、信じていた人から裏切られる事の方が十分心に来ます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。